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結末

壱、結末 



――少女は嘆いておりました――



 この世の不条理を。それは決して許すことのできないこの世の決まり事。そして、この世を動かす歯車。



――少女は、気づいておりました。――



 この世が不条理によって形作られているからこそ、この世界は輝きを失わないということを。ただ、少女は輝きを得るにはあまりにも不完全でした。



――少女は、諦めておりました。――



 

この世のすべてを。




それでも、少女はこう願わずにはいられませんでした。





――誰か、私を愛して――











静寂が支配する瀬戸の海に一つの歌声が響きました。


どこまでも、どこまでも届きそうなほど透き通っていて、とても、とても儚さをまとった声。


きっと、綺麗だからこそ儚いのでしょう。儚いからこそ、聞き手の心をつかむ。ですが、そこに観客はいません。


なぜなら、そこは真夜中の海岸だったからです。


誰もいない静かな暗い海に向かって透き通る声が響きます。暗い世界とその儚い歌声はきれいにマッチして、伴奏のない彼女の歌声をきれいに包んでくれます。


そして、彼女もそれに答えるように大きく手を広げました。すべてを受け止めるように。


うれしさも、


かなしさも、


きれいなものも、


きたないものも、


この世が生み出す不条理さえも。


彼女の目から涙が流れます。


そーっとほほを伝わる一筋の涙。その涙に含まれる感情を、私の拙い表現では語ることができそうにありません。


一滴、二雫、静かに、静かにほほを伝う涙。その涙が地面に落ちたとき、彼女の歌もまた、終わりを告げました。


残るのは、ただ静寂だけ。


ただただ、静寂だけ。


わかっていたけど、悲しいものだなと彼女は思います。もう一度だけ海の風を吸い込んで、少女はゆっく


りとその場を後にしました。









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