この世のものとは思えない蛇
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大きな蛇が現れた!
二人を軽く呑み込む口の大きさ、丸太を軽く呑み込むほどの長さ、瞳は真っ黒で皮膚は紫に覆われ、長い舌を出した。
「――何ですの」
「ぐぐぐ、食べる」
蛇が口を向ければ、英子を抱きかかえて飛びなさる。赤い斑点ずきずきと蛇ののど元より見えた。
「ねえ、蛇ののど元が赤くなっていない?」
「何も見えませんが」
ココアは大きな木の枝に着地しなさった。彼女の手が震え、息を吐く感覚が短い。英子も同じだった。
「なんですの、あいつは。あんな化け物はこの世界で初めて見ました。まがまがしい、こんな奴がこの世界に来られるわけないのに」
「きっと、私が呼んでしまったのよ」
蛇は大きな口を開け、英子たちを飲み込まんとするが、再び飛んで避ける。木は蛇の胃袋に入る。
「まるで修正液で文字を消したみたい……」
蛇が面を上げると、下あごがより赤くはれる。
(赤い部分って、まさか石井君が言った弱点?)
折れた枝を披露。先端は尖っている。
「ココア、私を下ろしてくれる? おろしてその、さっきの踊りをしてくれない?」
「何かを思いついたのですか、影さん」
英子はうなずく。蛇は首を高く掲げ、にやりと微笑む。
「赤くはれている箇所が蛇ののどあたりにあって、木の枝を投げてやろうと思って。でも私は普通の人間だもんね。どう考えても槍を思い切り投げられない」
「いえ、この世界は想いこそ第一です」
あたりが真っ暗になる。
「何があったの?」
「私たち、蛇に飲み込まれてしまったようです」
「そんな馬鹿な!」
ぐねぐねと道が狭く、得体のしれない空気に押される。
「きゃあ、気持ち悪い」
「みつけた、赤い山――滑る!」
蛇の口側から、分厚い空気が押し寄せ、胃袋側に吸い込まれる。ココアはぬめぬめしたひだを握り、もう片方の手で英子の冷たい手を握る。英子は折れた枝を握り、
「気持ち悪い……クラエ!」
英子が赤い山に木の枝を突き刺すと、内部が大きく揺れて、胃袋側から猛烈な空気が押し寄せてきた。目を開ければ、青い空が一面を覆っていた。隣にはうずくまっている蛇がいる。
「大丈夫ですか! 影さん」
脚にかかる見えない呪い、震えが止まらない。
「た、助けて」
「はい、今……大丈夫ですか……右手が!」
ココアが叫ぶ。
「どうしたの、右手が?」
英子は自分の手を見たけれど、いつも見ているものだ。何かがあったのだろうか?
「右手だけがきちんと見えるのです! さっきまで影に覆われていたのに!」
「本当?」
「ええ、右手――手の周り――だけはきちんと見えますよ」
ゆらり、眠気が押し寄せて来る。
「か、体が……」
「あ、影さん、影さん!」
意識が遠のき……目を開ければ、
蛇は何を表しているのだろう。