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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第二十四章 冒険部・皇都編
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第436話 遺跡調査 ――再起動――

 ロックに連れられて遺跡の調査を開始して、2日。特筆すべき事もなく調査2日目も終わりを迎え、遺跡のおおよその概形が判明していた。


「なんつーか……マンション、っぽい?」

「ですね」


 ソラの言葉に、この二日間ずっと地図を見続けていた凛が同意する。結局、遺跡の中に大した発見は無く、分かった事といえば、一番初めに入った部屋と同じ部屋が大量にあったぐらいで、何か重要な発見は何も見付からなかった。

 とはいえ、それで調査はしなくてよいか、と言われてもそうはならない。なにせ部屋の中にもし万が一、書物の一つでもあれば大発見だ。何もないかも、と思いつつも、調査は行わなければならなかった。


「一応、警備ゴーレムらしき物体の残骸がありましたが……全部破壊されていたり、動力源を喪失している様な感じ、でしたわね」

「まあ、戦いが無くて幸い、という所ですが……」


 話は更に続く。一応、どうやらこの建物を守護していたらしいゴーレムの様な物体の残骸はあった。が、どうやら崩落に巻き込まれていたり、超長時間が経過していたからか動力を損失していたりした為、動く様な気配は何処にも無かった。


「となると……地下、か」


 ロックから貰えた地図を見ながら、瞬が意見を出す。あの後、翔が手を当てていた部屋にも入ったのだが、そこにはやはり見立て通りに螺旋階段が存在していた。

 それは上層階へ上がる以外に、下層階へと向かう下向きにも、だ。が、そちらは如何な理由か、金属製のシャッターの様な物で閉じられていたのだ。地下が観測されなかったのは、それ故だった。


「どうしますか? 地下にも手を伸ばしますか?」

「……そうだな。一応、見ておくだけは見ておきたい。とは言え……その為にも、何処かに有るはずの電源装置を復旧させる必要があるな」


 ソラからの問いかけを受けて、ロックがしばらくの間考えて、結論を下す。まだ上層階にも見切れていない部屋があり、その中に彼らが見付けていない動力源がある可能性はあった。そこを使えば、シャッターの開閉が出来る可能性は無くはなかったのだ。

 というのも、シャッターは今の彼らの力では破壊出来ない高純度の魔鉱石(オリハルコン)で出来ていたのである。と言うか、ランクAの冒険者でも魔鉱石(オリハルコン)で出来たシャッターを破壊する事は難しい。となると、電源装置を復旧させるしかなかった。


「あるとすれば、地下だが……地下が封じられているとなると、何処かに必ず、予備の電源回路が存在しているはずだ」

「何処か、って予想は……?」

「残念ながら、分からないな。私も考古学をやって長いが……まあ、建築デザイナーが一人とは思えん。ならば、電源装置が何処にあるのか、というのは統一されてなくても不思議は無いだろう」


 瞬の言葉を受けたロックだったが、その言葉に頭を振るう。まあ、今回はそれを調べる為の調査なのだ。わかっているはずもなかった。


「ふむ……まあ、調査は明日で最後だ。それで行ける所までで良い。最悪は別に地下はある、とわかっている程度でも構わない。なにせこれは前調査に過ぎないからな」


 地下の調査に何処か乗り気なソラ達に対して、ロックが苦笑気味に言い含める。これから残りの上層階を調査していく事になるのだが、そこにも今までの様に戦いが無い、と決まったわけではない。

 もしかしたら残りの上層階には重要な者や物があり、警備が一気に厳重になっている可能性は無いでは無いのだ。それを考えれば、先を急ぐよりも、きちんと調査する方が重要だからだ。


「わかりました。まあ、地下については、上が問題なく終了したら、ということで」

「ああ、そうだな。それに、魔鉱石(オリハルコン)製のシャッターがあったからと言っても、別に地下に重要な物が収められているとは限らん。単に倉庫として使われていただけで、上の方が重要な物が、という事はままある。上もきっちりやってから、にしよう」

