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虎人少年 外伝〜それから
作:tensuke



5.屋敷にて


5.屋敷にて

「虎人様 着きました」
「・・・・・・・・」
手足を拘束され セダンに押し込められて連れてこられた場所
それは 都心にあるとは思えない 漆喰の高い塀に囲まれた
立派な門から屋敷の玄関まで まだ車寄せにたどり着くのに4〜5分もかかるような
たいそうな広さと豪華さの屋敷であった

虎人は車から降ろされるとすぐに手足の拘束を解かれた
そして 屋敷へと招き入れられ豪華な応接セットのある広い居間へと案内された
セダンを運転してきた男は黙って居間の入り口に立っている
そしてソファーに怪訝そうに 警戒を解かないままに座った虎人の前に
一人の紳士が現れた
紳士は かの社長室で男と話し合いをしていた社長秘書 佐藤だった
佐藤は虎人に丁寧な一礼をすると静かに虎人に語りかけた

「ここは四菱財閥の会長のお屋敷です 手荒なマネを致しました事をお詫び申し上げます」
「・・・・よ・・つびし?」
「虎人様のお母様のご実家です」
「母の?」
「はい 恵様と 叔母様の香様のお育ちになったお屋敷です」
「・・・・・」
「今は 会長がお一人でお住まいです 虎人様のおじいさまです」
「祖父・・・・」
「おばあさまは昨年お亡くなりになられました」

「去年・・・・母はその事は?」
「ご存じだったと思います お知らせは差し上げましたから」
「ご病気だったのでしょうか?」
「いえ ご老衰といったところでしょうか・・・」
「母は・・・祖母に・・生前に会えたのでしょうか?」
「いいえ 恵様は小林さまとご結婚されてから一度もお屋敷にはお戻りになっておられません」
「そう・・・なんですか」
「虎人様はご両親様から何もお聞きになっておられないのですね?」
「?」

「ご両親様はお若い頃にかけおち同然でご結婚になられて
会長は それをお許しにならず 今に至っておられます」
「そう・・・なんですか」
「突然の事で驚かれた事と存じますが 虎人様には会長に おじい様にご面会頂きます」
「僕・・が? どうして突然 僕がこんな風にここへ連れてこられなくちゃいけなかったんですか?」
「事情は・・・会長からお聞き下さい 申し遅れました 私は現社長の秘書を
させて頂いております 佐藤と申します」
「さ・・佐藤さん・・・」
「現社長は虎人様のお母様恵さまのすぐ上のお兄様です」
「叔父・・・にあたるワケですね」
「そうです そして今社長は病床にあり 余命半年の宣告を受けておられます」
「半年!・・・・」
「はい・・・そして 四菱財閥グループ企業は会長の後見を必要としております」
「次期・・社長を・・・ですね」
「さすが虎人様 お話が早いです では 会長がお待ちです こちらへ」

虎人は促されるままに佐藤に続いて屋敷の廊下へと出た
赤く毛足の長い絨毯が敷き詰められた廊下の両側には 重厚なマホガニーの扉がいくつも
連なっている その一つの前で佐藤は立ち止まり 虎人を振り返って言った

「再度 突然の しかもこのような手荒な手段でお招きいたしました事をお詫び申し上げます
どうか 私どもの苦汁の決断と思ってお許し下さいませ 会長は何もご存じありません
ただただ お孫様の虎人様に お逢いしてお願いしたい事がおありになる・・・そのために
私どもはこのような事を致しました 何卒 何卒 そのお胸に留め置き頂きたく・・・」

「・・・・・どういったご事情かは存じませんが・・ 僕の母がこのような屋敷の令嬢だったことは
全く知りませんでした・・・・正直 何が何だか判りません・・・でも
何やら・・・大変な事態もおありのようでお察し致します 僕に・・僕にできる事なら
祖父に・・・おじい様にお目にかかるのは 何も 何も問題はありません・・・どうかご心配なく」

「ありがとうございます 虎人さま・・・ では お部屋へ・・・」

部屋の扉は二重扉になっていた 廊下側の扉を開けると 人一人が立てる程のスペースの向こうに
もう一枚の扉が閉ざされていた 重々しいノックの音に 中からしゃがれた低い声が応えた
「お入り・・・」


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