第379話 発覚
カイト達と皇帝レオンハルトの謁見から時は少しだけ、遡る。それはメルの部屋にシアが訪れた時の事だった。
「メル。貴方も客人の所に……」
入って口を開いたシアであったが、見た光景に思わずため息を吐いた。
「あら、お姉様。どうしたの?」
「メル……貴方ね……もう少し美には気を遣いなさい。そのドレスはダメ。あまりに飾りっけが無いわ」
メルの部屋に入ったシアだったが、そこに居たのは鏡の前で髪を溶かしていたメルだった。とは言え、ドレス姿なのはドレス姿なのだが、お化粧は何も無し、だ。おまけに部屋には何の匂いも充満していなかったので、香水の一つも付けてはいない様子だった。
まあ、確かにメルは美少女なのでこれでも大丈夫といえば大丈夫だが、姉としては、文句がおおありだった。しかもこれから会いに行くのは自らの夫となる人物――この時点でも皇城の誰もメルとカイトの関係を知らない――だ。それなのに妹がこれでは姉の沽券に関わったのである。
「はぁ……旅の間でよほど無茶をしたのか、お肌の潤いもあまり良くないわね……しかも、何なの、それ? 普通の店で売ってる安物じゃないの」
鏡の前のメルに近づくと、シアは即座にメルの状況を把握して、ため息を吐いた。昨夜はあの後一度もメルとは会えていないのだ。しかも、会ったのは夜だ。分からないでも仕方がなかったのだが、改めて日の照らされる所で見ると、肌には潤いが僅かに失われていたし、お化粧の乗り等も良さそうでは無かった。
おまけに、メルが使っていると思しき美容道具等が鏡の前には陳列されていたのだが、それは彼女が旅の間に使っていたお化粧用品だ。つまり、皇女が使う物からすればかなりの安物、だったのである。これがシアの怒りを買った。そうして、シアはメルの手を取って、移動を始める。
「……良いわ。ちょっと来なさい」
「え、あの……お姉様? お客さんは……」
「良いわ。私が一言二言言っておけば、どうにでもなる相手よ。だから、貴方はこっちに来る。潤いを足したり色々するのに、まずはお風呂で水分補給よ。最近は良いお風呂があるから、それに入りなさい。それで潤いを補給して、お化粧の仕方ももう一回教えてあげるわ……小夜! 今すぐ最高級の薬液やらなんやらを整えて頂戴! 他のメイド達は大急ぎで薬湯の用意を!」
「かしこまりました」
シアの指示を聞いて、メイド達があたふたと大急ぎで用意を始める。こうして、シアはメルと共にお風呂に入ってみっちりとメルの美しさを高める事にするのだった。
ちなみに、シアも一緒にお風呂に入り入念に手入れをしていたのは、やはりカイトと正式に出会う事になるから、なのかどうかは、当人以外には不明である。
こんな姉妹の騒動から、二時間後。皇帝レオンハルトが皇子皇女達を呼びに行かせてから十数分。用意が整ったらしく、従者が皇女の入室を伝える。どうやら、準備が出来た順に入ってくるらしく、一纏めではなく個別に紹介がされるようだ。
「おお、まずはアンリか。まあ、知っているな? 第七皇女アンリだ」
「第七皇女アンリ、参りました。皆様方には成人していませんが故、本名を明かせぬご無礼、お許し下さい。カイト様、シュン様、瑞樹様。お久しぶりです。他の皆様におかれましても、どうかお見知り置きいただけますよう」
皇帝レオンハルトの紹介に続けて、アンリはスカートの裾を掴み優雅に、されど可憐に一礼する。非常に皇族らしい振る舞いであった。なお、瑞樹を知っているのは、彼女がアンリの相手をしていたからだ。
「ふむ、他の者はまだ少々時間が掛かっている様だ……いやに早かったな」
ふと思い直し、呼び出されたにしては早い来訪に皇帝レオンハルトが訝しむ。普通は皇族として、お色直しや着替え、皇城内の移動に時間がかかるため、早くても30分程度は掛かるのだが、彼女は半分程度の時間で来た。使者が着いた時には用意が終わっていたとしか思えなかった。
