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オーガマスターと転移者

「よく来た、新たな転移者たちよ」


 低く重圧を感じさせる声が響いてきた方向に目を向ける。

 机と椅子しか家具が存在しない部屋に、一人の男が佇んでいた。窓際に立ち、眩しそうに目を細めて外を眺めていた顔を、こちらに向ける。


 赤黒い肌に、野生の動物を連想させる鋭い目つき。頭には肩下まで伸びた白髪があり、その髪をかき分けるように伸びた一本の立派な角があるのだが、その脇にもう一本、半ばから折れた角がある。

 こちらに笑顔を向けて剥き出しになった歯は、全てが鋭く尖った牙で、対面する男が人間でないことを実感させてくれた。

 上半身は無駄なぜい肉など存在しない鍛え上げられた筋肉の塊。それが、薄いワイシャツのような服の上からでも見て取れる。

 見た目だけで判断するなら、まだ若い個体に見えるのだが。


「わしがここのオーガを統べているオーガマスターだ」


 ただ話しかけられただけだというのに、思わず握り締めた手のひらに汗がにじむ。このプレッシャー、オークキングと対面した時の感覚に酷似している。


「はじめまして。数ヶ月前にこの島に転移してきたものです。土屋紅と申します、以後お見知りおきを」


「ふはははは、そんな硬い挨拶などいらぬわ。もっと、楽にすればいい。オウカよ、客人たちの椅子が無い。使用人に命じて長椅子と長机、それに飲み物と食い物持ってくるように、伝えてくれ」


「はーい、わかりました。あ、私の分も用意してもらおうっと」


 開けっ放しの扉からオウカがスキップでも踏みそうな程、嬉しそうに飛び出していった。


「すまんな、我が孫ながら自由奔放であんな性格でな。準備ができるまで、少々間抜けではあるが立ち話としゃれこもうか。まずは、お主たちが、何故この島に来たか。そして、この島に来て何をしたかを教えてもらえんか。先の転移者である婆さんたちとの相違がないか確かめておきたいのでな」


