14.甘い夜
14.甘い夜
「俺もさ アメリカ 考えた事あったんだ」
聡史が虎人の腕枕に頭をのせながらつぶやく
「結城さんがアメリカ?自発的に?へぇ」
「うん・・・音楽をさ もっと真剣にやってみたくて 俳優の仕事は厳しいけど面白いし
まだまだ俺の事を使いたいって言ってくれる仕事も沢山くる・・・・・でも
このままじゃ 俺 いつか仕事に追いつかれちゃって一杯一杯になっちまうなぁって・・・
俺 器用な方じゃないだろ?だから仕事一つこなすのにも 準備する時間が
ものすごくかかるんだ・・・・そのうち あっぷあっぷしちまいそうで恐いんだ
30歳過ぎて もっともっと引き出しの沢山ある人間になっていたい ってそう思う
だから ここらで思い切ってきちんと自分と向き合ってみたらいいのかなぁ・・・とかね」
「結城さんは真面目だからね・・・・でも 結城さんは自分で思うほど一杯一杯には
ならない人だと思いますよ いつもちゃんと自分のペースとか判ってるし」
虎人は反対側の手でそっと聡史の髪を撫でながら微笑んだ
「マイペースってさ 周りに迷惑かける事もあるしなぁ〜」
「結城さんはそうやっていつも周りに気を使うから 疲れちゃいますよ」
「俳優はさ 共同作業だからね 仕方ないよ でもゆっくり詩を書いたりもしてみたいんだよな」
「いいですね 是非 取り組んで下さい 結城聡史の音楽 楽しみです」
「虎人に一番先に聞いてもらうから」
「ええ 是非」
嬉しそうに大きな口でにかっと笑う虎人を愛おしそうに見つめる聡史を
虎人はその腕の中に益々深く抱き込んだ
未だ少年期の華奢なラインを残しつつも眩い程に堂々とした肉体は
胸板も肩も腹部も一点のゆるみもなくしなやかな筋肉に覆われている
成長期真っ只中にある青く瑞々しい若竹のような長い手足
浅黒く日に焼けた艶やかな肌
固く黒くつんつんとした黒髪と同じ程に真っ黒な大きな瞳が
鋭い光を放つ その瞳は今 腕の中の聡史を映している
虎人が黙ったままいると 多くの人は彼が怒っているのか
もしくは何か不愉快な思いでいるのだろうと感じる
彼の眉間にはいつも深い皺が寄り
大きな口元はへの字に固く結ばれて・・・・
しかし 聡史だけは知っている
そんな時の虎人が 実は何気ない物思いに耽っているだけだったり
もしくはぼんやりと何も考えていなかったりもすると言うことを
そして そんな虎人が自分にだけはいつも正直な
素直な顔を見せてくれる事が 何より愛おしく思われる
その聡史はといえば 何よりの魅力はいつ何時にも独特な品を纏い
その美貌にもかかわらず彼の表情は演じる役柄によって
幾通りにも違った魅力を醸し 全くの別人のような錯覚さえ起こさせる
そう言った 幅広いイメージを定めない確かな演技力が
彼の人気を支えているのだろう
王子様役でも殺人鬼でも おそらくは彼が演じれば全てが彼のために
用意された役 彼のための役であったと思わせる
そして何より そのストイックなまでに自分に厳しく 仕事に取り組む真摯な姿勢に
現場で彼と行動を共にする全ての人達が彼を尊敬し 可愛がり そして好きになった
しかし 虎人は そんな聡史が時折もらす 弱音やら悩みを受け止める
ただ唯一の存在であった
お互いが こんなにも求め合い 必要としあっていると言うことに
二人は今更ながらに ようやく気がついた
そして 聡史もハーバードへの復学を決めた虎人と共に アメリカへ渡る事を決意した
もう 離れて暮らす事など考えられなかった
「いつまでたっても・・・・どんなに頑張っても 僕は結城さんよりずっと10歳年下で
どうしても追い越す事はできないけど・・・・でも 僕は僕の人生をかけて
貴方を守っていきたいと思ってる そして必ずそうできる自信もあります
だから 安心してついてきて欲しい」
「プロポーズだね(笑)」
「そうです」
「喜んで ついて行くよ(笑) 虎人がいなくちゃ生きていけないもの」
「僕は 結城さんが俳優で食っていけなくなっても養っていける位のビジネスマンになります」
「俺は 虎人がリストラされて路頭に迷っても マネージャーか付き人でやとってやるよ」
「ははは」
「ははは」
笑いながら抱き合い二人は唇を重ねる
虎人の唇が聡史の首筋を滑り その滑らかな肌に淡い跡を残してゆく
胸元のささやかな突起に口づけると そっと舌で転がし 赤くしこるそれを甘噛みする
「んんっ・・・」
聡史ののど元からくぐもった甘い吐息が漏れる
「ホントだ・・・まだ何だか痛々しいですね・・・抜糸の跡がはっきり判る・・・」
「な・・・舐めるな・・・くっ・・くすぐったいっ・・・」
身をよじる聡史を抱きすくめたまま
虎人は 舌を聡史の脇腹から下腹部へと這わせ そのまま
やんわりと頭をもたげ始めていた聡史のそれを口に含んだ
暖かい口腔に包まれると 聡史の中心に熱い血が集まってくる
その刺激に思わず腰をよじろうとする聡史を逃さずきつく抱き戻す
くびれを抉る舌先の刺激に聡史はうねるようにこみ上げてくる愉悦感に腰が揺れる
一気に登り詰めてしまいそうな快感に意識が白くぼやけ始める
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