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この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。

世界を壊した悪魔

作者:月見ココア








むかし、むかし、アルタスと名付けられた世界は戦乱のなかにありました。

アルタスには人間と魔族、エルフにドワーフ、獣人、竜人など

他にも多種多様な種族が生きていましたがそれぞれの仲が悪く争いが絶えませんでした。


けれどそれをヒトビトはおかしなことだと思っていません。

だって、生まれてからずっと争ってばかりだったので、争うことが当たり前だったのです。

100年前も、10年前も、1年前も、昨日も、今日も戦っていました。

なら、きっと明日も戦うのだろうとみんなが思っていました。



そんなある日、西の大地に悪魔が出たという話を旅人がしました。

みんな、みんな、誰も信じません。

だって悪魔というのは本の中にしかいないのです。

ヒトビトが想像した嘘なのです。

けれど旅人はいいます。


“悪魔は突然人間と魔族の戦場に降り立って、魔族から魔力を、人間からは武器を奪って去った”


その言葉にヒトビトは震えあがりました。

だって、人間にとって武器は唯一身を護るためのものなのです。
だって、魔族にとって魔力は身を護る力で、イノチの一部なのです。

ヒトビトは旅人に聞きました。

“そのあとどうなったのですか?”

旅人は答えます。

“魔族は人間の援軍に、人間は魔族の援軍に無抵抗で殺された”

ああ、やっぱりとヒトビトは思いました。
戦争中に相手が戦えるかどうかなんて関係ありません。
戦場にいる以上、相手がどんな状況かなんて意味はないのです。

倒さなければ自分が死ぬのです。誰だってそれは嫌なのです。


でもみんなが思いました。

“悪魔さえ現れなければ、そんなことにはならなかっただろう”




それから少しだけ時間がたって別の旅人が東の大地に悪魔が現れたといいました。

みんなはまた信じません。

けれど気になったので何をしたか聞きました。

旅人はいいます。

“死にかけた竜人に治療を施して助けたそうだ”

みんなは首をかしげます。
それは良いことじゃないのか?
なんでそいつが悪魔なんだ、と。

旅人は首を振りました。

“その竜人は戦争でもないのにドワーフの国で暴れまわっていた”

“それをなんとか追い払った。けどたくさん、たくさんドワーフが死んだ”

そんな竜人を助けたのです。それは間違いなく悪魔でした。
ヒトビトはおっかなびっくりな様子で聞きました。
そのドワーフの国はどうなりました?

“復活した竜人の仕返しを受けて、滅んでしまった”


ああ、やっぱりとみんなは思いました。
竜人は強いのです。鱗が硬くて普通の武器や魔法はききません。
力も強くて、空を自由に飛べて、そのうえ巨大な竜に変身もできるのです。
けれど竜人はいつも一人でいるのでたくさん、たくさん兵隊を集めれば倒せます。
ドワーフたちは一生懸命仲間を守るために戦ったのに悪魔のせいで無駄死にです。

ヒトビトは少し怖くなりました。
悪魔が本当にいるんじゃないかと怖くなったのです。
けど、やっぱり信じられなくて、それより今日の戦いが大切なのです。


そしてまたある日、今度はエルフがどこかから逃げてきました。
彼もまたその言葉を口にしました。南の大地で悪魔が現れた、と。

みんな少し怖かったけれど聞きました。その悪魔は何をしたの?

“森を燃やす火を消したのです!”

これも良いことのように思えましたが、東の大地のことがあります。
みんなそれがどうして悪いことなのか聞きました。

“あの森の木々や植物にはヒトにも感染する死病が広がっていたのです”

“我らエルフにとって聖地でしたが皆の命には代えられないと焼こうとしたのに悪魔が!!”

