002 人工?
薬の投与は大きなプラスチックの水槽みたいなケースで行われるようだ。手を入れて作業するところは、長い手袋状のものが中に伸びていて、中と外を完全に遮断してる。
既にマウスの籠はケースの中に入っている。そこに三崎君が、冷蔵庫みたいな保管庫から試薬を運び出してるとこだった。
「なんか鍵とかもかかって厳重ですね?劇薬かなんかですか?」
「先生の指示だからね。今回は薬作る段階から慎重だったみたい。先生が作った試薬だし、それに私達が鍵扱えるくらいだから、全然劇薬とかじゃないと思うよ。ねぇマッキー?」
「えー?」
と真木さんが振り向いた時に後ろに立っていた三崎君とぶつかって、薬の入った瓶を落としてしまった。
「あっ!?」
パリンという音とともに液体が飛び散り、異臭が漂ってきた。
『臭っ!』と思ったのもつかの間、意識が遠くなって…、次に気付いた時は葵に揺り起こされたとこだった。
「田丸さん!」
「うっ…、」
「良かった気付いた。」
目を開けると葵の心配そうな顔が飛び込んできた。
「葵…さん…。」
「大丈夫?」
「私…。」
「ちょっと窓開けてくるね。」
葵はそう言うと窓を開け始めた。部屋の換気をするためだろう。私は体を起こすと、そこには横たわっている男2人がいた。
「二人は…?」
「起こしてみてくれる?ガラスの破片あるから気をつけてね。」
「はっ、はい…。」
確かに瓶の破片が飛び散っていた。蒸発したのか液体は見当たらない。
「三崎君。三崎…。」
『ん…?』私はボーッとしながらも、三崎君の体を揺り動かそうと、肩や胸の辺りを触っていた。が、左手で触った彼の胸に違和感を感じたのだ。
えっ?おっぱい…?女の子?何?太ってる男の子じゃないよね…、っていうかむしろ痩せ型だし…。
「田丸さんどうした?起きない?」
「いや…、あの…、」
「ん?」
窓を開け終わった葵が近寄ってきた。
「三崎君の胸…、」
「胸?熱でもある?」
葵が三崎君の胸を触って私の顔を見た。『えっ?』と言って再確認している。『えっ?えっ?えーっ!?』しまいには少し揉み始めた。
「女の子っぽい胸だね…。て言うかむしろ女…。」
「はい…。」
「ニューハーフって奴かな?最近の整形の技術ってすごいって言うし…、小さいけど本物っぽい…。」
「はい…。」
「下も工事済みかな…?」
「触るんですか?」
その時真木さんが気付いたらしく『ウッ…。』と声を漏らした。
「マッキー!」
「あぁ…。俺どうしたんだ…。」
「三崎君が薬落として、それ吸い込んでみんな気を失ってたみたい。」
「あ…、そうか…。なんか少し気持ち悪い…。」
「大丈夫?医務室行こうか?」
「ん…、ちょっと様子みよう…、お前ら大丈夫なんか?」
「私は二人より遠かったから、そうでもないみたい。田丸さんはどう?」
「多分…、平気です。」
「そうか。三崎は?」
「あっ…、そうだ。三崎君がね…、」
「三崎がどうした?」
「いや…、なんていうか…、」
「何だよ?はっきり言えよ。」
「いや…、今回の事と関係ないけど…、ニューハーフっぽいのよ。」
「はぁ?ニューハーフ?何言ってるの?」
「胸があるの。それも人工の胸っぽくないのよ」
「…マジ?顔とか全然男顔じゃんよ?」
「マジだって!嘘だと思うなら触ってみれば?」
「さっ、触れるかよ!」
「照れなくてもいいじゃん?」
「チッ…。お前らこの事は黙ってろよ。人には秘密にしておきたい事があるんだから。」
「何よ急に…?」
「だっ、だから…、お前らさ…、とにかく三崎起こそう。」
「うっ、うん…。」
秘密か…、カミングアウトしたならともかく、自分が女になりたいって思ってる事が他人にバレたらイヤだろうな…。
ここはやっぱり見なかった事に…。とにかく三崎君を起こす事になった。
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