IFルート:新キャラ設定
今回は本編とは全く関係がありません。どうでもいいというかたはスルーしてください。
あと、プロトタイプなので前回と似通った点がかなりあります。その辺も留意してお読みください。
「それじゃあ改めて。俺はセス、サモナーの上位職のサモンマスターだ。ちなみにレベルは25だ」
ビップルームのソファに深く座り、柔らかな感触を楽しみながら、まずは互いのことを知ろうと話を振る。
俺が挨拶をすると、皆はかなり驚いた様子だった。そりゃあまあ、皆よりもレベルは高いと思うがそこまで驚くことなのだろうか?
「おおお!すげえっす!俺っち達みたいなジョブの中でここまですごいやつがいるんすか?こいつは誘いに乗ってみて正解だったっす!」
ベオウルフが初めに感心の意を示してくれる。そう思ってくれたのなら幸いだ。
「本当だね。もしできるならこのメンバーで一度フィールドに出てみたいな。もちろん、お互いの欠点とかを受け入れた状態でね」
「そりゃいいな。それにセスがいりゃあレベル上げがはかどるだろ。そんときゃよろしく頼むぜ!」
『そ、そうですね!セスさん、もしフィールドに出る機会があったらよろしくお願いします!』
他の連中もおおむね好意的に捕えてくれたようだ。確かにジャックの言う通り悪いやつはいないようでいろいろと助かるな。
「おう。そんときゃまかしとけ、できる限りのことはするからな。じゃあ、次は誰が言ってくれる?」
「おっしゃ!じゃあ次は俺がやってやるっすよ」
次に名乗りを上げてくれたのはベオウルフだ。こいつノリがいいな。リアルのことはわからんが、どこのグループに入ってもムードメーカーってやつなんじゃないかな。
「俺はベオウルフ!ベオって呼んで欲しいっす!ジョブは魔剣士で、レベルは19っす!」
「へえ、魔剣士ってあの……僕が言えた義理じゃないけどずいぶん大変なジョブを選んだものだね」
「そんなに大変なのか?その魔剣士って」
響き的に結構いい気がするんだが。魔剣士ってことは魔法と剣の両方を使えるジョブなんじゃないか?
「かなり大変っす!この魔剣士ってジョブは専用の剣が必要で、魔法も使えるようで使えない。おまけに中途半端なステータスなんだからたまったもんじゃないっすよ!」
はっはっは!と笑いながら言うベオウルフ……ベオでいいか。何がそんなに楽しいんだか。それよりも魔法が使えるようで使えないってのはどういうことだ?
「魔剣士が魔法を使うと、それが直接剣に影響されるんすよ。例えばファイアーボールを唱えると刀身に火がまとわりついて攻撃に火属性が追加されるとか、他にもファイアーウェーブを使うと火でできた斬撃が撃てたりするっす。これってロマンじゃないっすか?」
おお!確かに飛ぶ斬撃ってかっこいいな!そうか、魔剣士ってそういう戦い方なんだな。魔法を撃ちながら剣で戦うんじゃなくて、剣に魔法効果を付与するのか。
おまけに付与する魔法によって効果が変わるってのがいいな。なんでこれが不遇職なんだ?