聞けば、悪魔が火を消してしかも燃えにくくなる魔法をかけた。
そのため病気はもっと、もっと広がって森にあったエルフの里は全滅したそうです。
それを伝えるとそのエルフも天国に行ってしまいました。
みんなは哀れに思い、お墓を作ってあげました。

すると今度はたくさんの人間がやってきました。旅人でありません。
どうしたのかとみんなが聞くと彼らは答えます。北の大地で悪魔が現れた。

“悪魔は人間のフリをして、王様が悪いことをしてると嘘をついた”

“それをたくさんの人間が信じてしまい、ついには王様を殺してしまったのです”

けどそのせいで悪いことを考えていた人間が次の王様になってしまいました。
新しい王様はみんなにひどいことを命令して傷つけて、苦しめました。
悪魔の言葉を信じた人たちはそこでようやく騙されたことに気付いたのです。
だから国を捨てて逃げてきたそうです。


大陸の真ん中ぐらいに住んでいたヒトビトはもう悪魔をいないと思いませんでした。
だってこんなにも色んなヒトが殺されたり苦しめられたのです。
そんなひどいことをするのは悪魔に違いありません。

けれどその悪魔を実際に見たことがないのでどうすればいいのか分かりませんでした。
なのに、悪魔のしたことだけはどんどん、どんどん伝わってきます。

炊き出しのためにあちこちの教会が蓄えていたお金を盗んであちこちにバラまいた。
そのせいで食べ物を配ることができずに、飢えて死んでしまうヒトが増えました。

たくさんの国に襲われていた獣人国の王様は守るために必死で戦っていたのに、
悪魔に戦えない身体にされて、国は奪われて、みんな奴隷にされてしまいました。

種族の垣根を越えて愛し合っていたエルフの王女と魔族の王子の仲を引き裂き、
嘘を教えて悪魔は互いの国を争わせてしまいました。


ほかにもいっぱい。
悪魔はひどいことばかりしてみんなを苦しめました。
これには全部の種族が一緒になって怒って、手を取り合いました。
みんなで力を合わせて悪魔を倒そうと決心したのです。

たくさん、たくさんヒトが集まりました。

悪魔に恋人を殺された神の槍を持つ竜人がいます。

今は無き獣人国の王子で巨大な戦斧を持つ獣人がいます。

不治の病にかかった妹を救うために作った霊薬を悪魔に奪われた魔女がいます。

育ての親である人間を悪魔に殺されたエルフの青年がいます。

悪魔のせいで故郷が滅んでしまった人間たちが三万人も集まりました。

同じく国を滅ぼされたドワーフたちは一生懸命作った武器を与えます。

準備は万端です。

みんなで悪魔を倒すんだと彼らは一致団結しました。


そして彼らの前に悪魔はついに姿を現します。
人間のような見た目に騙されてはいけません。
そのせいで滅んだ国は山ほどあるのです。

“わたしは負けぬ、この世の■をすべて打倒するその日まで!!”

悪魔が何かを叫んでいますが誰も聞いていませんでした。
だって、憎くて、憎くて、絶対に許せない相手が目の前にいるのです。
戦いはすぐに始まりました。

たくさんの兵隊が矢を放ちます。
たくさんの兵隊が石を投げます。

でもどうしてでしょう。
なぜかひとつも当たりません。

たくさんの魔法使いが炎の魔法を使います。
たくさんの魔法使いが雷を悪魔に落とします。

けれどど悪魔の力で跳ね返されてしまいます。

たくさんの兵隊が一斉に襲い掛かります。
みんなドワーフのすごい武器をたくさんもっています。

でも、すごいはずの武器は悪魔に簡単に壊されてみんなやられてしまいます。



“ば、ばけものめ”

竜人は仇をとれないと涙を流しながら倒れます。

“申し訳、ありませぬ……父、うえ……”

両腕を無くした獣人はお父さんに謝ると、動かなくなりました。

“──────っっ!?”

魔女は悪魔の魔法で灰となり、妹と同じ所に行ってしまいました。

“こんな、こんなものは戦いですらない!”

育ての親に教わった知識が何も通じず、エルフは矢に当たってしまいました。


たくさん、たくさんいたはずの兵隊はみんな、みんな倒れています。
だれひとり、動かなくなってしまいました。

“……なぜ、だ”

“おまえは……なぜこんなことをする!!”

残った最後のひとりが精一杯大きな声を出して悪魔に聞きました。
そして悪魔は笑いながらいうのです。


“この世界を平和にするためだ”


それを聞いて、最後の兵隊さんも動かなくなってしまいました。















──────────────────ヘイワってなに?








こうして、悪魔によって色んなものを壊され、失ったヒトビトは

アルタスから誰もいなくなってしまいましたとさ。






一応、「世界を救った勇者さま」の双子作?になります。
これだけでもいいように書いたつもりですが、
そっちも読むと「ああ、そういうこと」と思えるはず。
(という言い訳&宣伝)

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