人間中毒
斜志野 九星という者です。今回は高校の文芸同好会で作った『人間中毒』という作品の加筆・修正したものを投稿します。文芸同好会では、人気のあった作品なので、皆さんにも是非読んでほしいと思います。
文章がおかしいところ、誤字・脱字、こうしたら良いというところありましたら、コメントお願いします。
俺の名前は馬場拓登。都内の高級住宅街に住んでいる。今は無職だが、昔はレーサー、宅配便、ブロガーをやっていた。宇宙飛行士にもなろうとしたが、ちょっとしたトラブルで訓練止まりで終わってしまった。
そんな俺は、頭に頭巾、口にマスク、耳に耳栓、目にゴーグル型サングラス、季節外れのコートという出で立ちで、電信柱の陰で辺りをキョロキョロしていた。何故かというと……
「ちょっと、ちょっと!」
お婆さんが俺の肩を叩いてきた。普通の人なら、何だろうと思うだろう。犯罪者なら、「やべっ」と言って逃げるだろう。だが、俺は青ざめた。
「うわぁっ! やめろぉぉ!!」
俺は急いでそのお婆さんから離れた。お婆さんに叩かれた部分が、段々痒くなってきた。肩を確認する。肩には蕁麻疹が発生していた。
「うわああああああああああああああああ!!」
医師から伝えられた病名は『人間中毒』。自分以外の人間に触れられるとアレルギー反応が起きる困った病気。人間に触れられると言っても、髪の毛一本触れただけでもアレルギー反応が起こる。この前、コンビニに行った時なんか、店員のフケが皮膚についただけで蕁麻疹が発生した。
俺がこの病気になったのは、高校生の時。不良に絡まれた時に初めて症状が現れた。その時は俺も不良も訳が分からず、俺はおろおろし、不良はびびって逃げて行った。それからというもの、俺は高校をやめ、できる限り他人に触れない仕事を探した。だが、どんなに探しても、何かしらの事情で他人と接触してしまう。レーサーは自分でも何でなろうとしたんだろうと思うくらい他人と接触した。宅配便は車の中で一人になれると思ったが、印鑑をもらう時などに結局他人に触れてしまった。ブロガーはインターネットで他人と接触するだけで問題がなかった。だが、パソコンが壊れた時に俺のブロガー人生は終わった。近くに電気屋がなかった。コ○マもなかった。ノ○マもなかった。しかたなく、中古を買ったが、中古ということは誰かが使っていたということで、見事に両手が蕁麻疹になった。
悲鳴を上げた後、俺は急いで家に帰った。もうダメだ。こんなところに住んではいられない。人気のないところで静かに暮らそう。成金の家に生まれたおかげで、お金は比較的余裕がある。別荘だってある! そこに逃げよう。自分の車はこの前、車上荒らしに遭って使えないが、レンタカー店に行こう。多分、除菌してあるから大丈夫……多分。まずはお金を下そう。銀行に行ったらアレルギー反応が起こるかもしれないが、まあ耐えよう。よし、俺は人前から消える!!
決意してから、二日後。遂に俺は別荘に辿り着いた。ここに来るまで大変だった……。銀行では首に蕁麻疹が発生し、死にかけた。レンタカー店では、店員さんが俺の目の前で車の中をきれいにするという余計なことをした。結局、レンタカー店で車を借りられたのは、夕方になってからだった。その後も大変だった。高速道路に乗ったら渋滞に巻き込まれ、車の中で徹夜した。高速道路を降り、違う高速道路に乗ろうとしたら、そこの料金所にはETCがなく、しかたなく両手を蕁麻疹にした。
よし、ここなら誰にも触れられることなく、暮らせるぞ。食糧の備蓄も一年はあるし、困ったらお母さんに頼もう。
ピンポーン!
これで、俺はしばらく蕁麻疹に悩まされることはない!!
ピンポーン!
「ちょっと、あんた。中に人がいるわけないでしょ!」
玄関チャイムの音が鳴り、続いておばさんの声が聞こえた。次いでおばさん何人かの笑い声が聞こえた。ちょっと待て。どういうことだ?
ガラガラガラ……ドン!!
玄関が開かれる音がした。たくさんの足音が聞こえる。
「あら。拓登じゃない。どうしてここにいるの?」
おばさん否お母さんが俺に向かって言った。おばさん否お母さんの後からおばさんがぞろぞろと現れた。
「お母さんこそ、どうしたの?」
「私たちこれからここでお泊りパーティーをするのよ」
おばさん否お母さんが俺に笑顔で答えた。
「……」
俺はぞろぞろ入ってくるおばさんたちを見た。あるおばさんは大きな荷物をとある一室に持ち込んだ。またあるおばさんはクーラーボックスから缶ビールを取り出しゴクゴクと飲んでいた。
「うわああああああああああああああああ!!」
くそ。よりによっておばさん軍団に安住の地を奪われるとは……。しかも、一日で。こうなったらもう、外国に逃げるしかない。砂漠とか、山脈とかに行けば、きっと人はいない。ホテルとかに泊まると大変なことになるから、キャンピングカーを買おう。飛行機だと全身蕁麻疹じゃ済まなそうだから、船で行こう。船ならば、誰もいない場所の一つや二つはあるだろう。キャンピングカーも積めるし。よし、俺は日本から消える!!
