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虎人少年 外伝〜それから
作:tensuke



13.虎人の決断


13.虎人の決断

「ところでさ・・・・虎人の話って 何?」
「結城さん・・・僕と 僕と一緒にアメリカへ行きませんか?」
「アメリカ?」
「そう・・アメリカ」
「いつ? どの位?」
「結城さんの怪我の具合が良くなったら 期間は3年か4年間」
「3年!?そんなに? 俺・・・俳優休業か?」
「いえ・・・向こうに拠点を置いて活動できるんじゃないかと・・・」
「ハリウッドデビューか?」
「ええ それに飛行機での行き来なんてどーってことないですから・・・」
「それは・・そうだけど でもなんでアメリカ?」

「僕は四菱商事の次期社長にはなりません」
「・・・えっ?」
「いや・・・仕事はとても刺激的で面白かったしやりがいもあって・・・続けたいと思ってます
でも 社長にはなりません  元の 社長の奥様がご子息をお連れになって
僕からも会長と佐藤さんにお願いしたんです どうか社長のご子息に後を継いでもらって下さいって・・」
「虎人・・・欲がないねぇ・・・」
「はははは(笑) 僕だって欲はありますよ だからこうして話にきたんです」
「え?」
「僕はハーバードに復学する事にしたんです それでMBAとか取って
きちんとしたビジネスマンになれるようにもっと勉強しようと思うんです」
「へぇ〜・・・」
「だから 結城さん 一緒に来てくれませんか?」
「・・・プロポーズ・・・みたいだな」
「はい そのつもりですから」
「はぃっ?・・・・」
「離れてみて判りました 違う世界に身を置いてみて身にしみて判りました
僕には貴方が必要なんです 一緒にいないとダメなんです だから」
「・・・・・虎人・・・生産性のないプロポーズだよ?」
「生産性?」
「子孫繁栄は望めないからねぇ・・・・」
「子孫・・・(笑)」
「養子でももらうか」
「それもいいですね」
「行くよ アメリカ 俺もアクターズスクールにでも通って勉強する」
「はい!」
「虎人・・・こっち来いよ」
 
ベッドの聡史にそっと近づき 虎人はその唇に静かに口づけた
聡史の点滴をしている腕に触れないように
傷に負担がかからないように気をつけながら その身体を静かに抱き締めた
虎人の口づけを受け止めて 聡史の顔に笑顔が浮かんだ

その後 3週間の後 聡史は無事退院の日を迎えた
迎えに来た虎人の車で二人は久しぶりに揃って聡史のマンションへと戻った
渡米に備えて 虎人が荷造りをすすめていたこともあり
部屋の中には段ボール箱やらスーツケースなどが雑然と積んである

「会社の方は本当に大丈夫なのか?虎人」
「ええ 会長も結局はお孫さん 社長のご子息ですよね 彼の事とても気に入ってたみたいだし」
「そうなんだ・・・」
「ええ とても真面目で優秀な人なんですよ」
「それはよかったな」
「はい」

「コーヒー 入れましょうか」
「いいね 病院では飲めなかったから」
「座ってて下さい 痛みませんか?」
「大丈夫 抜糸も済んだし もう完全復帰だよ」
「後で傷 見せて下さいね」
「なんじゃそりゃ やぁ〜らしぃ〜なぁ虎人」
「はははは 単なる好奇心ですってば」
「風呂に入るとき見せてやる」
「楽しみにしてまーす はははは(笑)」
「まだ結構生々しいぞ」
「へぇ」
「小さな刃物でも結構刺さると痛いもんなんだな・・・・
まぁ・・・・彼の心の痛みに比べたら・・・こんなの大したこっちゃないのかな・・・」
「壊れちゃう程に心を痛めるなんて・・・・哀しすぎます」
「きっと・・・タカシさんも元のタカシさんに戻るよ いつか」
「そうですね・・・西崎さんが付き添ってるんだし・・・」
「だよな・・・そうあって欲しいと心から思うよ・・・」

二人 愛用のソファーに腰をおろし ゆっくりとコーヒーを味わった
この部屋に二人で揃うのは あの拉致もどきに虎人が連れ去られてから
じつに一年近い月日が流れていた

「前に虎人がアメリカに残るっていって向こうで映画とかテレビに出て・・・」
「ああ・・・そんな事もありましたよね」
「あの時以来だな こんなに長いこと虎人と離れてたの・・」
「そうですね・・・・今度の方が長く感じたかな・・・」
「俺も・・・・なんか 虎人が違う世界の人になっちゃったから余計 焦ったっていうか・・・」
「僕は元々芸能界にいられるような才能があるワケじゃなかったし・・・」
「もう俳優には戻らないつもりなのか?」
「ええ ビジネスの勉強をして・・・いつか いつか結城聡史をプロデュースできる位
でかいビジネスをたちあげて見せますよ」
「そっか(笑)楽しみにしてるよ」
「だから・・・」
「ん?」
「だから・・・僕と ずっと一緒に これからの時間を一緒に」
「ん 一緒に歩いて行こうな」
「ういっす!」

「風呂沸かしてはいるべぇ〜っ!」
「背中流しますよぉ〜(笑)」
「おお〜 お手柔らかに頼むよぉ〜 まだ病み上がりだ」
「韓国垢すりじゃあるまいし 僕そんな無茶しませんよぉ(笑)」

離れていた時間は二人を変えたのかもしれない
それでも 二人は変わらない
変わらず お互いを何よりも大切な存在と感じられる事
そんなことが 何よりうれしかった


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