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第33話 次の舞台へ

 遂にVRゲームへの参戦を希望したクズハ。更にモニターが増えて大喜びのティナは今度はヘッドマウントディスプレイ型を装着させる。


「こっちは頭に着けておくだけでよいのじゃ。」


 そう言って自分も同じ物を装着する。更にクラウディアにも同じものを渡して装着させる。


「お主も体験してくれ。今度のは三人ではちと都合が悪いのでな。」

「はい!」


 ティナから手伝いを依頼されたクラウディアは大喜びで装着して、研究室にあった深く腰掛けられるイスに腰掛ける。


「よし、ではダイブ!」


 一切意味のない文句であるが、なんとなくそう言うティナ。ティナも使い魔に装置のモニターを任せ、自分も仮想空間へと没入したのであった。




『今度はあれか……。』


 周囲を見渡すカイトだが、舞台は地球の都市部に似た構成だった。ただし、周囲の建物は殆どが倒壊しており、そこらかしこで死者のうめき声が聞こえてくる。


『あれ?』

『ああ。まあ、地球ではかなり有名なホラーゲームだな。映画化もされてたはずだ。これは、多分シリーズ初期の作品がモチーフだな。』


 そう言ってステータス画面を開いて初期装備を確認する。


『……やっぱり武器はハンドガンとナイフのみ。弾は少し、と。』

『それってまずいの?』


 ハンドガンが銃を指すことはカイトが所持していたので知っているが、カイトの銃は弾を魔力生成していたため、ほぼ無制限であった。故に弾が少しと言われてもユリィには理解出来なかったのである。


『大丈夫だ、問題ない。で、このゲームだと……おい!そっちに誰かいるか!?』


 そう言ってカイトは障害物のこう側へと声を掛ける。


『お兄様、ここは一体……。』


 破壊された障害物を挟んでクズハの声が聞こえる。どうやら此方にはクズハが一緒にいるらしい。


『クズハか。とりあえず、ティナ!聞こえているんだろう!』


 テレビゲーム初心者が三人もいる状況で2つの舞台がティナに把握できていないとは考えられないため、声を張り上げで呼びかけてみる。


『うむ。どうやら無事に入れたようじゃな。クラウディア、そっちはどうじゃ?』


 ティナが映る画面が現れて、あちらにはクラウディアがいるらしい。が、なれない服装に戸惑っていた。


『はい、魔王様。行動には問題ありません。ただ、あの、この服装、なんとかなりませんか?』


 今度は新たに恥ずかしがるクラウディアが映る画面が現れた。


『む?何か変かの?』


 画面内のティナは女性用警官服を着ている。それに対してクラウディアは赤い生地で出来た服を着ている。クラウディアの通常に比べて露出がかなり抑えられていた。どこもおかしい所は無いが、何故か彼女は恥ずかしがっていた。


『いえ、いつもより露出が少なくて、恥ずかしいです……。』


 普通は逆だろう、そう思わないでもない一同だが、ティナは思うところがありその意見をメモすることにした。


『ふむ、衣装変更システムは今後の課題じゃな。多くのゲームで衣装変更システムは実装されておるし。』


 衣装変更システムはどうやらまだ未実装らしい。


『ああ、それで服は原作通りなのか。』


 自分も警官服に身を包んでいるカイト。横のユリィは女性用警官服をアレンジした服を着ていた。現代地球が舞台のゲームに妖精、完全に舞台設定無視であるが、そもそもエネフィアがファンタジー世界であるので気にしても仕方がないことであった。


『で、とりあえずは脱出でいいんだな?』


 ゲームクリアの条件を確認するカイト。


『うむ。ルートはわかっておるじゃろ?あ、余とカイトを分けたのは、詰まんようにじゃな。弾とセーブ回数は限りがあるぞ?』


 二人共モデルとなったゲームは複数回クリア済みであるので攻略法は頭に叩き込まれていたのだが、当然そうではない二人は迷いながらのプレイとなる。


『そこも忠実に再現すな!』


 モデルとなるゲームは弾数の他にセーブが制限されているので初心者ほど詰みやすかったのである。


『バカモノ!その部分を再現せず、このゲームを再現する意味はないわ!なお、映画は別物じゃ。』


 ティナが地球でゲーマー化して一番初めに初見で詰んだゲームである。それ故に、クズハとクラウディアを組ませると詰むのは目に見えていた。


『同感だ。だが、二人には別に他の作品でもよかっただろう。』


 地球では二人して映画館へ見に行ったのだが、最近は別物と化している気がしないでもない、そんな感想を得ている二人なのであった。

『いや、すまん。まさかクズハまでプレイするとは思っとらんでな。アクション系とRPG系以外はまだ再現できとらんのじゃ。再現できているのは短い奴ばかりじゃ。今度はパーティゲーム等を作っておくことにしておくとしよう。そのうち自作ゲームを作るつもりじゃから、その時はモニター頼む。』


 始めからテスターがカイトとなる事前提での作品選びであったので、再現できているのはカイトが得意とする分野の幾つかであった。地球製のゲームをほぼそのまま再現しているのは、現状シナリオ等を作っている時間が惜しいからであった。


