凍える夜に君と…。縦書き表示RDF


差別的な表現もありますし、警察官の仕事もあくまでイメージなので、変な印象を抱かないでいただきたいと思います。ただ、ひた向きな純愛小説にしたかったので、納得のいかない部分は一重にわたしの表現不足、説明不足です。
凍える夜に君と…。
作:ゆば わたる


外は―冷たい風が吹いている。
警らになんか出たくないな。
そう思わせる冬の夜は、冷たくて淋しい。
俺、蒔村圭太は交番のこう開から誰も通らない道路をぼおっと見ていた。
あぁ、めんどくさい。
憧れてなった警察官の毎日は、スリリングな事件が起きることもなく、日々同じことの繰り返し。
ひったくり防止の声をし、自転車を停め、苦情を言われる。
体を動かして何かをすることは嫌ではない。警察官としての仕事も嫌いではない。
だけど、最近自分がクサってるなって思う。
交番の奥では50も半ば過ぎた主任警察官がいびきをかいて寝ている。
こう開まで響くいびきに、俺はそちらを見やる。
別に―いいんですけどね。
50過ぎて、夜勤勤務をこなしているのだ。寝てしまってもしかたない。
事実俺は、主任のことを尊敬している。
拝命して30年。地道にこの仕事を続けてる主任はすごい精神力の持ち主だと思う。俺はまだ5年目だが、正直こんな日々があと25年も続くのかと思うと息がつまりそうになる。
俺は小さくため息をつくと、書類整理を始めた。
外の寒さが窓越しに伝わってくる。
外の道路を一台の車が走り去っていった。
寒さで曇った窓に、テールランプが滲んで見えた。
俺はもう何度目かのため息をついた。
午前2時―。
もう、全てが眠りにつく時間だ。
時計を見るために、下を向いた時、がたりっと交番の入り口を開ける音がした。
俺は目を上げながら、どうかされましたかといつも通りに声をかけた。
が―。
女の子?
髪の長い、色白の女の子が交番に入ってきた。
背が高くて痩せている、高校生ぐらいの子。
薄着で、口をぎゅっと結んで顔を強ばらせている。
事件か!
彼女の姿を見て、俺はがたりと椅子から立ち上がった。
「どうかされましたか!」
冷静に、と心で呟きながらも、焦る気持ちで彼女の方に駆け寄る。
「こんな遅くに、そんな薄着で!」
「…いんです…。」
彼女は、俯きながら小さな声で泣くように呟いた。
垂れ下がった髪で彼女の顔が見えない。
「え?なんて?」
「あの!わたし、死にたいんです。」
はぁ―?
俺はさぞ、ひどい具合に間抜けな顔をしていただろう。
がばっと顔上げ、そんな俺を見る彼女の目には強い意志が表れていた。
「だから!わたし、死にたいの!」
俺は、張りすぎた緊張が一気に溶けるのを感じた。
重大事件かと思った。殺人とか強盗とか―。
こんな平和な地区にそんな犯罪起きるわけないよな。
俺は数分前の自分に呆れつつ、こう開のパイプ椅子に座った。
机を挟んだ向かいで、彼女がじっと俺を見ている。
あれか?ちょっと、頭が飛んだ子かなんかか?
「で、君、何しに交番来たの?」
俄然、興味の引いた俺は淡々とした態度で話し掛けた。
こういうちょっと、頭の痛い人の対応は力を入れすぎてはいけない。適当に流すのが一番いいのだ。話すこと全てが妄想と言っても過言ではない。淋しい気持ちを紛らわせるために、よくこの手の人は警察にちょっかいをかけにくる。
あまりに親身になりすぎると、懐かれてしまう。
「死にたいって言ってるでしょ?」
怒ったように言い放つと彼女はどすんと、こう開にある来客用のパイプ椅子に座った。
居座るつもりらしい。
いるんだよね〜こういう行動と発言が違う人。
警察にどうしてほしいんだっての!