 ここは隠す必要もないだろう。あの女神か女教師かわからない存在の話も伝えておくか。前の転移者から女神もどきについて、何かしらの情報を得ている可能性もあるからな。

 俺はあの教室であったこと。女教師風の特徴をできるだけ詳しく説明した。


「そこは先の転移者と同じのようだな。婆さんも学校とやらの教室で、多くの転移者と共にスキル選択を迫られたと言っておったわ」


 転移させられるまでの流れはほぼ一緒なのか。なら、一つ気になっていたことを質問しておくか。


「前の転移者は何年前に現れたのですか?」


「ふむ。婆さんが来てから暦というモノをつけるようになってな、確か……お、今年で70年目だ」


 オーガマスターは机からメモ帳のような物を取り出し、中を開いて確認している。

 お婆さんと呼ばれていたので、かなりの高齢だとは思っていたが、昭和初期の人ということになるのか、その人は。

 いや、待てよ。そう、決めつけるのはまだ早いか。


「その方はどういった格好をしていましたか。あと、こんなものを持っていませんでしたか」


 俺がスマホをオーガマスターに向けると、顎に手を当てしげしげと見つめている。


「何だこれは。ふむ、それは良くわからんが、このような物なら、持っておったぞ」


 メモ帳が入れてあった引き出しから、長方形で黒い手のひらサイズの何かを取り出し、机に置いた。


「え、携帯電話じゃないの。それもガラケー」


 縁野も懐かしいのだろう。黒い携帯電話を物珍しそうに観察している。

 少し型は古いが5年ぐらい前なら誰もが持っていた携帯電話がそこにあった。


「あれ、70年前に携帯ねえよな」


 携帯どころか電話すら普及していなかった時代だぞ。

 ということは日本で5年ぐらい前にも同じような事があり、転移者が送られた。ただし、この世界に降り立ったのは今より70年前となる。

 異世界に転移するという非常識がまかり通っているのだ、時間のずれなど驚くべき出来事でもないか。

 だが、あの女教師もどきは初めてこんな事をするといった感じの話だった。そこが矛盾しているが、あれが嘘をついていたらそれで終わりだ。


「おお、そうだ服装だったな。そこの女と似たような格好をしておったぞ。あと、シュウカツチュウ? とか言っておって、この書類が必須だったとかどうとか」


 またも引き出しから取り出されたのは色あせた一枚の――履歴書。

 そこに書かれていた西暦と日にちを確認すると、俺たちが召喚された同じ日の記入があった。あの型の古い携帯は単に物持ちが良かっただけか。

 ここから推測すると、あの女教師は教室にいた人を何年かごとに分けて、この島へと送ったということになる。

 70年前以外にも、飛ばされた人がいるのだろうか。


「すみません。転移者というのは70年前以外にもいたのですか?」


「いや、その後一年後ぐらいまでは何人か見かけることもあったが、それから新たな転移者を見たのは今年に入ってからだな」


 何故か二回に分けて、この島へと送ったというのか。

 何か理由があるのか。それともただの気まぐれなのか。これは考えるだけ無駄だな。それこそ、あの女教師もどきに直接問いたださなければ、わからないことだ。


「そろそろ、お主たちがこの島で何をしていたのか話してはくれんか」


「あ、すみません。話の途中でしたね」


 質問に夢中になり、本来の説明を忘れていた。

 この島に降り立って、ゴブリンジェネラルとの死闘。オークキングからの逃走。聖樹を枯らしたこと、全てを隠すことなく話し聞かせる。


「北の森の異変はそういうことだったか。故に、あやつが暴れ出しおったのか」


 腕を組み唸り始めたオーガマスターに声を掛けようとしたところで、扉から数人の使用人が姿を現した。


「マスター、持ってまいりました」


「お、すまんな。そこに並べてくれ」


 使用人たちは俺たちに深々と頭を下げると、手際よく机と椅子を並べ、焼き菓子と紅茶の準備を終えると、音もなく立ち去る。

 こういった作法も先の転移者であるオウカのお婆ちゃんが叩き込んだのだろうか。


「話の腰を折ってしまったな。ここからは、飲食しながら語り合うとするか」


「では、先程の暴れ出したとはいったい?」


「ふむ、それか。わしらは今二つの大きな懸案事項があっての。その一つが、ここ数日動きが活発になってきたベヒモスの存在だ」


 聞いたことがあるな、その名前。


「ベヒモス。確か陸に存在する巨大な怪獣か。象やカバやサイに似た化け物だったという記載があったような。最近はゲームの影響で、角の生えた巨大で筋肉質な牛のような外見で描かれていることが多いみたいだが」


 確か悪魔としても存在する筈だったか。


「何でそんなこと知ってんだよ」


「若干どころか、かなりキモイ」


 二人が引き気味なのが目につくが、あえて気にしないでおこう。


「一時期、そういうのにはまった時代があってな」


 うーん、小中学生時代にモンスター図鑑を読み漁った知識が、こんなところで利用価値がでてくるとは。人生わからないものだな。


「ほう、そっちの世界でも有名なのか。そうだな、見た目は体には硬い鎧のような皮膚があり、その尻尾はトカゲのように太くて長い。頭には巨大な二本の角が生えておる。全長はそうだな10メートルはあるか」


「強さは」


「そうだな。動きはそれ程でもなく、ブレスといった遠距離攻撃の手段もない。だが、その怪力と圧倒的な防御力が厄介でな、歩くたびに大地が揺れ、尻尾を振るえば大木が薙ぎ倒され、荒れ地があっという間に完成する。正直かなり厄介な魔物なのだ」


 それはまさに怪獣だな。そんなのと出会った日には、逃げる以外の選択肢が思い浮かばないぞ。


「今までは北の森の近くで眠り続けていたのだよ。あの聖樹が吐き出す黒い霧により、生命力を吸われ続けていたおかげでな。わしらも相手にするには相当の犠牲を覚悟しなければならぬので、様子を見る程度に留めておったのだが」


 それが、聖樹が枯れ、黒い霧が綺麗さっぱり無くなったせいで、ベヒモスが目覚めたわけか。ああ、完全に俺のせいだなそれは。


「すまない。俺が倒してしまったせ――」


「謝る必要はない。命を奪おうとしたものを倒す。それは正当な報復だ。主の責任など存在せん」


 あっさりと断言したオーガマスターは気を使ってくれたわけでもなく、それが当たり前だと考えているようだ。


「70年前にも、婆さんや他の転移者と力を合わせて、ベヒモスを討伐に行ったのだが、あの硬すぎる皮膚を完全に貫くことができずに、北の森に追い込んで疲労させるのが精一杯だった。こちらも満身創痍で倒す手段が浮かばず、回復の為に眠りについたベヒモスが目覚めぬように、警戒をするしかなかったのだ」


 傷は完全に癒えたが、生命力を吸われ続け目覚めることが無かった。

 オーガ側の目論見としては、刺激を与えて覚醒するよりは、このまま気の長い話だが、生命力を吸わせ続け、いつの日かその命が尽きるのを待つつもりだったのだろう。


「おそらく、数週間で完全に目覚めるだろう。その前に生命力が弱っているベヒモスを何とか退治できぬかと考えている。わしらが敵対していたことを覚えておれば、報復にやって来るだろうからな」


