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虹の閃光
作:蒼際



1話 ガンアーク


 世界暦0093年の中立・第沿岸13地区。
 俺は、いつも通りに海を眺めながら、バスに乗っている。
 名前は『浅見勇』で、今日は親父の父にあたる人の家に呼ばれているので、バスに乗っている訳で、好きで海を眺めている訳ではないのだ。
 殺伐とカットされた黒い短髪は、前髪の一部だけ伸びていて、季節は夏なのに、薄い長袖のジャンパーを着用している。
 たまに、変人だと、他人に思われないかを心配している今日この頃だ。
 舗装道路を走っているはずだが、今日はやけにバスの車内が揺れる。車内が揺れるたびに、肩が揺れる。ついでに前髪も。
 走った距離で変わる運賃を表す画面は、すこしずつ運賃を刻んでいく。
 走った距離で変わる景色は、次第に何もない、海だけが広がっていく。
 不意に、車内を見回してみる。
 帽子を被った老紳士、ゴルフバックのような入れ物を担いでいる黒いサングラスを掛けた男性、新聞を読んでいる若い女性といった。
 実にバラエティー豊富な人々が乗車している。
 豊富過ぎて、逆に怪しい気もするが……触れない神に祟りなしだ。
 視線を逸らすように、窓の外に広がる海を眺める事を決め込む事にした。
 しばらく、走っていった先には、終点らしき標識が見える。
 そろそろ、バスから降りる頃なんだろう、と、俺はそう思いながら、運賃を払ってバスから降りる。
 何もない田舎だと、不意に思った。
 田んぼと畑しかない地味な風景だけが、延々と広がっているだけの『ド田舎』だ。
 こりゃあー面倒を押し付けられたかな?と、親父に不満さえ感じる程の風景だった。
 勇は頭を片手で掻きながら、住所と地図が書かれた紙を見ながら、地図通りに歩いていく。
 何もない畑だけの風景を歩いていると、何だか周りの風景と微妙な摩擦を感じる現代風の設計の建物が建てられている。
 何だが、豪華に感じてしまうのは、きっと周りの風景の性だろう。
 いや、絶対にそうに違いない。断定しよう!断言しよう!!
 入り口の和風の扉の脇にあるアラームを鳴らすためのボタンを軽く押す。
 『ピンポーン♪』と気が抜けるアラーム音……本当にミスマッチ過ぎる。
 呆れながら、玄関の前で待っていると、和風の扉が内側から開かれた。
 俺の視界に入った人物は、髪は白髪で、見た目は60歳前後で、どこにでも居そうな爺ちゃんだった。
 こんな家をこんな田舎に建てるモノだから、変人を期待していたのだが、普通だった。
「こんな田舎に来る客は、息子しか居ないのだが……」
「ああ、俺は浅見勇と言って、ここに来たのは親父の代理であって……変人ではないぞ!?」
 はい?と、俺の最後の言葉に首を傾げる老人は、不意に何を思いついたのか、
「あいつの息子か?……全く、整備の手伝いを逃げおったな」
 老人の話はまだまだ続く、
「まあ、いいじゃろう……そう言う事だから、早速だが裏山に行こうか」
 老人は名前を明かす事なく、淡々とした口振り短く言う。
 どう言う事だよ、と、疑問を感じるのは言うまでもない。

