あの時・・・・・縦書き表示RDF


 


 この話では、去年(2006年)の映画のネタバレ要素を含むので、ご注意ください。
あの時・・・・・
作:山口多聞


 数々生み出されるドラマ。それは多くの人に、夢や希望を与える物。だが、その影には、多大な知られざる苦労があるということも、事実なのだ。
 もしかしたら、あのシーンの裏で、こんなことがあったかもしれない・・・・















2006年11月 横浜 マジカルランド

 コナン10周年記念超大作、名探偵コナン探偵たちのレクイエムのラストシーンの撮影がここで行われていた。
ラストシーンとは、もちろんあの怪盗キッドがジェットコースターに引っかかった爆弾を捨てるシーンである。
 しかし、実は最初このシーンは爆弾をギリギリの所でコナンが捨てるという予定だった。しかし、監督であり原作者である青山氏(注意1)がこれにクレームをつけた。
 青山氏
 「この映画では快斗(キッド)の活躍があまりないから、最後(ここ)で一発大きい役割を果たしてもらいたい!」
 この鶴の一言で、脚本が急遽書き換えられたわけだが、このとばっちりを喰らったのは誰であろう、怪盗キッドこと、黒羽快斗である。
 快斗
 「じょうだんじゃねえぜ、青山監督。」
 横浜のランドマークタワーに設けられた発進台の上で青山監督への愚痴を垂れる快斗。そりゃあ愚痴も言いたくなる。
 この映画の設定は夏、そのため、本編の収録のほとんどは10月までに終わっている。しかし、このシーンは監督の強い要望によって後付されたシーンのため、撮影は映画制作作業が始まってから決まった。だから、撮影の予定が決まったのは先月の事であった。
 さて、今回の撮影する場所は海沿いである。加えて季節は入ったばかりとは言え冬。つまり風が強くなる季節。
 その中でハンググライダーで飛べというのだから、快斗の気持ちはわからなくもない。そのせいか、さっきからスタッフがいたわりの声を掛けてくる者が絶えない。
 スタッフA
 「黒羽君、愚痴らない、愚痴らない。」
 もっとも、そう言われてもやるのは快斗自身なのだからどうしようもない。しかも、今回他に出演者がいないというのも快斗が怒っている理由のひとつであった。
 快斗
 「なんで俺1人だけ・・・・」
 まあ本編の撮影が終わっているのだからしょうがない。夕方まではコナンや蘭たちもいたが、さすがにもういない。
 時刻は午前1時。マジカルランドの営業時間外の撮影をしなければならないため、この時間しか撮影できる時間は空いていなかった。
 しかし、この日は例によって風が強かった。
 地上とタワーの発進台につけられた風速計がくるくる回っている。
 スタッフB
 「こりゃあ風が強すぎる、今日は無理じゃないかな?」
 そんな声が囁かれる。
 快斗
 (そうなってくれた方がありがてえ。)
 快斗も本気でそう思ってしまう。しかし、青山監督はそんな弱音を認めない。
 青山
 「何!風が強いから無理だと!!ダメダメ、なんとしても撮影するんだ。風が弱まった瞬間やればいいだろ、もう今日しかマジカルランドの撮影許可取れないんだから、中止は絶対許さん!!」
 監督(原作者)の言葉は神の言葉。だれも逆らえない。
 そして、時間はさらに流れ、午前3時。
 風がぴたりとやんだ。風速計も止まる。 
 青山
 「ようし、黒羽ちゃん、飛べ、飛べ!!」
 下にいる監督が発進するよう言ってくる。
 スタッフA
 「よし、黒羽君、行って!」
 ようやくとばかりに、快斗はハンググライダーを開き、発進台から飛んだ。
 快斗は慎重にグライダーを操縦し、マジカルランドの方へ飛んでいく。
 一方、地上では。
 青山
 「ようし、黒羽ちゃんが飛んだぞ、ジェットコースタースタート!!」
 監督の指示が飛び、地上のスタッフがジェットコースターをスタートさせる。
 今回のシーンでは、快斗がジェットコースターの側を飛び越える事になっている。ちなみに彼が爆弾を取る瞬間はスタジオで撮った映像を合成する。
 青山
 「後はタイミングだ。」
 今回の撮影でもし失敗すれば、それこそ快斗が飛びなおすことから始めねばならない。その時、風が吹いていればもうだめである。監督の言葉の意味はここにある。
 そんな監督の心配をよそに、快斗は順調に飛んでいた。ちなみに、俯瞰撮影をするため、動力付きグライダーに乗ったカメラマンが後ろに付いていく。
 そして、ジェットコースターとニアミスするコースに乗り、後はタイミングを計りながら近づく。
 快斗
 (行けるか?)
 その様子を下から双眼鏡で青山監督も見ていた。
 その時はほんの一瞬であった。
 快斗
 (どうだ?)
 快斗も、そしてスタッフ達も青山監督の次の言葉を待った。
 青山監督は確認用モニターを見ながら、静かにこう言った。
 青山
 「・・・・・はい、OK・・・・・」
 それは全員が待ち望んでいた言葉であった。
 快斗
 (よし、あとは降りるだけ!)
 その時、強風がグライダーを煽った。
 快斗
 (!?)
 スタッフ
 「やばい!!風が!!」
 そして、快斗は遊園地外側の垣根に落ちた。
 スタッフ
 「落ちた!?」
 スタッフ全員が走った。
 そして・・・・
 快斗
 「ふう、危なかった。」
 無事だった。立ち上がった彼を見て、全員が胸を撫で下ろした。
 こうして、ラストシーンの撮影は終わった。
 快斗
 「これで終わりか。あーあ、朝帰りかよ。」
 既に時計は午前4時を指している。もはや他の出演者がいるはずがない。
 しかし、そんな萎れて顔を下げていた快斗の目に、花束が。
 快斗
 「え!?」
 顔を上げると、そこにはコナンの顔が。
 快斗
 「こ、コナン、どうしてここに?」
 そして、気づいた、彼だけじゃない、蘭や哀、少年探偵団など昼間の撮影に出ていた面々がいた。
 コナン
 「快斗兄ちゃん、クランクアップおめでとう。」
 そう言ってコナンが花束を渡した。さらに、快斗が驚く事態が。
 新一
 「おつかれさん、快斗。」
 今回の映画ではほとんど出番のなかった新一まで来ていた。
 快斗
 「な、なんで?」
 新一
 「馬鹿野郎、俺たちがそんな薄情な奴に見えるか?」
 その言葉に、感動し言葉が出ない快斗。
 そこへ、青山監督がやって来た。
 青山
 「お!?皆揃ってるね、ようし皆で飲みに行くか、俺のおごりで。無礼講だ!昼間で飲み明かそうぜ!!」
 全員
 「おお!!!」
 青山
 「じゃあ早速いくか。」
 こうして全員移動する。そんな中、未だ信じられない様子でたっている快斗に青山監督が声をかける。
 青山
 「ほら、黒羽ちゃんも行くよ。今日は君が主賓なんだから。」
 その言葉に、我に帰る。
 快斗
 「はい!!」
 青山監督に呼ばれ、快斗も歩き始めた。
 この後、全員で昼までドンちゃん騒ぎしたのは言うまでもない。
 







注意1 これは事実ではありません。
注意2 この話は、フィクションを基にしたフィクションです。


 今回まじ快のおまけに触発されて書きました。
 話の一部には、自分が中学生日記で体験した経験も反映させています。
 皆さんの忌憚なき御意見・ご感想をお待ちしています。













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