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最後まで楽しんでください!
世界に魔法が満ちるまで
作:癒得



4.始まり


朝、樹清はあくびをしながら登校して来た。
依頼の事をずっと考えていて、しっかりと眠れていないからだ。
しかもなぜか昨日は亜矢さんが見張りを断わったらしい。
調査が進んでいないのだからそれくらいはしておきたい。
それから謎の女の子の事もある。
最近、樹清は頭を抱えるばかりだ。
はぁ〜、と溜め息をつきながら教室のドアを開けた。
それなりに生徒は登校して来ている。
当然、女子ばっかりだ。
この学校はもともと女子高で2〜3年前に共学に変わったため、
男子の数が極端に少ない。
やっぱりいろいろ期待をもちながら入学した、
でも現実は厳しくて実際は肩身の狭い思いをしている。
「ガラガラ」
「おはよ〜、ホームルーム始めるよ」
担任の教師が入ってくると生徒たちが自分の席に戻り始めた。
「え〜っと・・・」
深刻な顔つきになりながら話を続ける。
「実は・・1年の女子が暴漢に襲われて入院した。
みんな気をつけるようにしてほしい」
思いがけない話に教室がざわつく。
「先生たちが交代で見回る事になってるから大丈夫だ、
あと帰る時は出来るだけ大人数で帰れよ」
教師たちがパトロールするという事を聞いても、
教室のざわつきはおさまらなかった。

*

「怖いわね」
樹清と香奈枝は放課後部室で他の2人を待ちながら、
今日の朝聞いた事件の話をしていた。
「学校の近くだしね、気をつけないと」
「でも怪我はほとんどなかったらしいわ」
「不幸中の・・・幸いかな・・」
そういう話をしていたせいか、
だんだん2人の間の空気が重くなってくる。
「犯人は捕まってないらしいよ」
いつの間にか亜矢がドアの前に立っていた。
「いつ入ってきたんですか?!」
香奈枝は相当ビックリしている。
「今だよ、勝手に入ってゴメンね、一応昨日の事を伝えに来たの、
昨日の夜も何も聞こえなかった」
「そうですか・・・実はまだ何もわかってないんです、すいません」
かなり沈んだ声で樹清が謝った。
「・・・・・・・ところで君達は魔法でどういう事が出来るの?」
「え?どういう事って?」
よくわからないといった顔で香奈枝は聞き返す。
「例えば空が飛べるとか」
「空は飛べませんよ、魔法は微力なんです、
でも上手く使えばいろいろな事が出来る」
さっきよりも少しだけ立ち直った樹清が説明した。
「要は使い方しだいで無能にも有能にもなる、か」
「そんな感じです・・・・でもどうしてそんな事聞くんですか?」
「いや・・・ちょっとあ」
「バタンッッッ」
ものすごい勢いでドアが開けられ、
その開ける音に亜矢の言葉がさえぎられる。
開けられたドアにはハァハァと息を切らした緒恋が立っていた。
「桃ちゃんが・・・病院に行ったらしいのっっ」
その言葉を聞いた全員が朝に聞いた1年が入院した話を思い出す。
「詳しい事はわからないけど、桃ちゃんの教室に行ったら、
桃は病院にいるってそう言ってたのっ」
「と・・とにかく病院に行こうっ」

