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前回のあらすじ……生徒会規約とか言ってふざけすぎた。今は反省している。
記念すべき第一回「毛利のおじさんってコナン君に麻酔針打たれまくってるけど……あれ、後遺症とか大丈夫なの?」
 春のグラウンドを桜の花びらが埋め尽くす4月の頭。これから始まる高校生活に心を弾ませ、入学式を終えた新入生たちは花吹雪の中を下校していった。
「はぁ、何で俺が……」
 その様子を屋上から見ていた俺はため息と一緒に愚痴をこぼしそうになった。校庭を飛び跳ねる浮かれポンチ共と同じ新一年の俺がなぜこんなブルーなのかはさておき、まずは自己紹介をしておこう。

 俺の名前は服部(はっとり)長輔(ちょうすけ)。どこにでもいる普通の高校生だ。中学時代にちょっと生徒会長をやったことがある俺は入学式の日に校長室に呼ばれ、とんでもない頼みごとをされた。それはこの高校の生徒会の副会長になることだった。
 頭のハゲた校長先生によると、ここの生徒会は会長を筆頭とし、生徒会役員全員が変人なのだそうだ。そして、その権限を乱用し色々と問題を起こしているという。だから、校長の息のかかった人間を、推薦という形で無理矢理生徒会役員にねじ込み、生徒会の暴走を止めようというのだ。
 そこで、中学時代に生徒会長をやったことがある俺に白羽の矢が立ったのだ。生徒会長をやったことがあるというだけで、真面目なやつでもなんでもない俺に。ぶっちゃけ、内申点ほしさに生徒会長をやっていただけの俺に……

 損な役回りだ。はっきり言って嫌だ。だってこんなの憂鬱になるたんびに世界を滅ぼしかけてる美少女のお守りぐらい面倒くさいもん。何かトラブル起こるたびにフォローに回るガチンコ一般人みたいなもんだもん。俺はあそこまで奥ゆかしい少年じゃねえんだよ。デレる前にツンの状態でボコっちまいそうな奴なんだよ。あるいは一人でバックれちまうようなヘタレなんだよ。
 嫌ではあるが、俺はこれからその生徒会の変人さんたちに挨拶に行かなければならない……
 ていうか、同級生の奴ともまだ仲良くなっていない初日に先輩に挨拶とかマジすげー嫌なんだけど……どんだけ体育会系なノリだよ……あーもう、今すぐにでもバックレたい。ゲーセンとかで遊びたい。本当にそうしちゃおうかな……
 まあ、校長先生からのご指名である以上、そんな真似すれば入学して即効停学になりかねないので、俺は仕方なく生徒会室に挨拶をしに屋上のドアを開けた。ギシギシときしむ鉄の扉がいやに重く感じた。

 まだ真新しい新校舎から渡り廊下を渡って古ぼけた旧校舎に行き、階段をきしませ四階に上がり廊下突き当たりに生徒会室がある。
 本当なら今日は上級生は登校していないはずなんだが、生徒会の新しいメンバー(俺)を見にわざわざいらっしゃっているそうだ。まったくありがた迷惑な話だぜ。
「ん……?」
 旧校舎の階段を四階まで上がると、生徒会室の前の廊下に挙動不審な男子生徒がいた。
 黒い髪、小さな背、ひょろひょろとした体格のそいつは、いかにももやしっ子といった感じで、生まれたての小動物のように体を小刻みに震わせていた。あまりの小ささに制服のブレザーがダブンダブンになっていた。
 男から見ればこんなのただのモヤシにすぎないのに、最近では草食男子とかいって女の子に「きゃ~わ~うぃ~うぃ~」とか言われモテるんだよな……腹立つ。
 男子生徒はさっきから生徒会室に入ろうとしたり、やめたり、やっぱり入ろうとしたり、を繰り返していた。ネクタイの色から察するに俺と同じ新一年のようだが……もしかして、俺と同じ校長に頼まれたくちかな? ちょっと聞いてみっか。
 そう思ってその男子生徒の肩を叩いた瞬間……
「おい、お前……」
「きゃ!」
 女のような悲鳴を上げた。ていうか、おま……「きゃ!」はねえだろ「きゃ!」は。いくら男の娘や草食男子がもてはやされる時代でもそれはないわ。ぶっちゃけキモいよ。
