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第45話 再び学園へ

 第4章『冒険者始動編』スタート。

 カイトとユリィが受付を離れると、案の定最後であったらしい。


「カイトさん、登録は終了したんですか?」


 全員が受け取るのを確認するために、受付近くのスペースで待っていた桜が声を掛ける。


「ああ、悪い。少し時間がかかったようだな。」

「何かトラブルがあったんですか?」

「いや、何もなかったが……。」

「かなりの人数が一気に登録したから、たまたま装置に不具合でもでたのかもね。50人は滅多に無いし。」


 ユリィは適当にでっち上げた推測を述べる。桜はそういうこともあるか、と考えて


「そうですか。登録できたのならいいんです。じゃあ、私は先生方に登録が終わったことを報告してきますね。」


 そう言って桜は教師たちのところへ向う。教師たちは桜の報告を聞いて、学園生を集め始めた。


「よお、カイト。遅かったな。なんかあったのか?」


 カイトを待っていたらしいソラが、あまりの遅さに質問する。


「そうか?偶然だろう。そういうお前こそかなり話していたらしいじゃないか。ティナから聞いたぞ。」

「ああ、まあ、オレも最後だったんだけどよ、たまたま受付のおっちゃんが勇者の伝承を集めるのが趣味だってのを聞いてな。話聞いてみたんだよ。」

「そうか。で、どんなことが聞けたんだ?」

「おう。えっと、まずは大戦期の堕龍退治の物語と先代魔王軍のエルフの里襲撃の救援に、皇都救援。後は……ああ、大戦終結後の話だな。まあ、あんま大声でいう話じゃないけど、娼館の公娼制度導入に伴う娼婦・男娼の公的職業化、温室の発明に連作の導入なんかをやったらしい。まあ、詳しくは聞けなかったんだけどな。」


 興味があったら今度酒でも飲みながら話してやる、ということらしかった。


「あまり飲み過ぎるなよ。」

「あはは、まあ、気をつける。」


 そうして二人は準備ができたらしい他の一同と一緒に、学園へと向う馬車へと向かっていった。




「へぇー。ここがカイトの学校かぁ。」


 そう言ってユリィは学校の周囲を飛び回る。幸い残っていた学園生達には気付かれなかったようだ。


「ああ。天桜学園高等部。幼稚園から大学院までを併設する学園。高等部の人数は一学年150人で、教師を含め約500人。転移に際しては寮以外の施設を伴い転移。寮がなかったため、公爵家の空間操作魔術で空間を増やして個人スペースを確保。一人あたり大凡4畳程度か。」

「ふーん。じゃあ、私もカイトと同室かな。久しぶりだね、カイトと一緒の部屋で寝泊まりするのも。」

「ああ、旅をしていた時は大抵一緒だったのにな。」

「旅が終わって公爵になった途端、毎日女の子を部屋に連れ込むもんねー。お陰で私はクズハと一緒の部屋。」

「毎日ではなかっただろ……。せめて週一……いや、週二程度だ。」

「……週五ぐらいあったよ?」


 半眼でそう言うユリィ。


「……いや、そこまでじゃない。」


 冷や汗を大量に流しながら否定するカイト。残りの週三はばれないはずであった。


「うん、連れ込んではいないね。大抵、精霊とか付喪神みたいな感じになってる人とかで、急に現れられるから。」

「申し訳ありませんでした。あいつらが呼んでないのに勝手に現れるか、理由があってで、しかたがないんです。」

「……ふーん。でも、結局一緒だよね?」

「はい。」


 ちなみに、何故週七でないのかというと、残りの2日は大抵仕事や夜会などがある為であった。さすがに彼女らも仕事最中のカイトを襲わないぐらいの配慮はある。


「まあ、それ置いておくとして……で、どうなんだ、学園長先生。異世界の学校を見た感想は。」

「ああ、うん。そっちはすごい参考になるよ。知ってる設備なんかも凄い整ってるし、見たことのない設備もたくさん。うん、まだまだうちの学園も進歩の余地あり、だね。」

「そうか。今度桜に案内してもらうといい。生徒会長だから、施設についても熟知しているだろう。」


 桜はユリィのことをとても気に入っていたので、恐らく引き受けてくれるだろう、そう考えたカイトだがユリィは不満気である。


「あーぁ、カイトが案内してくれないんだ。この薄情者ー。」


 茶化すようにそう言うユリィ。きちんと案内してもらうなら、桜のほうが良いのは承知していた。それをきちんと知っているカイトはスルー。そうしている内に他の面子も降りてきた。




