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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第二七章 其の一 ソラ強化編
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第471話 新たな力 ――完成――

 本日24時に断章のソートを実施します。二重投稿等で紛らわしいかと思いますが、ご了承ください。

 ソラ達が坑道から素材を持ち帰った数日後。オーアは武器の製作を終了させる。


「うん、これで大丈夫だ。ほれ、小僧。使ってみな」


 鍛冶をする最中に使うゴーグルを上げて、オーアがソラに出来上がった鎧の一式を手渡す。それを受けてソラは新たに拵えられた武具一式を身に纏う。見た目はあまり変わってなかったが、少しだけ重くなった様な印象があった。


「ちょっと重いっすね……」

「ああ、小僧の筋肉の発達具合やらから、今使ってるのよりももう少し重くても大丈夫だと思ってね。防御力を高める意味でもちょっと板金を厚めにしておいた。まあ、普通のステンレス合金よりも割合としちゃ魔法銀(ミスリル)が多めだから、魔術的な防御力の意味でも高いよ」

「へぇ……」


 オーアの言葉を受けてソラが身体に身体強化の魔術を通してみると、実際には重さの変化は殆ど感じられなかった。スタミナ的には殆ど変わらないと思っても良いだろう。


「篭手の方は小僧の要望通りに仕上がってるよ。まあ、総大将の逸品見たく魔力の固形化は出来ないけど、その代わりに柔軟な変形が出来る。試してみな」

「うっす」


 オーアの指示に従い、ソラは篭手に魔力を通す。すると篭手に取り付けられた水色の魔石が緑色に光り輝く。


「後は小僧のイメージだ。何か適当にイメージしてみな」

「えっと……まずは手の形かな」


 オーアの指示に従い、ソラは風を操って手の形に操作するイメージを作る。すると風がソラの篭手から巻き起こり、手の形に変わる。大きさはソラの篭手の掌と同じ大きさだ。全力でやればもっと大きくなるらしいが、さすがに鍛冶場で全力を出すのは避けたのだ。使用感覚としては数日前まで使っていた篭手と大差は無かった。


「おっしゃ!」

「良し!」


 ソラが上手く手の形に風を操作したのを見て、オーアもガッツポーズで応じる。取り敢えず第一段階は成功したらしい。


「じゃあ、今度は……そこのスコップを掴んでみな」

「うっす」


 ソラは炉に魔石をくべる為に使うスコップへと風の手を動かす。すると、風の手は上手にスコップの柄を掴み持ち上げる事に成功する。オーアはそれを見て頷くとソラに風を収める様に指示する。


「もういいぞ……強度も問題なし、と。全力でやれば戦いにも支障が無さそうだね」

「おっしゃー! っと、有難う御座いました」


 ソラは大きく喜んだが、礼を言っていっていない事に気付いて大慌てで頭を下げた。


「ああ、いいって。たまにゃこういう変わった仕事もしときたいもんさ……っと、次だ。全身に通してみな」

「うっす」


 ソラはオーアの言葉に従い、鎧全体に魔力を通す。そうして全力の50%程に達した所で、鎧全体に変化が現れた。鎧の各所に取り付けられた魔石から風が噴出し、その風が鎧全体を覆ったのだ。


「お、やっぱ出たか」

「なんすか、これ?」


 ソラとしては想定の範囲外だったので目を丸くしているが、オーアの方は想定内だったらしい。合点がいったかのように頷いていた。


「風が通った余波で風が鎧を補強してくれてるんだ。まあ、分身を創り出す為の余波だったんだが、結果オーライだろ」

「そうなんすか……まあ、便利だからいっか」


 結果として自分に拙い事が無いなら心配ないか、とソラは考えなおしてオーアの説明で納得する。


「まあ、次は全力まで出力を上げてみな」

「うっす!」


 オーアの指示に従い、ソラは全力で鎧に魔力を通す。すると、再び変化が現れた。鎧全体が黄金色に変化したのだ。


「色が……変わった?」

「まあ、ちょっと合金の配分を工夫してね。目立つようにしてみた」

「何やってるんっすか!」


 オーアが笑って告げた言葉に、ソラが目を見開く。というのも、目立つ、ということはその分狙われやすくなる、ということだ。だが、このソラの文句に対してオーアが眉を顰めた。


「逆に聞くけど、あんたこそ何言ってるんだ?」

「へ?」

「冒険者も戦士だ。戦場でめだってなんぼの商売。それに小僧は全員を守る盾だ。目立って敵の注意を引きつけないなら何の為の盾だ、ってんだ」

「うぐっ……」


 オーアの言葉は正論だった。それ故、それを指摘されてソラは口を閉ざすしか無かった。とは言え、心情としては別だ。やはり敵から狙われたいか否かと言われれば、狙われたくないのは仕方がないだろう。


