007 リーダー
葵のカミングアウトを真木さんは、サラっと受け止めていたが、私にとってはセンセーショナルだった。
「そうゆうマッキーは?性同一性障害?」
「俺は…、高校の友人がこれだった…。奴は真剣に悩んだ揚句に自殺したよ。最後の最後に俺には相談してくれたけど、力になれなかった。俺は話を聞くくらいしか出来なかったからな…。」
「じさ…。」
「でもそれはマッキーのせいじゃないじゃん!」
「どうだろ?俺の顔や態度に嫌悪感が出てたかもしれない…。当時の俺は、これについてよく理解してなかった…。」
「…。」
「それから少しは関心を持つようにはなったけど、俺自身はノーマルさ。奴には男友達としてしか接してやれなかった。」
「そっか…、」
「一旦俺ん家行こうか?」
「ゴメン。これ運んだら別行動でいいかな?」
「どうした?」
「会いに行きたい子がいて…。」
「分かった。田丸さんはどうする?」
「一人は不安なんで、付いていきます。それにあのウィークリーマンション帰ってもやる事ないですし。」
「OK。じゃ、行こう。」
そして葵を駅で降ろして、車は真木さんのマンションへと移動した。22歳の若者がなんてとこ住んでるんだ…?お嬢様だったのか?いや、以前は男だから、御曹司と言った方が正解か。
「どうぞ。」
「立派なマンションですね〜。」
「貢ぎものだけどな。」
「えっ?貢ぎ物?」
「まぁ…。」
「真木さんって…?もしかしてホストかなんかですか?」
「昨日までな。」
「昨日まで…。」
「この体と声でやるなら、ホストじゃなくてホステスかキャバ嬢だろ?」
「まぁ…、じゃ、このマンション出てかなきゃなんですか?」
「だ…な…。貯金ならそこそこあるから引越したいけど…、問題が一つある…。」
「何です?問題って?」
「不動産契約する時に身分証明書だすだろ?」
「はぁ…。」
「全部性別が男になってるから、今のこの体じゃ契約してくれなさそうじゃね?」
「確かに…、じゃ、私が真木さんの振りして契約しましょうか?写真なしの身分証明書でなんとか契約出来ませんかね?」
「そっか…。じゃ…、逆にこっちが田丸さんの代わりに契約すればいいって事だ。」
「ですね。」
「なんとかなりそうだな。」
「はい。」
「そうだ!田丸さんとサイズ変わらなそうだから、服とか靴とか持っていきなよ。」
「ありがとう。助かる。」
「ベッドルームのクローゼットに沢山あるから適当に選んで。」
「うん。」
クローゼットの中の普段着の方は学生らしい感じだが、ぶら下がってるスーツ系はいかにもホストそのものだ。
洋服を選んでいると、居間でパソコンのセッティングをしていたはずの真木さんが、いつのまにか後ろにいた。
「田丸さんバイトは?」
「うわっ!びっくりした〜。驚かさないで下さいよ〜。」
「わりぃわりぃ…、で、バイトなんだけどさ。」
「ん?」
「いや、部屋にアルバイト雑誌あったからさ。仕送りだけで生活していけるのかな?と思ってさ。」
「仕送りなんか無いですよ〜。バイトは早急に探さないとダメですね。」
「だったらホストクラブ紹介するよ。履歴書いらないし!」
「ホストは…。」
「その体で履歴書の性別欄の女に丸するわけ?どうみても男に丸しなきゃだろ?」
そうか…、確かにこのままだと不動産も契約出来ないが、バイトも出来ない…。ここはバイトのつもりでやってみるか…?ていうか、その選択肢しか無いのか…?
「今なら俺のお客さんも紹介出来るし。」
「少し考えさせて下さい。」
「ん、分かった。やりたくなったらいつでも言って!」
「はい。それより、バッグか旅行ケース貸してもらえません?」
「そっか、気付かなくて悪いな…。そうだ、いっその事、田丸さんがココに住めば?」
「えっ?でも出てかないといけないんでしょ?」
「俺の親戚って事にすれば、いけない事もないよ。従兄弟だな…。うん、そうしろ!」
「真木さんは?」
「暫くは一緒に住んで、次決まったら荷物を移動させる。って言っても持っていける荷物は…、ないか。」
「暫くって…?」
「1・2週間だよ。」
「はぁ…。」
「ホストクラブには俺の親戚って事で頼んでみるよ。」
「いや、まだ…。」
「そうと決まったら、ウィークリーマンションに荷物取りに行こうか?」
「はぁ…。」
真木さんは結構強引な人だった。なんだかいつの間にかこの人のペースにはまってる…。
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