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第61話 昼休み

 遠距離部門の決勝戦が行われ、一旦昼休みが取られる事になった。教室へ戻ってきたカイトら選手一同が集まって昼食をとっている。これから試合のあるカイトとソラは軽めの昼食にしてある。

「でも、まさか翔があんな速く動けるとは思ってなかったぜ。」

「お前は全部それを防ぎやがったけどな!」

「そりゃ、防がねぇと痛ぇだろ!」「ま、あたっても大丈夫なんだから、いいだろ?」

「そりゃそうだ。……って、ふつーに痛かったよ!」

「まあ、今までソラは一回もダメージ受けて無いからな。」

「お前もだろ、カイト。」

「全部避けてるからな。お前は全部防いだ上で、だろ?」

「そのノーダメ記録はここで終わらせてやる。それに、俺にはまだ切り札が何個かあるからな!」

「ほう。それは楽しみだ。」

 そう意気込むソラ。カイトはソラが何をしてくるのか、かなり興味を抱いていた。

「……お前ら、まだまだ余裕かよ。」

 二人の様子を見て翔は呆れ顔でため息をついた。

「そうはいうけどよ、アル達なんかあの程度余裕なんだろうぜ。俺はアルの戦い方を参考にしてるからな。」

「まあ、俺の師匠なんかも、余裕だろうな。……俺の戦い方も師匠を参考にしてるんだけどよ、師匠の場合、後ろに回り込んだと同時に分身が2体ぐらいでてるんだよなぁ。」

「アルなんて、防御の姿勢取らないのに攻撃全部防がれるんだよ。」

「どうなってんだよ、それ……。」

「聞いた話だと、ただ魔力障壁を強くしてるだけ、なんだってよ。」

「ありかよ……」

「うちんとこのティーネさんなんて、あんな折れそうな細身なのに、100メートルぐらいの距離から的に普通に弓を当ててるのよねぇ。」

「あれで私自分の腕に自信なくしたよー。」

「おまけに、エルフだから、細身で美人だし……。」

「あれで、155歳なんだってー。」

「これが種族差と言うものなの……。」

 女子二人は自分の師の見た目の若さに愕然としている。

「ちなみに、天道さん。クズハさんってどれぐらい強いの?」

 4人して自分たちの師の強さにため息しか出なかった。自分たちが魔力を扱えるようになり、初めて彼らの強さがわかるようになったのである。

「……普通に異空間とか創りだされてましたね。あと、一回魔術行使を見せていただいたんですが、その時は地面が50メートルばかり裂けてました。あ、底は見えませんでした。別の時はレイピアと弓を併用した戦い方を見せて頂けましたが、地球だとオリンピックで確実に金メダルでしょうね。それも大会史に残る圧勝で。」

 桜は訓練時を思い出してクズハの実力の一端を話す。桜はどこか遠い目をしていた。

「……知らないってのは、お得だよなぁ。」

「だな。」

 確実に自分たちの師を超える実力を有するであろうクズハの強さを少しだけ実感した5人。目線の先には、クズハを隠し撮りしたであろう写真を回し見している生徒たちがいた。

「まあ、その域まで達するのは、まだまだ先のことだろう。」

「つーか、無理じゃね?」

「無理だよな。」

「まあ、それでも少しでも近づける様に、と言うのがこのトーナメントの目的だろ?」

「そうだけどよぉ。あれはさすがに無理だろ。」

「無理と思うから、無理なんだろ?魔力とは意思の力。無理と信じれば無理となり、可能と信じれば不可能も可能に変わる。」

「んじゃ、俺がお前に勝つことも可能ってことだな。」

「そもそも、負ける気なのか?」

「んにゃ、勝つ気だ。」

「次はお主らの試合じゃな。それが終われば一条とやらと神宮寺とやらの試合じゃな。その後は決勝か。」

「うーん。さすがに解説やってる私もこっから先はどうなるかわかんないかなぁ。」

 先ほどの由利が決勝まで勝ち上がったという一件があることから、大逆転もありうる。カイトも本来の力を使うなら確定で勝利できるが、ここまで勝ち進めたことで実力も示せているので、現状自分で設定した力以上を振るうつもりも無かった。そのため、場合によってはカイトが負ける可能性もありうる。