 まあ、んなことはどうでもいいか。
「な、何なんですかあなたは!? 僕に何か用ですか!?」
「んなビビるなよ。俺は校長に頼まれて生徒会に入るよう言われた服部長輔ってんだ」
「え、あなたもあのデ……校長先生に頼まれて」
「お、おう……」
 こいつ……今校長のことデブって言いそうになったな。こいつ陰口とかすごい言ってそうなタイプだな。
「僕もそうなんですよ。あ、自己紹介がまだでしたね。僕は一年B組の記野崎(きのさき)翔太(しょうた)って言います」
「え、B組? マジで? 俺もだよ!」
「本当ですか!? 凄い偶然ですね!!」
「いや~、高校生活初日にいきなり先輩方に挨拶とか、ちょっとビビってたんだけど、同級生でしかも同じクラスの奴が一緒ならなんか心強いわ」
「服部君もですか? 僕もバーコードハ……校長先生に生徒会長に挨拶しに行くよう言われたんですけど、先輩ってだけでちょっと恐くて生徒会室に入れなかったんです」
 それで生徒会室の前をウロウロしてたのか。まあ気持ちは分かるけどな。ていうか、こいつ校長のことバーコードハゲって言おうとしたよね。つうか、そこまで言ったんなら全部言っちまえよ! まあいいか……
「じゃあ、一緒に入ろうぜ」
「ええ、そうしましょう」
 俺と記野崎は職員室のドアを開けるような気分で生徒会室のドアを開けた。
「失礼しまーす……」
 中はそんなに広くなく教室の半分ほどの大きさだ。その中央に四つのスチールデスクが二つずつ向かい合わせにくっつけられ島を作り、少し離れた奥に校長室にあるようなばかでかい高級感あふれる木製の机が置かれていた。その木製の机には「生徒会長ゴッデス」と書かれた札が置かれてた。
 なぜ生徒会長が女神(ゴッデス)になるんだ……女子だから? いや、待て。よく見たらスチールデスクの方にも似たようなのがあるぞ。

 副会長パンプキン
 会計エジソン
 風紀ウィンドまたはミリアルド
 書記ショッキー

 何なんだこれ……あだ名なのか? 書記だけ凄い適当な気がするんだが。てか、風紀委員のあだ名……ウィンドってゼクスが勝手に名乗ってただけで誰にも呼ばれなかったコードネームだろ。つーか、何でエンドレスワルツ? 古いだろ。今はダブルオーとか古くてもシードとかの時代だよ。どっちもあんまり面白くないけど。
「どちらさんかな?」
 なんてことを考えているとメガネをかけた男子生徒に声をかけられた。
「勝手に生徒会室に入ってもらっちゃ困るな」
「あ、すいません。でも俺たち……」
「ふふ、冗談だよ。校長先生から話は聞いているよ。生徒会の新しいメンバーだね」
「あ、はい……」
「遠慮しないで適当なとこに座って」
「じゃ、失礼して……」
 俺と記野崎はそれぞれ副会長と書記の席に座った。
「おっと。そういえば自己紹介がまだだったね。私は会計の海原(かいばら)(けい)。二年生だよ」
「俺は一年の服部長輔っス。よろしくお願いします」
「えと……同じく一年の記野崎翔太です……よろしくお願いします」
「アッハッハ。二人とも固いよ。ここは運動部じゃないんだから、もっとリラックスして」
「はあ……」
 海原さんは気さくないい人だった。そのさわやかな笑顔といい物腰柔らかな立ち振る舞いといいルックスといい、女子にモテそうな要素を多分に含んでいたが、これだけは断言できる。この人絶対にモテない。なぜなら……
「それにしても今日は何だか涼しいね」
 そう言った海原さんはふんどし一枚だったから……
 何だこの人!? 何でふんどし一枚なんだ!? しかも、何かものすごい筋肉のつき方してるよ!? キン肉マンとか世紀末救世主伝説に出てきそうだよ!? むしろ花山薫だよ!! ふんどしはいてるし、メガネかけてるし、凄い筋肉だし!! 絶対握撃使うよ!! 絶対死刑囚を素手で半殺しにするよ!! 両膝を銃で撃ち抜かれても立ってるよ!!
