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テニプリ小説〜バンソウコウ〜
作:文月


 「菊丸先輩。」

部活も終わり、菊丸が大石と一緒に下校しようとしていた、ちょうどその時だった。
生意気なルーキー、越前が1年のクセにでっかいテニス用のバックを持って菊丸にこういった。

 「なんでいつもバンソウコウしてるんスか?」

 「あぁ、これ?」
菊丸が意地悪そうにニヤリと笑って大石の方をチラリと見る。大石もさも愉快そうにクスクスと笑っている。
それを見て、着替え終わった桃城も興味を持って越前の隣により、

 「そーそー。ずっと前から気になってたんス。
教えてくれたって良いじゃないですか!」


 「おちびちゃん達にはまだ早いのーっ。
じゃねー。」

 「鍵、ちゃんと閉めておけよ。」

そう言って二人とも部室から出て行ってしまった。越前も桃城もちょっとイラッときて、二人は密かに二人の後を追ってみることにした。



                   ***
 「?どしたの大石。さっきからニヤニヤしちゃってさ。」

 「いや、さっきの越前の質問を聞いて、ちょっと思い出して。
越前と同じ頃だったよな。お前がそのバンソーコーをほっぺに付け始めたの。」


 「そだね。」

そう言って、二人は夕日の沈みかけた空を見上げた。

その様子を越前と桃城は追いつづける。急にそんな彼等に、声がかけられた。

 「越前、桃城。何やっているの?二人とも」

心臓が跳ねあがるほどの驚きで、思わず声を出してしまいそうになった。振り向くと、不二、乾、部長の手塚にタカさんまでいた。
桃城が事情を説明すると、不二も興味深そうな顔をした。

 「そういえば、僕等も知らないね。
フフッ。面白そうだ。」

 「新しいデータを取れるかもしれん…だがあの二人がそう簡単に秘密を話してくれるだろうか…。
話してくれる確率は、30にも満たない。」


 「折角今良い雰囲気だったのに先輩達が邪魔してくれたおかげで…


ってああーっ!いなくなってる!!!」

桃城が道路を見てみるが、ノラネコが横切っているだけでもうだれもいなかった。
しかもその猫の頬には白っぽい模様。しかもこちらを向いてにんまりと笑った。
不二はさも面白そうに言う。

 「菊丸の、身代わりの術だね。」

 「あの猫、うちにも時々来るなあ。」
思い出した様にタカさんまで言った。



                   ***
 「おっはよー!不二〜!」
朝部活へ行く前の坂道。先を歩いていた不二に、後ろから菊丸の明るい声がかけられる。

 「おはよう、英二。
…昨日桃城達が悔しがっていたよ。」

 「ほぇ?何で?」


 「英二のバンソウコウの秘密を知れなかったって。…ねえ、僕にも教えてくれない?
今度何か新しい歯磨き粉買ってあげるから。」

菊丸の好きなこと、それは新しい歯磨き粉で歯を磨く事。新しい歯磨き粉と言うワードに、菊丸も少しひかれる。
 「マジ!?ん〜、でもな〜。」

 「大石と約束でもしてるの?」

 「そうじゃないんだけどさ、…笑わない?」

 「これ以上は、ね。」

そう言っていつもの笑顔を浮かべる不二。菊丸はハアと溜め息をつくと、少し身振り手振りも交えながら、こんな話をし始めた。



                    ***
それは、まだダブルスを組み始めて少しの頃だった。
まだあまり上手と言う訳でもなかったが、二人で組んでやるテニスは結構楽しかった。
大石と組んでやるダブルスは、あぁ、自分以外にもコートに味方がいるんだなとちょっと嬉しかった。

 「大石、カバー頼む!」

 「うん、分かってる!…あっ!」

その日の成績も全然だった。でも5組中1組にだけでも勝てたという事はちょっとした進展だった。

そして部活も終わり、二人でいっしょにまた反省会をしようかと言う話をしていた時だった。ある二人の二年生がこちらに近づいてきて、帰ろうとしていた二人をある公園に呼び出した。