「帰ってきたなー。若干食堂の飯が恋しいぜ。あ、そういやユリィは飯どうすんだ?」

「あ、皆と一緒に食堂で食べるつもりー。てゆーか、私一人で寂しく食べろって言うつもりじゃないよね?」

「もしそうなら天音が一人で食べなよ。ユリィちゃんは私達と一緒に食べようね。」


 ねー、と魅衣と由利の二人が近づいてくる。ティナも一緒だ。


「さすがにそうは言わないって。だが、少なくとも騒ぎにはなるなよ?」

「無理だよー、多分。」


 そう言って由利は否定する。


「無理じゃない?私達だって初めて見た時は凄い興奮してたし。」


 出会った時を思い出して魅衣も同意する。カイトも思い出して


「はあ、やっぱり連れてくるべきじゃなかった……。」


 と小声で言ったのだが、ティナに聞きとがめられた


「無理じゃな。その場合は荷物にでも紛れ込んでおるじゃろ。」

「うん。どこに隠れればいいかはすでに把握してるからねー。」


 ユリィはすでに荷物に紛れ込んで密かに同行した前科が複数回―それも一度や二度ではない―あるので、どこに隠れればばれないかを把握していた。ティナはそれを知っているので否定したのである。


「カイト。明日は武器選定だってよ。楽しみだな!」

「おい、ソラ。楽しみなのはいいが、一応本物だし、命に関わるからな?選定は真剣にやれよ。」

「おう!まぁ、実戦は当分先らしいけどな。」

「ちなみに、桜は薙刀らしい。さすが名家のお嬢様ってとこか。」

「魅衣はどうするのー?」

「うーん、会長と一緒の薙刀でもいいんだけど……レイピアも捨てがたいんだよね。両方使ったことあるし。由利は?」

「そっかぁー、私は弓かなぁー。」

「じゃあ、私はレイピアとかの近接のほうがいいかな。ティナちゃんは魔術師志願らしいし。」


 実は魅衣は結構な名家出身のため、実家の方針で薙刀とレイピアの経験があった。由利は一般家庭ではあったが、弓道部なので弓一択だった。


「うむ、すまんのじゃ。ソラはどうするんじゃ?」


 一応運動が苦手な設定なので、魔術師志願としたティナ。実際はカイトには勝てないものの、近接もかなり出来る。というより、並の武闘家が相手でも、圧勝出来るぐらいの力量は持っている。