「おい、やべーよ記野崎。この生徒会やべーよ。だって会計が花山薫だもん。ヤクザだもん」
「落ち着いてください服部君。あの人は花山薫じゃありませんから。刺青もないし、スカーフェイスでもありませんから」
「そ、そうだな……切られてない侠立ちは侠立ちじゃないもんな……」
「いや、だからその侠立ちがないって……ちょっと大丈夫ですか?」
 オーケー、大丈夫だ。ちょっと動揺しちまっただけだから。あの人は単なる変態だ。マッチョな露出狂だ。それ以上でもそれ以下でもない。
「あの海原先輩……」
「やだな服部君。先輩なんて言われたら照れるよ」
「え、じゃあやっぱりエジソンって呼んだ方がいいんですか?」
「エジソン? 何それ?」
 エジソンと言われ海原先輩はなぜか不思議そうな顔をした。
「えっと、それ……」
 俺は向かいの席にある「会計エジソン」の札を指差した。それを見た海原先輩は「あ!」と声を上げしかめ面をした。
「また、あの子か……」
「あの子?」
「うん……そうだ、ついでに紹介するから二人ともちょっとこっちにおいで」
 俺と記野崎は言われるがまま、海原先輩の座る会計エジソンの席の所まで行った。すると隣の風紀の机の一番下の大きな引き出しを開けた。中には書類やファイルなんかと一緒に小さな女の子が鼻ちょうちんを膨らませ、指をしゃぶりながら寝ていた。
 え……ていうか、え? なんぞこれ?
「あの……海原先輩? 何すか、この幼児?」
「この子は小さいけど幼児ではないよ。名前は風間(かざま)紀子(のりこ)さん。れっきとした高校二年生だ。ちゃんとうちの制服着てるでしょ」
 本当だ。確かにうちのブレザー着てる……て、何で!? てか何でこんなに小さいの!? 何か変な呪いでもかけられたの!? アルコバレーノ!?
 おいおい、何だよこの生徒会……変態の次はUMAが出てきたぞ。どうなってんだよ。記野崎もビビりまくりだよ。がたがたぶるぶるニャーニャーだよ。
「きゃ……きゃわいいぃぃ!!」
 て、あれ……? 記野崎君……? 何奇声を発してんの? 何抱っこしてんの?
「何ですかこの子!? 何でこんな小さいんですか!? 何でこんなにかわいいんですか!? 海原先輩!!」
「え……何?」
「決めました……僕、この子飼います!!」
「いや、飼うって……それ犬猫じゃないからね? 一応人間だからね?」
 うわぁ……記野崎の変なスイッチが入っちゃったよ。海原先輩も引いてるよ。ふんどし一丁の変態がドン引きしてるよ。ていうか、かわいい物好きって……こいつ見た目だけじゃなくて、中身まで女みたいな奴なんだな……
「うーん……むにゃむにゃ……」
「あ、ごめんね。おこちちゃったでちゅか?」
 おーい、記野崎君。それ一応俺らの先輩だから赤ちゃん言葉はやめとこうぜ。
「おなか減っただわさ……」
「ちょっと待っててくだちゃいねー今お兄ちゃんがおっぱいあげまちゅからねー」
 おーい、記野崎君マジで何言ってんのお前? 何脱ごうとしてんのお前? お前がいくら頑張っても乳なんかでねえよ。臭え汗しか出てこねえよ。どうしても出したきゃショッカーの本部行って改造手術受けてこい。変人から怪人になって来い。
「そんなにあわてなくも大丈夫だよ、服部君」
「海原先輩……そっすよね。記野崎の奴も乳が出ないことぐらい分かりますよ」
「そうそう、男がおっぱいからミルクを出すなんて芸当できるわけがない。出すとしたら、下の方から白く濁ったシードデスティニーを……」
「うおおぉぉぉい!! あんたそれ以上喋んじゃねえ!! その下ネタはやばすぎるから!!」
 て、あれ……記野崎君? 何で自分の股間見て固まってんの? 何考えてんの!?
