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二日目の夜  ※

皆様のおかげをもちまして、総合ポイントが10000を達成しました。

その記念にステータス説明2レベルまでの設定を公開しました。

 鼻孔を焼けた魚の匂いがくすぐる。魚から染み出した油が炭と化した小枝に落ち、弾け、食欲をそそる香りを辺りにばらまいている。


「枝を足して、魚を裏返しておかないとな」


 腹側が焼かれていた魚を回転させ、背中側を火で炙るようにする。

 もう少しで焼けるかな。野菜も何か食べたいところだが、食用らしき果物や肉と一緒に置かれていたところにあった、これも使えるか。頑強も上がったし、少々の毒素なら何とか成るだろう。

 アイテムボックスから抜きだした野菜は、ほうれん草から色素を抜きすぎたような植物だった。


「いけると思うが……生は流石に勇気がいるな。焼くにしてもフライパンもない、直火焼きをするにもな」


 所有しているアイテムで料理に使えそうなものはあったかな。

 あー、あれがいけるか。よっし、何とかなりそうだ。

 さてと、もう少ししたら桜さんを起こさないとな。それまでに、スキル上げもやっておこうか。

 あの戦いで上がったスキルがあるかも知れない。


『説明』2『消費軽減』4『同調』5『糸使い』4『捜索』3


 とここまでは前と同じだが『気』が4に上がっている。

 おー、よしよし! 次は気を上げるつもりだったので、これは嬉しいな。

 となると、レベル5まで上がると能力が極端に上昇すると春矢が言っていたことを信じるなら、レベル4の『消費軽減』『糸使い』『気』を上げたいところだが。

 生徒手帳に記載されたその三つを順番に触れていく。

 

 『消費軽減』+1450

 『糸使い』 +1788

 『気』   +1973


 お、おう、あわよくばスキル二つぐらいはレベル5になるかと期待していたのだが、それは無残にも撃ち砕かれた……木端微塵に。

 って、いやいやいやいや! 消費ポイントが高すぎる! 春矢の言っていた通り5から消費が半端ない。まさか、一つも上げられないとは。4に上げるにも消費ポイントが多いと思っていたが、まさに桁が違う。

 出鼻をくじかれたが、まあいい。これは経験値を貯めておいたほうがいいのか、それとも『説明』か『捜索』を上げるべきか。


 『説明』をレベル3にするには300消費。

 『捜索』をレベル4にするには378消費。


 迷う、非常に迷う。両方取るのもありだが『気』や『糸使い』を上げる時のためにとっておくべきなのか。

 スキルはまた後でじっくり考えるか。あとはスキルの下に称号欄があり、ゴブリンバスターを手に入れたが、その隣に『ゴブリンキラー』の文字が追加されていた。

 ゴブリンを大量に殺害したことに加え、ゴブリンジェネラルを倒したことが大きかったようだ。ゴブリン特化型になってきているな……能力も見ておくか。


(ゴブリン族に対して攻撃力、防御力が3倍加算される。自分のレベルを下回るゴブリン族は体が委縮し、動きにペナルティーを受ける)


 この世界の魔物がゴブリンだけなら、かなり強力な力だな。この現状ではかなり有益な能力なので、ありがたく有効利用させてもらおう。

 しかし、なんだろうな……レベル15に上がったというのに、劇的に強くなったりはしなかった。

 以前と比べて確かに少しは強くなっているが、俺の予定では比べ物にならない程の力を手に入れる筈だったのだが。


「あ、あの、ここは……」


 俺の思考を遮ったのは、毛布代わりに掛けておいた毛皮を体に巻いた桜さんだった。

 どうやら目が覚めたらしく、枝や葉でカモフラージュしている入り口付近で、辺りを落ち着きなく見回している。

 表情はお世辞にも明るくないが、本心を明かし叫び、汚いところを見せてしまった後なので、少しだけ吹っ切れたようにも見える。


「おはよう、桜さん。ここは、昨日見つけた寝床だよ。暫く拠点にしようかと思っているのだけど、寝心地はどうだった?」


「お、おはようございます。いいところですね。昨日とは雲泥の差です」


「昨日はどうやって夜を越したの?」


「えっと、火を焚いて女性陣と男性陣が別々に身を寄せ合って、寒さをしのぎました。誰も、毛布とか持っていなかったので、凄く寒かったです」


 アイテム欄の防寒着や寝袋系を選んだ人はいなかったのか。俺もその一人なのだが、やはり何処にでもありそうなアイテムより、魔法の道具や武具、スキルを充実させたいという欲望に負けるのは仕方のないことだと思う。

 冷静にスキルを選んだつもりだったが、今思えばかなり見過ごしていたことが多い。状況に危機感を覚えていたのは確かだが、やはりどこか浮かれていたのだろう。普通ではあり得ないスキルというものを所持できる喜びに。

