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雄也 -接触- 1


「どないしはったんですか、幽姫さん。 いきなり本家入りは辞めるのモノはさばかんの言われてもこっちはわからしまへんわ。筋道たてて話してくれまっか」

ホテルのソファに座り、携帯電話を耳に当てしゃべる雄也の言葉を聞いて、そばに立っていた付き人が眉を吊り上げた。


「まさか回りくどいことして、うちらにケンカ売っとんやおまへんやろな? この話はコンビニの買いもんちゃいまんのやで。いらんわ言われて、へえさいでっかじゃ納まらんの、よォわかっとりますよね?話の筋によっちゃ、うちのメンツがつぶれまんのや」

義隆が気弱な口調で何か言っているのを雄也は途中でさえぎると、地の底から響くような声を出した。


「もしそないなったら、こっちも腹くくってやりまっせ。 ぬるい商売人の関東と違ごォて、うちは関西一の本家の弓矢の看板ずっと張ってまんのや。かけた的は今まではずしたことあらへん」

低くおどろおどろとしたしゃべりとは裏腹に、雄也の口元は笑いで緩んでいる。


「はァ?脅しちゃいまんがな。知らんおもて親切に教えとるのに、よォそないなこといいまんな、おっとろしい。 とにかく、今からうかがわせてもらいますよって、ええ返事考えといてくださいや。ほな」

切った電話をスーツの内ポケットに落とすと、そのままの姿勢で雄也は指示を出した。


「うちのもん、何人こっち来る?」

「へえ。とりあえず10人ほど明日つきます」

「もっと呼んどき。 たぶん喧嘩になるわ、これ」

「え?」

「まァどっちに転んでも銭は引けるさかい、わしはどっちでもええんやけどな」

身体をソファから起こすと、雄也は前かがみになり、くくくっと含み笑いした。


「歌手の方はどないします? 若」

「それもこっちで勝手にやらなしゃあないわ。あいつら当てにならへんのわかったんやからのォ。 もォ遠慮せんでええ。明日っから街中に片っ端から顔出したれや。紅椿のもんともめてもかまへん。そっちが売ってきたケンカを買ォたったんじゃ、そう言え。 ほんで早よ歌手さろてこい」


付き人はその指示を聞いて一気に緊張すると、携帯で連絡を飛ばし始めた。

そのいきり立つ声を聞きながら雄也がつぶやく。


「さあ、そろそろわいらもマジでいくでェ。 荒い仕事の方が得意なゆうんをみせたるわ」

足を組みなおして笑う雄也の目に、この男の本性をあらわす危険な光がちらついていた。









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