*

「あれ?どうしたんですか?」
桃は病院の正面玄関から入っていこうとしていたところだった。
「へ?なんで?え?」
ピンピンしている桃を見て緒恋がビックリする。
「よかったわぁ・・・・早とちりだったみたいね」
「え?どうしたんですか?」
「桃ちゃんが入院したって勘違いしたのよ、
緒恋が早とちりしたからね」
「そうですか・・・・でも間違いでもないかも、
・・・・じつは暴漢に襲われて入院したの私の友達なんです」
その言葉に4人は自分の親しい人ではないため、
実感がわかず何も言うことができなかった。
「あの・・それでその友達がなんだか
・・・・よくわからない事を言ってるんです、
樹清先輩、聞いてあげてくれませんか?」
「え?・・・うん、わかったよ」
4人は病院の中に入って行く桃の後ろをついて行く。
「ここです」
病室は大部屋で出入り口から一番遠いベットに桃の友達がいた。
「麻奈、ジュースとかいろいろ買ってきたよ、
・・・・あとさっきの話しこの人達にもう一回話してくれない?」
「・・・・でも」
「大丈夫、この人たちは信じてくれるから」
「・・・・・わかった」
麻奈は目をつぶり1度深呼吸をして少しづつ話し始める。
「夜の8時頃・・・だったと思います、
夜道を歩いていて外灯の下を通りすぎようとした時に
・・・・・後ろから殴られたんです」
「後ろからと言う事は顔は見れなかったわけだ?」
一番重要な質問を亜矢は最初に聞いた。
「はい・・・でもその人の影は見えました」
そう言ってから麻奈は黙ってしまい、少し震えている。
怖い思いをした時の事を思い出すのは怖いに決まっている。
ここは何も言わずに待つべき、
とみんな同じ事を思ったらしく沈黙が流れていた。
「ぉ・・・ぃ・・・」
麻奈は聞き取れないほど小さい声で何かを話している。
「大きい・・・・人でした、3mくらいありそうな・・・」
「3m?それ・・」
「もういいわ、ありがとう、よくがんばって話してくれたわ」
樹清の疑問は香奈枝の声でかき消された。
よく見ると麻奈の目は少し涙目になっている。
もうちょっと気をつけないとなと樹清は心の中で反省していた。
「とりあえず私たちはもう帰るわね」
閉めていた周りのカーテンを開けて香奈枝たちはそのまま病室を出て行く。
「そろそろ私も行くね」
「桃、ありがとね・・・・」
「うん」
少し早い歩きで桃は病室を出る。
ドアを閉めたあとそのまま歩き出し、少し歩いた所で立ち止まった。
「麻奈・・・・ごめんね」

*

部室に戻った樹清たちは桃が戻ってくるのを待っていた。
桃から話したいことがあるとメールがきたからだ。
「普通の人じゃあ3mって言われたら信じれないね」
「樹清君は信じたの?」
試すような口調で亜矢が問いかける。
「はい」
「そっか、人がいいね、私の事も信じてくれたし」
「コンコン」
「すいません、遅くなりました」
部室に入ってきた桃は急いできたのか少し息が上がっていた。
「全然待ってないわ、それより麻奈ちゃんのそばにいてあげなくていいの?」
「大丈夫です・・・あの・・話したい事があるんです」
上がっていた息を落ち着けながら話を続ける。
「犯人を捜してほしいんです」
「犯人を捜す?!」
緒恋は驚きを隠せない。
「危険だし、亜矢さんの依頼があるのもわかってます、
でも・・・麻奈の話を一切信じていない警察は当てになりませんっ」
桃の訴えを聞いて樹清はしばらく黙って考える。
麻奈の話しを信じない警察は多分犯人にはたどり着けない。
でも亜矢の依頼も全然進んでいない。
「・・・・・・・」
「ダメ・・・ですか?」
「いや・・やるよ、でも犯人探しは全員ではやらない、
亜矢さんの依頼を優先する、それでいいよね?」
「はい!よろしくお願いしますっ」
ビュオッと聞こえてきそうな勢いで頭を下げた。
「じゃあ僕は犯人探しをする、
他の人はいつもどおり亜矢さんのところで調査をして」

*

樹清はみんなが出て行ったあと部室に残っていた。
「・・・・君は何か知ってるの?」
「!・・・・」
「窓の外にいるんでしょ?わかってるよ」
「・・・・一応知っています」
気づかれていた事にビックリしながらも、
少女は平静を装って返事を返す。
「今解決の糸口さえ見つけられてない・・・・」
「すいません、何も言えません、
ですが・・・あなたの感知魔法なら見つけられない物はないと思います」
それだけ言うと少女はいなくなった。
「なにか見落としている物があるのかな・・・」
調べていないものがあるかよく思い出してみる。
思いつくものは全部ちゃんと調べた。
亜矢さんの家、家の外と近所、そのほかいろいろ。
まだ調べてないといえば人物だけ。
「さすがに人を調べようと思ったら骨がおれそうだなぁ」
大きく息を吸い込みふぅ〜と吐き出すと樹清は部室を出て行った。