「服部君……僕ちょっとトイレ行って頑張って来るでちゅ」
「はやまるなああぁぁ!! お前それだけは絶対にやっちゃダメだから!! 下ネタで済まされる話じゃないから!! それもう幼児虐待ってレベルじゃねえから!! ていうか、その赤ちゃん言葉俺にまで使ってんじゃねえ!! いい加減腹立つからやめろおおぉぉ!!」

 で、結局……

 風間先輩のお昼ご飯にはほ乳瓶でミルクを与える事となった。ちなみにこの哺乳瓶とミルクは海原先輩の私物だそうだ。「何でそんなもん持ってんだよ」とか「持ってんならとっとと出せよ」とか色々突っ込みたいところはあるが、ここはグッと堪えよう。
 さて、おおよそ高校生が飲むものとは思えない物をおいしそうにぐびぐびいってる風間先輩の説明を簡単にすると、見た目は子供、中身も子供の名探偵ならぬ迷惑娘だ。勤まるのかどうかはさておきこの学校の風紀委員をしており、暇さえあればあちこちに落書きをする悪戯好きの女の子だ。生徒会長や会計の横に書かれたわけの分からないあだ名もこの人の仕業らしい。
 その見た目は本当に幼稚園に入る前の幼児にしか見えず、サイズ的にはママチャリのかごにすっぽり収まりそうなほど小さい。そのため、風間先輩の席だけ座布団が何枚も積み重ねられている。大喜利で凄いうまい事を言っている人みたいだ。
 短い黒髪にピンク色のリボンをつけて、頭頂部からぴょこんと小動物の尻尾のように少しだけ髪の毛をはみ出している。アホ毛にしか見えないがそれは言わないでいてあげよう。制服のブレザーはおそらく……てか絶対に特注品だろう。風紀委員というだけあってちゃんとした着こなしをしている。
 しかし、主食はミルクと離乳食だという。本当に高校生なのだろうか?
「失礼な子だわさ。あちきはれっきとした花の女子高生だわさ。本気出したらすっごいナイスバデーな大人の女に変身できるっていう設定だわさ。本気出したらお子様ランチだって食べれる大人の女だわさ」
「そう……なんすか。すいませんした」
 風間先輩……色々突っ込みたいことはあるけど……人の頭の中で考えてることにまで返事しないで。読者も俺も凄いビックリするだわさ。
「気をつけるだわさ」
 だから、それをやめろっての。
 とにかく、これで生徒会のメンバーのうち生徒会長を除く全員がそろった。海原先輩は会計の席に、風間先輩は風紀の席に、記野崎は書記の席に、俺は副会長の席について、会長が現れるのを待った。
「あの、海原先輩……」
「服部君、その呼び方はやめてくれよ。何だか少し照れくさいからさ」
「じゃあふんどしメガネ先輩で……」
「いや、それもちょっと……ていうか君初対面の先輩に凄いあだ名つけるね。私のことは普通に会計さんって呼んでくれたらいいから」
「じゃあ、会計さん。会長はどこ行ったんですか?」
「ああ、それなら……」
 会計さんが説明しようとしたその時、
「オーホッホッホ!!」
 高飛車な女の笑い声が響いた。
「誰だ!! ていうかどこ!?」
「そんなに慌てなくとも、今姿を見せて差し上げますわ!! とう!!」
「な……!!」
 戦隊ヒーローのような掛け声と共にその女は俺の机の上に舞い降りてきた。
 俺たちが上履きをはいているにも関わらず、その女はピンヒールのレザーブーツをはき、普通の女子高生は悩殺的なほどスカートを短くするのに、その女は足首まで隠れるような長いチェックのスカートで下半身全てを覆い隠し、紺色のブレザーに金色の刺繍を施し、二年生の証である赤いネクタイを締め、手にはなぜか鉄扇を持っている。
 日本人とは思えないほど背が高く、スタイルも服の上からでも分かるほど抜群にいい。モデル並だ。顔立ちも可愛いというより美しいという形容詞が似合う大人びたもので、青い目はキリリとつり上がり、その目力に圧倒されそうだ。金色の髪は上品なカールを描き、気品の高いオーラを放ちまくっている。
 ん……? 青い目? 金色の髪? クルクルパーマ?