決意してから、一か月。結論から言おう。日本よりやばかった。特に治安の悪い地域では、蕁麻疹が起きなくても病気の危険がやばかった。更にキャンピングカーを強盗に荒らされた。そのせいで俺は、キャンピングカーを捨てた。スイス山脈のど真ん中で。俺は歩いた。シルクロードを。万里の長城を。ラスベガスを。何故、人が多そうなところをわざわざ歩いたか。道が分からないからだ。当然、全身に蕁麻疹が現れた。だが、我慢した。俺はある目的のためにアメリカに渡った。行先はNASAだ。NASUではない。NASAだ。SAGAでもない。NASAだ。
そう。俺は決意したのだ。俺は、地球から消える!!
俺は、NASAに突入した。もちろん、警備員や職員が俺を取り押さえに来た。何人もの人間が、俺の前に立ちはだかったが、俺を取り押さえると同時に後ずさりをした。全員が、俺の悲鳴に怯えたり、驚いたりしたからだ。その繰り返しを何十回も行い、遂に俺はロケットに搭乗した。もちろん、宇宙服を着てだ。ロケットを操縦できるのか? もちろん、できる。俺は宇宙飛行士を目指したことがある。問題ない。よし、酸素はちゃんと吸った。エンジン点火の方法も覚えている。行けるぞ!!
ゴォォォォォォォォォ!!
エンジン音が聞こえる。
バリバリバリバリバリバリ!!
無断発進なので、当然ロケットは固定されたまま。その固定台を壊した。瓦礫の下敷きになった人とか、衝撃波で死ぬ人とかいっぱいいるだろうな……。そんなことは、どうでもいい。俺は宇宙へ!! 新天地を求め、地球を発つ! さらば、地球!!
ああ……。やっと、蕁麻疹に悩まされることもなくなった……。これから、どうしよう。まあ、のんびりするか。時間はいくらでもある。うん? 警報が鳴っているぞ。な……。なんだと……。酸素が足りない……。このままでは、俺は死んでしまう。まずい。どうしよう。ああ、なんかだんだん眠くなってきた。
ふわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……
ドンガラガッシャーーーーーーーン!!
「コノ人間、ナカナカ起キナイナ」
「酸素ガ無イ状態デ、漂流シテイタンダ。無理モナイ」
「シカシ、ヨク生キテイタナ」
「アア。全クダ」
俺の耳元で何やら声が聞こえた。
「ふわああああああああ」
俺は起きて伸びをし、
「ぎゃあああああああああああああああああ!!」
そして、驚いた。目の前には緑色の人間がいた。それは俺が見たことがあるどの生物とも違った。
「我々ハ、宇宙人デス」
緑色の人間改め宇宙人が喉に手を当てて言った。これが宇宙人式のあいさつなのだろう。
「私ハ、地球人デス」
俺も宇宙人に倣って、同じ言い方をした。
「ア、無理ニヤラナクテ結構デス」
だが、別に同じ言い方をしなくてよかったようだ。
「アナタハ、宇宙ヲ漂流シテイマシタ。ソコニ偶然通リカカッタ我々ハ、アナタヲ我々ノ宇宙船ニ引キ揚ゲマシタ。宇宙ニ存在スル人型生命体ハ、共通ノ祖先ヲ持チマス。私達トアナタ。生キテイタ星ハ違ウケレド、同ジ宇宙ニ住ム仲間デス。我々ハアナタヲ歓迎シマス」
宇宙人が手を差し伸べながら言った。
「あ、ありがとうございます」
俺は差し伸べられた手を握り、礼を言った。
「イヤイヤ、ソレホドデモ……」
宇宙人が頭を押さえて言った。
「いえいえ。本当にありが……」
俺は「本当にありがとうございます」と言おうとしたが、言えなかった。手に違和感を覚えたからだ。それは、だんだんと痒みを帯び始めた。俺は、手を見た。それは紛れもなく蕁麻疹だった。
「な、何で……」
『人間中毒』は人間にしか反応しないはず。何で、宇宙人に反応するんだ? そこで、俺はさっきの宇宙人の発言を思い出した。
『宇宙ニ存在スル人型生命体ハ、共通ノ祖先ヲ持チマス』
まさか、祖先が同じなら、宇宙人にも反応してしまうのか。『人間中毒』は……。
「サア、アナタニ御馳走ヲ用意シテアリマス。コチラヘドウゾ」
宇宙人が俺の手を引っ張った。もう一人の宇宙人が反対の手を引っ張った。またある宇宙人は俺を起こそうとした。触れられた部分からどんどん蕁麻疹が発生する。
「うわああああああああああああああああああああああああああ!! やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
俺は叫んだ。
「ドウシマシタカ? サア、コチラヘ」
だが、宇宙人たちは何故叫んだのか理解していない。無理もない。宇宙人たちは『人間中毒』という病気を知らないのだから。だが、説明したところで無駄だろう。説明しづらいし、そもそも宇宙人たちは俺に御馳走を食べさせようと夢中になっている。俺も宇宙人たちの好意を不意にはしたくない。俺は『人間中毒』から逃げられないようだ。俺は今までの努力の全てが無駄だったことに落胆し、宇宙船の窓から見える宇宙の虚空に向かって叫んだ。
「俺は、いったい何処へ行けばいいんだああああああああああああああ!!」