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第54話 選手紹介

 今日からは1日1話更新・・・なんですが、実は昨日の夜、密かに第三章終了時点でのメイン面子のステータス一覧をあげてます。場所は第三章の一番後ろです。興味がおありの方はお読みください。一応、人数分大真面目にやってるので、かなり長いです。

 クズハの合図と共に開始されたトーナメント。各試合の映像は公爵家の設備によって校舎の各地に設置された映像を写す魔導具でモニター出来るようになっていた。しかし、そのモニターは今、全て1つの同じ映像が映し出されていた。映像で移されているのは、一人のショートカットの快活そうな少女と、一人の妖精である。二人の前には、放送席、という立て札と、実況、一文字真琴、解説、ユリィという文字が書かれた札が立てかけられていた。

『はい!では、始まりました!第一回天桜学園トーナメント!スポンサーはマクダウェル公爵家でお送りいたします!実況はこの私、新聞部兼放送部部長にして真実を追い求める者、一文字真琴と!』

『解説はこの私!可愛い妖精のユリィがお送りするよー!』

 聞き覚えのある声を聞いた瞬間、カイト、クズハを筆頭にユリィをよく知る者は一斉にカイトの頭上と肩の上を確認する。



「いないぞ!ユリィ……いつの間に!」

「……最近オレに隠れてこそこそやっていると思ったら……」

 カイトは頭を抱えながら、頭痛に耐えていた。

「ユリィちゃんらしいですね……」

「これ、一応公爵家の人間も見ているんですが……。」

 クズハが大きな溜息とともに、何時かぶりのユリィのやんちゃを懐かしく思う。この程度の悪戯ならば、可愛い物と笑って許せた。とは言え、これはユリィの正体を知る部隊の隊員達も見ているので、彼女の威厳が一気に低下している事は確実だが。



『では、本大会のルールを解説します!勝利条件は相手の魔術障壁を5枚以上破壊した選手が勝利となります!』

『選手たちは試合用の特殊なアクセサリを所持しているから、全力で戦っても大丈夫!コケたりとかしない限りは怪我しないよ!もし怪我しても公爵家の治癒術者が治してくれるから安心してね!』

『試合時間は一試合10分です!それでも試合数が多いので、複数試合が同時に行われます!試合会場はグラウンドと体育館で行われます!試合間隔はそれほど短くはありませんが、間近で見られる方はお急ぎを!』

『ちゃんと試合会場には結界が敷いてあるから、流れ弾の心配も無し!思う存分戦ってね!』

 ユリィと放送部部長の真琴によるハイテンションな実況が続いていき、選手紹介へと移る。



『では、注目選手の紹介を始めましょう!まずはこの男!日本陸上界にこの男あり!野性味のある顔立ちの中に僅かな気品を感じさせるクールな奴!更に現在は陸上が一番とひたむきに練習に打ち込むストイックさで日本、いや!世界各地の女性を虜にする!鍛えられた靭やかな肉体から放たれる槍は異世界へ来て更に飛距離を伸ばした!日本陸上界の若きエース!一条 瞬!』

 魔導具には一条のアップが写され、すぐに女子生徒の黄色い歓声が上がる。一条は集中しているのか、前しか見ていない。

『さて、ユリィさん、一条選手は日本において投槍の高校生代表に選ばれるほどの武の者として校内では知られていますが……』

『イチジョウの競技は知らないけど、日本で最高の競技者の一人なら運動神経は抜群だねー……あ、言いにくいからシュンでいい?……あ、じゃあ、シュンでいくね。シュンの師はかつてエネフィアを救った武神バランタイン・バーンシュタットの子孫で、現在学園の守護を担っている部隊の副隊長を務める女傑、リィル・バーンシュタットです。これは師に恵まれた、と言っていいでしょうね。』

 途中言いにくいから、シュンと呼んでいいか、と尋ねられた一条は頷いて大丈夫とメッセージを送る。

『ほう、師に恵まれた、と言いますが、それは他の方も同じでは?』

『うん。それはそうだよ。でも、シュンの師についたリィルは現公爵軍正規部隊において最強の槍使い、さらにシュンは日本において最高の投槍の選手。師弟の相性は抜群であった、と言えるね。ただ、何故か投槍ではなくて、普通の槍使いとして参戦しているのが気になるかな。とは言え、それならそれで、師の性質を考えれば、対戦相手は速度と貫通力に優れた突攻撃に注意する必要があるね。』

『なるほど!一条選手の槍捌きが気になるところです。では、次に参りましょう!』



 そう言って今度は桜のアップが映し出される。今度は桜ファンの男子生徒が歓声を上げる。桜は礼儀正しく一礼した。

『我らが美しき天桜学園生徒会会長!天道財閥令嬢にして、立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花、を地でいく絶滅危惧種の大和撫子!さらに才色兼備の文武両道!男子生徒の憧れの的の一つ!天道 桜!』

