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虎人少年 外伝〜それから
作:tensuke



12.せつない想い


12.せつない想い

それは宅急便を装った来訪だった
ぼんやりと扉をあけた聡史は目の前にたつ自分より小柄な青年の
真っ白な小さな顔を見つめていた
そして 左の脇腹に走った鈍い痛みにしばらくは気がつかなかった
その青年が涙を流していたから
泣きながら ただ赤い綺麗な唇を噛み締めて涙を流しながら
青年は小さな果物ナイフを聡史の脇腹に体当たりをするようにして突き刺したのだ

「・・・っつ・・な・・なんで?・・・だ・・だれ?」 
白く霞んでいく意識の中で 聡史はその青年の顔を見つめていた
青年は震える唇から 細く小さな声で何度も何度も呟いていた

「あんたが悪いんだっ!あんたが たかおさんを たかおさんを振り回すからっ
たかおさんは俺と一緒にいるのがシアワセなんだ・・・だから あんたなんかいない方がいいんだっ!!」
「・・・たか・・お・・?」
聡史の意識はふっつりと途切れた
(西崎さんの・・・・こと 俺がふりまわして・・た・・?そ・・んなこと・・・ないの・・に・・)

聡史が意識を取り戻したのは 病室のベッドの上だった
点滴が繋がれた腕 その先の手をしっかりと握りしめていたのは
虎人だった
「・・・!・・・虎人・・・」
「結城さんっ!気がついた?よかった・・よかった本当によかった・・・」
「・・・・俺・・・」
「出血が多かったから・・・・でも傷はそんなに深くなかった 本当によかった
相手が小柄で力も弱かったのが幸いだったって・・・3週間位で退院できるそうです」
「どうして・・・虎人がここに?」
「ああ・・・あの 僕電話の後 ちょっといろいろあって それで
結城さんに話を聞いてほしくて で会社の人から時間もらってマンションに戻ったんです
そしたら 結城さんが玄関で倒れてて・・・びっくりしました」
「そっか・・・」
「犯人の顔 覚えてますか? 結城さんの意識が戻ったら事情を聞きたいって
警察の人が待ってるんです・・・・話せます?」
「え・・・ああ・・・でも顔も見てないし・・・何も覚えてないんだよ・・・」
「そう・・・ですか・・・」
「いや・・虎人には嘘はつきたくない でも警察に話すつもりはないんだ
どうやら・・・俺にも責任の在ることだったみたいだから・・・・」
「結城さん?」
「虎人・・・・来てくれてありがとう 付き添ってくれてたんだね 嬉しいよ」
「いや・・・このまま死んじゃったらどうしようって・・(笑)思ってました」
「だよな(笑)」
「じゃ・・・警察の人 呼びますね 話は後で聞かせて下さい
それと・・・僕の話も・・・聞いて下さいね」
「ああ」

聡史はタカシの犯行を警察には話さなかった
また もし犯人が見つかっても起訴しないと言い張っていた
事故のようなものだった そう言い張っていた

警察も聡史の立場上 公にはしたくないのだろうという事情も察してくれた
そして しつこく捜査をすすめる事もなかった

そして 聡史が入院して1週間後
たかおが病室へと現れた
虎人に伴われてやってきた西崎は ベッドの聡史を見ると震える手を握り併せて深々と頭を下げた

「す・・・すまなかった・・・聡史・・・お前をこんな目にあわせてしまって・・・」
「西崎さん・・・やめてください どうして貴方が僕に頭をさげるんですか・・・」
「あれは・・・・お前を刺したのはタカシという・・・俺の・・・俺の友人だ・・・」
「友人・・・?」
「虎人クンから連絡をもらって・・・すぐにこられなくてすまなかった・・・タカシを
あいつを捜して一緒に連れてくるつもりだった だから こんなに時間がかかってしまった
すまない・・・俺と・・・あいつを 許してくれ・・・無理な願いかもしれないが
今後 お前に二度とこんな思いをさせる事はないと誓う だから・・・どうか許してくれ・・・聡史・・」
「西崎さん・・・・」

頭を下げている西崎の後ろから 虎人が一台の車椅子を押して入ってきた
そこには うつろな目をした青ざめたタカシが座っていた
彼の視線は焦点を定めていない 赤い唇がぼんやりと半分ひらかれたままだ
彼の タカシの意識 いや心はそこにない
ただ 抜け殻のタカシの身体だけがそこに存在していた

「俺は・・・俺はいつかこいつが目を覚ますのを待つ事にした・・・
ずっと・・ずっと俺のそばにいるとタカシは言っていた だから そうタカシは友人じゃない
俺の恋人・・・そして家族だ」

西崎は虎人からタカシの車椅子を受け取ると自分で押して聡史のベッドサイドへと運んだ
「こいつだろ・・・お前の腹を刺したの・・・本当にすまなかった・・・聡史・・・」
再度深々と頭を下げた西崎に聡史は目を丸くした

「西崎さん・・・・俺・・・俺は刺されたんじゃない バチが当たったんだ
虎人の事も 西崎さんの事も 俺は・・・俺は思い上がってたよ 欲張りだった
だから もういいんだ・・・虎人も帰ってきてくれたし・・・俺は大丈夫だよ 心配しないで」
「聡史・・・・」
「・・・・彼・・・どうして・・こんな・・・」
「自殺・・・しようとしたんだ 薬を飲んで倒れてた 俺が見つけて病院へ運んだが・・・後遺症が・・・」
「・・・・・そう・・・」

タカシの白い小さな顔を優しい瞳で見つめる西崎の姿に
どうかその瞳にもう一度 タカシの笑顔が映る日がきますようにと
虎人も聡史も祈らずにはいられなかった












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