「いやですの、お父様。かの勇者と見える事が出来るとあらば、飛んでくるというもの。遅れては損ですの。何も不思議では無いですの」
「……う、うむ。その気持ちは非常にわかるが……」
悪い癖が出ないか心配だ、と思う皇帝レオンハルトだが、内心で大きくなっていく不安を飲み込んだ。さすがに客人の前で彼女の悪い癖に言及できなかったのだ。
「ま、まあ良い。む、次が来たな」
「ああ、来てやったぜ、親父。久しぶりだな」
そうして入ってきたのはリオンとその妻のスレイだ。二人の子供も一緒だ。
「お祖父様、お久しぶりです」
「おじいさまー!」
「おお、フレイヤも大きくなったな! シリウス、お前も丁寧に礼が出来るようになったではないか!」
皇帝レオンハルトは皇帝の目ではなく、孫を見る祖父の目で自らに駆け寄ってきた二人の頭を撫でる。非常に嬉しそうであった。
「……お前もよく戻った。言いたいことと聞きたいことはあるが、目出度い場だ。取りやめよう」
フレイヤを抱き上げながら、目付きだけは皇帝のそれに戻してリオンに告げる。それに、リオンも頷いた。確かに、親子の間には未だに僅かなわだかまりが存在している。だが、それでも勇者の帰還の席で告げるのはダメだろう、と思ったのだ。
「ああ、まあ、こっちも楽しませてもらったからな。その事についちゃあ、礼を言っとくぜ。っと、カイト、久しぶりだ」
「ああ、久しぶりだ」
「カイトさん、お久しぶりです」
父に続いて、シリウスもきちんとした一礼を行う。どうやら幼くとも王族としての教育を施されており、将来有望そうであった。まあ、フレイヤの方はまだまだ幼い。かなり照れた様子で祖父の上からぺこり、と頭を下げただけなのは、致し方がない事だろう。
「ああ、シリウスも久しぶりだ。元気にしてたか?」
そんな幼い王族達の姿に、カイトは微笑ましい物を感じて、笑みを浮かべる。
「はい。あの、それで旅の物語を読んでたんですけど、幾つか分からない点が……」
「なんだ?」
そうして、子供向けの本を片手にシリウスが切り出したのを切っ掛けに、本来の目的である交流が開始されるのであった。
それから、一時間程。その後も数人の皇子や皇女達が来て、簡単な会合が持たれたのだが、皇帝レオンハルトだんだんと威厳を取り繕う事を止めていた。と言うか、普通のお爺ちゃんになっていた。
「おじいさまー」
「おぉ、フレイヤ、あまり髭は引っ張らんでくれ」
「おじいさまのおひげきれいなの」
「おぉおぉ、俺の自慢の髭だ」
と、こんな風に普通のお爺ちゃんになっていた皇帝レオンハルトであったが、仕事の時には顔付きが戻る為、カイトは少し楽しかった。とは言え、どうやらまだ来ていない皇子か皇女が居るらしい。なので、皇帝レオンハルトが執事長であるエルメロイに問いかけた。
「あの二人は何をしている?」
「少々お待ちください」
皇帝レオンハルトの言葉を受けて、エルメロイは部屋に備え付けの魔導具を用い、誰かと通信を行う。そうして何言か話し合った後、皇帝レオンハルトに報告する。
「本日朝に伺ったらしいのですが、どうにも身嗜みが整っていない事に怒られまして、二人で入浴して色々と整えてから此方に来る、と」
「……まあ、致し方がないか」
二人共、これから先の命運を決める公爵との謁見が待っているのだ。なるべくよく見られようとするのは仕方がない事だ、と皇帝レオンハルトは遅れている事を許した。
とは言え、来るはずなのに遅れているのは事実だ。なので、皇帝は全員に一応詫びを入れておく事にした。
「いや、すまん。本来は後二人来る予定なのだが、少し遅れている様だ。来次第紹介するが、もう少々待っていてくれ」
「あ? 後二人って誰だよ?」
