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黄巾無双  作者: 味の素
黄巾の章
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第四話 真名

お前の道を進め、人には勝手なことを言わせておけ。


~ダンテ~



どうも波才です。


あ・・・ありのまま今起こった事を話すぜ!

『俺はこの女性は張角様を知っていると確信したと思ったら、その女性が張角様だった』。

な・・・何を言っているのかわからねーと思うが、

俺も何をされたのかわからなかった・・・

頭がどうにかなりそうだった・・・性転換だとかパラレルワールドだとか、

そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。

もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ・・・。


そうだ、こんな時は落ち着いて素数を数えるんだ。


・・・素数ってなんだっけ?食べられたっけ?何味だったったけ?ブルーハワイ?



「あ、あの~大丈夫ですか?」



気がついたら目の前に張角様・・・張角ちゃんの顔がありました。

もう疑いませんよ?この世界はあまりにも奇想天外過ぎるからこそ気にしたらきりがないのだ。



「・・・ごめんなさい。ちょっとあまりにも予想外すぎて」



うん、うすうす予感はしてたんだ。

でもまさかこの人達だとは思わなかった。アイドルやってるとか全く想定外でした。もし想定済みの奴がいたらその人病気です。頭の病気です。



「それで・・・この書はどうしたらいいのかしら」



張梁ちゃんが困ったように言う。

私が一番困っている気がしてならないんですが・・・。



「あなた方がもらって構いません。それはそうなるべく私達の元にあったのでしょう」



もうこれは本当に世界意志が働いていると見て間違いないですよね。いくらなんでもたちが悪すぎますから。

だがここで私は最も気が付きたくはないものに気が付きました。


趙雲、曹操、漢の圧政、太平妖術の書。ここから導き出される答え。

三国志演義の見所であり、全ての始まり。



『黄巾の乱』



一瞬で冷静になり、熱が引いていくのを感じた。

まさか、この少女達が?否定しようとするが趙雲や曹操も女性なのだ。女だからといってならないという確証は得られない。


やはり大乱は起こるのか?

あの地獄が、全ての始まりが。

そしてこの少女達は犠牲になるのか?時代の礎に、張角様と同じように?


その瞬間思ってしまった。


ならば私はこの娘達を守りたいと。


もう一度機会が回ってきたのだ。

今度こそ守り、彼女たちに幸せをつかみ取って欲しいと。


思わずその場に跪く。



「ただ、できればお願いが一つ」


「なにかしら?」



張宝ちゃんが疑わしい顔で私を見るが、構わず私は言い放つ。



「私は貴方達の配下になりたいのです」



三人が一斉に疑いと驚きの表情を浮かべる。

そりゃそうでしょうね。いきなり見ず知らずの男がこんな事言い出したらそんな顔にもなる。


それでも、それでも私は頭を下げ続けた。



「・・・貴方は私達を知っていて捜してるように思えた。なぜ?」



張梁ちゃんが疑わしそうな顔で私を見ています。

偽る気持ちなどない、ただ思ったことを。



「私はあなた方に救われたんですよ」


「私達に?」



いかにも不思議そうに、張角ちゃんがかわいらしく顔を横に傾けた。



「ええ。私は親も殺され、どうしようもないこの世をこの国を恨みながらいつ死ぬやもしれない道を進んでいました。そこに救いの手を差し伸べてくれたのがあなた方でした」


「ちぃ・・・達が?」


「はい。この私に明確な道をしめし、私と共に戦ってくれました。ですが」



そうだ。

あの時のことをいつでもずっと引きずっていた。

後悔していた。



「私は守れなかった。貴方たちを。いまでも夢に見ますよ。なんで守れなかったのか?なぜ自分は無力だったのか?って。私はずっと後悔し続けてきたんです」


「「「・・・」」」



三人は静かに私の話を聞いてくれている。



「もちろん、それはあなた方本人ではありません。これは私の勝手な自己満足だと解ってます。それでも」



そうだ。

彼女たちはあの張角様達であってそうではない。

だけどどうしてもその姿を重ねてしまうのだ。


もう・・・失いたくはないのだ。

大切な人を。



「私はあなた方を守りたい、あなた方を救いたい、あなた方の望みを叶えたい、そのためならばこの波才、命を捨てる覚悟ができています」



そう言って私は両手を着いて頭を下げた。


辺りが静かだ。

夜中だからか風が冷たい。

静寂がここ一帯を支配する。



「顔を上げてください」



張角ちゃんがその静寂を破る。

私は顔を上げ三人を見つめる。



「貴方が私達を守りたいという思いは解りました。でも...」



そして私に歩み寄り、しゃがんで私の肩にその手を置くと優しげな顔と声で言った。



「命を捨てるなんて言わないでください。私は貴方に死んで欲しくない。貴方に生きていてほしい。そう思ったから」



そう言って私に笑いかけてくれた。


その時私は涙が溢れてきました。

自分でもこの涙の意味は解らない。ですがそれは流れ続け、止まらなかった
















その後、私は彼女たちの配下となりました。

まあ、配下と言ってもお付きのようなものですが。


これはマネージャーなのか?それとも某アイドルゲーみたくPになるのでしょうか?