*

香奈枝たち女子メンバーは亜矢の家に向かっていた。
その中に桃はいない、香奈枝に今日は帰って休みなさいと言われ帰ったのだ。
「桃ちゃん一人で大丈夫かなぁ」
「大丈夫よ、逆にこういう時は一人の方がいいと思うわ」
「お姉ちゃんは何でも知ってるねっ」
フフフと亜矢がうれしそうに話しかける。
「やめてくださいっ亜矢さんっ」
「いいじゃん、いいじゃん」
はははと楽しそうに亜矢が笑った。
「ところで2人は今日どうするの?泊まってく?」
「はい、泊まって見張ります」
「私も今日は大丈夫で〜す」
「じゃあ2人とも来るなら夕ご飯の買物しないと」
3人は家に行く途中にあるスーパーに向かう。
「今日は家にカレーが作れる具材が余ってたからカレーね」
買い物カゴを取って店内に進み、カレーのルーをカゴに入れた。
「カレー楽しみだなぁ」
「亜矢さんの料理は美味しいわよ」
カレーが大好きな緒恋はうれしそうに笑う。
「緒恋ちゃんはまだまだお子ちゃまだね」
「お子ちゃまじゃないですぅっ」
お子ちゃまと言われ緒恋はそっぽを向いて怒ってしまった。
そこに亜矢がお菓子をちらつかせる。
「これ買ってあげるから〜許して?」
む〜、う〜、とうなりながら迷う。
お菓子も捨てがたい、でもそう簡単に許せない。
「ふふふ、迷ってる迷ってる」
小声で亜矢が香奈枝に耳打ちをする。
「もぉあまりいじめないであげてください」
亜矢が笑っていると、緒恋がお菓子を取って許してくれた。
「じゃあそろそろ帰ろうか」

*

樹清は麻奈が襲われたという場所に来ていた。
「まさかとは思っていたけど・・・」
そこには魔力がしっかりと残っている。
「これだけ残っているのは隠す気がないのかな」
感知魔法の感度を高めるとその魔力に違和感を感じる。
何か混ざり合っているような感じだ。
「こんなの初めてだ・・・人間の仕業なのかな」

*

「おいしかったぁ〜」
大好きなカレーを食べて緒恋は大満足だった。
「そんなに喜んでくれると嬉しい」
やっぱり一人のときよりも作りがいがあるらしい。
亜矢は楽しそうに片付けをはじめる。
緒恋と亜矢が楽しそうに話している後ろで香奈枝が携帯を眺めていた。
香奈枝の携帯に届いた送信者不明のメール。
そこには今夜は気をつけてくださいと書いてある。
何のことかまったくわからない。
そこにもう一通メールが届いた。
今日は外にいるから何かあったらすぐに連絡ちょうだいと樹清からだ。
「香奈枝ちゃんさっきから何見てるの?」
「え?何にもないですよっ?」
いきなり携帯の画面を覗き込まれ不自然に慌ててしまう。
「なになに?香奈枝ちゃん彼氏とラブメールかなぁ?」
「な?!ちがいますっ!!」
「遠慮しなくていいのにぃ〜」
「緒恋は私がそういう人いないの知ってるじゃない!」
「恥ずかしがらない、私と緒恋ちゃんは違う部屋行くから、
ムフフゥ、ラブコールしてあげて」
それだけ言うと二人はすぐに部屋を出て行く。
「もぉ・・・・」
香奈枝は携帯をしまって部屋から出て行った。


始まりを全部くっつけました。
本文は変更ありません。
空想化学祭に出ようと思ってるので
次の更新はかなり遅くなると思います。
それなりに自信ある作品になりそうです。
それでは、また!











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