百花繚乱 -終章- 9
みんながそれぞれの表情で見つめる中、凜花が胸に抱くスズランのブーケが恥じらうように揺れた。
可憐な姿の内に毒を秘めるスズランこそ、今の凜花自身。
『きっとどこかでシンはあたしをみてる』
だから凜花は、この凜がデザインしたウェディングドレスをまとい、この場に臨んだのだ。
はっきりとした答えはまだ決まっていない。
けれどシンの想いにちゃんと向き合う覚悟をして、凜のドレスをまとい、純粋を意味するスズランを抱いてやってきた。
『みててよ、シン!』
凜花はブーケを投げ、ドレスの裾に手をかけると、一息に剥ぎ取った。
花に隠されていた、小束という名の天使の爪が光り、短くなったウェディングドレスがひらりと揺れる。
ミニスカート-----いや、前はそうだが後ろにゆくほど長いそれは、妖精がまとうドレスのように見えた。
華麗なドレスの尾びれと少女のようなツインテールをなびかせ、凜花が腰をおとし、小束を胸元で構える。
『いくよ!』
聖なる花嫁から戦の女神へと変化した凜花は、鬼小島の男たちに向かって駆け出した。
「わりゃなんじゃい!」向かってきた凜花の殺気に反応した一人がわめき、飛び込んできた白い塊に木刀を真上からうちおろす。それを右にかわしざま、小束を握ったままの拳をみぞおちに叩き込んで駆け抜けた凜花を、今度は二人の男がバットを左右斜めから振り下ろして打とうした。
挟み撃ちの攻撃に『殺った!』と確信して顔を醜くゆがめた男たちの前で、凜花の姿が突然きえた。
『!?』
あっとおどろく男たちの頭上から、飛び上がって攻撃を避けた凜花の身体が、ひるがえるドレスと共に降ってきた。
左の男の頭をつかんでひねりながら、右の男の首に両足をかけ、躍り上がって激しく腰を右に回した。
ぐきっといやな音がして崩れ落ちる男から飛び降りる。
着地した瞬間、前転すると、かがんだまま右足をまっすぐ伸ばし、円を描いて後ろを払った。
さっきまでいた位置を襲った木刀が、アスファルトをガツンと叩く音と、かかとを払われ吹っ飛ぶ男のわめき声を背中でききながら、また駆け出す。
十人以上いる自分の舎弟を次々と翻弄する凜花を見て、苛立たしげに雄也が吠えた。
「あとの兵隊はどないしたんじゃ!!」