 春矢が所持していた『環境適応』というスキルも、そういったアイテムを取るぐらいなら、このスキルを取った方がいいと思う人がいたのではないだろうか。


「桜さんそろそろ、晩御飯出来上がるから一緒に食べよう」


「ええと、その、いいんですか?」


「当たり前だよ。今日から一緒に組むのだから、ちゃんと栄養取ってもらわないと、こっちが困る」


「で、でも、私は、何もしていませんし、明日からも、役に立てるか」


 今日の戦いを経験して更に自信を無くしているようで、言葉に覇気もなく俺と視線を合わそうともしない。

 そんなに卑屈になられても困るな。


「うーん、魚いい具合に焼けているけどいらない?」


「えっ、あの、その」


「いらないなら、しょうがないな。無理やり食べさせるのはモラルに反するし、仕方ない脂ののった魚を一人で食べるかー仕方ないなぁー」


「あ、う、えええっ」


「まあ、虐めるのはこれぐらいにして、一緒に食べよう桜さん。一人で食べるご飯も嫌いじゃなかったけど、こんな寂しい世界では誰かと一緒にご飯を食べたい」


 真面目な顔を作り、我ながら似合わない事を口にしたが、その言葉に心が動いたようで、火がついた簡易コンロを挟んで対面方向に桜さんが腰を下ろした。

 丸太を輪切りにしただけの皿に、焼けた魚を載せて桜さんへ手渡した。この皿代わりの品もゴブリンの集落に転がっていた。皿として使わせてもらっているが、実際は塀代わりの杭を作ったときの残りだと思う。

 一緒に細長い小枝二本を箸代わりに渡した。


「あ、あの、ありがとうございます。ええと、それは……」


 さっきから火力の弱まった火の方向をチラチラと見ていた桜さんが、とあるものを指さし疑問を口にした。


「ゴブリンの集落にあった野菜だよ。食べられるとは思うけど、試しに俺が先に食べるから。大丈夫なようなら桜さんもどうぞ」


「いえ、野菜がどうこうじゃなくて、その野菜を焼いているのはもしかして――」


「ああ、これ? ミスリルの鍬だよ?」


 フライパンの代用品になる物があって助かった。ミスリル製は汚れにくく頑丈らしいから、フライパン代わりに使っても問題ないだろう。高性能なテフロン加工のようなものだ。

 柄も金属製で握る部分だけ革が巻いてあるので、火で焦げることもない。


「ミスリル製の……いいのかな」


「物なんて使わないと意味がないし、案外、物騒なことに使われるより、こうやって人の役に立つ方が喜んでいるかもしれないよ」


「そうですね。そもそも鍬ですもんね」


 納得してくれたようで、少し焦げているが火がしっかり通った魚を頬張っている。


「どう、美味しい?」


「はい、とても!」


 口をもごもごと動かしながら、そう言う桜さんの言葉に嘘はないようだ。


「そっか、美味しいんだ。じゃあ、俺も食べよう」


「ええええっ! 私に毒見させたのですか!?」


「はっはっは、美味しいね」


「とぼけてないで、ちゃんと答えてくださいよ!」


 魚の身の破片を撒き散らしながら抗議する、桜さんの少し生気の戻った顔を見ながら、俺は魚を腹一杯になるまで食べ続けた。

 ちなみに、魚の焼け具合と体に不具合が発生しないか調べる為に、既に味見は済ませていた。





 食事を終えると火を消し、寝床へと二人で引っ込んだ。

 獣除けの為に火を焚き続けるという話は良く聞くが、闇夜に火は目立ちすぎる。動物は警戒して立ち去るかも知れないが、ここにはもっと恐ろしい存在の魔物がいる。

 魔物の目につかないようにする方が大切だ。

 この寝床も余った丸太で入り口を防いでいるので、ゴブリン程度の相手なら時間を稼げるだろう。防衛機能も少しはましになっている。

 ちなみに室内は何もしなければ相手の顔が見えない程の暗闇なのだが、今日拾ったスマホの液晶から漏れる明るさで何とかなっている。この灯りも充電が切れるまでの命だが。


「こんなところでなんだけど、明日からどうするか決めておこうと思う」


「は、はい!」


「まずは、桜さんのレベル上げから始めようか。一応確認しておくけど、レベル上がっていたりする?」


「ちょっと待ってください……ええと、レベルは……1のままです……」


 ゴブリンとの戦いで桜さんは『精神感応』を使って手伝ってくれてはいたが、直接敵を倒したわけでもなく、ダメージを与えたわけでもない。

 今思えば、ゴブリンジェネラルを倒した際に、一緒にあの糸を握らせておくべきだったと思わなくもないが、後の祭りだ。


「ならやっぱり、レベル上げておかないとね。戦いに関してのスキルは諦めるとしても、ステータスを上げないとこの先辛いだろうから」


「はい! あの、でも、私、魔物を倒すことなんてできないと思います。えと、戦うのは怖いですけど、嫌じゃないんです! でも、その、ゴブリン相手でも勝てるとは思えなくて……」


