人を殺す夢をみた
ふと、人を殺す夢を今朝みたのを思い出した。
気がつくと、俺は自宅近くにある車庫で女の子と雑談していたんだ。
女の子は、よく知っている子で親しい仲だ。
肩のあたりまで伸ばした艶やかな黒髪と陶磁のような白い肌。
着ている服はうろ覚えだが、白かった気がする。
月並みな表現だが、清楚で可愛らしい、愛嬌のある友達だった。
そう認識した次の瞬間、俺はその子に向かってナイフを振りかざしていた。
自分でも何が起こっているのか分からない。戸惑いが一瞬浮かんだが、それもすぐに霧散した。
何故なら女の子が必死に抵抗してきたからだ。
こちらもナイフを向けたからには、しっかり今殺さなければならないという脅迫めいた観念が、夢の中の俺を動かす。
何とか女を壁に押さえつけると、脇腹のあたりにナイフを突き立てた。
だが、ナイフは刺さらない。
骨に当たったんだ、と直感的に理解した。
しかし、ほんの少しナイフの角度を変えると、スーッとナイフは身体に吸い込まれていった。
微かに“ざりざり”という感触があり、奇妙なことに『ああ、俺は今、本当に人間を刺している』という、安心とも恐怖とも分からない感情が浮かんできた。
ナイフを突き刺していく時間が、とても長く感じる。
やがてナイフの持ち手部分まで、すっぽりと女の身体に収まった。
彼女の白い服にじわじわと赤い血が滲みだした。
ナイフを全部刺し込み終えた後、顔を見上げると、そこには痛みや恨みといった様々な負の感情を表に出したような、とても人間とは信じられない顔があった。
急に怖くなり、逃げ出す俺。
『なぜ刺したんだろう?』自分のことが分からない。
車庫から逃げ出した少し先で、知り合いに会った。
人を刺したとバレてはいけない。
ここから先へは進ませてはいけない。
そんな脳裏に、とある映像が浮かんだ。
ナイフを脇腹から抜き、それを手に歩き出した血みどろな女の映像だ。
どうしようもない板挟み。
しかし、夢とは便利なもので、次の瞬間には『なんとか、やり過ごせた』という安堵と共に知り合いは消えていた。
さらに逃げる。
そして、今しがた刺した女が、抜き去ったナイフを手に俺を追いかけてくるのが分かった。
その血で濡れた凶刃で俺を刺したいのだ。
しかし、俺はどこか冷静だった。
相手はもうすぐ死ぬ。
ここまで逃げれば、追いつかれることはない。
仮に来たとしても、相手は手負いだ。走れば逃げ切れる。
そう思った瞬間、絶対的な安堵が心に広がった。
その安堵と同時に、相手の死を、今か今かと待ちわびる俺。
『早く死ね。
早く死ね。
早く死ね。
血みどろでナイフを持っている姿を見られるな。
どうやって女を処分すれば、俺は助かるだろうか……』
そこで、俺は夢から醒めた。
ネットで調べてみると、どうやら俺は今現在の環境を変えたいという心理から、人を殺す夢をみたらしい。
たしかに、そうだ。
俺は今の環境を変えてしましたい。ぶち壊してしまいたい。
それにしても、正夢にならなくて良かった。
思っていた以上にあっさりと死んだじゃないか。
さて、どうやって処分しようか……
酷い夢をみました。
これから、寝なおします。
おやすみなさい。