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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第二十四章 冒険部・皇都編
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第441話 修正完了

 時は今に戻る。カイトは全員の報告書を修正しながら、ユニオン支部へと提出する為の手紙をしたため終える。そうして書き終えた後は、椿に急いで手紙を提出させに行かせることにした。


「よし。これでいい。椿、悪いが、これを急いでユニオン支部の修正依頼受付に出してきてくれ」

「分かりました、御主人様」


 別段提出しなくても問題は無いが、提出しておけば、後で経理の関係で文句を言われた時に此方は修正した、と言い張れるのだ。後々の面倒を無くす為だった。


「良し……これで問題無いな」

「後で全員に修正を通達しておきましょうか?」


 椿の問いかけに、カイトが首を振る。上層部の書き換えは必要そうだが、同時に全体の書き換えは必要が無さそうなレベル、だったのだ。


「いや、いい。別に向こうにも修正を依頼する手紙だし、ソラのに名前追記しとけば問題無いからな」

「げ、ってことは俺だけか?」

「そういうこと。まあ、それ以外にも先輩辺りのを若干書き換えるかもしれないけどな」

「わかった。心しておこう」


 ソラが若干嫌そうな顔でカイトに尋ねたが、カイトが笑みを浮かべてそれを肯定した。全員の報告書について精査していた所、ソラの報告書には『道中馬車内で女性に日本の話をする。』と記述されていたので、最後の方に補足で貴婦人についてをリデル公イリスだと明記しておけば問題は無かった。

 そうしておけば、収支報告書への記載もそれだけで済む。もしも他に必要だとしても、当時のパーティーリーダーだった瞬辺りの報告書を多少手直しすれば十分だ、とカイトは考えたのである。意外と書き換えの範囲が狭くて密かに内心で喜んでいたカイトなのであった。


「にしても……お前、マジでお貴族様なんだなー、って思うな、その格好だと」

「あ?」


 ソラの問いかけに、カイトが首を傾げる。特段変わった事をしているとは思わないカイトだが、どうやらその時点で可怪しかったらしい。


「いや……まあ、写真取った方が早いか」


 言うより見せる方が早い、とソラは思ったらしい。スマホ型魔道具を取り出して、写真を撮影する。


「ほれ」

「おー」

「ん?……ぷっ……確かにな」


 ソラから見せられた写真を見て、アウラが納得して、カイトがおもわず吹き出した。そこにはメイドを数人――椿はユニオン支部へ行ったが、ユハラやフィーネ達が当然居る――を侍らせて、クズハ、アウラという美姫に甲斐甲斐しく世話を焼かせるその姿は、どこを切り取っても、貴族の姿、だろう。


「緊張も無く平然としてりゃあ、まあ、そう見えるか」

「だろうよ」


 カイトの言葉を、ソラが認める。というよりそう見えたからこそ、そう言ったのだ。当然といえば、当然だろう。


「と言うか、今更ながらに思ったんだが……お前、そこの所どうだったんだ?」

「え?」

「いや、お坊ちゃまが首を傾げるなよ」

「……あ」


 そういえば名家の出身だった、とソラが思い出す。彼の意識からは既に実家の来歴や父親の仕事の事なぞすっかり消え去っていたらしい。


「あ、って……お前な……よくよく考えりゃお前の方が長いこと世話焼いてもらってるだろ? オレ地球じゃ普通に一般ピーポーだぞ。いや、まあ、裏でやってる仕事除いたら、だが」

「あー……どうだろ……雷蔵爺さんは生まれた時からの知り合いだし……そういや爺さんのお孫さんもメイドとして働いてるっちゃあ働いてるもんなー……」


 メイドというより女中さんなのだが、まあ、そこは二人にとってどうでも良い事、なのだろう。そんな事をつぶやきながら、ソラが少しだけ中空を見上げて、かつてを思い出す。


「……あれ? もしかしてマジで俺の方が長い?」

「オレ、正直10年ほどだからな。そもそも立ち上げ当初のクズハって……まあ、なんというか……おとなしいと言うか静かと言うか……おじょうひ、いたっ!?」

「お・に・い・さ・ま?」


 お上品、と言おうとしたカイトに対して、クズハが笑顔で脇腹を抓って抗議する。カイトとしてはこの辺りがお上品でなくなった、と言いたい所であった。


「いや、悪い……まあ、その昔は無口な子だったからな。アウラと並んでちびっ子だったし、ユハラ達なんてガキもいいとこだったろ?」

「懐かしいですねー。そういえば、御主人様に拾われた頃、って今の皆さんよりも幼かったですものねー」


 カイトからの問いかけを受けて、ユハラがニコニコ笑顔で頷く。そもそも彼女は孤児だ。それも地元の悪ガキ達の取り纏めをしていたのが集団で最年長のコフルで、その彼が見た目13歳程度――見た目であって実年齢は違う――なのだ。当時のユハラも推して知るべし、と言うところだった。


「へー……なあ、そこの所、どうやって出会ったんだ?」

「あん? 適当に悪ガキやってたコフルぶっ潰して、強引に引き取った」

「あの当時のお兄ちゃんって一日一回ぶっ飛ばされて半べそ掻いて帰って来てましたから。本当に情けない兄ですねー。まあ、今も一週間に一回ぶちのめされてますけどね」


 当時を思い出して、二人が笑いながら告げる。まあ、今でも大して性格に大差が無いコフルだ。今は一応落ち着いているといえば落ち着いているが、当時からほとんど変わっていなかったらしい。