俺は前に、自殺しようとしたが死にきれなかったと110番してきたやつを取り扱ったことがある。
そこで俺がやったことは、そいつの名前と住所を聞いて家まで送り届けただけ。少しばかり話を聞いてやって、死んだら元も子もないと人生などよく分からない俺がそいつを慰めた。
いったい警察官にどうしてほしかったのか。そいつの気持ちは今でも分からない。
「で、君名前は?年は?まだ未成年でしょ?こんな時間まで未成年が出歩いていいと思ってるのか?住所は?送ってやるから。」
メモをだし、やる気なしに形式的に聴取を始めた。
「わたし、死にたいって言ってるんですけれど?」
彼女(髪の毛が長くて、異様だから貞子と呼ぼう)、貞子はぶすりとする。怒って膨らんだ頬は未だ青白い。
「死にたいって、君は俺にどうしてほしいんだ?」
俺はため息をついた。
そんな俺の態度が気に入らなかったのか、貞子はいきなり立ち上がったかと思うと、スカートのポケットから小型の折畳みナイフを取り出した。
「なっ!」
俺は思わず立ち上がった。
「待て待て!そいつを放せ!」
右手に握ったナイフを高く掲げ、左手をゆっくりと上げてゆく。
少し捲れた左手首には幾本もの切り傷の跡、躊躇い傷がついていた。
こいつ、常習か?
俺は、やめさせるべくすぐ側にあったパイプ椅子を持ち上げた。
「うりゃあ!」
思い切り貞子の右手目がけてパイプ椅子を振り下ろす。
貞子は、まさか俺がパイプ椅子で自分に殴りかかってくるなど思いもしなかったのか、目を大きくして驚いて硬直している。
バンッ!
チャリン!
ナイフが勢い良く飛ぶ。
貞子はナイフが床を跳ねた方を見やった。
そして手を伸ばそうとした。
が、その前に俺は彼女の手を握る。
「やめろっ!」
俺の大きな声に、貞子はびくりと体を縮こませる。なんだ?その目は?
黒く深い瞳が怯えたように俺を見る。
「どうした?」
交番の奥から、寝呆けたような主任の声がした。
助けを呼んだほうがいい。
俺は直感ではそう思っていた。だって、こんな一本ねじが飛んだやつ相手に怪我させず捕まえるのなんか絶対に無理。
でも―。
「すいません。ちょっとファイルを落としました。気にせず主任は寝ててください。」
なんでかな?
貞子が訴えかける目でこっちを見るから、思わず言ってしまった。
だって貞子の目は、助けを求める目だったから。
俺はパイプ椅子を引き寄せ、貞子の手を掴んだまま貞子の傍に座った。
貞子は、驚いたような、不思議そうな顔で俺を見る。
「悪かったよ。」
そう言って、パイプ椅子に座るよう促すと貞子はこくりと頷き、すとんと腰掛けた。
素直。子どもだな〜。
何故、助けを呼ばなかったのか。
黙り込んだ貞子を見て、何の気なしに考えていて、ふと気が付いた。
『お巡りさん来たら、もう大丈夫?』
目に涙を溜めて、俺に訴えかけた女の子。あの子もこんな深い色の瞳に悲しみを色濃く映していた。
赴任当時、まだ半人前だった俺は今の交番の隣にあるもう少し大きな交番にいた。
そこで110番通報の指令を受けて駆け付けたことがある。
夫が家で暴れる。駆け付けると男は走って逃げ、そこには泣き崩れた女の人と一生懸命涙を堪えた女の子がいた。
『お巡りさん来たら、もう大丈夫?お巡りさんありがとう。』
涙目で俺を見つめたあの子。
俺はただ駆け付けただけ。
でも少女にとってはとても大きいことだったのかもしれない。