「まあ、とりあえずはカイトに刀を抜かせねぇとな。」

「折角俺に勝ったんだから、このままカイトにも一条先輩にも勝てよ。」

 そう言ってソラの肩をぽん、と叩く翔。

「おう!」

「カイトさんも頑張って下さいね。」

「ああ、負けるつもりはない。」

 そう言って桜はカイトへ激励を送る。桜ファンからの視線が痛かったが、カイトはこれを役得と思うことにした。いくら嫉妬しようと、ここまで勝ち残れない方が悪いのである。

「まあ、カイトの場合はあれを使わせる相手がいるかどうかだねぇ。」

「なあ、気になってたんだけど、あれってなんだ?」

 これは翔を含め、ユリィの解説を聞いていた全員が疑問に思っていたことである。翔の質問を聞いていた周囲も少し静まり返り、耳をそばだてる。

「うーん、ソラが居なければ、教えてもいいんだけどねぇ。」

「よし、総員、ソラを放り出せ!」

 翔の掛け声でよっしゃ!、と応えた周囲の全員と協力して、昼食中のソラを運び出そうとする。

「いや、やめろよ!」

 必死で抵抗して何とか阻止させたソラ。何故かこんな所で疲れる羽目になった。

「ちっ、まあ、お前が使わせればいいだけの話か。」

「わかったよ、やってやらぁ!」

 とあるクラスの男子生徒の言葉に、半ばやけくそ気味でそう言うソラ。

「あはは、でも、あれを見たら驚くと思いますよ?」

「そもそもカイトにしか出来んのじゃ。」

「なんだ、二人は知ってるの?」

 魅衣は二人に聞いてみたかったのだが、桜とティナも話す気は無いようであった。

「ええ、一緒に訓練してますから。」

 ふとカイトの方を見ると、ため息をつきつつ少し頷いた為

「少し耳を貸してもらえます?」

「え、うん。」

 桜の口へ耳を近づけてカイトの秘策を聞いた魅衣。聞いた時は意味が理解が出来なかったが、次第にその意味を理解して目を見開いた。

「はぁ!天音、あんたそんなこと出来んの!」

「というか、カイトの普通の戦闘方法じゃな。」

「そりゃ、ユリィちゃんもああ言うわ……。てか、何時の間に天道さんも天音のこと、名前で呼ぶようになったの?」

 ふと気付き、疑問になり魅衣が桜に尋ねた。彼女が男子生徒を名前で呼んだ所を見たことが無かったのだ。

「あ、最近ですね。」

「前から思ってたんだが、何故オレとソラは苗字なんだ?」

 すでに付き合いが5年近くになっている5人。由利、魅衣の二人は親しい男子には名前でタメ口なのであったが、何故か二人は苗字で呼んでいた。

「あー、最初会った時二人ってあんな感じだったでしょ?そんときの他人行儀が残ってるのかな。」

「あの時の二人って怖かったからねー。まあ、今は平気だけどねー。」

 中学生当時の事を思い出す5人。当時の詳細を知らない桜を置いてけぼりにしているが、思い出に浸っているのか誰も気付いていなかった。

「あー、俺もカイトも名前でいいぞ?……さすがにあれは恥ずかしかった。」

「あれは今思い出しても笑う。まあ、当時は笑えなかったけどな!」

 そう言って声を上げて笑い、ソラの肩をバシバシと叩く翔。どうやらそれほどまでにツボに入っていたらしいのだが、当時はソラの状況が状況であったので、笑うに笑えなかったらしい。当時声を上げて笑ったのはカイトだけだった。

「あー、まあ、私達もホントは笑えないんだけどねー。まあ、そうでしょうね。わかった。じゃあ、カイト、ソラ、これでいいわね。あ、ねぇ、天道さんも桜でいい?」

「あ、いいですよ。その代わり私も魅衣ちゃん、で。」

「私もそれでいいー?」

 そう聞くのは由利。

 ちなみに、翔は自分も呼び捨てでいいか聞くつもりは無かった。本日目出度く校内でも有数の危険ファンクラブからブラックリスト入りしたカイトを見て、二の舞いは避けたかったのである。尚、名前で読んでいるソラはブラック入りの一歩手前である。

「はい。では、魅衣ちゃんも、由利ちゃんも、よろしくおねがいしますね。」

「で、話戻すけど、あんた本当にあれできるの?」

「結局、あれってなにー?」

 由利も気になって耳を魅衣に向ける。魅衣はカイトを見る。

「はぁ、由利で止めておいてくれ。一応あんなのでもオレの秘策だ。」

「わかってるって。……ってこと。」

「えぇ?」

 聞いた由利も唖然としている。周囲はその反応から、かなり興味をそそられているが、さすがに試合選手の秘策を公然と聞くことは出来なかった。

「私だって始めの頃に一度はやったけど……今ならわかるわ。あれは出来ない。」

「もう二度とやろうとは思わないよー。」

 どうやら二人共魔力の扱いを習い始めた頃に試し、すでに断念した手段なのであった。魔力の扱いを多少心得た今だからこそ、カイトの手段のとんでもなさが理解できたのである。

「ええ。カイトさんも私に教えて頂いた時に、誰かに教えるつもりは無い、って仰ってました。」

「今ならわかるだろ?何故教えないか。」

「私が他の学生を教えるようになっても、やめとけって言うわね。で、あんたはなんで出来るの?」

「カイトの場合は適正だよ。偶然元来の適正があれだったから、やれるだけだよ。」

「……それ、ずるくない?」

 魅衣はかなり不満気である。

「さすがに生まれ持った適正にまで文句を言われてもな……。まあ、そうは言っても使いこなせてるわけじゃない。それに、由利にしても魅衣にしても俺より上の適正はあるだろ?」

「そうじゃないと、私達の立つ瀬が無いわよ。」

「だろう。」

「結局俺には教えてくれないんだな……。」

 そう言ってしょんぼりと肩を落とす山岸。

「まあ、試合で明かされる事を期待してろ。」

「お前、時々俺の扱いひどくね?」

「というか、カイトの場合、女に甘いだけじゃな。」

「あんた、そのうち、刺されんじゃないの?」

「あー、そういやこの間のグライアさんとかティアさんとかも実は口説いてたんじゃね?」

「あ、後、グイン様とかも居たよ?」

「そういや、そんな金髪の美女も居たらしいな。俺が近づいてった時には居なかったけど。」

 その会話を聞いて、周囲の生徒達が朝の一件を思い出す。

「あ、そうだ!カイトてめぇ!俺らの居ない所でなに美女と美味しい思いしてやがんだよ!」

 何故か雲行きが怪しくなってきた事を感じたカイト。即時撤退を決断。

「そろそろ試合だな。アップしてくる。」

「待ちやがれ!」

 そう言う翔やクラスメイトの追求を早足で振り切り、カイトは早めに試合会場へ向かったのであった。

 お読み頂き有難う御座いました。

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