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シャラの不可思議(おかし)な事件簿

作者: pupuriko

推理?ファンタジーになっています。楽しんで頂けたら幸いです‼

「あなたは罪を犯してしまった……そう尊い命を奪ってしまったんです‼」


少女の指の先には禁忌の罪を犯してしまった犯人が…いた。

犯人の影は大きく、でっぷりしていた。

そして暗く大きな洞窟からドシンドシンと音をさせながら近づいてくる。

おもむろに口を開き、事件の真相を話し出すのかと思いきや






炎を噴いてきた。


「犯人が攻撃してきましたよ。よくもまぁ毎回こんな怪物共に説教するものですね。こいつはただお腹が空いたから豚を食べただけです。

なのに……逆に感心しますよ。」


もう一人の少女が言葉を発する。


「そんなことない!ブーちゃんの命だって大切だよ?ほら現にドラゴンくんは自主しに出て来てくれたし、あと説教じゃなくてナ·ゾ·と·き!全然違うんだからね。」


小さな少女はほっぺを膨らませ指をちっちと振った。


「…………自首にまで追い込むとはさすがです。背は小さいですがきっと相手も恐れおののいているでしょう。」



「いや~そうでしょう?分かってるね‼」


嫌味が全く伝わらず自慢気に笑う。


すると、ドラゴンの口から炎がこぼれ出てきた。何か文句あるならはよ言えやと言わんばかりだ。


「また攻撃してきますよ、更正施設にでも入れてあげたらいいんじゃないんですか?」


試しにこの場ではあり得ないことを言ってみる。


「……いやいや何言ってるの?」


その言葉にもう一人の少女は安心する。さすがにないよなと


「ほら見て、この様子。全然反省してないよ、更正施設なんて甘いよ‼」


「はぁ!?じゃあどうするんですか?」


「彼を立ち直らすために、私達が出来ることは一つしかない。」


「何ですか?」


恐る恐る聞く。


金のモジャモジャ髪の少女はぐっとため


「そうこのシャラ·ミロルが退治してあげることです!」


目をキラキラさせ、剣を構えた少女を見て


「矛盾してますね。」


とぼそっと呟きもう一人の少女は呆れたのだった。












 ―――――――――――――――――


サンド国の南にあるアルロ村。砂の国と言われる場所には珍しく大量の水、肥えた土地があった。毎年様々な作物が実り、他の七つの国にも輸出するまでで、サンド国の民は飢えに苦しむことは無かった。しかし···


「五日前、収穫間近の作物が忽然と姿を消したみたいです。原因は不明、と言ってもモンスターの類いでしょうが。」


相変わらず淡々と話す少々はアンジェ·ラナーモ。今日も前髪をビシッとあげ、ピカピカの鎧を身につけている。

彼女が読んでいるのは『ニュース!サンド』(新聞のようなもの)擬態の怪鳥『シャビル』暗闇のハンター『チャンヌ』などの話題か載っている。


「行きますか、と聞いても無駄ですね。この話は無かったことにしましょう。」


「えっ‼ひょっひょっと待って。」


「口を閉じて下さい。とても汚いです。」


説教をされた人物はごくんと食べ物を飲み込み、


「いや、だってこんな美味しいもの食べない方が損、君人生損してるよ!」


両手にサンド名物『砂焼き』(饅頭のようなもの、熱したサンドの砂で蒸しあげている)を持ち、アンジェと対照的なラフな格好のシャラは呆れた顔をした。


哀れな人という感じの目で見つめられたアンジェは、前も散々だったしこんな人ほっていこうと考えたが


「ふぅ、仕方ありません。見て見ぬふりは出来ません。第一··」


口を閉ざし、眉間にシワを寄せてシャラを見ながら


「たった今ここでお金を使い果たしてしまったので怪物共を倒して懸賞金を貰わなければいけません。」


と言った。

元凶となったシャラはアンジェの考えなどお構い無しに


「任せて‼この事件ドトーンと解いてみせるから。それに懸賞金も出るなんて素晴らし過ぎるね。」


と目を輝かせる。


「毎回出てるじゃありませんか。それに一番最初に懸賞金の事話しましたよ。…やっぱり話しを聞いてませんね。」


アンジェの小言も砂焼きを頬張る彼女の前では無駄だった。





 ―――――――――――――――――


事件の現場となったアルロ村は二人が予想していた被害よりひどかった。畑は荒らされて所々に大きな穴が開き果樹園の木も真っ二つに折られ、落ちてひび割れた実が散乱していた。そしてわらで造られた家々も倒壊。ほぼ平地のようになっているので村の外に広がる砂漠が見えるほど。

