魔王が復活したのは、先々月の14日の出来事だった。
長い眠りからさめた魔王は、とある王国をターゲットに決めたあと「悪のしもべ」たちを操り、人間に危害を加えはじめた。
当然、王国軍は立ち上がり、攻めて来る魔王のしもべたちと戦った。
しかし、苦戦した。
王国の滅亡は、時間の問題だと囁かれた。
そんなある日。
急遽、国王の命令によって、勇者とその仲間たちが召集された。
集められたのは、4人の若者だった。
「お前たちに来てもらったのは、ほかでもない」
国王が、口をモゴモゴさせながら言った。
「お任せください、国王さま」
怪力自慢の青年が、勇んで言ってみせた。
「わしはまだ何も言っておらん」
不機嫌な顔をしてそう言った国王は、あいかわらず口をモゴモゴと動かしている。
「だから、魔王を倒して来いとか、冒険の旅に行けとか、その類のお話でしょう?」
普段は、魔法瓶を作る工場で働いている少女が、口をはさんだ。
「違うぞよ。全然、違うぞよ」
国王のおかしな言葉づかいに噴き出しそうになりながらも、4人の若者たちは笑いをこらえた。
「おまえたち4人を呼んだのは他でもない。実はな、3日前にな、わしは夕食のデザートとしてパイナップルの缶詰を食べたのだ。缶詰を食べたと言っても、スチール製の缶詰自体を食べたのではなく、缶詰のなかに入っている輪切りパイナップルのシロップ漬けを食べたのだ。残ったシロップ液は飲まずに捨てた。あれは身体に悪いからな」
あいかわらず口をモゴモゴとさせながら、国王は話を続ける。
「で、それを食べ終わったあと、ふと、わしの奥歯に、パイナップルの繊維が挟まっている事に気づいたのだ。それからというもの、つまようじを使って自分で取り除こうとしたものの取れず、他の者に命じてやらせてみたが、不思議なことに、わしの奥歯にはさまったパイナップルの繊維は、わしの口の中から意地でも出て行こうとしないのだ」
「……はぁ」
幼いころから「おまえは勇者だ」と暗示のように教え込まれてきた青年が、気の抜けた返事をした。
「で、ここからが本題だ。おまえたち4人の勇敢さを見込んで、この世界のどこかにあるという伝説のつまようじ『エクス・ツマヨウジー」を、一刻も早く、探し出してきてもらいたいのだ」
国王はそう言って、ひとさし指を口のなかに突っ込んで「シーハー、シーハー」とやりだした。
「あのう……まことに僭越ながら『伝説のつまようじ』探しなどよりも、どちらかというと魔王討伐を命じていただいた方が、わたくしたちとしましては、そのう、ありがたいのですけれど……」
普段は、置き薬の会社につとめている青年が、遠慮がちに言ってみせた。
「いや、それはこっちで何とかする。それよりも、こうも奥歯にパイナップルの繊維が挟まっている状態が続いては、軍の作戦計画および指揮に、いまいち集中できない。このままでは、魔王に負けてしまう」
「……はぁ」
四人の若者たちは、そろって気落ちしたような声を返す。
「さあ、旅立つのだ勇者たちよ。一刻も早く、伝説のつまようじ「エクス・ツマヨウジー」を探し出してくるのだ。我が王国の未来は、おまえたちの手にかかっている!」
国王に励まされたあと、勇者とその仲間たちは、伝説のつまようじを探すため、旅立った。
そして2日後、パインの繊維は、国王が眠っているあいだに取れた。 |