4回目:新歓コンパ1
岬町駅は大学から一番近くにあって、急行電車も止まるおかげで駅前は意外と賑わっている。
もちろん、その賑わいは音としてはあたしに届かないのだけど。
大学の最寄り駅といっても、キャンパスに行くにはそこからさらにバスに15分ほど揺られなきゃ行けない。キャンパスの周りにはお店もなにもないから、学生たちは昼食を学食か生協のお弁当で済ますしかない。
授業開始の初日の金曜日、まだ友達のいないあたしは昼食を抜いて、ひとり図書館で勉強をすることにした。ひとりのご飯を見られたくなかったから、食べない。。
入学式のとき、隣に座っていた子はあたしに話しかけていたのに、障害がばれるのがいやで気がつかない振りをした。本当なら今ごろあの子と一緒に食べていたかもしれない、そう思うととても情けなかった。。
授業にも自信を失くしていた。教授たちはみんな口の動きが速すぎたり、もごもごと話すばかりで何を言っているかまったく分からない。
来週からは必修の語学の授業がある。
「授業に出て筆記だけでもしてください」と、事務の人にそう書かれた書類を渡される。
あたしにとって、英語は言葉なんかじゃなく、大学受験の科目のひとつにすぎなかった。
一生話すことなんかできないのに、これ以上勉強して何の意味があるんだろうと大きなため息が出た。
とにかく来週になれば、嫌でも耳の聞こえないことがばれてしまう。
なんとしても早く友達をつくらなきゃ。
意気込んであたしは駅のロータリーに向かう。
ビラに書かれていた新歓コンパに。
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