『そうでしたか。では再現出来たら私達もご一緒させてくださいね。』


 初心者には若干難しいゲームでの初体験となったらしいので、次回を期待することにしたクズハ。


『うむ、そうしてくれ。ああ、それとカイトよ。途中から2つのルートは合流するから別段詰まんようには配慮しておる。』


 一応はティナも配慮をしているらしい。それがわかり安心したカイトはクズハへ指示を行う。画面の向こうでは同じようにティナがクラウディアに指示を出していた。


『よし、とりあえずクズハ。なるべく敵との交戦は避けて先へ進んでくれ。途中で合流するならそれからはオレが指示する。』

『はい、お兄様。このハンドガンとやらはお兄様のお持ちの銃と同じ扱いで構いませんか?』


 エネフィアでも近年カイトの銃をモチーフとして魔銃が開発されていたので取り扱いには問題がない。


『ん?そうだが、使わせたことは無かっただろう?』


 クズハに銃を触らせたことは無かった筈なので、何故クズハが使えるか疑問に思うカイト。


『ええ。ですが最近公爵家でお兄様の銃の劣化モデルの開発に成功しまして。魔術を込めた弾丸を打ち出すリロードタイプと、魔石に魔力を通して打ち出す無制限タイプの2つの開発に成功いたしました。と言いましても値段から量産は今のところ難しそうですが……。』


 最後に不穏な言葉があったが、要は前者は地球のグレネードタイプと同様、後者はリロード無しのハンドガンタイプと思えば良い。


『……いくらなんだ?』


 公爵家としてかなりの利益を得ている筈のクズハが高価、というのでかなり聞きたくないカイトではあるが、公爵家当主として聞いておく必要があった。


『……リロードタイプがおよそ大ミスリル銀貨50枚、無制限タイプがおよそ大ミスリル銀貨100枚です。なお、リロードタイプの弾丸は一発金貨1枚です。』


 大ミスリル銀貨一枚が日本円にして100万円に相当するため、約5000万円と一億円である。量産させることは不可能な値段であった。


『まあ、このようにただの物理弾を打ち出すのであればミスリル銀貨1枚程度で良いのですけど……。』


 地球で使用されている銃火器では初速が早いだけで、エネフィアで一般より少し強い程度の兵士が常時展開している魔術障壁にさえ阻まれ一切の意味を持ち得なかった。力のある存在ともなれば核兵器にさえ耐えうる障壁が無意識的に自動展開されている為、現状の地球の科学技術では、それなりに強い天龍などの種族と交戦すれば最新鋭の戦闘機が50機集まってようやく、一体の天龍と相打てるような戦闘力差である。


『え~。でもこんなの当たらないよ?作るだけ無駄じゃない?』


 的が小さ過ぎな上に、全力を出せば音速を優に超える速度で行動可能なので当たりそうにないユリィは辛辣である。


『いや、一般兵相手に牽制にはなるだろうから……。』


 一応地球出身としてフォローしておくカイト。ここにいる全員が寝込みで核兵器を打ち込まれても平然と出来る面子なので、苦笑いするしかない。


『まあ、お兄様も私も本当ならこんなオモチャより自分で出した武器のほうが強いのですけどね。』


 その後も更に幾つかカイトによる注意事項の説明を受けて準備が整う。




『そっちの準備できたか?』


 画面の向こうで話していたティナがこちらへ話しかけてくる。


『ああ、こっちも今終わったところだ。』

『はい、問題ありません。』


 すでに準備が終了していたカイトらも問題なく始められる状況であった。


『では、スタートじゃ!』


 ティナの合図と共に敵が動き始め、ゲームが開始されたのであった。



 そうして、開始してから2時間程度が経過した時、そろそろ終わりを迎えるか、というところで、再びティナから連絡が入る。


『カイトよ。そちらはどうじゃ?』

『こっちはそろそろ終盤近いんだが、そっちはどうだ?』

『こっちもそろそろ終盤じゃな。今例のブツを持ってT字路じゃ。』

『あ?例のブツ?……ああ、あれか。』

『汚物は消毒じゃー!ヒャッハー!』


 それと同時に響く、火炎放射器の音。そして、何かが燃える音がする。更にはティナがご機嫌に鼻歌を歌っていた。曲は何処かの世紀末が思い出される曲であった。


『……満足したか?』


 どう考えても、今のがやりたいが為に連絡を入れたのだろう。何もわからないクラウディアの困惑した顔が目に浮かぶ様であった。


『……うむ。スマヌ。お主がおらねば……のう。』


 どうやら恥ずかしくなったらしく、ティナが少し照れた様子で返した。


『あの……お兄様?今のは一体……』


 クラウディアと同じく、困惑した様子のクズハとユリィ。何が起こっているのか、全くわからなかった。


『……まあ、礼儀作法だと思ってやれ……』

『そうしてくれると助かるのう……』

『は、はぁ……』


 変な礼儀作法もあったものだ、クズハ達3人は、そう思うことにして、ゲームを進める事にしたのであった。

 お読み頂き有難う御座いました。

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[一言] すみません。質問です。 要には、とはなんて読めばいいんでしょうか。
2020/01/11 09:20 退会済み
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