「でも魔剣士用の剣って数が少ないんすよね。おまけに剣のランクに合わせた威力の攻撃しかできないから、いくらステータスが高くても剣のランクが低いと低いダメージしか出せないんすよ。ついでに言えば剣によって使える属性も決まってて、特定の属性以外は剣に纏わせられないんす」
そりゃ大変だな。剣のランクによって攻撃力が変わるってのは当たり前のことだけど、剣のランク以上の攻撃ができないってのは確かにつらいな。
「その代り、弱点属性に対するダメージはすごいんすよ。火を纏わせて、火が弱点の相手を攻撃すると自分よりちょっと高いレベルの相手だったら二撃くらいで倒せるんすよ」
自分より高レベルの相手を二撃か。弱点をついても二撃で倒せるってのは確かにいいな。現時点ではボス系以外だったらそんな補正なくても倒せるだろうけど、もうちょっと進んでモンスターが強くなってくると、その効果は役に立ちそうだ。
「でもよ、魔法を発動させるのにも時間がかかるって言ってなかったか?それとすぐに効果が切れるんだったか?」
「そうっす!そこもネックなんすよねえ……」
「どういうことだ?」
ジャックが補足してくれているが、言っている意味が分からなくて尋ねてみる。
「どうもこうもないっすよ。文字通り、魔法で剣を強化しようと思っても、魔法を発動してから剣に効果がでるまで時間がかかるんす。そして折角強化しても一回攻撃をしたらすぐに効果が消えるんすよ」
なるほど。例えば、一回剣に火を纏わせても、一度攻撃をすればそれで纏った火は消えるっていうことか。そりゃ確かに使いづらいな。
いくら弱点属性相手だと二撃くらいで倒せると言っても、それは剣に魔法を纏わせた状態でだ。戦闘中の待ち時間の方が戦闘時間よりも長いとか……
「おまけに、戦士職のくせにVITやAGIもそれほど高くないから壁として戦うよりもアサシンとかみたいに遊撃に向いてるとは思うんすけど、弱点属性以外には効果的なわけでもないからヒット&アウェイにも向いてるとは思えないんすよねえ」
「それと、魔法を使って剣を強化しても、剣に効果が出るまでは攻撃してもダメージ入らないから、完全に無防備になってしまって、戦士職なのに前衛に守ってもらわなきゃいけないんだったよね」
タンクトップな彼も追加で説明をしてくれる。ずいぶんと魔剣士ってマイナス要素が多いんだな。サモナーも似たようなものだけど、もしかしたら上位職になるとそれらの制限が緩和されたりするんだろうか?
それにしても魔剣士も大概だな……なんだかサモナーよりも大変なジョブって一杯あるな。まあ、戦闘可能時間っていう意味では一番短いのかもしれないが。
「因みになんでそのジョブにしたんだ?」
「剣に魔法を纏わせて戦うのがカッコよかったていうのもあるんすけど、こう……恥ずかしい話、『魔剣士で大成したらかっこいいだろ!』みたいな根拠のない夢を持っちまって……」
あー、マイナーなジョブで強くなるのにあこがれたって話か。気持ちは分かるかな。確かに誰も使っていないようなジョブなんかで優位に立つのってかっこいいと思っちまうわな、そりゃあ。
「まあ、俺はこんな感じっす。これからよろしくお願いしまっす!」
「よろしく」
「おう!」
「よろしく頼むよ」
『よ、よろしくお願いします』
俺を含めた四人が返事をする。さて、次は誰だ?
「それじゃあ次は僕がやろうかな」
次に紹介をしてくれるのはタンクトップの人だ。キャラメイクで作ったのであろう、ガチムチというほどではないが、かなり鍛え上げられた身体をしている彼のジョブはなんなのだろうか?
個人的には首から下げたカメラが気になるが……
「僕の名前はトミー。レベル16のカメラマンさ。よろしくお願いするよ」
実はカメラマンだっただと!?その身体で!?いや、なんとなく予想はしてたしプレイするのに体つき(身長などを除く)はあまり関係ないからいいんだけど……なぜ?
「えーっと、悪いが俺は他のジョブのこととかなにも知らないんだ。できれば説明を頼む」
「わかったよ。一応、カメラマンは生産職に分類されるジョブなんだ。けど、ほとんどの生産職と違って活動の場は街じゃなくてフィールドが主なんだよ」
そうなのか?てことはカメラマンはスクショを撮る専門だったりするのか?
「カメラマンはカメラとフィルムという二つの道具を持って活動するのさ。そして写真というアイテムを作り出すんだ。写真はステータスアップ系のアイテムとして分類されているんだよ」
「おお!いいじゃんか。皆して欲しがるだろ、それ」
そんな便利なアイテムが作れるんだったら皆こぞって写真を欲しがるだろ。それにしても生産職の連中の中には写真を売りにしているやつらがほとんどいなかったように思えるんだが……いや、ほんの少しだけいた……か?
