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虎人少年 外伝〜それから
作:tensuke



1.雑踏にて


1.雑踏にて

 人々が行き交うターミナル駅のコンコース
黒いキャップを目深に被り 焦げ茶にも黒にも見える
革とキルトのコンビ素材の個性的なジャケットをさらりと着こなし
すらりと長い脚はクラッシュドジーンズとごついブーツに包まれている
細く見えるが十分な肩幅がそのしなやかな筋肉に覆われているであろう
均整のとれた体躯を偲ばせる
キャップに覆われた形の良い小さな頭の彼は
180センチはありそうな見事な9頭身だ
その肩からは派手なオレンジ色のリュックが下がっている

彼は時折 半歩程後ろからつかず離れず同行している
もう一人の青年に何やら話しかけながら その形のよい
赤くふっくらとした唇にうっすらと笑みを浮かべて歩いてゆく
帽子のつばに隠された白く小さな綺麗な卵形の輪郭に
こぼれ落ちそうな 大きなやや茶色がかった瞳が長い睫に縁取られている
まるで男装の麗人のような 華やかな それでいて
どこか儚げな 妖しい程に端正な美貌の青年だ
耳に光るシルバーのピアスがイマドキのお洒落な若者らしい

話しかけられている青年は彼よりも更に頭半分程背が高い
まだどことなく幼さの残る顔立ちながら
目尻のつり上がった大きな黒目がちな瞳は鋭い光を放ち
ぎゅっと への字につぐんだ口元が印象的な
どこか野性的な雰囲気の持ち主だ
彼もまた 長い手足をもてあますような均整のとれたスタイルだが
こちらは幾分オーソドックスな装いに身を包んでいる
身体に馴染んだダンガリーのシャツにコーデュロイのパンツ
ナイキのスニーカーに 紺色のボディバックを斜めがけにしている

これほどに大柄で すらりとスタイルのよい青年2人が
人混みに紛れて人波を掻き分けるように進んでゆくのを
誰一人として振り返ろうとしない事が不思議に思える

その歩みは心持ち早足で それでいて決して周囲の喧騒から
逃れようと急いでいる様子でもない

先を行く黒いキャップの青年が軽く振り返りながら話しかけるのに
うっそりと寄り添うように歩く一方の青年は表情もかえず
むっつりと頷いてみせたりしている
その彼は 時折 黒いキャップの青年を人波から守るように
その細い腰にそっと腕を回し 庇うようにしながら歩いてゆく

友人同士というには どことなく上下関係を感じさせ
それでいて年下と思しき背の高い青年の態度は
黒いキャップの青年を見守っているようにも見える
兄弟というには 親密過ぎる空気の濃さをまとっており
強いて言うなら 恋人同士のそれに近い雰囲気を思わせる

これほどに個性的 かつ 魅力的な二人が
目立つ事なく 人々の注目を浴びる事もなく
黙々と歩みを進めていられる理由は何なのか

思うに 彼らは我知らず その他を圧倒する程のオーラを
ひっそりと包み隠しているようだ
それは 彼ら自身の心持ちが大きく影響しているのだろう

おそらく 彼らには 自分達が素晴らしく魅力的な外見を持ち
人々から好ましいと思われる雰囲気と圧倒的な存在感を
放っているという 自覚がすっぽりと欠落しているのだろう

もしくは そういった自分たちの特徴とも言える
大いなる力をことさらに振りかざしたいなどという欲求が
全くといって良いほど ないのだと思われる
そうでなければ これほどに見事にその気配をひっそりと
目立たず人混みに溶け込ませる事ができるハズもなかろう

彼らは あたかも自分達の周囲を 何か目に見えない
透明なシャボン玉にでも包まれて やんわりと風にでも
吹かれて流れてゆくかのように 変わらぬ歩調のまま
ただ静かに賑わう駅のコンコースから
百貨店の建ち並ぶ駅前の方へと消えていった

一人 小さなライカのカメラを握った男が
その背中を見送っている事には 気づく事もなく












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