リオンが今ここに居ない面子で、来そうな面子に心当たりが無かったので問い掛ける。彼とて昔は皇城で起居していたのだ。当然ながら、ほぼ全ての弟妹たちの性格は把握しているのであった。
「フランとスカーレットだ。」
「あ? スカーレット帰ってきてんの?」
意外そうにリオンが目を少しだけ見開いた。実はメルが家出した際に、念のためにリオンにも連絡を回し、包囲網を張っていたのである。
当たり前だが、2年前の時点でリオンはすでに駆け落ち済みだ。なので、手を回すのは当然とも言えた。まあ、そのまま国内を所狭しと武者修行していたわけなので、無駄になったのだが。
「つい先頃な。かなり腕を上げていた」
皇帝レオンハルトは皇国一の武芸の使い手だ。それ故、メルの上達具合は身に纏う魔力の洗練具合や身のこなし等を見ただけで理解出来たのである。
まあ、それ故、実は謹慎明けに即座に彼女を皇帝専用の訓練場に引っ張りだす事になるのだが、それは横においておく事にする。
「ふーん。まあ、あいつは貴族教育が失敗してるからなー」
「お前が言うな」
「親父も言うなよ。お袋と結婚したのだって強引じゃねえか」
リオンの言葉に、皇帝レオンハルトが視線を逸らす。実は皇帝レオンハルトも似たような結婚をしていたのだ。
と、いうのも、国内中で知られている事だが、皇帝レオンハルトにはやんちゃな時代が存在していた。実はその時代にに惚れ込んだ女性を平民であったにも関わらず、強権で正室に迎え入れ、そして生まれた子供が、リオンであった。
その為、リオンがデキ婚した時には我が身を振り返って強く出られなかったのである。まあ、ここらで自分は自分、お前はお前、と強弁出来ない所は、メルに似ているのかもしれない。
ちなみに、皇子時代に彼が皇城から抜け出て名乗っていた偽名が、『リオンハルト』だったりする。そこから、リオンの実母が彼の名前を同じ様に付けたのだが、同じように色恋沙汰で実家と揉めた時、彼女は大笑いしていた。なお、実は両者の仲を取り持っているのも、彼女だったりする。
当然だが、彼女は今も皇帝レオンハルトの妻として、彼を支えている。普通の一般市民の出としては考えられない程に才色兼備で、そして、肝も座っていた。なので後宮も意外と上手く回っている、との事だった。
まあ、そんな彼女だが実は皇帝レオンハルトが皇子である事が発覚した際には大揉めして頬に幾つかの紅葉を作ったらしいのだが、そこは横に置いておく。
「……陛下、お二人が来られました」
そんな何処か皇族らしからぬ会話を繰り広げる二人に若干呆れながら、その間に鳴り響いた内線で報告を受け取っていたエルメロイが一同に報告する。
「ん、んん……そうか。では、入れ」
エルメロイに声を掛けられた皇帝レオンハルトは咳払いをして睨み合いをやめ、二人の入室を認める。が、そうして入ってきた二人は当然だが、メルとシアの二人だった。
「はい、お父様」
「失礼するわ」
その二人を見た瞬間、冒険部上層部の時が止まった。カイトに至ってはユリィに頼んで頬を抓って貰って夢じゃないのか、と確認していた。そうして、カイトが頬を引き攣らせながら、口を開いた。
「……おい、待てや」
「あ、カイト。久しぶりね。少し老けた?」
冷や汗を流しまくるカイトを見つけ、第二皇女ことメルが片手を上げる。彼女はここに来るのがカイトとは知らされていなかったのだ。
そんな彼女は何時かのビキニアーマーでは無く、豪奢なドレスで、旅で少し荒れていた肌や髪には艶があり、まさに皇女といった姿であった。シアの頑張りが付け焼き刃であったが、功を奏したのである。
ちなみに、ドレスといってもかなり動きやすい工夫がされており、結局はじゃじゃ馬の印象が拭えないのであった。シアも幾つか見繕ったのだが、メルの雰囲気を考えればこれしか似合わなかったのである。が、このセリフに驚いたのは、シアと皇帝レオンハルトだ。
