恋愛感情製造工場
恋心がゆっくりと流れ、段ボール箱に詰められた。完全なオートメーション。二十四時間体制で動き続けている工場は、殆どの工程が自動化されている。
床の上には、成型時に削り落ちた感情の欠片。淡くきらきらと光り、触れるとほんのり温かい。男はそれを手に取ると、ふう、と溜息を吐いた。
一体、誰のためにこうしているのだろう。
男は眉間に皺を寄せ、工場内をぐるりと歩く。機械化された工場に、他の人影は見当たらない。常にひとり。男は勤め始めて以来、ずっとひとりだった。
機械の唸る音に混じり、足音が響く。かつん、かつん。広い工場内を反響し、男の元へと返ってくる。感情の欠片を纏って。
孤独を味わいながら、恋心を作っているとは。男は淡色の感情を見つめ、静かに自嘲した。
ベルトコンベアに載せられた、完成品の恋心。箱に詰められ、誰かの元へと出荷される。誰かの幸せのために。
この感情が、役に立っていれば良いのだが。
市場に出た感情がどのように使われているのかを、男は知らない。ただひたすら製造し、ただひたすら出荷する。ただひたすら単調な毎日。ただひたすら繰り返す同じ日を、ひとりで過ごし続けている。
恋心の成型機の前に立ち、男は機械の様子を見た。これもまた、日課。鏡面のように磨き上げられた機械が、恋心を成型している。がしゃん。強い圧力で感情を挟み、綺麗な形に整える。
動くたびに舞い上がる欠片が、男の身体を包んでいく。きらり、きらきら。感情の欠片は幸せを伴い、男の体内を満たした。
鏡面に映る自分の姿を眺め、男は満足げな笑みを浮かべる。
――明日も、頑張ろう。
男を満たす幸せな感情は、男自身への恋心に、いつしか姿を変えていた。