 「あの…先輩達。」

不審に思った大石は、緊張しながらも前を行く先輩達に話しかけようとした。だが、彼等は振り帰ろうとはせずにトイレの裏側の、人なんて全く来ないような所へと二人を連れてきた。





そしておもむろに、金属バットで大石の頭を殴りつけた。



 「大石!…何するんだよっ!」


 「ムカツクんだよ、おめーら二人。」
大石の血の付いたバットを持ったほうが言うと、続いてもう一人の先輩もニヤリと笑いながら、でもどこか怒りがあるような感じで二人に話しかける。


 「おめーらのせいで俺達が弱く思われちまってよお、部長にはからかわれるし、他の奴等からも馬鹿にされるんだ。
さあここでいうんだ。
 『もうダブルスはしません、テニスもしません。』ってな。
じゃねーと、お前もボコボコにしちまうぜぇ?」

大石をかばいながら菊丸は二人の先輩を睨む。



 「しらねーよそんなの!先輩達が弱いだけじゃん!
大石みたいにすげー努力もしてないくせに、勝手なこと言うなよな!」



菊丸は知っていた。
大石が、あのコンテナでずっと壁打ちをしていたのを。
大石が、自分と一緒に頑張ってくれている事を。




だからこその叫びだった。
だが二年生達はさらに怒りが募り、バットを持っていないほうの先輩はポケットからサバイバルナイフを取り出した。

 「あぁっ!お前等そんなん持ってたらタイガクだぞっ!タイガク!」


 「何が俺達がやったって言う証拠になるんだ?
むしろ見つけてくれたって事で感謝されっかも知れねーぜ?」

 「うっわ、卑怯者!」

 「英二…」


1歩1歩、ナイフと共に近づいてくる。ピッと言う音がしたかと思うと、菊丸の頬から血が流れていた。

 「うっひょー。切れ味バツグン。」

 「おいおい、あまりやり過ぎるなよ?」

 「分かってるって。」


―――どうしよう。
菊丸は、正直焦っていた。相手がナイフとバットだったら分が悪すぎる。
人を呼ぶにしても、大石がこの状況だったら走れないし、置いていったら何をされるかわから無い。

万事休す、か…。


菊丸は目をぎゅっとつむった。
 「大石、どうしよう?」
小声で聞いてみた。

 「どうしようもない…なぁ。」

二人とも、諦めていた。
だけど、テニスをやめるの一言を言おうとは、どちらもしなかった。





テニスがあったから、英二に会えた。

テニスがあったから、大石に会えた。




大切はテニスを、俺達は失いたくない!!







 



 「何をしているのかな。2−B瀬川君に岡本君?」

二人が、恐々と振りかえる。
振り返った先にいたのは息を切らせた手塚、それに




 「大和部長!?」


希望と、驚きのこもった声を二人は上げた。手塚がこちらにバックをおいて駆け寄る。
 
 「大丈夫…?」

 「俺は大丈夫だけど、大石がそこの二人にバットで殴られて…。」 

手塚がギロリと二人の先輩を睨みつける。その威圧感は、二人が寒気を覚えるほど。大和部長はゆっくりと二年生に近づき、手に持っているナイフとバット、それに二人の顔を見比べ