 俺は素朴な疑問が浮かび、隣の席にいた記野崎の袖をくいっと引っ張りひそひそ声で話しかけた。
「なあ、記野崎……この人は日本人なのかな?」 
「日本人じゃ…………ないんですかね。さっき日本語話してたし」
「いや、背めちゃくちゃ高いぞ。半端ないぞ。これ絶対170以上あるって」
「日本人でもそれぐらい高い人はいますって。アキコ・ワダとか」
「いやでも、目青いし、髪だって金髪だぜ? これ完全に外国人だろ?」
「目はカラコンですよ。髪だって染めてる人ぐらいたくさんいるじゃないですか」
「いやいや、お前それどっちも校則違反じゃん。生徒会長なのに校則やぶっちゃっていいのか?」
「そ、それは……」
「百歩譲ってそれはOKだとして、あのヘアスタイルなんだよ? 何であんなくるんくるんなんだよ? あんなパーマあててんのキャバ嬢かショップの店員ぐらいだろう。もしくはすんごいお金持ちのお嬢様とか。普通あんなヘアスタイル頼めないって! 美容室行っても美容師の「え、あんたがこんな髪型?」的な視線が気になって頼めないって!」
「きっと美人だから余裕で頼めちゃうんですよ」
 ああ、なるほど。確かにこの人綺麗だもんな。
 いや、そんな事より自己紹介しておかなきゃ。この人たぶん生徒会長なんだろうし。
「あの、俺……」
「ああ、よろしくってよ。何もおっしゃらなくても全て嫁に逃げられたバーコードハゲの中年腹(またの名を校長)に聞いていますわ」
 いや、あの……それは分かるけど、普通に校長って言ってやれよ。何だよ嫁に逃げられたバーコードハゲの中年腹って。長すぎ……っていうかかわいそうすぎるだろ……
「あなたが服部半蔵君ですわね」
「……いえ、半蔵じゃありません。名前は長輔です。ちなみに、服部って苗字ですけど伊賀の里とは縁もゆかりもございません」
「あら? あなたあの鬼畜超人ハンゾウじゃございませんの?」
「全然違いますよ!! ていうか、何? ハンゾウってそっちのハンゾウ!? あんた、女の子のくせによくキン肉マン二世のキャラ知ってますよね!!」
「生徒会長として当然の義務ですわ」
 いや、生徒会長あんま関係なくね? ていうか、やっぱりこの人生徒会長なんだ。
「まあ、猿飛佐助君のことは分かりましたわ」
 いや、分かってねえだろ!! 名前からすでに間違ってるし!! ていうか、忍者から離れろよ!!