 軽い口調で話してはいるが、これは大問題どころではない。

 折角、協力関係を結べる相手が見つかったというのに、下手したら壊滅の危機だ。


「そしてもう一つ、危惧していることがある。北の森が安全になったことにより、オークたちがその領土を広げ、繁殖する可能性があるということだ。今すぐどうこうという話ではないが、奴らの繁殖力は異常すぎる。土地と餌を確保してしまえば、数年の内にその数は倍増するだろう」


 今でも2000もの数が存在するというのに、数年で倍に跳ね上がるというのか。

 土地は木を伐採すれば幾らでもある。食料も木の実でいいのであれば、北の森には食べきれない程の量が存在している。


「個の能力ではハイオークですら、オーガには敵わん。だが、数の脅威というのは侮れぬ。わしらは300いるかどうか。これ以上、繁殖されては本当にこの島を占領されかねん。それを未然に防ぐよう総攻撃を仕掛けようと考えておるのだよ。わしも年齢による衰えの問題もあり、今のうちにオークキングを屠っておかねば、近いうちにわしの力をオークキングが上回ることとなるだろう」


 聖樹を倒したことがここまでの大問題を引き起こしてしまうとは。オーガマスターも俺の行動を咎めているわけではなく、当たり前のこととして受け止めてくれている。

 だが、この話を聞いて引き下がるわけにはいかないよな。


「ベヒモス討伐と、オークとの戦争、俺も参入させてもらっていいですか」


 オウカと権蔵は話を半分聞き流しながら、運ばれてきた焼き菓子を貪っていたのだが、俺の言葉を聞き、驚いた表情でこっちを見つめている。

 隣に座っている縁野は呆れた表情を浮かべ、顔は動かさずに瞳だけが俺を捉えた。


「正気か? 命の保証はできぬぞ」


 オーガマスターが片目を閉じた状態で呼気を吐く。開かれた残りの目が俺の真意を見抜こうと、鈍く光る眼光で射抜いてくる。


「命の保証なんて、この島に来てから一度もしてもらったことはないですよ」


「ふむ、面白い人間だ。ならば、力を貸してもらおうか」


「ただし、一つ条件……ではないですね。お願い事があります。俺の仲間たちを、ここに住まわせてもらえませんか。俺が生き残ろうと、死のうと、それだけはお願いしたい」


 前からずっと考えていたことを口にした。

 今、自分が死ぬことよりも怖く不安なことは、仲間たちの今後だ。

 安全な拠点。信頼できる人々――この場合オーガだが。それさえ確保できるなら、俺はもっと自由に無茶もできる。


「人間は稀に自分を犠牲にしても他人の為に何かをやろうとする馬鹿が現れる。婆さんのようにな……オーガマスターの名に誓おう。主を友とし、仲間の安全を保証しよう。いつでも、連れてくるがよい友よ。歓迎しよう」


 そう言って伸ばされた手を掴み、俺は『精神感応』を発動させることなく握手に応じた。


「おいおい、土屋さん。盛り上がっているところ悪いが、その戦いに俺も参加させてもらえるんだよな?」


「正直、万が一の事を考えて、権蔵にはみんなの事を頼みたいんだが」


「土屋さんって自虐的な考えがあるよな。その万が一の可能性を減らす為に、俺が同行するんだろ。一番幸せな展開は、みんな無事だろ?」


 意気込むわけでもなく、一緒に散歩に行くような軽いノリで権蔵の口から出た言葉に、俺は不覚にも心を動かされた。

 だよな。最悪の展開を考慮するなら、最良の選択を見極めた方がいい。


「いい男だな、権蔵」


「な、なんだよ、気持ちわりぃ」


 ボリボリと頬を掻きながら顔を背け、照れているようだ。


「土屋、良い仲間がおるようだな。その心意気やよし! だが、能力の未熟なものを連れていくわけにはいかぬ。一度、土屋もだが、権蔵といったか。主もわしの配下の者と手合わせして貰うぞ」


「ええ、もちろん」


「望むところだぜ」


「私は傍観させてもらうわよ」


 縁野は始めから期待していなかったので、どうでもいいが。


「ふはははは、良いぞ、良いぞ! 久方ぶりに心が滾る。ならば、少し時間は貰うが、こちらの猛者と対戦してもらおう。勝敗は問わぬ。主らの力を見せてくれればそれでいい。それまで――お、そうだ。数日前なのだが、オークの町に忍び込ませていた我らの仲間が救出してきた、転移者がおってな。そやつらと会ってもらえぬか。わしらだと警戒してしまい、碌に会話もできぬ有様でな」


 心底嬉しそうに笑い、机を叩いていたオーガマスターだったが、急に口調を変え、囁くような声で、俺に頼み事してきた。


「どのような人なのです」


「ふむ、一人は精神と肉体の損傷が激しくてな。まともに会話もできぬ。もう一人は少女で甲斐甲斐しく男の世話をしているが、わしらを見て完全に怯えてしまっておる。回復するまでは、皆に黙っていようとこの館で極秘裏に匿っておるのじゃよ」