「……あら、知り合いなの?」
「何時出会ったのだ?」
「ついこの間よ。小夜を救われたの」
二人の言葉を聞いて、メルが平然と答える。それに幾つか聞かなければならない事がある様だ、と思ったシアだが、ここは客人の前だ。なので驚きを一度飲み込むと、とりあえず自己紹介をする事にした。
「……まあ、取り敢えず、自己紹介をした方がいいわね。はじめまして、第一皇女レイシア・フランドール・エンテシアよ」
「お久しぶりの方はお久しぶり。そして、はじめましての方ははじめまして。第二皇女メルクリア・スカーレット・エンテシアです。以後、お見知り置きを」
「……はぁ」
軽い口調で皇国式の優雅な一礼をした二人に対し、冒険部の上層部は気の抜けた返事をするしか無い。呆然となる冒険部上層部陣と、そんな冒険部上層部を見て首を傾げるその他一同。唯一この場で動いたのは、カイトであった。彼の怒号が、部屋全体に木霊した。
「おい、待ちやがれ! オレは二人共皇族なんて聞いてないぞ! と言うか、シア! お前じゃあなんで今もメイド服なんて着てんだよ!」
「あら、これは私服よ?」
カイトの言葉に、シアはひらり、と来ているメイド服を翻す。彼女は妹にドレスを着せておきながら、今も自分はメイド服姿だったのだ。
「はぁ!?」
「ああ、お姉様は暇だとか何とか言ってメイドの仕事してらっしゃるのよ。まあ、それ以外にもお父様の政治のお手伝いをなさってるけど」
「ええ、そっちもしてるわ。と言うか、私は一度もメイド、と名乗った事は無いわよ?」
このシアの発言に対してカイトはパクパクと口を開け閉めするだけで、何も言えない。彼女は確かに、カイトと共にいたこの一週間程度、只の一度足りともシアは自身がメイドだ、とは言ったことが無かったのである。
「でも確かちょっと前に家からの命令で、とか……言ってない!」
再びカイトは絶叫をして、はっと気付く。そうして一筋、冷や汗が流れた。そしてその冷や汗が落ちるのを見て、シアが腹黒い笑顔で、それを認めた。
「あら、貴方が勝手に勘違いしただけでしょ?」
「おま、まさか……」
つぅ、と再び冷や汗が地面へと流れ落ちた。そこでカイトはついに完璧に悟る。彼女に全て仕組まれていたことに。彼女は重要な部分ぼかして、何一つ言っていないのだ。つまり、何を言われようと、カイトが勝手に勘違いした、と言い張れるのである。
「ええ、それが一番でしょ?」
「ぎゃー! マジで腹黒姉だぞ、おい!」
カイトが理解したことを見て取り、にたり、と悪辣な笑みを浮かべるシアに、カイトが引き攣った顔で断末魔の悲鳴を上げる。
「どういうこと、お姉様?」
「ああ、紹介しておくわね。一応、私の旦那様よ」
「えぇ!? お姉様ももしかして、そいつとやっちゃったの!?」
カイトの様子と姉の様子に何があったのかを悟ったメルが、思わず自分とカイトの間の肉体関係を告白する。そして、それにシアが首を傾げた。
「お姉様も?」
「あ……いや、あの……実は……私も……」
思わずだったが故に言ってしまった事らしく、メルはシアの問いかけを受けて、真紅の髪に負けないぐらい真っ赤になって俯いて両手の指をつんつんとしながら答えた。
「いや、待てや! お前ハイゼンベルグ家の娘とかじゃねーのかよ!」
繰り出された姉妹からのジャブに、カイトが大いに慌てふためく。が、これに恥ずかしさからメルが怒号を上げる。
「そんなの一言も言ってないわよ!」
「嘘だろ! じゃあなんで龍族の血が流れてんだよ!」
カイトは当たり前だが、メルとキスしている。実はその際に彼女の目が龍眼と言われる龍族の特徴の一つである事を見ていたのだ。