「そうでもないのさ。ステータスアップ系のアイテムと言っても、ステータスや攻撃力を上げるわけじゃなくて行動に補正がかかるっていう程度でね」
「どういうことだ?」
「例えば、君がジャンプしているところを僕が写真を撮るとするだろう?すると、君は次にジャンプをする時にほんの少しだけ飛び上がる距離が上がったりするのさ。本当に申し訳程度だけどね」
「でも、それでも結構いいんじゃないのか?」
「そうでもないさ。なにせ、補正がかかるのは写真とある程度同じ行動をしたときだけなんだから。ジャンプする時の軸足が違うだけで補正はかからないしね。
もっとも、写真とまったく同じ動きができればそれなりに補正の度合いも大きくなるんだけどね。けど、実際の戦闘でやるとなると難しいだろう?」
確かに、実際の戦闘では事前に決めておいた同じ行動をしようとしても難しいだろう。まったくできないわけじゃないが、AGOのモンスターのAIはかなり高性能で、動きを見切ったりルーティーンを覚えようとするのはかなり難しい。
そうなると事前に写真で撮っておいた動きと同じ動きをするってのは難しいものがあるだろうな。後衛とか、雑魚相手の戦闘だったらできるのかもしれないが、行動に補正が必要なのは主に前衛の連中だし。
「スキルにも補正がかかればよかったんだろうけど、残念ながらそれはできなくてね。おまけにフィルムはNPCショップで売っているんだけど、それだって結構な値段がする。おまけに一個のフィルムが使用できる回数というのも決まっているけどそれも少ないんだ」
「あー、そりゃきついな。でも、フィールドが主な活動場所ってのはなんなんだ?」
「こういう効果だからね。フィールドで実際に戦闘をしているときの動きを撮るというのが一般的なのさ。ただ闇雲に動きを撮るよりは、実際に戦闘をしている場面の動きを撮った方が戦闘の役に立ちそうだろ?」
人間の動きには少なからずクセみたいなのがあるからな。いくら実際の戦闘で同じ行動をとるのが難しいと言っても、そういう「クセ」がある動きを撮った方が実際の戦闘で補正がかかる動きをできる可能性が高まるってことか。
「その……こんなことを言うのは本当に失礼なんだろうが……なんのためのジョブなんだ?」
「ははは、僕もそう考えているさ。現実でもちょっとカメラをかじってたからね。どうせならと思ってこのジョブにしたんだけど、なかなか難しくて困ったものだよ。
おまけに写真は持ってないと効果を発揮しないからアイテムボックスを圧迫するし、フィルム代を考えると安い値段では売れないしね」
全然困ったような気がしていないような爽やかな笑顔だが、実際笑い事ではないと俺でも思うくらいのジョブだと思う。
そういう面を隠してこんな風に笑っていられるのだとしたらこいつはかなり大人だな。それになんだかんだで動きにもスキがないし。
「そういえば、レベル16って言ってたけどどうやってそこまで上げたんだ?ジョブの性質上、そう簡単に上がるとも思えないんだが」
はっきり言ってカメラマンが作る写真ってアイテムは売れないと思う。コストパフォーマンスも悪いし補正も少しだけ。おまけに補正をかけるのにも条件がいる。しかもアイテムボックスを圧迫するうえに値段も安くない。誰が買うんだ。
「カメラマンは半戦闘職と言っても過言じゃないくらい戦闘用のスキルがある程度揃っているんだ。普通の生産職でも戦闘はできるけど、それらと違って並みの戦闘職と同程度は攻撃力があるんだよ。
要は生産活動と戦闘でレベルが上がる仕組みになっているのさ。その分必要な経験値は多くなっているらしいけどね」
戦うカメラマンってことか。普通の生産職でも戦闘はできないわけじゃないが、どうしてもスキルなんかの攻撃力は低めになってしまう。けど、カメラマンはある程度の戦闘もこなせるのか。
うーん、ますます何のためにあるのか分からないジョブだ。
「とまあ、僕もこんな感じかな?皆よろしく頼むよ」
「ああ、よろしく」
「よろしくっす!」
「おうともよ」
『こちらこそよろしくお願いします』
さて、これで残るのはジャックとあの娘だけだが、皆は全員ジャックの知り合いである以上皆はジャックのことは知っている。となると……
『あ、最後は私ですね』
「そうだな。じゃあ最後は頼む」
最後はやっぱりあの娘だ。こんなときでも自分で喋ろうとしないところを見ると、ミイみたいになにかのRPなのか?