 結局、俺は名前も知らない老人に連れられて、家の裏の裏山に強制連行される。
 裏山をすこし登った場所に、異様とも思われるシェルターのような入り口が出現する。
 扉は古い割には、開け閉めはカードキーで行うというハイテクな技術を使用されている。
 老人はさらに扉の先の階段を下っていく……ここで逃げたら、何か災いが降り注ぐ恐れがあると見た俺は、黙って老人の後を追う。
 灯りと言えば、左右にボンヤリと光っている発光型電灯だけだろう。
 薄暗い階段は、踏み外しそうにはなるが、気を付ければ何とか降りられた。
 そして、景色が突然変わったような錯覚を覚える程の、光景が視界一杯に広がった。
 大きな格納庫に大きなモノを外に射出するためのレール上昇型ハンガーにレール。
「ここはな、わしが昔使っていた研究所にもなっとる。これから整備をするのはこの先にある」
 意味深げな老人の口振り……まだ、こんな珍しいモノがあるのかという、変な期待を持たされる俺である。
 使い方もわからない機械やローター式端末などを通り過ぎながら奥に向かって歩いていると、厳重そうな重苦しいドアが目の前に現れた。
 老人は馴れた手つきで、端末にカードキーを通して、パスワードを片手で手早く入力した。すると、ドアは自動式で開かれる。
「この先じゃよ」
 老人は短く、そう言うと、一歩横に立ち退いて、俺の背中を片手で押す。
 押された俺は、一歩か二歩程前に前進する……眼前に映ったドアの向こうには、大きな機械がハンガーに固定されて、直立に立っている。
 左右の肩には見た事のないウイングが設置されていて、頭部モニターは一つ目で、胸部のすこし前に突き出た真ん中から見た左右には、排気口のような穴が斜め下に向いている。
 真っ白な機体は、俺の目の奥にまで、焼きついたようだった。
 両の瞳が大きく見開いて、呆気にとられた。
「これは、『ASG ガンアーク』という機体じゃよ。ASGはアークシリーズガンの略でな、昔に作った過去の産物じゃよ」
「過去の産物?」
「そうじゃ。昔のわしも若かったからな。やってはいけない事を理解出来なかったんじゃよ……だが、それなりにコレには愛着があるがな」
 引き攣った笑みを浮かべながら、老人は話ながら真っ白な機体に向かって歩き出す。
「アークシリーズって事は、他にもこんな機体があるのか?」
 さり気なく、俺は老人に訊ねる。
「あるが、ここにはない……アークシリーズは全部でガン、バスター、アナザーの三機種存在するのだが、完璧なアークシリーズはこのガンアークだけで、残りのバスターとアナザーは愚かなワシの仲間が作った模造品じゃよ」
「じゃあ、この機体にはスペックで負けているのか」
 俺の言葉に、老人は首を左右に振って、
「スペックでは、多分バスターやアナザーの方が今はこのガンアークを抜いているだろう。ただ、ソーディアンを扱えるのはガンアークだけで、基本的な操縦精度もガンアークがまだ上じゃろう」
 わかったら整備を手伝え、老人はそう言うと踵を返して、機体の足元の端末のスイッチを押して、端末を機動させる。
 手伝えと言われても、俺にはこの辺りにある機械の操作はサッパリなので、
「どうやって手伝えばいいんだ?」
 老人に訊いてみた。
「機体の足元にリフトがあるじゃろ?そのリフトに乗って、ガンアークに搭乗すればいい」
 端末を目にも止まらぬ速さで、何かを打ち込みながら老人は簡単に説明する。
 老人のその説明なら、馬鹿な俺にも理解しやすく、言われた通りにリフトに乗って、胸部のコックピットに乗り込む。
 だが、コックピット内の細かい機械は、サッパリだった。
 俺は適当に、左右の肘掛に付いている丸い球体の上に両手を置いた。そして、いきなり丸い球体が光り出した。
 その瞬間、両手が火傷でもしたように、熱くなって、ヒリヒリする。
 すぐに球体から手を放して、手のひらを確認したが、何の変化も見えない。
 だが、このヒリヒリした感じは、火傷にしか思えないが、火傷していない。
 ここで、突然、
『ガンアークの機動は確認した。とりあえず、降りてきていいぞ』
 コックピット内に老人からの通信が入り、俺は素直に聞き入れて、ガンアークから降りた。
 だが、あの感覚は何だったのだろう?という疑問を感じながら、俺と老人は裏山から家へと帰っていくのだった。
 
 
 














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