両親の教え
母からは、「食べ物はよく咬んで食べなさい」と言われ、父からは、「男なら欲しい物は力ずくで奪え」と教わった。両親の教えを忠実に守り、彼はすくすくと育った。
ある時、彼の目の前に、一人の法師が立ちはだかった。法師は身の丈一寸程度と自分よりも遥かに小さかったが、恐れを抱く様子などは微塵も見せず、悠然と振る舞っていた。おそらくは、法師の後ろで怯える大切な姫を守る為なのだろう。
しかし、彼も欲しい物を手に入れる為、諦める訳にはいかなかった。鬼である彼は法師を摘まむと、自分の口へと放り、丸飲みにはせず、ちゃんと奥歯で噛み締めた。