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第22話 閑話 基礎知識―種族―

 前回端折った部分の追加分です。此方はエネフィアにおける種族の説明となります。

 ミリアによる講習が始まり、まずは基本、ということでエネフィアにいる種族についての説明が行われる事となった。


「では、始めますね。まずはこの世界、エネフィアのことから始めます。エネフィアには多くの種族が暮らしており、今私達がいる大陸にも様々な種族が生活しています。例えば私は獣人族、支部長ならエルフ族ですね。それ以外にも龍族、天族、魔族、皆さん方人間族などが生活しています。」


 ここまではすでに勉強した内容であり、多くの学園生が復習として聞いている。復習であるからか、小さな体を忙しなく動かして黒板に文字を書き続けているミリアを見て、癒やされているものまでいる。


「ですが、エネフィアにはこれら相互理解が可能な種族とは別に、魔獣、魔物と呼ばれるモノ達が生存しています。魔獣には一切言葉は通じませんが、魔物には言葉は通じます。ですが、魔物は相互理解が困難故に魔族とは分けられています。魔族と魔獣、魔物が似たような姿でありながら完全に区別されているのはこの点にあります。なお、魔獣や魔物は死後、腐敗することなく一定時間経過後には魔素(マナ)へと変換されます。素材として彼等の一部を使用する場合には特殊な処理を施して保存する必要がありますので、注意してくださいね。」

「なぜ魔物や魔獣は死後、魔素(マナ)となるのに、魔族の方は魔素(マナ)とならないんですか?」

「詳しくはわかりませんが、一説には体内に有する魔力量の差、と言われています。魔族や魔獣の中でも魔力量の高い存在は比較的魔素(マナ)へ変化するまでの時間が長いことから、そう言われています。変化することには変わりないので、正確では無いのでしょうけどね。」


 ゲーム等では比較的簡単に討伐したモンスターの素材を収集できているが、現実はそう簡単にはいかなかった。そういったゲームに慣れているものの一部は残念がっていた。


「魔獣や魔物には子鬼(ゴブリン)族に属するモノや不死(アンデット)族に属するモノなどが挙げられます。彼等は我々の言葉を解しますが、基本的に思考体型が我々と異なり、相互理解はほぼ不可能です。対して魔族、と呼ばれる彼等には我々と相互理解が可能であり、300年前の不幸な出来事を経ても、今では和解することができています。魔族には淫魔族や巨人族、スライム族などがいますが、彼等は同じ種族であっても異なった容姿を持つものも少なくなく、一概には判別が困難なことが多いと思われます。彼等も間違えられたところで気にしない方が殆どですので、間違えても気にしないほうがいいですね。というか、皇国の住人なら誰もが一回は間違えます。」


 受付やってるとよく間違えます、そう言って場を和ませるミリア。


「では、魔物や魔獣を容赦なく討伐してよいか、となると違います。魔族へと進化する魔物や魔獣がいる、ということです。進化については後ほど、説明しますね。」

その後も各種族の特徴などへの説明が続いていく。




「では、次に進化、について説明します。これはすべての種族に起こりえる変化です。起こるのが多いのは魔獣や魔物といったモノですね。一部魔族にも同じような進化が可能な種族もいますが、極稀です。」


 そういうと黒板にゴブリンと書き、説明する。


「これは子鬼(ゴブリン)族の例です。まずゴブリンから始まり、次にオークとなるわけですね。」


 ミリアはゴブリンから矢印を引いてオークへと繋げる。


「ゴブリンが一定以上の魔素(マナ)のある空間で生存していると、あるときオークへと変化します。これは一定時間その空間に居ることが条件です。魔素(マナ)を吸収し続けることによって肉体が変化してしまった、ということです。気を付けないといけないのは、戦闘中でさえ進化する可能性があることです。愚かにも、雑魚と安心して嬲り殺しにしようとして進化され、全滅してしまった冒険者の集団が年に数組でてます。絶対に、倒せる魔物は即座に始末してください。」


 戦闘中に進化されるとなると、ぞっとしない話である。そこで突っ込んで聞いてみようとした生徒がミリアへ尋ねる。


「進化した魔物の強さについて教えて下さい。」

「強さ、は個体それぞれです。進化先や生存環境に影響されて強さや特徴は変化します。意思が肉体に最適な変化を促したのか、環境によって最適な進化を行ったのかはわからないのですが。」

