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第306話 意地

 昨日の夜中にちょっとしたプレゼントを投稿しておきました。場所は活動報告です。興味のある方は御一読ください。

 カイトは<<世を喰みし大蛇(ヨルムンガルド)>>と交戦を始めて直ぐに、忌々しげに顔を歪めた。

 それは今の自分の正体を隠さなければならないという状況と、<<世を喰みし大蛇(ヨルムンガルド)>>の様な強大な魔物特有の理由からだった。


「あー! くそ! なんでこんなに面倒な場所で!」


 自身の身長を遥かに超える口で自身を食べようとする<<世を喰みし大蛇(ヨルムンガルド)>>の口を躱し、カイトは<<世を喰みし大蛇(ヨルムンガルド)>>の横っ面へと殴りで一撃を加える。

 するとドゴン、という人が殴った所では出ないような轟音が鳴り響き、<<世を喰みし大蛇(ヨルムンガルド)>>の巨体が大きく仰け反った。それに更に続けて、カイトは更に悪態を吐きながら連続で単なる素手での暴力を振るう。


「切断アウト! 刺突アウト! 丸焦げもアウト! つーか、街の側で怪我させたらアウトってなんだよ! だからお前みたいなのと戦うの嫌いなんだよ! そもそもオレは素手苦手なんだよ! ルクスの領分だ! がぁー! もう! いっそ身バレ気にせずおもっクソ20キロ程先までぶん投げて、ぶった斬りてえ!」


 カイトは滅多に無い悪態をつきながら、怒り任せに徒手で攻撃を加えていく。怪我をさせない様に細心の注意を払っているのだが、流石にこんな状況だ。精密な攻撃はカイトでも出来ず、時々あたりが悪く血が流れてしまっていた。

 それがなおさら、カイトの苛立ちを募らせる。元々本来のカイトは熱くなりやすい性格だ。なのでこの状況はカイトらしいと言えば、らしいと言えた。

 しかも流血の原因はそれだけではない。カイト以外にも軍艦からの遠距離砲撃があたり、<<世を喰みし大蛇(ヨルムンガルド)>>の身体の各所から血が流れてしまっていた。


「街は……ちっ、やっぱ集まってきちまってるか」


 何発か攻撃を直撃させて<<世を喰みし大蛇(ヨルムンガルド)>>の動きを止めた所で『ポートランド・エメリア』の方角をカイトが見れば、水面が凍り、その上で交戦を行っている多数の冒険者達の姿が見えた。カイトがなるべく怪我をさせないようにしているのは、これを危惧していたからだった。

 こうなるのは、ある意味当然だった。強大な魔物は即ち、高濃度の魔力の塊と言える。なのでその血にも高濃度の魔力が含まれているのだ。そして魔力が高濃度の所に、魔物は引き寄せられやすいのである。

 ランクSクラスの魔物ともなれば、人なんぞ比較にならない程膨大な魔力を血の中に有している。それが<<世を喰みし大蛇(ヨルムンガルド)>>の様な大きさになれば、もはや天然の魔力貯蔵庫とさえ言い表わせた。その血が全て流れ出たとすれば、周囲に放出される魔力の量は計り知れない。そこに集まる魔物の数もまた、計り知れなかった。

 カイトはこれを危惧するが故に、満足に攻撃が出来なかったのだ。だが、出来ないのは武器攻撃だけではない。倒す事さえ安易に出来ないのだ。もし何ら対策も無く倒せば、それだけでこの場には<<世を喰みし大蛇(ヨルムンガルド)>>一体分の魔力が開放されることになるのだ。つまりただ倒しても、魔物が集まってしまうのである。


「キシャァアア!」


 再びカイトが<<世を喰みし大蛇(ヨルムンガルド)>>へと目を向ければ、どうやらかなり怒っているらしく、全身の魔力を集めていた。そうして大きく口を開き、そこから極太の魔力の塊がレーザーの様に光条となって放出された。