「確かにそうだけど、そこは一応考えてあるから、色々やってみよう。無理だったら、また別の方法考えるから」


「はい、よろしくお願いします!」


「明日から頑張ろう。じゃあ、今日は色々あって疲れているから寝ようか」


「はい、その……私、初めてですが頑張りますっ」


 俺が出来るだけ彼女に近寄らないように壁面に移動し、獣の毛布を肩まで被ったのだが、彼女はその場で座り続け眠ろうとしていない。

 それどころか……おいおい、ジャージの上を脱ぎ始めている。スマホの光で下から照らし出された桜さんが、ゆっくりと服を脱ぐ姿の妖艶さに思わずつばを飲み込んでしまったが、そうじゃない。


「桜さん、何か勘違いしていない?」


「あ、あの人たちに比べたら貧弱な体ですが、それでも性欲を満たすぐらいは……」


「いや、だからね。そうじゃないんだって。助けたから体を好きにさせろって、どんな外道だ」


「でも、私は土屋さんに返せるものが何もありませんし、これからもきっと足を引っ張ります。そんな私ができることは、女として夜の相手ぐらいしか……」


 まあ、良くあるパターンだけど、まさかそんなことを考えていたとは。

 食事が終わってから、また思いつめたような表情をしていたから心配していたのだが、このことをずっと考えていたのか。


「桜さんは俺に惚れたわけでもないでしょ。助けられて恩を感じてくれているとは思うけど、人には好みもあるしね。都合のいい物語のようにその日に惚れて、すぐやっちゃうなんて未経験者の妄想か、尻の軽すぎる人か、エロ漫画ぐらいなものだよ。もっとも、相手が魅力的な男性の場合は別だけど」


 俺がもっと若ければ、この流れに乗って行為に及んでいただろうが、そういった年齢は少し超えてしまっている。周りからは精神が老け過ぎだと言われるが気のせいだろう。


「わ、私は土屋さんの事をす、好きです!」


 叫ぶようにそう言い放った桜さんは俯いたままで、こちらを見ようともしない。


「桜さん、俺はそんな関係にならなくても、決して見捨てたりしないよ」


 その言葉に桜さんがその身を大きく揺らす。図星だったのだろう。

 上半身だけ下着姿の桜さんは胸元を獣の皮で隠し、今にも泣きだしそうな瞳が俺を見つめている。

 それにだ、現実的な事を言うなら。ゴムもないこの現状でやってしまい子供でも出来た日にはどうする気だ。自分の生活すら安定していないのに、妊婦を抱えて生き延びられるとは思えない。


「だからといって、桜さんに魅力がない訳じゃないから。本当は惜しいと思っているけど、流れでそういった行為をするのは嫌なんだよ。その場は気持ちいいかもしれないけど、終わった後の焦燥感に耐えられそうにないからね。信用できないなら、心を読んでみるかい」


 俺はそう言って手を伸ばした。彼女がこの手を掴み『精神感応』を発動すれば、俺の考えは全て伝わることになる。

 まてよ……格好つけて伸ばしたのはいいが、色々読まれるとやばいだろうか。エロい下心はそりゃちょっとはあるが、今は理性さんが頑張っているから大丈夫だ。っとこの考えも相手に伝わるわけか。迂闊に変なこと考えられないな。


「あの、土屋さん、土屋さん! つーちーやーさーんっ!」


「ん? どうしたんだい」


 耳元で大声を出され思考の海に潜っていた意識が引き戻される。


「私は、そんなことしません……土屋さんを信用しているから。ごめんなさい、変なことしようとして……」


 胸元で毛布を握りしめたまま、桜さんが頭を下げている。

 正直もったいないことをしたと思う心はあるが、見栄を張り欲望に勝ってこそ男だ……と思う。流されないようにやせ我慢をする、そんな自分が嫌いじゃないしな。


「んや、正直心を読まれなくて助かったよ。現在進行形で、欲望と理性がガチの殴り合いをしているところだからね」


「それ、ちょっと聞いてみたいかも」


「勘弁してください」


 そう言って頭を下げた俺を見て「もぅ、許してあげます」とはにかみながら笑ってくれた。


 レベル15

 ステータスポイント 0P

 残りポイント  873P


 筋力 (17)51 

 頑強 (15)45

 素早さ(13)39

 器用 (16)48

 柔軟 (12)36

 体力 (18)54

 知力 (14)42

 精神力(15)45

 運  ( 9)27


『筋力』3『頑強』3『素早さ』3『器用』3『柔軟』3『体力』3『知力』3『精神力』3『運』3


『説明』2『消費軽減』4『気』4『糸使い』4『同調』5『捜索』3


称号『ゴブリンバスター』『ゴブリンキラー』

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― 新着の感想 ―
頑張ってここまで読んだけどギブ 主人公達の考えも行動も全く共感できなかった
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