「話せない状態ですか。一体、何が……」


 オークに捕まっていたのだ、幾つか想像はつくが、どんな酷い内容であっても憶測で判断するわけにはいかない。情報の重要性はこの島に来てから、身に沁みて理解している。


「オークたちは闘争本能が強くてな。娯楽の一環として、町の中に闘技場があるのだよ。そこで、魔物や捕まえてきた人間を見世物として戦わせておる。その一人だったようだ。少女の方は奴隷たちの世話係を担当していたようだ。どうも、治療系のスキルを所有しているようなのだが」


 そこで、男は肉体と精神が壊れるような目にあったのか。

 少女は治癒系のスキルを重宝され、そんな場所でも生き延びる事ができた。

 全ては会って訊いてみるしかないか。話しにくいことなら、相手には悪いが心を読ませてもらおう。特に会話が成り立たない男の方は、そうするしかないだろう。


「わかりました。是非、会わせてください」


「それは、助かる。手合せの準備は整えておく。オウカ、友を彼らの元へ連れて行ってもらえるか」


「はひ、わひゃりまひひゃ」


 両手に掴んでいた焼き菓子を慌てて口に放り込むと、オウカが立ち上がる。

 オーガマスターに一礼すると、部屋を後にした。

 どうやら目的の部屋は二階のオーガマスターの部屋と真逆の方向にあるようで、長い廊下を突き当たりまで進み、右手の扉の先がその部屋のようだ。


「あのさ、男の方は変になっているけど、気にしないでね」


 ドアノブに手を掛けた状態で忠告してくれた。


「ああ、わかっているさ。権蔵はどうする」


「ちと、怖いが、お供するぜ」


 俺たちの返事を聞き、オウカは一度目を伏せて息を吐くと、ゆっくりとその扉を開けた。

 大きな窓があり、そこから明るい日差しが注ぎ込む室内に大きなベッドが二つ。その一つは無人で、もう一つのベッドに男が寝かされていた。

 顔だけが見える状態で、首から下は毛布が被されている。

 男は無造作に伸びた髪が鼻先まで伸び、顔が殆どわからない。口元は見えているのだが、唇は血色が良くない。少しやせ気味といった感じだ。肌の感じから推測すると、若いのではないかと思われる。


 そして、ベッドの脇には椅子を寄せ座っている少女が一人いる。

 少女は年の頃なら小学生の低学年ぐらいだろうか。腰まで伸びた少しだけ茶色がかった髪が印象的だ。少し垂れ目気味で大人しそうな印象を受ける。

 俺の顔を見た瞬間、肩を揺らし、ベッドで寝込んでいる男の手をぎゅっと握りしめた。


「初めまして。俺もキミたちと同じ転移者だよ」


 相手を怯えさせないように、できるだけ優しい声を心掛けて話しかける。イメージとしては、親戚の子供と話している時の感じだ。

 必要以上に警戒させないように、扉から少し入った場所で立ち止まり、腰を落として目線を合わせる。


「転移者? 日本人なの?」


 耳を澄ましていなければ聞き取れない、今にも消え入りそうな声が俺の耳に何とか届いた。


「ああ、そうだよ。初めまして。土屋紅と言うんだ。こっちは――」


「権蔵だぜ、よろしくっ」


 親指を立て、ビシッとつきつけ人懐っこい笑みを見せる権蔵に、少女は一瞬驚いたが、ほんの少しだけ微笑んでくれた。


「は、初めまして。私は、羅塩らしおるいです。るい、と呼んでください」


 歳の割にしっかりした話し方だ。親のしつけが厳しかったのか。


「よろしく、るいちゃん……って呼んでいいかな」


「はい、もちろんです」


「くううぅ、可愛らしいじぇねえか。やっぱ、女の子はこうじゃないとな。サウワに爪の垢を煎じて飲ませたいぐらいだぜ」


 よっし、後でサウワに伝えておいてやろう。


「あの、この人は……話せなくて」


 前髪の長い男が、るいの声に反応して顔をこちらに向ける。そして、毛布を押しのけ現れた手には、人差し指しか残っていなかった。その原形を留めていない手を伸ばし――


「あ、う……あ、あ、あ、お……にい……さん」


 え、今……何て言った!? 確か、お兄さんと言わなかったか!

 この島で俺をそう呼ぶ相手など、一人しか心当たりがない。


「え、喋った!?」


 驚きのあまり口元に手を当てている少女の隣に黙って並ぶと、男を見下ろした。

 髪は茶髪。あれから時間が経てば、これぐらい伸びていても不思議ではない。

 俺はそっと男の前髪を掻き上げる。

 

 そこには憔悴し、傷だらけで変わり果ててはいたが、面影のある――春矢の顔があった。


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