正直、まだ仕事に慣れなくて気疲ればっかして、俺は仕事に嫌気がさしていた時期だった。
でも―。
『ああ、大丈夫だ。』
俺は女の子を強く抱き締めた。
大丈夫かどうかなんて、半人前の俺には分からない。でも、それで安心してくれるならいくらでも大丈夫だと言おう。何かあればいつでも駆け付けようと心に決めた。
あれからもう何年も過ぎて、あれから一度もあの子に逢うこともなく、俺はあの時の真剣な気持ちを忘れてしまっていた。
淡々とした同じ日々に、ただ形式的にこなす日常の中で。
今、貞子の目を見ているとあの時の自分が蘇ってくる。
青いなと思うほど直向きで、もしかしたらあの時は今までの人生で一番、自分の理想の警察官に近かったかもしれない。
「君、寒くないの?そんな薄着で。」
コクリ。
貞子の長い髪がばさりと揺れる。
俺は握った手にもう少し力を入れ、左手も添えてやった。
上着を貸してやりたいが、手を放すと貞子が何をするか分からない。
窓の外を寒い冬の風が吹き抜ける。雪すら降らない、凍える夜。
しんっとした夜に、光々とした交番。
世の中で起きているのは俺と貞子の二人きりのようで―。
俺は何も聞かなかった。
言いたいことがあるなら、向うから言ってくるだろう。
言いたくても、言えない。そんな複雑な気持ちをうまく聞き出してやる自信は俺にはない。
俺はただ、警察官としてこいつが自殺しないよう見守り、そして一人の人間として、自分より若い人間の複雑な感情を一緒に受けとめてやるだけ。
「ねぇ、何も聞かないの?」
不思議そうに、不審な顔で貞子が俺を見る。
「別に。お前は俺が質問して答えるのか?」
「…。」
「う〜ん?じゃあ…一つだけ。名前は?」
貞子は顔を歪め、なんともいえない表情をした。
「お前…君は俺をお巡りさんと呼べばいいが、俺には君を呼ぶ言葉がないじゃないか?君はいくつだ?高校生か?まさか高校生とは呼べないだろ?」
なるほどと言いたげに、貞子は頷く。
そして小さな声で、みわと言った。
「みわ?どんな字書くの?ん?なんだ?その顔。世間話だよ。事情聴取じゃない。俺は蒔村圭太。土二つ重ねた圭に太いって書く。よくある名前だよ。」
簡単な字で、よくある名前だが、気に入ってはいる。響きが好きだ。
顔も頭も体力も並みの俺、唯一両親からもらって感謝しているのが名前だ。まぁ顔も頭も体力も、両親はこれをあげようと思って俺を生んだわけじゃないから仕方ない。
でも産まれて初めてのプレゼントにはちゃんと素敵な名前を用意してくれていた。こう生きてほしいという願いを込めた一番最高のプレゼント。
「美和。美しいに平和の和。」
貞子、もとい美和はぽつりと呟く。
「美しい和か!いい名前だな!」
美和が驚いたように顔全体を俺に向ける。
なんか、変なこと言ったか?
「何、変な顔してるんだ?いい名前じゃないか。ご両親の願いが込められててさ!」
俺が取り繕うように言うと、美和は更に顔を歪めて得も言われぬ表情をした。
「うちの両親、離婚した。」
「…そいつはごめん。でも離婚しても君が産まれた時の感情は変わらないよ。今でも同じさ!君には美しく、和やかにいてほしいんだと思う。表面的な美じゃなくて、心の美しさってやつかな?そういう心があって初めて平和とか和やかとか分かるもんな。」
「…。」
「なんだよ?言いたいことあるなら言えよ。」
美和はぽつりと一言。
「意外にロマンチスト。」
むかっ!