『桜は薙刀の使い手だけど、教官役には薙刀の使い手が居なかったから、残念ながら師に恵まれた、とは言い難いね。でも、その代わりにクズハ様が教官を務めていらっしゃったから、ハンデキャップは殆どない、と言っていいでしょう。桜と戦う選手は薙刀だけでなくて魔術の方も警戒するべきだね。』

『ほう、クズハ様が教官を務められていらっしゃったのですか。それは期待できそうです。』

『うん。ただ、桜が一番恵まれていたのは同じくクズハ様の教えを受けた二人のライバルだね。』

『二人、といいますと、この後紹介する予定のミストルティン選手と、天音選手ですか?』

『うん。特にティナは遠距離型の選手の中で最大の魔力量を誇っている上、クズハ様が教えてらっしゃったから、学生の中ではかなりの腕前を誇っているね。だから、桜は他の人に比べてライバルに恵まれていた、と言えるよ。』

『ほう、師との適正に恵まれなかった分ライバルに恵まれていた、と言う訳ですね!それでは次の方!』




今度は魔導具にティナが写し出される。それに合わせて桜とは別の男子生徒達から歓声が上がる。ティナは声援に心地良さげである。

『少し傲慢な口調はもはや愛嬌!海外からの留学生なのに日本語堪能!さらには天真爛漫な性格と日本人離れした美貌を備える!静の天道と動のミストルティン!日本最高の頭脳を誇る可愛らしき美少女は最強魔術師と化した!ユスティーナ・ミストルティン!』

『ティナは先の桜と同じくクズハ様の元で鍛錬を積んでいるね。更にはティナ自体の魔力保有量の高さから、今大会では如何に攻撃を回避しつつティナの強固な魔導障壁を破るか、が対戦選手にとって重要になってくるかと思います。』

『更にはミストルティン選手はシードを獲得されましたね。』

『うん。それを考えればティナ相手に持久戦を仕掛けるのは自殺行為だよ。最悪多少の損害を覚悟してでも、一気に障壁を打ち破る位の攻撃を叩き込まないと勝ち目はないかな。ただし、ティナもそれは承知しているはずだよ。お互いの頭脳戦になるね。』

『それは……対戦選手にとって不利な話ですね。ミストルティン選手は学年どころか全国模試トップの成績を収められています。頭の賢さならば負ける事は無いでしょう。……では!次の選手!』



 そう言って映しだされたのはソラである。一部女子生徒の黄色い歓声が上がり、ソラはかなり照れていた。

『高身長の引き締まった肉体!野性味を帯びた顔!若干の子供っぽさはご愛嬌!しかしファンはそこが良いと口を揃える!これで部活をやっていないのだから、宝の持ち腐れだ!しかしその身に纏う装備は今大会では最高の防御力を誇る重装備!期待のダークホース!天城 空!』

『ソラもシュンと同じく師に恵まれているね。アルはリィルと同じく勇者の仲間、ルクス・ヴァイスリッター様の子孫で、使用武器は片手剣と盾。ソラも同じ武具を選択したね。これは本人曰く、集団の中で仲間を守るためには壁が必要だろ?との事。その防御の硬さには苦戦させられるでしょう。武芸こそエネフィアに到着してから学んだらしいけど、もともとの才能か、それとも練習の賜物か、素人と侮れば即敗北するよ。』

『如何に天城選手の防御を突き崩すか、が重要になってくる訳ですね。』

『うん。ただ、防御を崩そうとして、攻撃中心となると、手痛いカウンターをもらう事になるから、そこは気をつけないとね。』

『なるほど、防御だけではない、と。……では、次の選手!』



そう言って今度は瑞樹が映し出される。これもまた男子生徒の一部が歓声を上げる。瑞樹はそんな声援を受けても、泰然としている。

『天桜学園に降り立った女王様!天道財閥と双璧を成す日本の大企業の一つ、神宮寺財閥令嬢!金髪ハーフの美貌とスタイルの良さはすでに高校生の平均を遥かに上回っている!同性の私ももはや嫉妬を通り越して憧れしか抱かない!しかも!なんと前回の魔力測定においては全校生徒の平均を圧倒的に超えるトップの9000!2位のミストルティン選手の値が6000ですから、どれだけぶっ飛んだ値か、お分かりいただけるでしょう!武器のトゥーハンドソードで立ち塞がる者全てを切り裂く!神宮寺 瑞樹!』

『瑞樹はトゥーハンドソードの使い手であると同時に体術の使い手でもあるようです。しかし、最も気をつけなければいけないのは、なんといってもその魔力保有量でしょう。』

『全校生徒最高値の9000ですからね。でも、何故魔術師を選択しなかったのでしょうか?』

『さぁ、それは本人に聞かないとわかりませんね。ですが、その魔力量から、使用できる(スキル)の回数も最大を誇るでしょう。無駄撃ちをしない限りは今大会でスタミナ切れを起こす事はないでしょうね。』