「いや、俺としちゃそんな子供に容赦無いカイトの方にドン引き、なんっすけど……」

「あ? そもそも当時のオレもまだ20行ってないぞ?」

「げっ、そういやそうだった……」


 ソラの言葉に、カイトが少し呆れる。確かにカイトは見た目相応の年齢では無いが、当時はまだ少年の領域、だった。と言うか、今のソラ達よりも若い。


「当時のオレはまだ15、6という所だぞ……今考えりゃ、むちゃくちゃ若かったんだな、オレ……」

「おっさんくさいですねー」

「うぐっ……」


 カイトの発言は確かにおっさん臭かった。というわけでユハラがそれを指摘すれば、カイトが落ち込む。本来のカイトの年齢は、結構いいとこだ。

 まあ、そもそも彼から老いが失われて久しいし、実年齢としても色々と特殊な空間での経過時間を考慮しなければまだ三十路には到達していないが、やはり若いソラ達を前にすれば、少し気になったらしい。


「ふふ……こうして見ていると、マクダウェル公も学生さんですね」


 そんなカイト達を見て、リデル公イリスが楽しげに告げる。彼女には少しだけカイトが赤面したり慌てふためいたりしてくれる様子を楽しみにしていたのだが、その思惑は素気無く躱される。


「まあ、これでも学生ですからね」

「あら……」


 カイトが平然と認めたので、リデル公イリスは少しだけ口を尖らせていた。カイトとて、彼女のその思惑を読めぬはずは無く、それ故に平然と躱してやったのであった。


「そうしていると、学生さんじゃ無いですのね」

「これは失礼」


 少し拗ねた様子のリデル公イリスに、カイトが謙ってニヒルな笑みを浮かべ、頭を下げる。ちなみに、ここまでの彼女を見ていればわかるように、彼女は誰かをからかって遊ぶのが好きらしく、馬車の中ではソラや他の生徒達がからかわれては、弄ばれていた。


「おや……もしや、遅れてしまいましたか?」


 と、そこに入ってきたのは、学園の教師陣だ。彼らはカイトとリデル公イリスが平然と茶化しあっていたのを見て、もしや遅れたのか、と不安になったのである。


「いえ、まだ遅れていませんよ」


 そう言うのは、リデル公イリスだ。彼女が応対を任されている以上、彼女が口を開くのは当然だった。相変わらずカイトの立場が微妙だが、そこは致し方がなし、と誰もが諦めるしかない。


「ですが……皆さんそれなりにお待ちになられていたご様子ですが……」

「いえ、別に何かをしていた、というわけではないのですの。ただ単に、ダベっていただけですの」


 アンリが告げた言葉に、取り敢えずは桜田校長達も納得する。そうして、彼らが座った10分後。皇城勤めの使者が、控室にやって来た。


「皆様、第一皇女殿下と、第二皇女殿下が参られます」


 それに合わせるように、何人ものメイド達が扉を開いた。が、まあ、入ってきたのの片方は当然の様にメイド服の少女なのだが。


「……ストップ。タイム、54秒フラット。まだまだよ」

「申し訳ありません、レイシア様」

「お前は小姑かよ」


 ストップウォッチ片手に入ってきた少女に、カイトが呆れる。一応彼女はこの国の第一皇女として、最近その存在が公表され、おまけに言えば非公式ながらも、今回は国宝授受だ。ドレスコード等は気にしなくて良いのだろうか、等と思っていればシアが口を開いた。


「いいわよ、別に」

「読心術やんなよ」


 そこまでわかりやすかったのか、と思うが、彼女ならあながちできるか、と思ってしまうのが怖かった。そうして更に、かなり歩きにくそうなドレスを纏った少女が入ってきた。


「ほぉ……」

「……な、なに?」


 入ってきて即行のカイトの少し驚いたような感心した様なため息に、メルが思わずのけぞる。


「うん、綺麗だな」

「なっ!?」


 そう言って頷いたカイトに、メルが思い切り赤面する。こういった事を素面で言ってのけるあたり、親友たちの教育は上手くいっていた。まあ、今回ばかりは、それを誰も咎めることは無かった。なにせ全員が同じ感想を抱いていたから、だ。


「やっぱり、お姉さまはそちらも似合いますの」

「綺麗ー……」

「うっわー……マジでお姫様だー……」


 男女問わず、老若男女問わずに、ため息が漏れる。メルは今回、初代皇王イクスが残した聖遺物に近い国宝の授与に参列するため、一番豪華なドレスを着込んできたのだ。それだけ、皇国が導きの双玉を重要視している証であった。


「……」

「拗ねるんだったら、お前も着てこいよ。見てみたいしな」


 少しだけ拗ねた様子のシアを見て、カイトが苦笑して、本当に小さく彼女だけ聞こえる様に告げる。どうやら予想以上の受けの良さとカイトからの賞賛に、少し拗ねたらしい。


「妹に賞賛を贈っておいて、直ぐに姉を口説ける貴方の性根に賞賛を送りたいわ」


 だが、そういった彼女は何かと言い訳を付けて、立ち去って行った。そうして暫く。ようやくシアが居なくなったのに気づかれたのは、受け渡しの時間が迫った頃だ。


「あれ?お姉さま?」

「……そういえばいらっしゃいませんの」

「さぁ? メイドの手伝いでも行ったんじゃないか?」


 シアが居ない事に気付いたメルがキョロキョロと見回し、それに妹も同様にキョロキョロと見回すが、やはり見当たらない。


「まあ、さすがに国宝授与には参列するはずだから、いいだろ。先に行こう」


 そうして、一人真実を把握しているカイトが一同を急かし、一路、謁見の間に移動するのであった。

 お読み頂き有難う御座いました。ここで、今章は終了です。

 次回予告:第442話『国宝授与』

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