「悪かったな!あのな、警察官はな!自分の理想にあつくないとやってけないんだよ!ビジネスだけじゃ無理だ。自分のポリシーがなきゃ勤まらない。不平不満、苦情、警察官じゃどうにもできないことだってあるのに、一般市民は好き勝手言ってくるんだ。交通切符一つきるのだって、職権濫用だとぬかしやがる。こっちだって好きできってるんじゃないのに…。なんで警察官がいるところで違反するんだ?その時だけルールを守ってりゃいいんだ。制服着て目立ってるのに気付かないほうがおかしい。気付かないってことは、何かあっても気付かないんだから、一番事故を起こしやすい人種なんだよ。」
思わず熱くなってしまった。
美和はぽかんとした顔をしていたが、俺が我に返り恥ずかしそうにするとぎこちなく笑った。
初めての笑顔だった。
「初めて言われた。いい名前って。」
「ふ〜ん。」
俺は恥ずかしさを隠すように、違う方向を見る。
「圭太、はいいね。」
「お前、俺は警察官だろ?お巡りさんと呼べよ。もしくは圭太さんだ。」
「堅苦しい。」
「おい!お前はどういう教育受けてんだ?年上には礼儀を持って接しなさい。まぁ年上とか関係なくても初対面の人に呼び捨てはダメだろ?」
俺の説教に美和は眉を寄せ、切ない顔をした。
俺、なんか変なこと言ったか?
「そんなこと言ってくれる人いない。お父さんは離婚していない。お母さんはわたしのことキライだから一緒にいない。」
どうやら複雑そうな家庭。
大変だな。
うちは普通の家だから、こういった特殊ケースは理解してあげたくても理解しきれない部分がある。
親身になりたくても、なんて声をかければよいか分からない。
「おい、美和。」
「あっ、お巡りさんも呼び捨てした。」
「挙げ足をとるな!」
「とってないもん。ふふっ。お巡りさん単純。簡単に信じる。」
美和はぎこちなく口を歪めて、くつくつ笑った。
「はぁ。おかしかった。いい暇つぶしになった。ありがとう。お巡りさん!」
ぽかんとしている俺を置いて美和は立ち上がる。
美和が何も言わないものだから、ただ乗せているだけになっていた手がそれに合わせてするりと離れた。
「お、おい。」
「わたし帰る!」
なっ!自分勝手な!!
心配したのに、意味が分からない。一体こいつは何しに交番に来たんだ?
「ねぇ?送ってくれるんでしょ?早くしてよ。」
「ちょ、ちょっと待て!用意するから!絶対どこにも行くなよ!」
俺はそう言うと急いで中の休憩室に入った。
外套を着て、寝ている主任に一言声をかけて―。
と…。
俺が急いで段取りを付けているとがらっと入り口が開く音がした。
「しまっ!」
こう開を覗くとそこに人の影はなく、ただ外からの寒さが漂っていた。
幻か?
そう思わされるほど交番はしんとしていた。
急いで交番の外に出たが、外は身も縮むような寒さ。暗い道には人の気配すらない。
今までの自分と美和の会話がまるで夢のように―。
「どうした?」
奥からのそのそと巨体を揺らし、大きな欠伸をしながら主任が出てきた。
「いえ…。」
「なんだ?歯切れ悪いな。まぁこんな寒い夜は誰も外に出ん。ってことは誰も警察官なんて呼ばん!お前もこう開なんかにいないで奥でゆっくりしてろ。」
くるりと俺に背を向けると主任はまた奥へ入っていった。
なんだったんだろう。
俺はこう開の机に頬杖をつき、つい先ほどに思いをはす。
クサってる俺に、誰かがくれた出会いだったのかもしれない。
昔の、あの熱い気持ちを忘れるなと。
ふふっ。
笑いが零れた。
寒い寒い、身も縮むような夜。
でも俺の心は暖かかった。
また…美和に逢うことはあるだろうか?