「ぐっ……おぉおおおお!」


 カイトはそれを避ける事をせず、両手を突き出して一切のロス無く全てを防ぎきる。防ぎきるというより、魔導鎧の両手に取り付けられていた吸収口を使用して背後の強制排出口から強引に散らす。

 受け流したり、避けることは簡単なのだが、今のカイトにはそれが出来ない理由があった。もしカイトが攻撃を避ければ、後ろにある街はひとたまりもなく消滅するだろう。

 受け流し方や放たれた位置によっては、少しでも失敗すれば避難している民にも被害が出る可能性は高かったのだ。それ故一切漏らすこと無く、カイトが受け止めるしか無かった。


「はぁ、はぁ……ちっ、めんど。こいつ由来の魔力じゃなけりゃ、指輪で吸収できんのに……」


 珍しく息を荒げながら、カイトがボヤく。この攻撃は<<世を喰みし大蛇(ヨルムンガルド)>>に起因する魔力で構成された光線なので、カイトの持つ<<祝福の指輪>>では吸収出来ないのだ。そうして、戦闘が15分程続いた所で、遠く、300メートル程下にある海面近くで爆音が響いた。


「何!?」


 カイトがその爆音に下を見れば、下には多くの公爵家海軍の艦艇が集結し、砲雷撃戦を開始していた。どうやら艦隊で強引に食い止めるつもりなのか、かなり至近距離だった。おそらく、超至近距離から殴り合うつもりなのだろう。


「……その意気や良し!……なんだが……この場合は邪魔に近いんだよな……」


 カイトは自身の部下の意気込みに感心しつつも、厄介さを感じる。今海軍に配備されている艦艇では、どれだけ束になっても<<世を喰みし大蛇(ヨルムンガルド)>>の攻撃には耐え切れないのである。ほぼ、決死隊に近かった。

 だが、こうするしか無いのもまた、事実だった。超至近距離から有効打を与えなければ食い止める事は出来ず、街は確実に壊滅するだろう。

 そして、カイトはカイトで『勇者カイト』であるが故に、みすみす彼等がやられるのを黙ってみていることは出来なかった。


「お前はでけえ尻尾上げるんじゃねえよ!」


 カイトは魔導鎧の飛翔機を全開にして最高出力にまで高めて、一気に下へ向けて突撃する。そうして、船を横転させようとしている<<世を喰みし大蛇(ヨルムンガルド)>>の尻尾を、海底に叩きつけるのだった。




 その十数分前。艦隊の艦橋にて、エリーヌが通信機のマイクをとった。


「おい、野郎ども! まさかここで逃げたいなんて言う玉無しは居ないだろうな!」


 全艦につながるように部下に通信機の調整をさせて、エリーヌが声を荒らげる。それは部下への叱咤激励だった。


「うっす!」


 エリーヌの問いかけに、部下の海兵たちは全員が声を上げる。そして更に、彼らは各々の思いを声高に叫んだ。


「姉御! ここから逃げるったって何処に逃げりゃいいんっすか!」

「こかぁ俺達の生まれ故郷っすよ!」

「街を守る為に軍人になったってーのに、海蛇一匹に尻尾巻いて逃げ出したら死んだ母ちゃんに怒られちまいまさぁ!」


 そんな通信機から溢れてくるやる気に、エリーヌが獰猛な笑みを浮かべる。それは彼女が望んだ最高の答えに他ならなかった。


「その意気や良し! じゃあ、てめえら! 準備出来た船から出港だ!」

「うっす!」


 艦隊の船員達の返答を聞き、エリーヌは強引にマイクを叩きつけて、通信を遮断する。そうして、彼女は自席として誂えられている提督用の席に着席した。


「副長、各地からの援軍は?」


 提督用の椅子に座ったエリーヌは、自らの副官に現状を問いかける。副官の見た目は50代と彼女よりも年老いているが、実際には彼女よりも年下で、彼女が提督として着任した時からの副官であった。彼女が最も信頼している部下で、数日前に部下の暴走を止めるように進言したのが、彼だった。


「近海にて演習を行っていた皇国近衛隊第2連合艦隊が皇帝陛下の勅命を受け、此方へ急行しているとのことです。他にも、ローレライ家から近衛隊が援軍に向かうとのことです」