「はい」


 ロックの言葉に、ソラが頷く。こうして、二日目は終了したのであった。




 翌明けて三日目。ソラ達は再度瞬と凛の一条兄妹を残し、残る上層階へと入っていた。


「あ、ここらからは、なんか別っぽいですね……」

「そのようだな」


 桜の言葉を、ロックが認める。その階層に上がったと同時に、違いが見て取れた。扉の数が一気に減ったのだ。更には入口部分で待つ瞬に聞けば、どうやら扉の先の部屋の大きさも一気に広くなった、という事らしい。

 そうして、今回もいつも通りにマッピングをしてそのデータをダウンロードして、ロックの指示の下、調査を開始することにする。


「ふむ……壁の様に何かがあるのが、気になるな……階段はここで終わっているから、何かあると思うんだが……」

「あの……この端の小部屋。もしかして、電源とか置いている部屋じゃないですか?」


 地図を見て次の行動を考えていたロックであったのだが、そこに横合いから凛が口を挟む。彼女らはずっとこの地図とにらめっこしていたおかげで、ロックよりも地図の内容を把握していたのである。


「む?……ああ、この大きさは……確かに、その可能性は高いな。よし。ここを先にして、電源を復旧するか?」

「いえ、そうすると最悪警備システムが目を覚ましたりする可能性があるので、調査するなら、先に大部屋の方にした方が良いと思います。もし運悪く再停止も出来ない様なシステムだと、一気に撤退しなければならないかもしれません」

「ふむ……それは確かに、そうだな。そうしよう」


 桜の提言を受けて、ロックが自らのプランを修正する。彼としては明るい方が調査がしやすいか、と思ったわけなのだが、確かにこの建物に警備システムがある可能性は無いでは無いのだ。場合によっては電源を損失していた警備ゴーレム達が目を覚ます可能性は無くはない。

 ならば、出来る事を先に全て済ませて撤退準備も完璧に整えてから、の方が良いだろう。そうすれば最悪でも上層階全ての簡単な情報は入手出来るし、大部屋に逃げ込める様な緊急避難場所となる様な空間でもあればラッキーだ。


「よし。ではまず、最上階に戻る事にしよう」

「はい」


 とりあえずの方針が決まった事で、一同は先に向かう事にする。そうして向かう先は、両側にあった大部屋だ。が、そこに入って、見えたのは、大量の本棚だった。


「ほう……これは見事だな。ここは書庫か?」


 流石にこれはロックも予想外だったらしく、わずかに興奮を滲ませる。調査三日目にして、ようやく発見らしい発見だった。

 何があるかは分からないし、一部は数千年という月日の中で風化してしまってボロボロだが、運が良ければ、読める様な本があるかも知れなかった。これは十分に収穫と言えるだろう。そうして、一同はしばらくの間、書庫らしい空間の調査を行う事にする。


「……なんだこりゃ? レシピ本?」

「え、どれー?」


 ソラの言葉に、由利が興味を示す。適当に手に取った冊子だったのだが、中に書いてある内容は普通のレシピ本と変わらない内容だった。まあ、そう言ってもかなりボロボロなので完璧に理解出来るわけでは無いのだが。


「ふむ……もしかしたら住人用の共同書庫なのかも知れないな」

「ちょっと残念っすね……なんか高度な魔道書でもありゃ、良かったんですけど……」

「何を言っている? 何よりものお宝だろう。こういう文化風習はその当時の彼らが何をしていたのか、という事を知るのに役に立つ。そこからもしかしたらどんな技術体系を持っていて、等が分かることもある。こういった文化風習に対する記述も馬鹿に出来ないのだぞ」


 ソラの残念そうな言葉に、ロックは本から目を離す事なく、少し興奮気味に抗議する。どうやらこの重要性が理解できていないソラに不満だったらしい。これだから冒険者は、だの云々というつぶやきが聞こえてきた。どうやら研究者としての性が出てしまっていたらしい。


「えーっと、ロックさん。もう時間も残り少なくなってきたんで、次、行っとくべきかと思うんっすけど……」

「む……もう少し……いや、そうだな。向かいの大部屋の方も気になる。地下もあるしな。この部屋は後で本格的な調査をする為においておこう」


 ソラの言葉に名残惜しげだったロックであるが、自分でも残り時間を確認して、次の部屋に移動することにする。

 どうやらこの部屋だけでも十分に本格的な調査をする価値がある、と決めた様だ。まあ、ここまで大量の本があるのだ。国に掛けあっても調査隊を結成出来るだろう。そうして、一同は一度その大部屋を出て、真向かいの大部屋へと入る。