「で、そっちの書記の席に座っているのが……」
「あ、僕は記野崎……」
「アレクセイ・ヂュヂュン・ボーンフォルド=P・O・P=パラリラ・臣衛門・ピロリ・マークスリー二号君ですわね?」
「…………」
 どんな間違え方!? もう人の名前覚える気ねえだろこいつ!! ていうか、マークスリーとか二号とか言ってる時点で人の名前じゃねえよそれ!! 記野崎も固まってるよ!! どうリアクションしていいか分かんなくて固まってるよ!!
「あっと……そうです。もうそのアレクサンダーなんとかでいいです……」
「記野崎いいぃぃ!! あきらめんなよ!! 面倒臭いからってあきらめんなよ!! ここであきらめたら、お前この先ずっとアレク……何とかにされんだぞ!!」
「えー……だって僕には服部君みたく会長に意見する勇気はないよ……僕はもう風間先輩を抱っこできれば、それでいいよ……」
「あきらめんな!! 俺がお前の代わりに言ってやっから!! 現実からロリに逃げるな!! それ凄い恐いから!!」
「うぅ……ありがと、服部君……」
 涙を流しうなだれる記野崎の肩をポンと叩き、一年代表としてこいつの期待を背負った俺は、会長と同じ机の上に立ち、その綺麗な顔を指差した。
「俺は服部長輔です!! で、こいつは記野崎翔太です!! 生徒の代表たる生徒会長なら部下になる奴の名前ぐらい覚えといてください!! それこそ生徒会長の義務ってもんでしょ!!」
「ふぅ~ん……」
 会長は不適な笑みを浮かべながら俺を見下ろした。ん……見下ろした? あれ、この人おんなじ机の上に立っても結構でかくね? てか、170どころかこれ180ぐらいじゃね?
「あたくしに意見するとはいい度胸ですわね、あなた……」
 う……! 何だこの威圧感は……ただでさえ背が高いから、余計に高圧的に見えるのか、それともマジで何か特殊なオーラでも放っているのか、俺の足がすくむ! 上手くは言えないが恐い! 今すぐ逃げ出したいほどに!
「気に入りましたわ!! 服部チビ輔君、あなたを副会長に任命いたしますわ!! そして、記野崎ショコタン君!! あなたは書記おやりなさい!!」
「はあ……」「分かりました……」
 微妙に腹立つ間違え方をしているが……まあ、苗字は覚えてもらったし、よしとするか……
「あたくしは会田(あいだ)(ちよ)!! 容姿端麗(かっこういいという意味)にして頭脳明晰(頭がいいという意味)!! 文武両道(頭も運動神経もいいという意味)のうえ品行方正(お行儀がいいという意味)!! 狂瀾怒涛(きょうらんどとう)(とっても激しいという意味)するは一騎当千(超人強度1000万パワーという意味。またはバッファローマンという意味)のごとく!! 威風堂々(偉そうにしているという意味)と風林火山(風林火山という意味)!! 喧嘩上等(喧嘩大好きという意味)な天下統一(日本を征服するという意味)!! 交通安全(交通ルールを守りましょう)に家庭円満(家族を守りましょう)!! 離婚調停(お父さんとお母さんが今後についてどうするか真剣に考える相談事)は三日以内(三日のうちにという意味)!! 快刀乱麻(かいとうらんま)(めっちゃスピーディーにという意味)に事件解決(体は子供、頭脳は大人、煩悩は思春期、口癖はバーロ、ナギお嬢様に匹敵するほどのツンデレ、おっさんに睡眠薬打ちすぎ、いつか目覚めなくなる可能性が……)!! 雲蒸竜変(うんじょうりゅうへん)(パチンコで確変するぐらいチャンスをものにするという意味)した生徒会長!! 会田蝶ですわ!!」
 とりあえずヤンキーな方々と同じぐらい四文字熟語をこよなく愛しているのはよく分かったけど、乱用しすぎて途中から意味不明なもの混じっていたぞ。喧嘩上等な天下統一って何だよ……交通安全に家庭円満って神社のお守りじゃん。しかも家庭円満の次が三日以内に終わる離婚調停って、それどんな家庭!? 明らかに犠牲の伴う円満な家庭だよね!? 嫌だよそんな家庭!! ていうかカッコの中の解説超ウザいんだけど!! 何で一騎当千がバッファローマンになるんだよ!! どうせならケビンマスクにしろよ!! あいつはカメハメ師匠以外で唯一筋肉王家に真っ向勝負で勝った猛者なんだからよ!! あと事件解決の意味もおかしいだろ!! これ明らかにコナンのことだろ!! 確かにゾウでも30分は寝てるという、人間には使っちゃいけないような睡眠薬を何回も打ち込んでるけど大丈夫だよ!! コナンは頭いいから用法・用量はちゃんと守って正しく使ってんだよ!! もしくは毛利のおっさんが地上最強のお父さんのようにタフなんだよ!!