いいでしょう。貴方達を三国一のアイドルにすると誓いましょう。


これより私はゲーセンに通い詰める鬼になります。いや、例えですよ。


まあ、そんな馬鹿なことはおいといて、張宝ちゃんや張梁ちゃんも私のことを『仲間』と言ってくれました。

一号を殴った時の力を見て実力的に護衛としても十分だと感じたらしいです。


ちなみに成り行き上、黄色い三連星も付いてくることになるのだがこのことが決定しいたとき三人は宿が震えるほどの大声で叫んで喜んだ。

特に一号は「さすが旦那だ!!」といって一番喜び改めて張三姉妹の元に挨拶に行ったのだが私が殴ったり叩いたり蹴ったりした後が酷く晴れ上がり、妖怪みたいな顔になっていたので三人は私の後ろに怯えて隠れてしまった。


一号、私が悪かったから血涙を流して悲しむのはやめてくれませんかね。

三人が更に怖がってますよ?


まあそれで私のマネージャ・・・じゃなくてお付きの仕事が始まりました。


それは最初は大変でしたよ。急に大所帯になったわけですからね。

一号、二号、三号は少しでも楽になればと日雇いの仕事に毎日乗り出しましたし、私も向こうで身につけたアイドルマ○ターの知識や見たりした歌やら振り付けやらを張角ちゃん達に教えました。


時代は歌って踊れるアイドルを求めている!

踊れないアイドルはただのアイドルです!


今は張角ちゃん達が歌い終えたので、みんなで一休みとしてお茶飲みしています。


あの太平妖術にはどうやら人を引きつける術が書かれていたみたで瞬く間に人気が出てきました。

あの街角で人がまばらな状態で歌っていたのが嘘のよう。

町の広場で歌えばみんなが「張三姉妹の歌が聴けるぞ!!」とあっという間に集まり大盛況で終わりを迎えます。


そして今日はついに城の外のでステージを作り野外ライブを行ったのです!!

いるわいるわ、たくさんの人が駆けつけてくれて大成功のうちに終わりました。一号達なんて鼻水垂らして感涙の涙を浮かべてましたよ。

みんな、苦労してここまできましたからね。

私も思わず声を張り上げて三人のライブを楽しみました。



「貴方がいてくれて助かったわ」



そう言うのは眼鏡がトレードマークの張梁さん。



「いえいえ、私には皆さんにこんな風にお茶を入れることしかできませんよ」


「でも、波才さんのお茶ってすごくおいしいよね」


「ちいもそう思う!でもこのお茶ってちょっと普通のお茶とは違うよね?色も緑じゃなくて紅色だし」


「ああ、これは紅茶というお茶ですよ」


「「「紅茶?」」」


「ええ、茶葉をある程度発酵させると緑茶とは違う色合いと風味になるんですよ」



知識だけはあったがいざ作るとなるとかなり手間がいります。

茶葉はたいていが緑茶として売られているので、新鮮な茶葉を手に入れるのはかなり大変です。

幸いにも張三姉妹のファンの方がそういうつてがあったので手に入りましたが、制作にも時間がかかり、最近やっと少量ですが作れるようになりました。



「本当に波才さんは物知りだよね~」


「どこでそういうこと覚えたの?」


「私のいたところにはそれこそ世界中と言っても過言ではない程の情報が入った網があったんですよ」



うん、だいたいは間違ってはいないはず。

でも二人は私がからかっていると思ってる顔をしてますね。

美人さんはむくれた顔もかわいいですねぇ。



「案外冗談じゃないかもしれない」


「え?人和こんな馬鹿な話信じるの?」


「そうじゃなければ彼が私達に教えてくれた踊りや振り付けなどの新しい技法や、歌や言葉の説明がつかないもの」



おや、張梁さんするどいですね。



「う~ん、波才さんってどこに住んでたの?」


「そうですねぇ・・・。とおいとおい所に住んでました」


「またそうやってごまかす!!」



割と全部嘘じゃないんですけど。



「まぁ波才さんが言わなくても私は構わない」


「え~でも人和ちゃんも気になるでしょう?」


「気にはなるけど人間誰だって言いたくないことがあるわよ天和姉さん。彼は私達の事を気遣っていろんな手助けをしてくれてるんだからそれでいいじゃない。実際彼がいなかったら私達はここまで来れた?」



お二方が黙ってしまいましたね。

でも私はそこまでした覚えがないんですが・・・。



「張梁ちゃん、それは私を買いかぶりすぎですよ?あの書と皆さんの努力のたまものですって」


「そんなことないよ!!」



張角ちゃんが珍しく大きな声を出しましたね。

いや、ほんとにたいしたことしてないですよ?



「私達が暴漢に襲われたら助けてくれるし」



そりゃぁ主君である前に一人の女の子ですし助けなければ男が廃ります。



「あんなに魅力的な踊りを教えてくれるし」



すいません。

某ゲームのまねごとしてるだけなんです。

ちょっとこっちも趣味と実益をかねてやってることですから。



「それにこんなおいしいお茶を入れてくれるしね」



そういって張宝さんが私の入れた紅茶の茶碗を上げます。

どうでもいいですけど張宝さん、それでいったい何杯目なんですか?