「こちらは……ふむ、なるほど。こちらは倉庫のようだな。本棚と倉庫を一緒の階層に置くとはな。まあ、もしかしたら構造上の関係……なのかもしれないな」

「はぁ……」

「まあ、とりあえずは一通り部屋を調べるか。ここまで遮るものが無ければ、ランタンを最大出力にして、部屋の全周も照らせるだろう」


 ロックは壁が見通せる様な大部屋の様子を見ると、ランタン型の魔道具の出力を一気に上昇させて、部屋全体を照らしだす。

 すると、そこはやはり倉庫らしい部屋だった。色々な物が雑多に置かれていたが、その中には普通の脚立の様な物も見て取れた。

 ここにはあまり物が置かれていなかった事もあり、調査は殆ど行われずに終了する。幾らなんでも普通の脚立や普通の錆びたのこぎりを調べた所でなんなのだ、という所だろう。そうして、一同は当初からの予定通り、電源ルームと思しき部屋へと入る事にした。


「先輩。これから電源を入れ直します。そっちも注意しておいてください」

『ああ、分かった。凛、これから建物の電力が入る。注意しろ』


 電源ルームと思しき部屋は、真実電源ルームだった。そこには古代文明のブレーカーらしい魔道具が設置されており、幸い破壊されているという事は無かったのだ。となれば、一度全員で用意を整えた後、電源が入るか試すだけだった。


「よし……では、入れるぞ」


 魔道具の前で待機していたロックが、一同に目で合図して、全員のうなずきを見て、スイッチを入れる。すると、今までは消灯していた天井のライトが点灯する。


「……生きている……ようだな。ふぅ……この瞬間だけは、何時も緊張するんだ」

『こっちでも通電を確認した。電気が点いた。が、何かが動き出した気配は無いな』

『……警備システム再起動……最上階の予備電源によって、警備システムが再起動されました。予備電源での再起動により、全システムがリセットされています。各隔壁のロックは開放状態へと移行。横のスイッチにて開ける事が出来る様になりました。警戒状況はリセットされています。再起動の前の状況に戻す場合は、警備室にて規定に従って再度設定してください』


 瞬から連絡が入ったと同時に、室内のどこからか声が響いてきた。どうやら案の定、警備システムが再起動したらしい。

 だが、一度警備システムが切れていた事で状況がリセットされてしまったらしく、襲撃が掛けられる、という事は無かった。その声に、ロックが納得した様に頷いた。


「ふむ……どうやら地下には警備室等もある、か。幸いな事に予備電源での再起動は警備システム等もリセットしてくれる様になっているらしいな」

「どうしますか? そこまで向かいますか?」

「頼めるか?」

「……そうっすね。時間はまだ大丈夫そうなんで、行きましょう」


 活動時間は最長でも一日8時間を限度、としていた。もし戦闘があった場合にはもっと短くなるし、あまり先に進みすぎても今度は逆にその探索疲れが残って戦闘に支障が出かねない。全員の生命の問題に直結してくるので、仕方が無いだろう。


「……とりあえずは、安全そうだな。もうランタンも必要は無いか……よし。では、地下へと行く事にしよう」

「あ、はい。先輩、そっち、異常は無いですか?」

『……ああ、何も変な物音は聞こえない。明るくなった事で通路の先まで見える様になっているが、お前たちが行った階段からは何か上がってくる気配は無いな』

「そうか。では、君達はそのまま待機していてくれ。私達も一度入り口に戻ろう。もしかしたら再起動にともなって、地図の地下が出来ているかもしれない」


 瞬の言葉を聞いたロックは服のベルト部分にランタン型の魔道具を括りつけると、護衛の一同と共に、一度瞬達の所に戻る事にするのだった。

 お読み頂き有難う御座いました。

 次回予告:第437話『遺跡調査』

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