それ故、彼女の事をハイゼンベルグ公ジェイクの係累に繋がる家系なのだろう、と思っていたわけで、そうなると後はハイゼンベルグ公ジェイクに頭下げればなんとかなるだろうな、と思っていたのだ。高位の貴族の中で龍族となると、実はハイゼンベルグ家の係累しか無い。まあ、龍族は独立独歩の風潮が強いのだから、仕方がなくはあるだろう。
これもまた、知りすぎていたが故の勘違いだった。メルは意図せず、これに成功していたのである。当たり前だがカイトとて何の見境もなく貴族の娘を抱くわけでは無いのだ。というわけで、激昂する二人は過日の如く、勇者と皇女というより単なる子供と言うべき――内容は18禁だが――再び言い争いを始めていた。
「あの時散々私のこと無茶苦茶にした癖に! こっちが気を失っても続けた挙句、腰が痛くて動けなくなるまで無茶苦茶したじゃないの!」
「お前がやれゆーたんじゃ!」
メルは恥ずかしさから、カイトは騙された事のショックから。言い争いは続いていく。が、そうして続く言い争いも、少しで終わることになった。
カイトの後ろから、真っ黒な気配が近づいてきた事にメルが気付いて、思わず後ずさったのを見て、カイトも後ろの気配に気付いたのである。
「……つっ」
カイトは久々に盛大にヤバイ事を悟る。別にシアを抱いたからといっても、桜達は怒ることは無い。それは彼女達が変化したからだ。だが、今回だけは、とある理由から、彼女らが怒るのも無理が無いのだ。
あのユリィの試練の後。桜達はカイトに過去の事はあまり聞かなくなった。その理由はユリィから聞いていたので、カイトも彼女らの成長を嬉しく思っていた。
そしてそれを受けて、カイトも桜達の成長を受け止めて、改めて一度話し合いが持たれて、今後は誰を抱いた、デートに行った、と後からでも良いので一言皆に言う、という事の取り決めが為されていたのである。情報の共有だ。これで、彼女らも嫉妬を抑える事が出来る様になったのだ。
ということは、当然だが、シアの件についても説明をしないといけないはず、だった。だが、カイトはそれを忘れていたのである。
なのでカイトはぎぎぎっと、まるで油の切れた機械みたいにゆっくりと周囲を見渡す。すると、案の定既に取り囲まれていた。
「カイトくん……一体何時、シアさんと関係を持ったんですか?」
一同を代表して、桜がにこやかな顔――当然、目は笑っていない――で、カイトに問いかける。シアは桜が見ている限り、何時も一緒だったのだ。となると、色々な邪推されるのも無理は無い。
最悪初日に手を出していた、と言われても信じられる状況だ。今回ばかりは、状況が悪い。なのでカイトは即座に正座して真剣です、という雰囲気を醸し出すと、正直に告げる。
「さ、昨夜です……ご報告が遅れてすいませんでした!」
カイトは本来の性格になると、土下座を躊躇わない。というわけで、正直に告げると同時に、土下座して頭を下げる。今回だけは、カイトが全面的に悪かった。
実はこの会合の前には桜達と一緒に居たので、言うタイミングは幾らでもあったのだ。誰か一人が聞いていないのなら、タイミングが悪かっただけ、とも思えるだろう。だが、全員だ。これは完璧にカイトの落ち度だった。
シアの実家等にどう対処するのか、というのを考えていたら、うっかりフォローを忘れてしまっていたのである。カイトとて人の子だ。うっかりミスはしてしまう。とは言え、言いつけを破ったのだから、怒られても仕方がなかった。そして彼女らが怒るのも、当然だ。
なので、カイトは桜達の怒りをほぐす為、今までの事を洗いざらい話す事にする。ちなみに、これがうっかりのミスである事の納得が出来た上、カイトも策略に引っかかった事もあり、今回はそこまで叱責されなかった、らしい。
お読み頂き有難う御座いました。久しぶりにカイトが怒られています。まあ、仕方が無いですね。
次回予告:第380話『親友』