「進化先、って進化するのは一種類だけじゃないんですか?」

「はい。進化方法で幾つかあります。まずは先に言った魔素(マナ)の多い場所に長時間いることによる進化、ですね。魔素(マナ)の多い空間は多くの場合、洞窟や多くの生命の散った場所等です。こういった場所は危険が高いですが、同時に貴重な資源が採取されることも多く、我々冒険者の出番となります。行かれる場合は高確率で進化した魔物との遭遇を警戒してください。」


 ミリアは今解説したことを黒板へ記述し再び学生たちの方を向く。


「もう一つの条件は恨みや怒りと言った強い感情を得た場合や、他の個体よりも能力が高いことによって進化する場合ですね。先の嬲り殺しをしようとして進化された、の多くは前者になります。これは魔力は意思の力、ということからもわかるように、魔素(マナ)は意志あるところに宿ります。強い負の感情は強い魔素(マナ)を呼び込んで肉体を変化させます。精神が肉体に影響を与えた、ということです。」


 精神が肉体に影響を与えることは珍しいことではない。例えば、熱したアイロンを当てる、といって目隠ししたとする。しかし、実際には熱していないただの鉄の板を当てた所、火傷を負ったのと似た症状が身体に現れることが地球でも確認されている。エネフィアではそれが、より直接的に表れているだけであった。


「より強い肉体を、恨みを晴らす力を、と願った魔獣や魔物がそれに沿って肉体を変質させたわけですね。この変化で進化した魔物や魔獣は、その多くがただ魔素(マナ)の多い空間で長時間過ごしただけの個体と異なった進化を遂げます。我々はこういった個体を亜種、と呼んでいます。」


 ミリアは今度はゴブリンから矢印を引いてオーガへと繋げる。


「例えば、ゴブリンの中でも知恵をつけた個体が進化した場合はオーガへと進化します。オークとオーガの一番の違いは魔術を使用できるか否か、ですね。知能も比べ物にならず、オーガは他の子鬼(ゴブリン)族を従えることもあります。稀にオークを従えている事もありますね。また、亜種にも亜種がいる場合があります。例えば生存環境に応じてアイス・オーガ、ファイア・オーガなどに分岐することが確認されています。」


 ここらは少しの差ですけどね、というと今度はオーガの横にアイス、ファイアと記述するミリア。


「進化した魔物や魔獣は更に進化することもあります。亜種でも同じです。」


 そう言って今度はオーガから矢印を引くミリア。


「ゴブリンからオーガに進化した個体が更に魔力を得ることによって、今度はブラッド・オーガと呼ばれる強力な個体に変化します。オークだとトロルですね。何段階進化するかは個体によって異なります。最も多いのは子鬼(ゴブリン)族と不死(アンデット)族です。不死(アンデット)族なら、例えばスケルトンからワイト、リッチ、リッチキングへと進化します。他にもワイトから分岐して、ワイト・ウィザード等へも行きます。」


 そう言ってスケルトンからの進化を記述するミリア。


「まあ、強さの基準としてゴブリンなら平均的なランクEの冒険者と同等、オークはランクDの冒険者3人、オーガはランクDの冒険者5人、トロルでランクCの冒険者2人、ブラッド・オーガでランクCの冒険者5人と同等となります。亜種のほうが強くなりますので、気を付けてください。」


 学園生は平均的な冒険者の強さがわからず、そんなものか、としか考えていないが、これが後に命取りとなることは考えていなかった。


「先に言った魔物が魔族となる場合ですが、これも感情や能力の影響です。」

「感情や能力が影響するなら、人間も進化するんですか?」


 誰かが興味本位で聞いてみる。しかし、これは迂闊であった。聞かなければ良かった、と誰もが説明を聞いた後で思うのであった。


「……ええ、進化します。といっても長時間魔素(マナ)が多い空間にいたところで進化はしません。起こるのは強い感情……特に負の感情による肉体の変質によって、です。そして、残念ですが、この場合は総じて理性を失う事になります。その場合は魔物、として討伐対象となります。こういった事情で元は魔物でなかった種族が魔物となった場合は、総じて堕族、と呼ばれます。悲しいですが、元に戻れた例は少なく、多くは周囲への被害から即座に討伐されてしまいます……堕族の力はそれだけ危険なんです。理性をなくし、只々暴力を振るうだけの存在に成り下がります。」


 そういって悲しげに目を伏せるミリア。こういった堕族と化す冒険者は年に十数件報告されていた。ここで講習開始から数時間経過したため、小休憩を取ることとした。

 お読み頂き有難う御座いました。

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