中編
陶芸教室は、牛窓から邑久に行く途中の山の鹿にあった。回りを山に囲まれており、遠くで微かに車の音が聞こえるのどかな場所だった。
「ええっと、るり工房、るり工房と。歩摘さんにもらったメモによるとこの辺なんだけどなぁ。あった?」
「なっちゃん、ここじゃない?」
「ここ、ここ。間違いないよ」
二人は、今日からお世話になる、るり工房に人った。
「ごめんください」
「はい」
奥から、若い男性が出てきた。
「E出版の紹介できました、高藤真琴と松尾奈都海と申します」
「はい、聞いております。どうぞこちらへ」
二人は、工房に案内されてた。部屋に入ると陶芸品や用具がたくさん置いてあった。
「こちらでお待ちになってください。今、先生を呼んでまいりますので」
若い男性は部屋から出ていった。5分後、若い男性はコーヒーを持ってきてくれた。
「コーヒー、どうぞ。先生はもう少しで来られますので」
「ありがとうございます」
その時、ドアが開いて一人の若い美人の女性が入ってきた。その美しい女性を奈都海は何処かで見たことがあると思った。
(そうだ、怜香のママにそっくりだ!)
怜香とは、小学六年の夏に東京に転校してしまった、奈都海の親友だ。
「大変お待たせしました。あの−、私の頗に何か?」
「あっ、いえ。なんでも。私は松尾奈都海と言います。こっちは高藤真琴です。よろしくお願いします」
「私は、中坂奈緒子と言います。どうぞこちらこそ、よろしく」
「では、僕は失礼します」
「ありがとう。あっ、荒伊君、来月の展示会の件で伊勢田さんが打ち合わせしたいって言ってたわよ」
「分かりました。では、失礼します」
そう言って彼は出ていった。
「ごめんなさい。取材内容のほうは、E出版の歩摘さんから聞いております。分からないことがありましたら、なんでも聞いて下さいね」
「はい、どうもありがとうございます」
奈都海は一通り、部屋を見渡して、
「すごい数ですね。全部、奈緒子さんが・・・」
「はい」
奈緒子は恥ずかしげに言った。
真琴は、棚の上にひときわ大切そうに飾ってある陶芸品を見つけた。
「あの、棚の上に飾ってあるのも奈緒子さんがお作りになったですか?」
「あっ、あれは・・・」
奈緒子は、日を泳がせながら言った。すかさず、奈都海が、
「ごめんなさい。変なこと聞いて。マコ〜」
「うっうん。奈緒子さん、ごめんなさい」
「いえ」
少しの沈黙が続いた。そして、その沈黙が、先はどの荒伊という青年によって破られた。
「失礼します。奈緒子さん、電話です」
「ありがとう。すいません、ちょっと、失礼します」
そう言って、奈緒子は、部屋を出ていった。
「でも、あの棚のだけ綺麗でうまいね」
真琴は、棚のほうを見て言った。
「うーん。奇麗だね。ちょっとだけ、近くで見てみようか。勉強にもなるし」
二人は、棚に近づいた。
「なんか、引かれてく・・・」
「ちょっとこれ。マコ、これ見てよ」
奈都海は、そこにあった陶芸品を入れる木箱の蓋を見た。
「これって、あの有名な藤山神宗一郎の木箱じゃない。ってことは、これは、藤山神宗一郎の作品てことだよね?」
「いやぁ〜、これもだ。奈緒子さんが買ったのかな? でも、藤山神宗一郎の作品は、値が高いって聞いたことがあるよ」
「そうだよねぇ」
「うーん、でもさあ、さっきの奈緒子さんの反応、何か腑に落ちないだよね。あの口の苦し方とかさぁ。どお思う、マコ?」
「何か引っかかるよね、そこんところがさぁ」
二人は、考え込んだ。しかし、その時、奈緒子が帰ってきた。
「すいません。お待たせてして・・・」
「どうなさったんですか? 少し顔色がおかしいですよ。気分でも悪いんですか?」
「いえ、大丈夫ですから。心配かけてすいません。・・・ええっと、何処まで話しましたかしら」
「いえ、まだ具体的な話しは何も。本当に大丈夫ですか? 何でしたら出直してきますけど・・・」
奈都海は奈緒子を心配しながら言った。
「大丈夫よ。さあ、始めましょう。まずは、土捻りからね。したことあります?」
「私は初めてです」
真琴は好奇心一杯で答えた。
「私は・・・一度だけ・・・したことが・・・」
「なっちゃん、したことがあるの?」
「中学の時にね・・・」
奈都海は口を濁しながら言った。
「そう、まあいいわ。土捻りからしてみましょうか?」
そう言って、奈緒子は立ち上がったのはいいが、その場に倒れてしまった。
「奈緒子さん!」
「マコ、誰か呼んで来て!」
「うっうん!」
そう言って、真琴は急いで部屋を出た。そして、すぐに真琴は人を連れて帰ってきた。
それから、奈都海達は、奈緒子を布団に寝かせ、るり工房を後にした。
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