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  Growin'up to something -SECOND BIRTH- 作者:剣崎 輝
第一章 2.4
 ウナルバ伯爵が派遣した救援隊がルガリ庄に到着し、エルファンドは視察団の編成を組直した。竜王とマックスウェルの部下達も相次いでやってくる。
 その姿達を見て、エルファンドとダニエ、ハルシは、思わず萎縮してしまう。集まった竜王の部下は、護衛騎士団の中でも特に選りすぐられたの精鋭戦士達。その戦士達と共に行動をする事になるのだ。
「俺、すんげえ足手まといのような気がするんだけど」
 ダニエはその戦士達の後ろ姿を見ながら、本音が零した。
「あんなに揃う事なんて滅多にないからね。非常事態になりつつあるんだと思う」
 ハルシはエルファンドを見た。
「そうなんだろ? エルファンド」
 戦士達に指示を出している竜王を、エルファンドは見詰めながら頷いた。
「多分ね」
 戦士達が一斉にエルファンド達を振り返った。その視線に、思わず三人共身を引く。
 ダニエは護衛騎士の視線がエルファンドに注がれているのに気が付いた。その視線は下位の戦士を確認するというよりも、同位もしくは上位の人間を見る目に近いような気がした。力を能力を計り知ろうとする視線。
「竜王様、いったい何を話したんです?」
 エルファンドは竜王に笑い掛けた。
「なに。お前達の紹介をしたまでだ。カッツェのお気に入りと俺のお気に入りだってね」
 竜王は軽く笑い返してくる。
 エルファンドは肩を竦ませた。
「それだけじゃないような気がするんですけど……」
「あの!」
 ハルシが竜王に挙手をした。
「なんだ?」
「護衛騎士団の方々が来られたなら、僕達は不要なんではないかと」
 竜王は肩を竦ませた。
「なに言ってんだ、ハルシ。お前達は今、ウナルバ伯爵嫡子視察団の護衛だろ? 引き続きエルファンドに付いてりゃいいんだ」
「子化けがウナルバ伯爵嫡子かよ」
 護衛騎士団の中からそんな声が聞こえてきた。
「こばけ?」
 ダニエもハルシも、そして当のエルファンドも首を傾げた。その声を上げた護衛騎士は、同僚に思いっきり頭を(はた)かれていた。
 竜王は苦笑いを浮かべ、エルファンドを見た。
「共に動くが、俺らの事は気にするな。お前は今やるべき事をやれ」
「分かりました、竜王様」
 エルファンドは竜王に頷いた。
 フラーナとクエスがエルファンドの元に走ってきた。
「アルスルーン様。再編成終わりました」
「分かった。竜王様、これからリルエリス庄に向かいます」
 竜王は部下達と話しながら軽く手を上げ、エルファンドの声を理解した合図をする。
 エルファンドは視察救援隊の元に、ダニエとハルシを連れて、歩き出した。
「ダニエ、ハルシ」
 竜王が二人を呼び止める。ダニエとハルシは振り返った。
「分かってるな」
 ダニエとハルシは互いに顔を見合わせ、腰袋に手を添え、竜王に頷き、エルファンドの後を追った。
 竜王は三人の後ろ姿を見詰め溜め息を吐く。
「――あんな子供騙しで利くのかね」
 竜王の隣りに立ったマックスウェルが肩を竦ませた。
「利かなくてもいいんだと思うよ。自覚させる為に必要なんだと思うよ」
 竜王も肩を竦ませた。
「なるほど」
 マックスウェルは竜王に苦笑いを浮かべた。
「まだエルファンドは子化けだから助かるよ。全化けとは違ってね」
「お前に言われたくないね」
「何言ってるの、竜王。僕はちょっと特種能力に長けた人間さ。子化けや全化けと一緒にしないでくれる?」
「さいで」
 竜王は肩を竦ませた。
 口でマックスウェルに勝ったためしがない。勝てないと分かっていて異論を吐くほど、若くも無く馬鹿でもない。
「面白くないなあ、竜王は。釣れそうで釣れないんだから」
 マックスウェルは軽く口を尖らせた。
「そうやってからかうのは、ハーツとかガッツとかにしてくれ」
「あいつらはガキ過ぎて面白くないんだよ。釣りをするなら大物狙わなきゃね。大物を釣ってこそ、釣りの醍醐味が味わえるんだから」
「さいで」
「面白いよ、釣り。日長、川辺や泉のほとりで糸を垂らしてさ」
「なんの糸なんだか。この前、キッシュが嘆いてたぜ。苛められたって」
 マックスウェルは肩を竦ませた。
「苛めてなんていないよ。ちょっとした言葉遊びさ。簡単な謎掛けをしただけだよ」
 竜王は肩を竦ませた。
「お前にとっちゃ簡単だろうが、俺らみたいな戦士には無理難題だ」
 マックスウェルは竜王に微笑んだ。
「そう?」
 竜王は再び肩を竦ませる。
「だから、その手にも乗らん」
 マックスウェルも再び口を尖らせた。
「ホント、竜王は面白くないよ。わざと釣られようとか思わないの?」
「思わないね。なんで、お前の暇潰しの犠牲に、ならなきゃいけないんだよ」
「ホント、釣れないよなあ」
 二人の後に付いていく各々の護衛騎士達は、マックスウェルの言葉に肩を竦ませた。
 非常事態に発展しているはずなのに、(かしら)の二人はいつもと変わらない。緊張感が全くなさげな会話をしている。だが、それが騎士達には怖いのだ。
 この手の人間達はいつ気持ちが移行するか分からない。そもそも移行しているのかさえ分からない。
「――じゃ、僕と竜王はエルファンド達と先行で、隊は後行って事で」
「だな」
 マックスウェルと竜王は隊の中からそれぞれ数人選び出し、エルファンド達の元に行く。
 残った護衛騎士達は互いに顔を見合わせた。
「随分と」
「非常体制ですね」
 騎士達には一切細かい指示は無い。だが、そんな事は日常茶飯事だ。
 すでにリーダー格の護衛騎士達が話をしている。元々、下位の戦士達の指揮官として、各々の隊を束ねるのも護衛騎士の仕事だ。騎士団に細位はないが自然と役割が決まっていく。
 先行が動き出した。
 騎士達はその背中を見詰める。
 その道先の森は欝蒼とし、暗い影を落としていた。


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小説『グロッサム』後書き
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