『私の名前はイザヨイです。初めに言っておきますけど、私はその……VR障害があるんです』
VR障害……VR機器と相性が悪くて話すことができなかったり、物を触った感触がしなかったり、遠近感や視界がまともに機能しなかったりする身体とVR機器の接続不全のことか。
こうやってログインしている以上は視界とか聴覚とかの致命的欠陥があるわけじゃなさそうだが……
『私はこの世界では話すことができません。ですからこうやって人形に喋らせているんです』
なるほど、口がきけない障害だったのか。でもそれって結構つらいものがあるな。AGOではスキルの発動はほとんど口で行う。魔法なんかほとんどそうだ。
武技だと発音はしなくても発動できるものがあると前に灯たちから聞いたこともあるが、それだって数が少ないうえに初期のスキル選択からでは選べないものだったはずだ。
『私のジョブはパペッターで、レベルは17です。ゲームを始める前の段階で喋れないということが分かっていたので自分の口以外でも喋れるパペッターを選択しました』
ふーん、パペッターって言うからには人形を使うんだろうな。ということは腹話術というか、人形に喋らせる機能でもパペッターには備わってたのか?
「あれ?でもパペッターってそんな不遇職でもなかったっすよね?どっちかっていうと優秀な部類だった気がするんすけど?」
「え、まじで?」
ジャック以外の皆がイザヨイを見て、次にジャックを見る。ここにいるのは不遇職の連中ばかりだと思っていたが……?
「あー、まあお前たちの言いたいことは分かる。でもよ、ジョブは確かにいいのかもしれねえが、話を聞いているとここにいてもいいんじゃねえかって思うだろうぜ」
『すいません、ジャックさん……』
イザヨイが申し訳なさそうにジャックに謝る。確かに話を聞いてみないことには始まらないか。
「悪いな、できれば続けてくれ」
「そうだね。変に勘ぐってしまってすまなかったよ」
「ごめんっす」
『い、いえ!こちらこそすいません……たぶん私は役に立ちそうにありませんから。ジョブじゃなくて私がダメなんです……』
落ち込んでしまった。別にそんなことはないと思うんだが……。ここで落ち込まれてもしょうがないし、話してもらいたいんだがな。
「ほらほら落ち込むなよ。役に立たないってんならここにいる連中のほとんどがそうなんだからさ。とりあえず話してみてくれよ」
「そうだよ。僕なんか何のためのジョブか分からないんだからさ。それに比べればなんてことないよ」
「そうっすよ。俺も中途半端なジョブなんすから。ここにいる人は全員理解があるっすよ」
「まったくだ。俺なんか金ダライの上で戦ってるぜ?それに比べりゃなんてことねえよ」
ジャック……言っておくが周りの連中が全員「え?何言ってんの、この人?」みたいな感じになってるぞ。あれは実際見てからでないとわからんからな。
『……ありがとうございます。では、話させて頂きます。ご存知かもしれませんが、パペッターは一度に複数の魔法を撃つことができます。自分の口と、両手に装備した人形の両方の口で発動することでそれを可能にするんです』
ていうことは三種類の魔法を一度に撃つことができるのか。いいじゃないか。なるほど、確かに不遇職じゃないっぽいな。
VR障害の性で口の分の魔法の発動はできないがそれでも一度に二つの魔法を撃つことができるのはいいと思うんだがな。
『でも、人形で撃った方の魔法の威力はだいぶ低いです。普通に魔法を使った時の威力の半分ほどになってしまいます。それでいて消費するMPは変わりません』
「ということは両方の人形の攻撃を当てて、やっと口で使った魔法の一発分の威力ってことか?」
『はい、そういうことになります。拘束系の魔法とかも、効果範囲が狭くなってたり効果時間が短くなってたりしますね』
うーん、でもやっぱり優秀な気もするな。威力は低いけど複数の魔法を同時に使えるし、両方の攻撃を当てれば普通の魔法職と同じだしな。
『あと、声量がこれ以上だせないので戦闘中に連携が取りづらいというのもあります。以前組んだパーティーでもそれが原因でちょっと……』