「オレは……やっぱアルと同じかな。聞いたらアルが教えてくれる、って言ってたし。」

「アルって、天城、見たことあるの?」

「いや、無いんだけどよ。確か片手剣と盾のスタンダートな戦士だったはず。」

「そりゃ、見りゃわかるわよ。」

「まぁ、なぁ。あ、そうだ!カイト、お前見たことあったろ?」


 エネフィア転移初日に気を失わなかったのはカイトとティナだけであった。その二人がアルが助けた、と言ったので見ているはず、と考えたらしい。


「ああ、見たな。確かに片手剣と盾を使うスタイルだった。ただし、そこに空戦用魔導鎧を併用したスタイルだな。」

「やっぱそうなのか。で、お前はどうするんだ?」

「まぁ刀かな。」

「え?刀あんの?」

「配布されたリスト見ろよ……中津国には刀あるぞ。今回は中津国の燈火様が贈呈してくださったらしい。」

「マジか。知らなかった。まあ、始めっからアルと同じスタイルって決めてたからな。」

「ん?そうなのか?」

「まぁ、前線で壁って必要じゃね?冒険者でパーティプレイなら、一番必要かな、と。だから防具も重防備にしようって考えてる。」


 若干短絡的な所があるものの、ソラはきちんと何が必要かを考えて行動できる奴であるため、アルと同じ片手剣と盾、それに金属製の重鎧スタイルと考えていたらしい。


「あんたらしいわね。」

「じゃあ、いざとなったら天城の後ろにかくれよーっと。」


 カイト、ティナ、ソラ、由利、魅衣の五人は中学時代からの知り合いであるため、ソラの考えには驚かない。

 これに、以前の生徒総会で一緒に居た翔が、同じ中学の仲の良い面子であった。ちなみに、カイトには彼らとは別にちょっとした知人が居るのだが、それはまた別の話である。


「おう、そうしてくれ。まぁ、初心者脱出したら買い替えだから、そこまで悩む必要はないんだろうけどな。」


 ソラが笑う。当たり前ながら、公爵家が支援するのは初心者の武器だけである。それ以降の武器を買うのは天桜学園側の費用であった。

 尚、当然ながら初心者用の武器は安いのだが、その一方、初心者から脱した所にある武器はそれなりに値が張るらしい。これは需要と供給の関係上、仕方がなかった。

 どんな職業でもそうなのだろうが初陣で挫折してしまう冒険者は少なくなく、そう言う者達の成長を見込んでその後の武器を大量生産をするのも馬鹿らしいだろう。更にはそこまで辿り着くとワンオフにも近くなってくる。大量生産はしにくくなり、必然として値が張る事になるのであった。


「確かにまあ、容量を超えて魔力を通しすぎると今度は武器が爆発するからな。買い替えの時期は考えるべきだろう」


 カイトはソラの意見に応ずるように、もし買い換えなかった場合に起きる現象についてを言及する。エネフィアではこの現象を応用して<<魔力爆発マナ・エクスプロージョン>>と呼ばれる、一定の空間に魔力を集め続け爆発させるという魔術もある。これはかなりの魔力量を必要としている分、威力は折り紙つきだった。


「それを応用してぶつけた武器を爆発、もできそうだな。金、馬鹿になんねぇけど。」


 ソラがカイトの言葉を聞いて苦笑気味に提案する。実はカイトはコレを魔力で創りだした武器を使用してやるのだが、元手ゼロで結構なダメージを広範囲に与えられるのでお気に入りの戦闘法の一つであった。おまけに、武器の中に圧縮しているので、同程度の魔力ならば範囲は<<魔力爆発マナ・エクスプロージョン>>に劣るものの、威力で圧倒的に勝っているのである。とは言え、やはり一対一の戦闘だと費用対効率が悪いので、滅多に用いないが。

 ちなみに、ティナはこんな精密爆撃みたいな事をやるより、一気に周囲まるごとぶっ飛ばした方が楽、と<<魔力爆発マナ・エクスプロージョン>>を多用していた。当たり前だが、難易度はただ単に魔力を一点に集めるだけで済む<<魔力爆発マナ・エクスプロージョン>>の方が簡単なのだ。


「最後の切り札には覚えておいてもいいかもな。」

「そうだな。最悪は武器一つで命が助かるなら、試す価値はあるか。」


 カイトの言葉に、ソラも頷く。ソラとて武器より命の方が大事である事ぐらいは理解している。


「まぁ、その前にそれだけの魔力を持たないとな。」

「まったくだな。」


 あはは、と笑う男たち二人に対し、魅衣が呆れ返っていた。


「その前にそんな状況に陥らないようにしなさいよ……。」


 もっともな魅衣の意見に男二人はきょとん、とした顔を浮かべていた。どうやら、始めからそんな考えは頭に無かったらしい。


「お主ら、何故危機前提で話しておったのじゃ……いや、まぁ正しいといえば、正しいんじゃが……今の余らで武器を失うような状況に陥れば、それ即ち死じゃぞ?」


 起きない、とたかを括るのは間違いであることぐらい、誰にでも理解できた。


「それもそうだな。そんなずっとずっと先の話なんか考えても無駄か。まずは、足元を固めないとな。」


 カイトとティナを除けば、今の学園生たちは武器を失えばエネフィア最弱の魔物であるゴブリンよりも遥かに弱い。武器があってようやく対等ぐらいなのだ。その現状を脱しないことには、こんな議論は無意味なのである。では何故、こんな議論になったのか、と言うと、カイトは公爵時代の癖、ソラは話の流れであった。

 そうして、一同は気を取り直して、出迎えた学生たちに迎えられ、天桜学園へと帰還したのであった。ちなみに、当然ながらユリィの存在は大きな話題となったのだが、横に置いておく。

 お読み頂き有難う御座いました。


 2018年1月28日

・構成見直し

 前後の文章のつながりが可怪しかった所を修正しました。

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