『確かに。今大会において(スキル)の重要性は選手全員が理解しているでしょう。』

『ええ。ですから対戦選手は如何に高威力の(スキル)を避けつつ、自分の攻撃を当てるか、が重要になってきます。』

『なるほど。……では、次の選手!』




 そして注目選手の紹介がひと通り終了する。

『はい、ではこれで注目選手の紹介が終わったわけですが……。ユリィさん、気になる選手はいらっしゃいますでしょうか?』

『そうだね。紹介された選手では、ソラ、桜、瑞樹、由利が気になるかな。』

 由利は実は次期弓道部主将候補であった。そのため意外に思ったユリィが注目している。

『おや?一条選手とミストルティン選手の名前がありませんが……?』

『二人は注目して当たり前。優勝最有力候補と目される人物を注目していない時点でダメだよ。』

『これは、申し訳ありませんでした。では、紹介された以外に気になる選手は居ますか?』

『それは……まあ、カイトだね。』

『カイト、と言うと天音選手ですか?いつもユリィさんが憑いていらっしゃる。』

『……なんか今変な字にしなかった?まあ、そのカイト。桜、ティナと同じクズハ様の元で鍛錬を積んでいるよ。』

 そうしてカイトが魔導具に映しだされる。カイトは興味なさ気にしている。

『……気のせいですよ。ほう、クズハ様の下でしたか。ですが、前情報によりますと、天音選手は運動音痴との情報がありますが……。』

 一瞬睨み合う二人。しかし、次の瞬間には元に戻り解説を続行する。

『それねぇ、この間お説教したんだけど、さぼってたみたい。』

『はぁ、さぼってた、と?』

『クズハ様の元で鍛錬していた二人は知っているだろうけど、実際の所、実戦形式になるとティナ、桜の両方より強いからね。』

『はい!?今大会優勝候補と目される両選手よりも、ですか!』

『うん。』

 その言葉に会場はどよめきに包まれる。悲鳴の多くは前評判を信じてカイトに賭けていない学生たちだ。

『何よりカイトが恐ろしいのは戦闘方法かな。詳しくは対戦選手に有利になるから教えられないけど、少なくとも、目に見えるものだけを信じていたら、負けるよ。絶対に油断しない事。』

『そ、そうですか。ですが、天音選手の……おや、天音選手に新しい情報が届きました!』

 そう言って真琴は部員が届けた資料に眼を通す。

『な~んと!天音選手!校内3大ファンクラブの一つ!天道選手のファンクラブからもブラックリスト入りが通達されたそうです!これでミストルティン選手の居候先と発覚した事に続いての2回目のブラックリスト入り!残すは神宮寺選手のみ!コンプリートも近いか!』

『おめでとーおめでとー。後一人も頑張ってねー。』

 気の抜けたユリィの祝福を聞いた瞬間、カイトは脱力する。

『どうやら、天道選手との仲良さげなツーショット写真の存在が報じられたようです!写真について私共の部でも全力で入手出来るように努力いたします!』

『公爵邸での宴会写真だね!あ、桜ったら赤くなっちゃってー。』

 ユリィはニヤニヤしながら桜の映る映像をアップにする。


(バラすな!それといらん事するな!)

 カイト、心の底からの叫びであった。


『おっとぉ!ここで写真の存在が確定されましたー!ユリィさんは当時現場にいらしたんですか?』

『その時もカイトの肩の上に居たからねー。確か、桜がお姫様抱っこ頼んだんじゃなかったかな?まあ、その程度で恥ずかしがってたら、あっちの秘密とかどうするのー?』

 あわあわと慌てふためく桜を見て、ユリィが楽しげに茶化す。

『ほう、興味深いお話です……おや?対戦相手のボクシング部部長がアップを始めたようです!試合は第4試合だというのに早い準備ですねー、スタミナを切らさない様に注意してください!しか~し!男子生徒からは熱い応援が!』

 ボクシング部の部長へは男子生徒一同から熱い応援が贈られた。それと同時に、カイトには大きなブーイングが。

『……え?何?長い?……分かったわよ。』

 途中で脱線を始めた実況と解説の二人に放送部の部員が注意する。二人はかなり残念そうにしながらも解説を再開する。

『さて、件の天音選手は刀使いとの情報です。また、保有魔力量もそこまで高いとは言えませんが……』

『うん。確かにそう言う意味での才能には恵まれていないよ。ただ、全く別の才能に恵まれてるから、そこに注意だね。』

『全く別の才能、とは?』

『さすがに、それは内緒かな。』

 全てを把握しているユリィは、ニヤリ、と笑みを浮かべる。この程度の情報提供で、カイトが不利になるなぞ、全く思っていない。それどころか、この程度は注意してあげないと、勝負にもならないのだ。

『ほう、それは試合が楽しみです。では、選手紹介はここまでにしておきましょう!』

 そう言って真琴は選手紹介を締めくくる。

『では、皆さんお待ちかね!第一回戦!スタート!』

 カーンという鐘の音と共に、第一試合が開始された。

 お読み頂き有難う御座いました。

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