 エリーヌの問い掛けを受けて、彼女が叱咤激励を行っている間に得た情報を副官が提示する。ローレライ家とは、海底にある人魚たちの王国の王族の名だ。場所は公爵領と中津国の中間地点に位置し、海上での警護や交易、観光で栄えている。それ以外にも幾つかの海底都市を有する、正に海の中の王国であった。


「ローレライ家……やっぱり彼女達が一番早いか?」


 獰猛な笑みを潜め、エリーヌは提督としての冷静な思考に切り替えた。この即座の切り替えが出来るからこそ、彼女は提督足り得るのだ。ただただ猪突猛進なだけでは、軍勢の長は務まらないのである。その質問に、副官は頷いた。


「かと。このまま街がやられた場合、次の標的は彼女らの海底王国か、公爵領の何処か、となります。さすがに座視ては居られないかと」

「ふむ……なら、彼女らには船に上がろうとする海魔共の相手を依頼してくれ。海の魔物なら、彼女らの得手だろう。それに、彼女らはあんなデカブツの相手は出来ないからね。近衛兵団には連絡をつないでくれ。私が直々に話した方が連携が取りやすいだろ」

「アイアイ、マム」


 エリーヌの指示を受けて、副官は即座に関係各所に連絡を取る手段を整え始める。海の中で生活する人魚たちは当然だが多くの海魔との交戦経験が有り、海魔に効く攻撃方法を多数有している。公爵家海軍からも海龍等の海中戦が出来る面子が警護にあたるが、それでも彼女らには一歩劣る面子が多かった。協力を依頼するのは、当然だった。


「公爵家本家より入電! 皇帝陛下より議会に向けてクイーン・エメリアの出陣が打診されました! 出港した際は全艦隊の総指揮は一括してクイーン・エメリア艦長に委ねよ、とのことです! 更に、我が公爵家からはアウローラ様と、エルロード子爵の特務部隊がすでに出陣の用意を行っている、とのことです! 他にもすでに大型魔導鎧を有する空挺師団の第一陣がもうまもなく到着する、とのこと!」

「……これは、不甲斐ないとこ見せらんないねえ」


 エリーヌが戦闘の開始までに即興で行っていた近衛兵団との連絡が終わり、連携について話し合いが出来た所で、更に連絡が入る。それを受けて、エリーヌは苦笑に近い獰猛な笑みを浮かべた。

 だがそれは彼女だけでなく、副官を含めた周囲の海兵達も同じ顔でゴクリと喉を鳴らす。皇国でも最上位に位置する公爵家の特殊部隊に、皇帝直属の部隊と海における皇国の誇り、他国の王族直轄の兵隊に、更には勇者の姉であり、自身も英雄であるアウラまで出てくるのだ。まさに皇国の威信が掛かった一戦と言えた。

 こんな戦いで英雄が起こした一門の提督として、不甲斐ない戦いを見せるのは栄えある皇国軍人としてごめんだった。そしてそれを知るからこそ、副官はエリーヌに問い掛けた。


「そうそうたる面子ですな……どうされますか?」

「さてねぇ……私ならどうする?」

「はっ! いってらっしゃいませ!」


 問われるまでもない副官の問い掛けに対して、エリーヌは満面に獰猛な笑みを浮かべる。それに、彼は敬礼で答えた。それを受けてエリーヌは身を翻して、甲板で戦闘用意を整えていた面々に告げる。


「野郎どもの中で外で叩ける奴は全員私についてきな! 船を守るよ! 他の奴らは全員副長の指揮に従いな!」


 エリーヌは号令を下すと同時に自身の姿を本来の人魚の物へと戻す。更に、それに合せて服装も今までの指揮官としての服ではなく、水中で阻害されないような、水着に似た鎧に変わる。彼女とて、海戦を得意とする人魚の一人だ。海の中で戦えて当然であった。

 本来ならば彼女程の色香の乗った肉体を露わにする様な服装は男女問わず興奮をもたらすが、この場では全員が一気に気を引き締めた。それだけの勇ましさが、今の彼女には備わっていた。そして、それに対して、船員達が敬礼を送る。