「まあ、取り敢えず風は渦巻いてるんだから、そのまま今度は分身を創り出す事をやってみな。ただ単に全ての魔石を起動するだけで良い」

「うーっす……」


 正論で指摘されてソラが若干落ち込むが、試験の最中なので気を取り直して――それでも少しテンションが下がっていたが――鎧各部の魔石を起動する。起動は魔力で操作するだけで良かった。


「うおぉ……」


 幾ら心構えが出来ていたとは言え、やはり分身が出来ると驚いた。分身はほぼオートで戦闘行動を取る様に設定されているので今は直立不動だが、そこには確かに風で出来たソラが居た。

 まあ、さすがに着色などが為されているわけでは無いので一目で分身と分かるのだが、それでも分身は分身だ。牽制効果としては十分だし、相手に警戒を抱かせるにも十分だった。

 おまけに風をかまいたちの様に放って飛ばして攻撃することも出来るし、篭手で作った手と同じように殴りつける事も出来る。攻撃力にしても悪くは無い。

 弱点があるとすれば風で出来ているが故に豪風が吹けば形を保てなくなる事だが、そこまで対処出来るとなると今のソラの腕では手に余る。仕方がないだろう。


「まあ、行動の指示だけは小僧がやるしか無いから、指示し忘れて棒立ち、なんてならないようにな」

「うっす」

「良し、じゃあこれで終わりだね。アタシは寝る。後は帰って寝るなり練習するなり好きにしな」

「有難う御座いました!」


 オーアが眠そうに鍛冶場を後に後にしようとした所で、オーアがふと気付く。


「ああ、盾と片手剣は桔梗と撫子が作ってるから、そっちから受け取りな。鍛冶場は知ってるだろ」

「うっす」


 それを最後に、今度こそオーアは鍛冶場を後にする。仕込み盾の製作こそオーアが担当したが、仕込み刀と片手剣の製作は二人が行っていた。

 別にオーアが出来ないわけではないし、腕も二人を上回る。だが、ソラ専用のカスタマイズとなると二人の方が慣れている。それ故に二人が担当していたのだった。ちなみに、材料の方は鎧と同じく合金なので、二人の調練も兼ねていた。


「よっしゃ! 帰って練習だ!」


 それを見届けて、ソラも鍛冶場を後にする。幸いなことに公爵邸別邸にはカイトやティナが使う訓練場が備わっている。訓練をする場所には事欠かない。

 風を変形してドリルの形に変形させるなど、まだ試していないことは沢山あるのだ。先に進んでいった瞬達が帰って来るまでに一応の形にするためには、時間はどれだけあっても足りなかった。


「ああ、完成したのか?」

「おう。藤堂部長ももう大丈夫そうっすね」

「ああ、さすがに古龍(エルダー・ドラゴン)の腕は確かだ。もう違和感も無い」


 ソラが来た時には、藤堂が木更津と模擬戦を行っていた。二人はソラが新しい鎧を着てきたのを見ると一度調練を止めてソラの鎧を観察する。

 藤堂はさすがに腹に傷があったので帰った初日と2日目は違和感があり、傷が再度開かない様に大事を取ったのだ。とは言え、3日目となると違和感もなくなり、普通に鍛錬に出ていたのである。


「では、少し見せてもらおうか」

「了解っす」


 藤堂達とて、自分達が苦労して取って来た魔石がどういう武器に変わったのか興味はある。なので二人は本格的に戦いを一時中断すると、ソラの邪魔にならない様に少し離れた所に腰掛けた。


「まずは肩慣らししとくか」


 ソラはそう呟くと、今度は全力で右腕の篭手に魔力を通す。すると、今度は1.5メートル程の風の手が生まれる。肩慣らしとは形の話で、大きさの事では無かったらしい。


「全力でこんなもんか……次は腕も作ってみよ」


 ソラは次いで腕の部分も作る。それはソラの篭手から伸び、風の手まで伸びていくが、手の大きさが少しだけ小さくなる。大きさとしては1.2メートル程だ。これはソラの出力に影響され、腕を創り出した事で手に回せる力が少なくなってしまったのだ。