きれいに残っているのは入り口にある『アルロへようこそ‼』と書かれた看板くらいだ。



「これはかなりの被害ですね。どうやら一刻も早くモンスターを退治しなければいけ··」


アンジェはふと口を閉ざし、辺りをくるくる見回した。


「いない。」


いつの間にかシャラがいなくなっていた。


 ―――――――――――――――――


「ねぇ!そこの方、五日前の事件を教えて欲しい。」


シャラはすでに村の中に入り、事件を知るために復興の作業をしている一人の青年に声をかけた。


「えっ、君もしかしてモンスター退治に来た人?」


青年は少しびっくりしたように目を開けて質問した。


「もちろん‼事件の情報が必要なんです。」


「で、でも君···いいか、話すだけなら。 

五日前、村の皆が寝静まった時に突然、悪夢が起きたんだ··」


真っ暗な夜、かすかな月の光がさしていたが急にその光さえもなくなった次の瞬間!バキバキと大きな音がした。さすがに目が覚めて何かと外に出ようとしたら、


「意識が無くなっていたんだ。ものすごい突風が起きたのは覚えているけど。」


青年の話しを右のこめかみにグーパンチをかましているという変わったポーズで聞いていたシャラだったが、


「では、質問!

サンド国は、よく砂嵐が起きるからレンガの家が多いけどなんでこの村はわらの家が多いのだろう?」


と質問した。


「あぁ、ここは見た通り変わった土地で、今まで一度も砂嵐が起きた事がないんだ。ただでさえ暑い国だから、別にわらで家を作ってもいいんじゃないか、ということで風通しのいいわらの家が多いんだ。そのおかげでけがもたいしたことなかったんだ。  

お嬢さん、君みたいな少女はモンスター退治に向いてないよ。きっと不思議な力で風を起こすおっかない怪物だ。今回は作物が狙われたけど、次は僕達人間を襲いに来るはずだから。」


青年はぶるぶると身震いした。


「··ふ~ぬ、分かった。情報提供ありがとう‼」


シャラは変わったポーズを解き、適当にお礼を言って次の場所へ向かった。


 ―――――――――――――――――



「穴ぽこだらけだ。」


シャラの目の前にはいつも様々な種類を実らす畑の姿はなく、荒らされて穴が所々開いた悲惨な状態が広がっていた。

その周辺をぐるっと回ったり、じっと見つめたりしていると、かろうじて一本生き残った木を見つけた。シャラは慣れた手つきで登り畑を見下ろすと


「あ!なるほど。」


この間隔、この形といったらあの逃亡者に違いないと思いつき、にんまりとした瞬間!地面に伸びていた。


「勝手に動かないで下さい。探す時間が勿体ないですから。」


冷ややかな目がシャラを見下ろす。


「君何してるの!!せっかく生き残った大事な木を折るなんて。」


木の下からシャラがよいしょと立ち上がる。特にけがはないようだ。


「チッ…あなたが木の上にいるのを見つけ、きっと降りれなくなっていると思ったので仕方なく槍で突きおったのです。」


ばればれな嘘であったが、


「あっそうなの、ありがとう!でも自力で降りられるから次からは折っちゃダメだよ‼」


とバチンっと片目をつぶってにっこりと笑った。


「······何か分かったことはあるんですか?」


それを無視しアンジェはシャラに尋ねる。


「あともう二つ気になることが··」


途中でシャラは駆け出し、牛や豚などの家畜がいる家の方へ走りだした。

一つため息をつき、アンジェもそれに続いた。


 ―――――――――――――――――


「質問よろしいですか~‼」


急に現れた訪問者に住人の女性は驚いたが、


「えぇ、いいわよ。」


と少し笑って言った。


「ここの家は壊れたりしてないみたいですね?」


「そうなのよ、畑の周辺からはなれているからかしら?

家も少しだけしか壊れなかったし、家畜も無事で良かったわ。」


そう言う女性はほっとしたように息を吐いた。


「家畜は本当にいなくなっていないんですか?」


「えぇ、一匹も。でも次狙われるかもしれないわ。」


シャラはヘンテコなポーズをしたまま次の質問をした。


「村を襲った犯人を目撃したりは?」


「犯人…? 事が起こるまで寝てたから分からないわ。」


犯人という言葉に戸惑いつつ、すまなさそうに視線を落とした。


「協力感謝します‼」


突然ヘンテコポーズを解き、シャラはまたどこかへ走りだした。

ペコリと軽く頭を下げアンジェも後を追った。


「まだこの辺り危ないから気を付けてね!」


そんな注意も、二人にはもう届いていないようだった。


 ―――――――――――――――――


「あのご老人から何を聞いていたんですか?」


アンジェがシャラに追い付いたとき、丁度白髪のご老人とシャラが話終えていた。全く無駄に足が速い、この速さをもっと活かして欲しい!そんな願いもこの鈍感少女に届くわけもなく、