 「こりゃぁ退部処分ものだね。…いや、退学、かな?」

 「ち、違いますよ部長!
俺らはこいつ等が倒れているのを見つけただけで…。このナイフとかも、今拾ったばかりなんです!。」

必死に弁解するバットを持った瀬川とかいう先輩。林先輩もこくこくとうなずいて、無罪を断固主張する。だが手塚があくまで冷静に言った。


 「嘘です、大和先輩。証拠なら、俺が練習用に持って来ていたビデオで撮っています。」

 「じゃぁ何で助けなかったんだよ!」
菊丸がムッとして叫んだ。

 「俺一人だったらどうにもならないと思ったから。
しかもちょうど公園の前を部長が通ったから、一緒の方が良いと思ってね。」

 「うん、手塚君。ナイス判断。

じゃぁ、そこの二人。大人しくお縄につきなさい。」


 「…畜生…。」

負けを見とめて二人がうな垂れる。大和部長が大石の傷の具合を見てから、自身の鞄の中から包帯を取り出して綺麗に巻き始める、

 「とりあえずは応急処置だ。ここから一番近いのは岡本医院だから、手塚君、菊丸君。
彼をそこへ運んでくれ。荷物は俺が直接君等の家に届ける。」

 「え、あ。は…はいっ!」

 「菊丸君、そっちを頼む。」

 「うん、大丈夫か、大石?もーすぐだかんなっ!」


 「あぁ…すまない。」


そう言って3人が公園から出ていったのを見送ると、大和部長も二人を学校へと連れて行った。

大石の傷も大した事は無く、次の日休んだだけで次の日からは部活にも参加できた。
そしてその日依頼、あの先輩達はテニス部には出てこなかった。



                    ***
 「んで、俺がその時付けた傷がここなの。
ホントは鼻の上だったんだけど、ついでだからはる場所変えて。」


自分の頬のバンソウコウを指差す菊丸。ふと不二は、あることを疑問に思った。

 「でも僕は、そのコト知らなかったよ?
確かに何人か二年生の数が減ってたなとは思ったけど。」

 
 「大和部長が話をその後誰にも言わなかったからだよ。
竜崎先生に言って、そのあとは誰にも言わなかったんだって。」

 「何で?」



 「俺達が別の意味で目立つのはテニス部のこれからにもかかわるからってさ。
ちなみにその二人はしばらく学校はお休み。」

 「へぇ、そう言う訳だったんだ。
でも、何でずっと張ってるの?もう傷は治ったんじゃないの?」



 「約束、だから。」

ちょっと上を見上げた菊丸の顔には、いつものお茶らけさは見つからなかった。
その代わり、ちょっと頼もしく、誇らしげに見えた。
そのまま菊丸は話を続ける。


 「俺はずぅーっとテニスをするって。
そんで、ずぅーっと大石とダブルスやるっていう、約束の印。」


不二は少しだけ目を開いて、そしてまた、いつもの笑顔に戻った。
 「そっか。」

不二はそれだけ言ってから、また前を向いて歩き始めた。菊丸と話をしていると、大石の後ろ姿が。菊丸は後ろから思いっきり抱き付き、大石と何やら話を始める。



二人は不二が来るのを待ち、三人になるとまた歩みを進めた。





                    ***
その日の部活が終わり、部室から出た手塚に不二はちょっと声をかけてみた。誰にも聞こえない様に、そっと。

 「証拠なら、俺が練習用に持って来ていたビデオで撮っています。」

手塚は少し眉間のしわが増えたかの様に見えた。

越前と桃城は、また二人にバンソウコウの秘密を聞き始める。今日は、乾とタカさんも一緒だ。タカさんはどちらかというと見守っているような感じだが。
菊丸と大石ははぐらかしながら部室を出ようとする。
その前に菊丸は、不二に念を刺しておいた。

 「絶対話すなよっ!」

 「わかってるよ英二。」

パタンと部室のドアが締まり、今度は桃城が不二に向かって言いに来る。


 「あーっ!もしかして不二先輩聞いたんスかーっ!?」

 「うん、聞いたよ。」

 「教えてくださいよ不二先パーイっ!」
今度は越前だ。だが不二は追っ手を振り切って部室の外に出る。


今日の夕日も真っ赤で、きっと菊丸たちが見ている夕日も赤いのだな、と当たり前のような事を考えてしまった。
後ろから何やら大きな声が聞こえてきた、きっと桃城だろう。
早く帰ってしまおうか。

夕日の沈まない内に。


初めてのテニプリ短編小説でした。
なんか最後の方が主役は菊丸なのに不二になってしまった気が…。
感想評価あったら宜しくお願いします!!!













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