「あたくしのこと、分かっていただけたかしら?」
「はあ……まあ、何となく凄い人なんだということは分かりました。あ、さっきは生意気言ってすいませんした」
「よくってよ。あたくしがいかに偉大とはいえ、この世に完璧な人間などいないの。完璧(パーフェクト)超人も火事場のクソ力の前にはなす術がないの。だから、あたくしだって間違えることもあるし失敗することもありますのよ。そんな時は遠慮なくさっきみたいに言ってくれればいいのよ。諫言(かんげん)(「それは違うんじゃないかな」と目上の人に注意すること)もまた臣下の勤め。それはあたくしを助けることになり、そしてそれこそが副会長であるあなたの義務なのですから」
 あれ? 何か話で聞いていたより全然まともな人だな。天井から降って来たことと人の名前覚えないこと以外は……それにさっきから気になっていたけど、話し方がどことなく上品だし、ひょっとしてどこかの令嬢か何かなのか?
「あの……会長はどこかのお金持ちのお嬢様か何かなんですか?」
 副会長の机から降り、生徒会長の席に向かう大きな背中に素朴な疑問を投げかけた。会長は歩みを止め、睨みつけるような視線だけをこちらに向けニンマリと笑った。
「聞きたい? あたくしのこと知りたい?」
「ええ、まあちょっと気になったもんで……」
「よくってよ、よろしくってよ、あ、よ・ろ・し・く・って・よ!!」
 あれ? 会長何かテンション上がってない? 何かスイッチ入っちゃった?
「あたくしは世界に名だたる会田財閥の……」
 ああ、やっぱお金持ちのお嬢さんなんだ。会田財閥とか聞いたことないけど。
「子会社の、下請けの町工場の社長の、飲み仲間のパチプロの、親戚である夢を追いかけて家を飛び出して戻らなくなった冒険家夫婦の一人娘ですわ」
「えっと……会長それ最終的に両親行方不明ってことじゃないんですか!?」
「よろしくってよ」
 いや全然よろしくねえだろそれは!! ていうか、この人金持ちでも何でもなかったよ!! むしろ絶対生活に困っている方だよ!! 
「ぼろは着てても心は錦ですわ」
「会長、うちの制服をぼろ呼ばわりしないでください」
「金はなくとも魂はセレブですわ!!」
「いや、あんた魂だけじゃなく見た目もセレブだから。とくに髪型とか」
「あら、この髪はただの寝癖ですわよ」
「どんな寝癖!? ていうか、どんな寝相したらそんな寝癖がつくんだよ!!」
 やっぱこの人ぶっ飛んでるわ……俺、やっていけるのかな……
次回予告的な
 生徒会にもたらされた最初の依頼。それは校長から「逃げた嫁さんを探してくれ!!」という切実な願いだった……え? 違うの? ごめん、間違えた。何か新しいイベントを考えてほしいとかそういう感じの奴らしい。
 そこで生徒会の面々が激しく議論した結果、なぜか新しいイベントは会長の独断と暴走で決まってしまう。しかも、それはとんでもないものだった。


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