百花繚乱 -終章- 14
「スゲッ! これって撮影?」
「レイラ主演? それともあの花嫁??」
「てかあのマジファイトの女優だれ?」
ギャラリーたちはステージとバトルのあいだで二つにわかれ、見つめる。
片付かない喧嘩にじれた雄也がわめいた。
「先にライブつぶせ!散らばれ!」
そして自分もボディガードたちと共に前へと駆け出す。
玉のように離れて散らばっていく、十人の男たちの姿を凜花の目がとらえた。
止める手だては一つしかない。
凜花はすべての小束をその手に握った。
『たすけてくれるよね、リンカ……そしてシン!』
願いと共に背筋を伸ばし、構える。
「はァァァァァッッ!!」
右手を一閃、かがんで左手を横に振り切り、耳元にあげて溜めた最後の一撃を放った。
三つの飛燕の群れが宙を飛び、散らばった鬼小島の男たちに襲いかかる。
見える。
スローモーションのように、すべての小束の動きがわかった。
地にかがんだまま、凜花は無心で小束につながる紐を操った。
男たちの頭上で刃の蝶が光を帯びて舞い飛び、地上の燕が鷹になる。
身体に刃がとどく寸前で凜花が紐を引き、両手を地につけた。
突き刺す直前で小束が大きく向きを変え、くるっと回転して男たちの頭を叩いて倒す。
足をとられたように一斉に沈み込む人影を見つめながら、凜花は荒い息のままいった。
「かあさん。 桜花乱舞……今、成就しました」
その横をシンが駆け抜け、立ち上がろうする男たちを次々と行動不能にしてゆく。
やられて転がっていた雄也は、歯噛みしながら起き上がると叫んだ。「やったるぞ! こうなったら本家から兵隊つれてきて、丸ごとつぶしたるッ!!」
怒りに震えるその肩に白く細い手が置かれた。あァ?と振り返った雄也の顔が凍りついた。
「き、京極の凜おばちゃん!?」
「おばちゃんいうな!!」低い声で雄也を叱り飛ばし、雄五郎をしたがえた凜が姿をあらわす。
そして艶やかに微笑んでいった。