「これ、結構辛いな……」


 結構全力で風の腕を創り出しているらしく、ソラの顔は若干苦悶に歪んでいた。片手だけでこれなのだから、両腕だとかなりの疲労感になるだろう。


「普段の戦闘じゃもうちょっと薄めにするか、小さめにしとくか……」


 威力としては十分だし、大きさとしては悪くは無い。なのでソラはそう決定付ける。そして次いで両腕の篭手に魔力を通し同じ事を確認する。


「ハンマー! って……なかなか勢いが有るよな、これ」


 ソラは風の両手を合わせて頭上から振り下ろす。即席の<<風槌(ウィンド・ハンマー)>>なのだが、威力はなかなかだった。全力でやれば、ソラが今まで悩んでいた攻撃力についても大幅な増強が見込めそうだった。


「じゃあ、次は……<<風よ>>」


 更に幾度かの試験の後、ソラが加護の使用に移る。そうしてソラの口決に合わせて、右腕の加護の紋章が光り輝く。そうしてソラは風の加護を使い、更に篭手に力を移譲する。


「<<風の手(ウィンド・ハンド)>>!」


 ソラは加護の力も併用して風の手を創り出す。加護の力を得たそれは圧倒的で、先の三倍の大きさと密度を持つ巨大な手を創り出した。だが、それでもまだ全力では無かった。


「今度は全力だ! <<風の手(ウィンド・ハンド)>>!」


 ソラは一つ叫ぶと、今度は全力で篭手に魔力を通す。すると片手だけだが、10メートルもの大きさの巨大な風の手が出来る。風の密度にしても先よりも遥かに上だった。


「結構辛い……」


 とは言え、その代償もまた、大きかった。片手だけでもとんでもない魔力を消費してしまい、とてもでは無いがこの大きさと密度で両腕を顕現させることは出来そうに無かった。


「これ、全身でやったらもっと辛いよな……」


 巨大な風の手を消失させて、ソラが少し眉を顰める。確かに片手だけでも辛いのだ。それが全身なら考えるまでも無かった。とは言え、試さないことには感覚が掴めない。なのでソラは意を決して、自身が出せる全力を行う事にした。


「くぅ……無茶苦茶つれぇ……」


 全身全霊を掛けているのに近いのだ。戦闘が不可能というわけでもないが、それでも常時魔力を大量に消費し続けている感覚があった。おまけにこの操作の指示までしなければならないのだ。使い熟すには一朝一夕では無理そうだった。少なくとも瞬達が帰って来るまでに使い熟せる自信はソラには無かった。


「こりゃ使いドコロが肝心だな……」


 分身を消失させて、ソラが苦悶に顔を歪めながら呟いた。オーアの言葉に依れば加護の力も使って全力でやれば二体までは同時に作れるらしいのでやってみたのだが、分身への指示は難しいし魔力の消費も激しい。スタミナが重要なステータスであるソラとしては、一気に決めるかスタミナを重視するか判断が重要な所だった。


「なあ、天城」

「ん? なんだよ」


 そうしてじっとソラの新装備の様子を見ていた木更津が問い掛ける。何かを思いついたらしい。


「さっきのドリルだが、腕に纏わせられないのか?」

「へ? <<風削岩(ウィンド・ドリル)>>? 出きっけど……」

「それで密度を上げれば攻撃力が増すんじゃないのか? 魔力の消費も低減するだろうし……」


 木更津の言葉を受けて、ソラが少し思案に入り、実際に木更津の言う通りに風を腕に纏わせる。


「おお、成る程」

「あ、そか。そうすりゃよかったのか。<<削岩腕(ドリル・アーム)>>ってとこか」


 木更津の言葉通りに作った風のドリルを見て藤堂が感心し、ソラが頷く。風なので小さな隙間さえあればそこを基点として削る事が出来るので、硬い物を殴りつけた所で問題は無い。なので総合的に見ても威力は上がるのだった。


「このまま射出する事も出来るよな……うん、サンキュ!」


 取り敢えず出来た新しい手札に、ソラが木更津に感謝を述べる。木更津は少し照れくさそうだったが、それを受け入れる。


「出来たなら、一度模擬戦をやってみるか?」


 ひと通り新装備の感覚を試した後、ソラに対して藤堂が問い掛ける。ソラにも疲労感は少し有ったが、休息が必要なまででは無い。なのでソラはそれを受け入れる事にしたのだが、一つ提案があった。


「なら、同時でお願いしていいっすか?」

「なに?」

「いや、一応この装備って複数を相手にするのメインなんっすよ。なんで、同時に相手してみたいんっすよね」


 怪訝な藤堂だったが、ソラの装備の意図を理解するとその提案を受け入れる。確かにソラが見せた攻撃の多くが範囲攻撃だったのだ。それは理解も出来た。


「じゃあ、行くぞ」

「うっす、頼んます」


 そうして、その日から全員でソラの新装備の慣熟訓練に入るのであった。

 お読み頂き有難う御座いました。

 次回予告:第472話『先へ進む者達』

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