美和の、あの寂しげな瞳のわけを知りたい。
窓の向うの寒い夜。
暗い夜空を見つめて物思いに耽る。
美和の瞳は、今宵の空のようだった。深く、沈みゆく淋しさを色濃く映した瞳が、見えなくなっても俺に訴えかけてくる。
さて、俺もそろそろ奥にひっこみますか。
俺もまだ腐るには早すぎる。
席をたった時―。
右耳のイヤホンに110番指令が流れた。
『ただ今、110番で児童虐待と思われる家庭内の暴力事案入電中。場所M市桜町3丁目、申告人芳澤女性、精神病の40歳娘が暴れ、16歳孫に危害を加えるとの内容。至急、P.M派遣。パトカーの先行派遣。M署どうぞ。』
桜町3丁目はうちの交番の管内だ。
俺の体を緊張感が、電流のように走り抜けた。
「主任!」
「おぅ!聞いとった!わしもすぐ準備して行く。お前は先に行っておけ。」
「はい!」
「あんまり意気込むなよ!視界を狭くしちゃ元も子もない。警察官は常に冷静でなくてはならん。ほら、さすまた忘れとるぞ!なってない証拠だ。どんな時でも受傷事故防止だ。警察官も一般人も。」
俺は主任の言葉に急いで、さすまたという暴れる人間を押さえ込む器具を持って自転車に飛び乗った。
主任の忠告もその時の俺の耳には留まらなかった。
16歳孫―。
もしかしたら美和かもしれない。
気が急いて、自転車がうまく漕げない。
気持ちばかりが先に行く。
美和は何故、交番に来たんだ?
美和のあの目は俺に何を訴えかけていたんだ?
『MからM13。至急110番指令に向え!申告人の話では、数年前に家庭内暴力が原因で別れた娘が暴力のショックで精神を患い、最近では自分の娘が自分を殺すかもしれないと疑心暗鬼になっていたとのことだ。至急!至急、この16歳娘を保護しろ!』
俺の無線機が呼ばれる。
分かってる!そんなことは分かってるんだ!
くそ!なんで俺はあの時目を放したんだ?
もうすぐ桜町3丁目。
110番指令で入った住所番地はこのへんだ。
あっ!
「美和!」
閑静な住宅街の一角。
こんな時間に一件だけ明るい家があった。
その明かりを受け、髪の長い女性のシルエットが揺らぐ。
直感で美和だと思った。
俺の声に顔を上げた女性に明かりが当たる。
美和だ。
「け、圭太!」
小さな体を俺はぎゅっと抱き締める。
冷えきっていて、悲しくなるぐらい細い。
明かりのついた家で、ヒステリックな叫び声が聞こえる。
悲しみに耐えていた美和の深い瞳は、今は関をきったように溢れる涙で揺れていた。
「大丈夫だから。もう大丈夫だ。」
自分の着ていた外套を美和にかける。
パトカーのサイレンがだんだん大きくなり近づいてくる。
「お、お巡りさん来たらもう大丈夫?お巡りさんありがとう。」
美和の零れるような涙声。
「ああ。大丈夫だ!」
「ありがとう…。またわたしを助けてくれて。」
美和の目が俺を見つめる。
ああやっぱり。本当は気付いていたけど、無意識に気付かないふりをしていただけ。
黒くてさらりとした髪、黒目がちな大きな瞳。
あの日俺に助けを求めたあの子。
「大丈夫だから!だからもう二度と死にたいとか言うな!お前は!俺の大切な人なんだ!俺はお前のお陰で、今も昔も警察官としての理想を忘れずにこれた。小さく震えるお前を抱き締めたあの日、本当は俺も救われたんだ。だから…二度と、自分を傷付けないでくれ。」
ぎゅっと力を入れる。
美和の震える瞳の中に俺が映っている。
「わたしのこと…覚えていてくれたの?」
「当たり前だ。」
「お巡りさん、来たらもう大丈夫だよね。来てくれてありがとう。覚えていてくれて、ありがとう。」
俺の胸の中で美和はしゃくり上げている。
色々な感情が溢れだして、自分では対処できないのだろう。
こんな小さな体で頑張っていたんだ。
なんと声をかけたらいいんだろう。
分からない。
―けど…。
「大丈夫だ。いつでも助けにくる。君が呼べば、どこへだって駆け付ける。こんな寒い夜はいつだって、君の心を暖かく包み込むよ。」
これだけは確かな思い。
この夜が明け、太陽が昇っても、あの日の誓いを俺は絶対に忘れない。
星も、月さえない凍える夜。
俄かに騒めきだした夜に、ただ俺は美和をいつまでも抱き締めていた。














ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




◆BACK
小説家になろう