戦闘中はどうしても叫ばなきゃいけない場面ってのもあるっちゃあるからな。でもそれは……
「それはそいつらがバカだったんだろ。言い方は悪いかもしれないけど、イザヨイを他のパペッターと同じように考えたからってことだろ?」
そいつらが見る目が無かっただけだと思う。たぶん、普通のパペッターと同じように接して、連携が取りづらいし魔法の威力も数も他のパペッターよりも弱いから追い出したんだろうけど……それならそれで他の方法を考えてやればよかったし、そういうやつとして接してやればよかったんだ。
『あ、ありがとうございます……そう言って頂けるだけで嬉しいです。
……話を続けさせてもらいますね。そういうことがあったので、それからはパーティーは組まないようにしてソロでプレイしてました。
こんな感じにアサシンみたいな装備をして、モンスターからのタゲを取らないように立ち回って奇襲みたいに遠距離からじわじわと……っていう感じでやってました』
少しだけ顔を赤らめたように見えたが気のせいか?まあ、アサシンっぽい格好という表現にもれずに口には覆面をしているからほとんど見えなかったけど。
何はともあれ、少しは気が晴れたみたいでよかった。
「普通に強いな。それならいくらでもやり方はあるだろ」
「ホントっすね。そのパーティーとかホントに見る目無さすぎっすよ」
「うん。プレイスタイルは必ずしも同じでなければならないっていうことはないからね。もし僕たちでパーティーを組むとしたらアサシン役で活躍してくれそうだよ」
「そうだろ?だから俺も何度も言ってやったんだ。気にすることはねえってな」
ジャックが少しだけドヤ顔になりながら俺たちを見る。それでいてチラチラとイザヨイを見るのも、本人は隠しているのかもしれないが俺たちから見ればバレバレだ。
海賊みたいな面に恥じない女好きなのか?こいつは。
「ジャック……なんか犯罪臭いぞ、お前」
「おおい!そりゃどういうこった!」
「あ、動揺してるね」
「アバターの姿だけ見てると犯罪っすよ」
「ベオ、てめこの野郎!」
「海賊面の人相の悪い男が美少女に視線を向ける……犯罪だな。リアルでもAGO内でも犯罪だ。今すぐGMコールするか。たぶん強制退場処分になるだろう。さようなら、ジャック。お前のことを忘れて俺たちは先に進むよ。過去を振り返っても仕方ないからな」
「セスぅ!そりゃねえんじゃねえか!?ていうか言葉が辛辣すぎるだろ!お前そんな子だったのか!?」
「あ、いなくなる前にお前に買ってやった水槽代と金ダライ代、しめて5000Gは利子付けて返せよ?因みに、最終的にはお前の全財産が俺の元に転がり込んでくるような額の利子をつけてるからそこんとこよろしく」
「セスくーーーーーん!やっぱりお前、金請求するつもりだったのか!くれたんじゃなかったのかよ!?」
何を言う。あれは俺が実験したいがために買って、それを善意でお前にレンタルしてやっているだけだというのに。
善意のレンタルだからいつ金を取るようになっても俺は責められないと思うんだ。
「騙された!?新手の詐欺だったのか、あれは!?」
「詐欺じゃない。お前に渡す時に『これはお前が持っておけ』とは言ったがくれてやるとは一言も言っていない。勝手に勘違いしたお前が悪い」
「詐欺師の理論っすねえ」
「ジャック、これも授業料だと思ってあきらめるしかないよ。いい経験になったんじゃないかな?」
『ふふ、ジャックさん、大変ですね』
「味方がいねえ!?トミーやイザヨイまでそっち側なのかよ!プリーズ!味方という名のバフをくれ!」
「全員MP切れだ。支援がない状態で一人で敵陣営に突っ込め。そしてMPが回復してもお前にやる支援はない」
はっはっは!と、俺たちの間に笑いが満ちる。うん、一番硬い表情だったイザヨイもだいぶ慣れてきたようだな。表情が柔らかくなっている。
「うっし!じゃあこのメンツでフィールドに行くか!狩りの始まりだ!」
「「「おう!(っす!)」」」
『はい!』
こうして俺たちはビップルームを後にした。狩りの始まりだ!