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綾乃 2


それから綾乃に半ば拉致され、女装ルームへと行かされた洋一は、やがてやってきた玲と彼女を引き合わせた。

なんとなくこの二人は合わないだろうなと思っていたが、案の定、玲と綾乃はすぐに角を付き合わせ始め、洋一を気まずい空気の中に叩き込んだ。


ナチュラルで可愛い路線を主張する玲と、艶やかで色気のある大人を演出しようとする綾乃が真っ向から対立して、目の前で争っている。


「あぁ、もーっ!これだからお水の人はダメなんだからっ。 凛花は元の顔がケバいんだから、もっとかわいい感じにしなきゃいけないんです!」

それに対して綾乃は、洋一と同じくらいの上背から、目を細めて玲のことを見下ろしてこたえる。


「ほほほっ、世間なれしてるようでも玲ちゃんはまだわかってないのよねぇ。いい?洋ちゃんの濃いさを逆にもっと引き出して妖艶な風にしないと。だってその方が話題性も高くなって、あなたも記事にしやすいでしょ?」


口元に笑みを浮かべたままおっとりとした声で話す彼女に

「おい、それマズイって」

と洋一は突っ込んだが、綾乃はそれを一瞥だにしなかった。

黙り込んで考え出した玲に、勝ち誇った女帝はさらに畳み掛ける。


「コンセプトは天女さまなんでしょ? だったら可愛いだけじゃだめです。もっとこう、きらびやかで気高くないと」

「・・・・・そもそも女装好きのヘンタイで、世間のつまはじきのヤクザに気高さを求めるのがまちがってると思うけど」

「あらあら、それじゃあコンセプト自体の変更を考えなきゃね」

ふてくされた玲の言葉に、綾乃は形の良いあごに指を当て、真剣に考えはじめた。


どうも基本設定から自分が考えて、一気に主導権を握ってしまおうというもくろみらしい。

すぐにそれを察知した玲が、わざとらしく壁にかかった大きなのっぽの古時計に目をやりつぶやく。


「ほら、綾乃さん。もう仕事の時間ですよ。こいつはあたしにまかせて安心してお店にいってね」

コンマ3秒、綾乃の眼がギラリと剣呑な光を帯びたのに、洋一だけが気づいた。


「あらあらまぁまぁ、それじゃあ今日のところは玲ちゃんにおまかせするとして、私はちょっと行ってきますね」

口調は相変わらずとろりとしていたが、言葉に鋭いトゲを残して、彼女は微笑みながらソファーの脇に置いてあったバッグを取り上げようとした。

身体を傾けて拾い上げる瞬間、そこに座っていた洋一にだけ聞こえる声で早口にささやく。


「いいこと? この娘の言いなりになちゃだめよ。もしそうなったら・・・・わかってるわよねぇ?」

剃刀を首に当てられたようにビクッと背筋を伸ばした洋一にかまわず、綾乃は口に手を当てて「ではではまた」などと言って部屋を出て行った。



キッと玲が怒った顔を洋一に向ける。


「ちょっとあの人なんなのよ、もぉ!横から急に口はさんできて、言いたい放題の狼藉三昧! 腹たつなぁ」

「・・・・・こないだから思ってたんだけど、おまえってちょい時代劇はいってるよな、しゃべりが」

「うっさい!好きなのよあの言い回しがっ。女子高生が時代劇ファンで悪いの?」

「悪かないけど・・・・・・」

「そうじゃなくって、あの人なんとかして!」

「ムリそれ。 だってバレちゃってるから、そんなことしようとしたら綾乃の奴は速攻で組中、いや街中にバラして回っちゃうし。そうなったら俺アウトだし」

「チッ、ヤクザのくせにだらしないわね!」


同じことで洋一を脅迫しているくせに、それを棚に上げておいて玲は舌打ちするとにらんできた。

それを無視して、洋一は煙草を取り出して火をつけると、プカーッと煙を吐きながらたずねる。


「で、今夜はどうすんだ?」

「あんたはどうしたいのよ?」

その言葉を聞いて、ジーンと恥骨にあの甘い痛みが走った。


「は、うーん・・・・・・」

おもわず変な声がもれて、あわてて洋一は玲から顔を背ける。


----- あの夜から恥骨の奥がおかしい・・・・・ てかなんなんだよこの感じは!? 段々ひどくなっていってる気がするし

挙動不審な男に、玲が投げやりな口調でまたたずねてきた。


「でー、凛花さんはどうしたいのー、今夜は」


玲にはまだ、これはバレていないらしい。

己の変化におののきながらも、洋一は恥骨の疼きから眼をそらすように、今夜のチョイスを考え始めた。


実はその身体の変調は、ある意味でとても重要な変化の兆しだったのだが、今の彼にはそれに気づく余裕はなかった。






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