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飛び火

神護三年七月頃、大地は突然動いた。

暗雲立ち込め西の空から雨脚が強まり、

人々は暗い家の中で通り過ぎるのを待った。

どれだけ長い雨が続いたのであろうか。

夜明けには光芒が周りを照らし、人々は暑い陽射しに人心地を付いた。

鳥達も野山でさえずり、畑では百姓の耕す姿も見受けられた。

「いや〜。この間の地揺れには驚きましたな。」

「ふんふん、魂消たもんだ。」

「何でも都の天子様が、地揺れの調伏に使いを出されたとか。」

「ほう。勿体無い事で。」

「流行り病も多いしな。」

「そうじゃ、そうじゃ。」


天候や災害も良く続くこの頃、

都の政り事もままならぬ様子に巷の噂も様々であった。

地方の政り事を預る役人の間にも聞き捨て成らぬ話が

漏れ聞かれた。

「おい、其処許は存じて居るか。」

「何事でござるかや。」

「太宰府の主神かんつかさの某が、

お上に御譲位を神託として進言したとか。」

「なんと、それは聞き捨て成らぬ。」

意外な所まで飛び火するのが悪い噂と云うもの。


「これ、誰か広虫を呼んでくりゃれ。」

「はい。」

暫くして白い頭巾で頭を包んだ妙齢の女僧が慎ましやかにやって来た。

此処は、都の大君がおはします御所でございます。

「何かご用で。」

「他でも無い。」

「はい。」

お上は広虫と呼ばれる女僧に

慈悲深い笑みをくれながら、

「広虫よのう。」

「恵美押勝とか申す乱の折り多くの罪人共の命をば

我に助命をせがまれてのう。我も難儀した。」

広虫は、はっと身を固くして伏した。

「よい、よい。良いのじゃ。

あれで、我のお上としての役目も通しおおせたと申すもの。」

「出過ぎた事を。」

「いや、我は感謝して居るぞ。」

「勿体無い事でございまする。」


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