戦闘輪舞 -バトルロンド- 3
「さぁて、あんたには服のお返ししなきゃね!」
肉食獣の瞳がチェーンの方へとむけられ、睨まれた男がビクッとする。
メイドがグイッとチェーンを引いた。
釣られて男が固く握り締めた時、白い網ストッキングに包まれた足が高く上がり、まず真横、そしてしなるように正面蹴りへと変わって、男のわき腹と顎に決まった。
テコンドーばりの二段蹴りに、男の身体が吹っ飛ぶ。
が、握ったチェーンに絡まってまた前へ帰ってきたところで頭がかかえられて、重い膝蹴りが入った。
鼻骨が砕ける鈍い音が階段の上まで聞こえてきて、顔をしかめて玲がつぶやく。
「・・・・・痛ったそう」
四人を完全に鎮圧してしまったメイドさんに、わーっとホームレスたちが駆け寄った。
「すげぇ!あんた強いなぁ」
「こいつらに仲間が何人もやられてんだ」
「よかった・・・これでしばらくゆっくり寝られるよ」
賛辞と喜びの声が寄せられる中、メイドさんがはにかんだ笑みで彼らに答えていたとき、地下街の照明とは別のまばゆい閃光が辺りを照らした。
はっとメイドさんが光の方を向いたときに、もう1フラッシュ。
そしてすぐ、少し鼻にかかった声が響き渡る。
「そこまで! バッチリ撮ったからね、あなたっ」
トントンと軽い足取りで階段を駆け下りてきながら、頭上に高くデジカメを掲げて見得を切った女の子に、メイドさんの顔が凍りついた。
「ありゃあ、タウン誌のおじょうちゃんじゃねえか」
「ひさしぶりおじさん。元気だった? さっきやられた人はあたしが手当てしてもう大丈夫だから。」
おどろいた顔でホームレスの一人がそういったのに笑顔でこたえながら、ゆっくりと玲はメイドに近づいてゆく。
口と目を三日月のように歪めて笑う女の子に、メイドさんが震えだす。
「あの子は大丈夫だよ、おねえちゃん。 記者だからついでに記事にしてもらえ。街の有名人になれるぞ」
あれほど強かった彼女がなぜこんな少女を恐れるのか不思議だったけれど、ホームレスの辰さんは気をきかせてそういった。
が、その言葉に、ダーッとメイドさんの顔に黒いすだれが下りてしまう。
「ダメだ・・・・終わった・・・・・俺の人生・・・・・・・」
小さくそうつぶやく洋一の姿を見て、階段の上にいたシンがうなだれる。
「・・・・すみません兄貴。でもこうするしかあなたを守ることはできないんです ・・・・許してください」
こうして洋一と玲は出会った。
ボーイ・ミーツ・ガールならぬ、ヤクザ・ミーツ・JKであった。