「よし、いざ犯人とご対面しに行こう‼」


アンジェの質問、願望も見事に無視し一人元気よく走りだした。


一人で行ってろ!と心では叫んでいても、アンジェの足は影のさすほうへと動き出していた。


 ―――――――――――――――――


「何もありませんが…」


村を出て、砂漠の方へと走っていた二人だったが目の前にあるのはサラサラと舞う砂と小高い砂丘。


「そこを槍で突いてみて!」


シャラは小高い砂丘を指した。


「…分かりました。」


怪訝な顔をしつつ、アンジェは思いっきり槍で砂丘を突いた。


すると、



『ピギャー‼』



辺り一面に、耳を塞ぎたくなるような鳴き声が響き渡った。


「これは…」


さすがのアンジェも少し目を見開いた。



「まず一つ、家畜はなぜ襲われなかったのか?」


目の前の光景にも微動だにせず、犯人を見つめ人差し指を立て、謎解きを始める。


「答えは家畜…動物を主食にしない。そう!ベジタリアンであるということ‼」


「ベジタリアン…」


アンジェは不覚にも吹き出しそうになったが、本人はいたって真面目なようだ。


次にシャラは中指を立て、


「二つ、畑の穴ぽこ。一見不規則に出来た穴のようだけど、上から見るとどれも三つの穴が三角形に並び、少し離れて一つの穴があった。…そうまるで鳥の足跡のように。」


続いて薬指を立て、


「三つ、突然の突風。これは満足して飛び立とうとしたときの風だね?降り立つ時よりも飛ぶときの方が力がいる。あなたが村に来たときに村人が気づかなかったのはそのせいだね。狙っていたのは畑だけ、果樹園の木は突風によってバキバキという音をさせ折れた。」


最後に、と手を下ろし犯人を睨み付け


「ご老人にこの砂丘はずっと昔からあったのか聞くと最近出来たばかり、砂漠はよく地形が変わるから気にしてないと答えてくれた。けど、化けるというのはあなたの得意分野..」


ぐっと溜め、


「怪鳥シャビル…あなたは村の人の努力を踏み潰した‼その罪は重い!」


ビシッと人差し指を砂丘に向けた。


怪鳥シャビルは突かれた所を痛そうにしていたがやがて身を起こし、二人に向かってピギャーと威嚇した。



「はい流石です。ということで後は頑張って下さい。」


アンジェは淡々と称賛の言葉を吐き、背を向けた。





「だから罪を償うためこのシャラ·ミロルに退治されなさい!」


と目を輝かせ剣を構える。


更正の機会はいいんかい!もう知らんわと言わんばかりにアンジェは足を動かし歩を進めたが、少し振り返りシャラとシャビルを見比べる。

そして気づく。あの人シャビルを100/1にしても小さいんじゃないのかと、そう思うと可愛そうになった。


「仕方ありません。」


シャラの元に戻り、槍を構える。すると、シャラが振り返り


「よし‼精神的には追いつめた。あとはとどめをよろしく!」


とウインクをする。


しかしシャビルはこっちに向かって猛突進してくる。


どこが追いつめただ、追いつめられてるのはこっちだ!とアンジェの標的がシャビルからシャラへ変わろうとしているのを本人は気づいていない。


「あっ‼早くしないとこっち突っ込んでくるよ!」


このままでは吹き飛ばされる、それに


「…懸賞金とこの村の人のためです。」


そう呟くとアンジェは獲物に槍を向けた。










 ―――――――――――――――――


次の日、ニュースサンドに大きな見出しが載った。


『怪鳥シャビル、遂に天罰下る‼討伐したのは誰?

 …………役所によると昨日シャビルの首を持って討伐者が来たもよう。だが匿名希望により詳しいことは発表されていない。噂によると若い二人組であるとも言われている。……』


この記事が彼女達なのか分からないが、きっとまた不可思議(おかしな)事件を追っているに違いない。たぶん二人で…

読んで頂きありがとうございました‼

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― 新着の感想 ―
[良い点]  こういう軽いノリのミステリーは好きですし、これは謎解きよりも主役2人の掛け合いと馬鹿っぽい謎解きを楽しむ作品だなと思いました。でもこのタイトルは「シャラの」というより、「アンジェの」とし…
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