「アイマム!」


 彼女と同じく、人魚族の海兵達が自らの姿を人魚の姿に戻す。全員、似たような水着の様な鎧だ。それ以外にも、船の端に立った軍人は全員が海中戦が出来る者達だった。人型もいるが、それは殆どが龍族だった。巨大過ぎて船上では本来の龍の姿を取れず、水中に入ると同時に、本来の姿に戻るつもりだった。そうして、艦橋のオペレーター達の声がスピーカーから響いてきた。


『提督! 此方から援護射撃を仕掛けます! それと同時にどうぞ!』

『相対距離1キロ! 海魔共が近づいてきます!』

『街に向かう奴らには数発斉射して後は街の奴らに任せろ! 小口径の魔導砲については海魔共に、中、大口径の魔導砲は全て<<世を喰みし大蛇(ヨルムンガルド)>>へ向けろ! デカブツだ! 猿でも狙いは外さん!』


 同じくスピーカーを通して副長が声を荒らげて命ずる。それに、船の船上に取り付けられた魔術を発射する大砲、即ち魔導砲が照準をあわせる。そうしてそれら全ての用意が整った所で、再びスピーカーから声が響いてきた。


『斉射準備完了しました!』

『てぇー!』


 副長の声に合せて、全砲門から魔力で構成された砲弾が射出される。それで約3割程の街へ向かう海魔が、消失する。


『次弾装填急げ!』

「アイアイサー!」

「私らは近づいてくる海魔共を相手するよ! 全員、飛び込みな!」


 海中で戦闘の出来ない者達が副長の命令で動き始めると同時にエリーヌを筆頭とする軍人たちが飛び込み、海中で戦闘を開始するのだった。

 それから暫くして、エリーヌは海中で自分たちの部隊ではない人魚達を確認する。どうやらそれは向こうも同じらしく、エリーヌ達へ向けて一団からかなり優美な姿の女性が戦陣を突っ切ってエリーヌへと近づいてくる。彼女が、この部隊の指揮官なのだろう。

 時々魔物が攻撃仕掛けようとするが、彼女はそれらに対処しない。只々そこに在るだけで攻撃が無効化されたのだ。圧倒的な力量がある証拠だった。


「ローレライ家近衛兵団第一大隊所属ウェンディ・ローレライです。<<世を喰みし大蛇(ヨルムンガルド)>>討伐の支援に参りました」


 相手の自己紹介を聞いて、エリーヌが目を見開いた。ローレライは王族だけに与えられる姓だったのだ。つまり彼女は、皇女に他ならなかった。

 後に聞いた話だったのだが、彼女らは近郊で皇国近衛兵団との合同軍事演習を行っていたらしく、少し離れた所で物理的に突撃すべく魔力のチャージを行っていた日向よりも早く到着出来た、との事だった。日向が魔力を溜めていたのは、日向も<<世を喰みし大蛇(ヨルムンガルド)>>を相手にする場合の鉄則を知っていたからだ。


「第一大隊! ローレライの姫君がわざわざ……ありがとうございます。私はマクダウェル公爵家海軍第三艦隊提督のエリーヌ・アーマラ。援護、感謝します」

「はい、それで、私達は何の援護を?」


 ウェンディは指揮をエリーヌに求めてきた。つまりは、彼女らの指揮に従う、ということであった。だが、これは何も可怪しい話ではない。船頭多くして船山に登る、という。指揮系統の統一は普通だった。


「はい。ではローレライ家の方々には私どもと一緒に、海中、海上の魔物のお相手をお願いします。出来る限り、<<世を喰みし大蛇(ヨルムンガルド)>>の相手をする艦船の援護を」

「分かりました。総員、聞きましたね! 私達は海から船の援護をします!」


 連携は一瞬で開始される。すでにミス出来る状態では無いのだ。一瞬で連携を取る為に、今までの訓練があるのだ。そうして新たに人魚達の軍勢を含めた大部隊での戦闘が開始されるのだった。