別に構いませんがそれ、結構高価なんですよ?

皆さんのために作ったので喜んでくれて嬉しいんですが、私の懐は常に氷河期状態です。



「そうだいいこと思い付いた!波才さん」



なにやら張角ちゃんが閃いたらしく楽しげに私に腕を絡ませてきました。

たわわな胸が腕に当たる。・・・っく!しずまれ我が息子よ!!

紳士だ・・・常に紳士であれ!


私は張角様(男)に腕を組まれていると思って心を静めます。

・・・なんだろう。悲しくなってきた。



「ええ!?なんでそんな悲しい顔をするの!?」



いけないいけない、顔に出てたみたいです。いやでもひげ面の張角様に親しげに腕を抱かれるとか虚しくなりますよ?失礼承知で言いますけど、張角様以外なら間違いなく蹴り飛ばす自信があります。



「ああ、なんでもありませんよ。それで何を思い付かれたんですか?」


「ふふ~ん、なんと私達の真名を預けちゃいます!!」



真名。

神聖なもので大切な人にしか教えない名。


それを・・・私に?



「みなさん・・・よろしいのですか?」


「まあ、ちい達にここまで尽くしてくれてるし?」



そういって張宝ちゃんが笑みを浮かべます。



「さっきも言って通り。ここまで来れたのも貴方のおかげだから」



ライブ以外はポーカーフェイスな人和ちゃんも笑みを浮かべて・・・。

ほろり。



「な、何で泣いてるのよ」



「いえ、嬉しいんですよ。すごく。感激して泣いちゃいました」



なんて幸せなんでしょう。

自分の大切な人達の信頼を受けられるというのは。


これが真名を受け取ると言うことなんですね。

一号達には酷いことをしました。

会ったら彼らの真名を受け取らせいただきましょう。



「ちぃの名前は地和!改めてよろしく!」


「私は人和、よろしく」


「私は天和だよ、貴方の真名も教えて欲しいな~?」


「私に真名は無いんですよ。ですから前と変わらず波才とお呼びください。これからもあなた方をアイドルの頂点に立つためにもご協力しますよ」


「「「アイドル?」」」



あ・・・ついつい悪ノリで現代知識出しちゃいました。

現に張梁、人和ちゃんは興味津々です。



「わ、私の住んでいたところで使っていた言葉ですよ。皆さんみたいに歌を歌い、人を引きつける若く美人でかわいい女性のことをいうんですよ」



正しい意味は信仰の対象に使っていたってブッダとイエスの漫画で見たことがあります。

まあ、ある意味信仰ですよね。

間違っちゃいないです。

私も一度アイドルライブ行って事ありますがあの熱気と興奮はなかなか味わえませんよ。


ってあれ?何で皆さん赤くなっているんでしょう?



「えへへ・・・ねぇ、私ってかわいい?」


「ええ、天和ちゃんは私達の故郷でもなかなかいない美人さんです」


「(ねぇ?あれってその気があって言ってるのかな?)」


「(いえ・・・たぶん素だと思う)」


「もちろん地和ちゃんと人和ちゃんも美人さんですよ?」


「「!?」」



あらら・・・みなさん真っ赤になって顔を逸らしちゃいました。

なんででしょう?


もしかしてあれですか。

私如きに美人って言われても嫌だと怒ったとか?あはは、身の程を知らずに余計なことやっちゃいました?


・・・。


私は、私はなんて事をしてしまったんだ。

真名を許してもらったからって調子にのって美人さんだのかわいいだの身の程を知らずにやっちゃいました。

たとえ張角様が女性といえどもご主君。


もうこれ、死ぬしかないですよね?



「急に黙ってどうしたの?」



ああ、天和様。今までちゃん付けで読んだりしてすいません。

そんな無礼な私を気にかけてくれる本当になんてお優しい・・・。それに比べて私は・・・。



「すいません。ちょっと首をつってきます」



「「「え?」」」



その後、私は三人に止められて死ねませんでした。何があったか解らないけど死ぬことはダメとのこと。

本当になんていい方々を主にもったのでしょう。

私、もうあなた方のためなら命も惜しみません!!




波才はまったくいろいろぬけていた。

そしてこの時のショックで一号達の真名の件は忘れられた。



「ん?」


「どうしたんですかいアニキ?」


「いや、なんかものすごい惜しい思いをした気がして・・・」


「き、気のせいなんだな」


「そうかぁ気のせいか。よし、旦那と張角ちゃん達のためにもっとがんばって次のセット作るぞ!!」


「「おー!(なんだな)」」



書きだめが消えていく恐怖って異常です。


桃鉄で例えるなら60年終了で50年目ぐらいで1位、こりゃいけると思ったら貧乏神からのハリケーン変化に他プレイヤーの牛歩カードとのコンボ受けたときぐらいの絶望と恐怖です。


…あの時はリアルファイトになりそうなほど険悪な空気だったのを覚えています。

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