「まずい! 上に連絡して防御船に艦隊の後ろからの尻尾に気をつけろ、って言ってやってくれ!」


 そんな戦闘の最中、エリーヌが声を荒げる。防御船とは、ほぼ全ての攻撃用の砲塔を取り外し、他の船を守る為の大規模かつ大出力の防御用の障壁を張れる船のことである。速度は遅いが、船の出力のほぼ全てを防御に回した事によって、普通の船の数十倍の防御能力をもたせたのだ。


「私らは全員であの尻尾を抑えるよ!」


 いくら防御した所で、数百メートルもの大きさの尻尾の直撃を受ければ沈没は避けられない。なんとかして尻尾が海面に出る事を避けようとしたのだが、いかんせん、彼女らでは攻撃力が足りなかった。


「あー、くそ! ダメか!」


 海面へと浮かび上がり横薙ぎに尻尾をふるおうとする<<世を喰みし大蛇(ヨルムンガルド)>>を見て、エリーヌが忌々しげに吐き捨てた。そうして、彼女が自分の部下達の犠牲を予想したが、その前に、轟音が響き、尻尾が海底に勢い良く叩きつけられた。


「何だ!」


 誰もが、それこそ海魔達さえ動きを止める。そうして、エリーヌは一度海面に顔を出した。すると、そこには空中に浮かび、<<世を喰みし大蛇(ヨルムンガルド)>>の顔面と殴りあうカイトの姿があった。


「……は?」


 カイトが只殴っただけなのに、大きく<<世を喰みし大蛇(ヨルムンガルド)>>がのけぞる。あまりにありえない状況に、エリーヌが唖然となる。


「……帰って来られてましたか。全く……連絡の一つでもいただければ、あの子がやきもきするのも何とかなりましたものを」


 同じくウェンディが顔を出して呟いた。そうして、彼女は祈るようにカイトを見る。祈りが届いたわけでは無いが、カイトが<<世を喰みし大蛇(ヨルムンガルド)>>の攻撃で下に叩きつけられた。


 「……あの、ご存知なのですか?」


 水柱があがった方向へと移動するウェンディに対して、エリーヌが問いかける。しかし、その問いかけに逆に首を傾げられた。


「あら? 逆にご存知無いのですか?」


 そこで、下へと叩きつけられたカイトが近くに居たウェンディに気付いた。ちなみに、海面への激突は寸前にカイトが魔導鎧の飛翔機を全開にしたお陰で、なんとか避けられた。水柱はその余波による物だった。


「ディか! 悪い! 助かる! あいつ元気か!?」

「はい、アリサは相変わらず。貴方も相変わらずの様ですね。聞きたいことや言いたいことは有りますが、それは後ほど」

「すまん! そうしてくれ! 今はあのでかいので手一杯だ! 後少しでティナも来る! それまで耐えてくれ!」

「魔王様が?」

「ああ、その後はあいつに任せろ! なんか考えるだろ!」


 カイトは言うだけいうと再び飛翔機を吹かして一気に飛び立ち、再び<<世を喰みし大蛇(ヨルムンガルド)>>へと殴りかかる。それに対してディは海中に沈み、部下達に号令を掛けた。


「はい、では。聞きましたね! 総員、魔王様の到着まで堪えなさい!」


 部下の幹部達はそれで何かを察したらしく、一気に士気が高まる。彼女の近衛兵団は彼女と同じく、殆どがかつてのカイトを知るのだ。この台詞だけで十分、意図は伝わった。それにエリーヌは更に疑問を募らせるが、今はそんな場合では無かった。とりあえず、朗報だろうと判断して、彼女も海中に沈む。


「何がなんだかわかんないけど……取り敢えずは良いことらしいね。野郎ども! 私らも負けんじゃないよ!」


 二人が沈んだ後の戦場を見れば、すでに皇国の近衛兵団の艦隊も到着し、砲撃戦を開始していた。そうして、戦闘は中盤戦へと差し掛かるのであった。

 お読み頂き有難う御座いました。

 次回予告:第307話『女王達』

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