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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第二章 異世界転移編 
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第19話 魔力測定

 1話前に、前回通知していた真面目パートの閑話が更新されています。一条が何を見たのかが知りたい方は、お読みください。

 生徒総会から翌日、公爵家の手配によって体育館に魔力測定用の装置一式と測定のための人員が派遣されてきた。


「魔力は誰でも持っています。ですが、魔力を保有出来る量は人によって異なっており、この装置ではその保有出来る総量を数値化することが出来ます。」


 そう言って測定員が魔力を測定に来た全員に説明している。


「この魔力を保有できる総量を魔力保有量、もしくは単に魔力量といいます。およそですが、皆さん人間で男性の平均値が100、女性の平均値が150ぐらいですね。この値は鍛錬で上げることが可能ですので、値が低かったからと言ってあまり悲嘆しないでください。」


 そう言って締めくくる測定員。女性のほうが高い数値となっているのは、子供を生む器官が備わっており、そこに魔力を溜めることが可能であるから、らしい。説明が終わったことを確認して桜が全員を前にして、締めくくる。


「測定は自由ですが、今回第一陣として冒険者として志願される方は魔力量が500以上の方のみ、となります。」


 初心者冒険者として有能、と言われる値は300である為、魔力量が500もあれば初心者冒険者としてはかなり有能と言える値であった。今回の冒険者としての登録に際して、学園側は出来る限りの安全マージンを設定した。その一つがこの値であった。




「魔力測定、ってあの水晶みたいなのに手を乗せるだけでわかるのか?ファンタジーらしい、ちゃあらしいけどな。」


 ソラは並んでいる間暇なのでカイトに話しかける。カイト、ティナ、ソラの3人は一緒に並んでいた。桜は実演として一番初めに測定を行ったため、現在は測定結果から冒険者となる人員の選定を行っている。


「わかるんだろ?詳しいことは知らん。」


 カイトもティナも原理についてかなり詳細に知っているものの、明かせないためそう言う。


「当たり前か。にしてもよ、並びすぎだろ……。」


 長蛇の列にうんざりしているソラ。装置は数台あるものの、学園の7割方の人員が並んでいるため、一向に進む様子がない。


「記念受験的に考えている奴も多いだろ。実際500なんて数値は滅多にでないらしいからな。」


 事前説明で、なんの訓練もしていない人間種で500の値が出るのは20人に1人程度、と説明があったため、そう結論付ける。とそこで、歓声が上がった。どうやらかなり高い値が出たらしい。


「あー。また高い値が出たのか。20人に1人って嘘だろ。」


 ソラがそう言う、実際のところ、何故か天桜学園の人員には魔力量の高い人間が多かったことには公爵家から派遣された測定員も首を傾げていた。


「桜ちゃんは約5000だろ?一条先輩は約4000。二人共冒険者確定だってよ。」


 桜は生徒会長として、名家の令嬢としての義務感から冒険者として志願し、一条は以前彼の述べた通りであった。


「桜も一条とやらも意思が強いからの。魔力とは想念の力。強い想念の宿るところには強い魔力が宿る。しかも血統も良い。高く出たのはこのためじゃろう。」


 すでに説明されている部分のみで解説するティナ。


「想念って思いってことだろ?冒険者になりたい、って意思なら俺も負けてない……し、嫌だけど血統も悪くは無いんだよなぁ……ま、なんとかなんだろ。」


 そう言ってため息混じりながらも、自身の幸運を喜ぶソラ。カイトはそれを聞きながら、今までの測定結果の考察を行う。


(にしても、測定した2-A面子は何故か高かった……オレとティナの影響なんだろうな。)


 そう推測したカイト。ティナも同じ結論に至っていた。高い魔力を持つものは無意識的にかなりの魔力を放出してしまっている。本人たちが抑えていたといっても、体に免疫が出来て魔力量が高くなってしまったのだ。何も魔力が高まる要因は、意思が強い、鍛錬を行っている、というだけではなかった。環境に応じて、身体が最適化されることも、魔力が高まる要因であった。


(エネフィアに帰ってからは意識して抑えているが、地球ではほとんど無意識だったからな。2-A面子に何かあったらオレとティナの責任でもある……あいつらのためにも少しは頑張るか。)


 もっと少なかったはずの魔力量はカイトとティナの影響で高くなってしまった。そのせいで本来はなれなかったはずの冒険者となるクラスメイトもいるだろう。そのことにカイトもティナも若干の罪悪感を抱えていた。と、そこへティナの友人達がやって来た。


「ティナちゃん、私達測定終わったんだけど、見て!」


 そう言って測定結果を書いた紙を見せるショートカットの女子生徒。それを見たティナが感心した様に


「おお!由利も魅衣もすごいな!二人共4000を大幅に超えておる!コレは余も負けられんな!」

「でしょー。私達も結果を見てからどうしよっか、って話してたんだけど、この値なら安心かなー、って。さっき天道さんに志願を申し出てきたよ~。」


 そう言うボブカットの女子生徒。一番初めにティナに話しかけたのが魅衣、間延びした言い方なのが由利である。二人共ティナとよく一緒にいて仲が良かったため、高くなってしまったのだろう。二人が去った後、ティナは小声で二人に詫びる。


「すまぬ、二人共。お主らの安全は余が必ず守ってみせる。」


 どうやらティナもカイトと同じ推論を行っていたらしい。結果を見て、見えぬ所でかなり辛そうな顔をしていた。


「気負うな。コレは俺達二人の責任だ。せめてクラスの奴と仲の良い奴だけでも守ってやろう。」

「……うむ。そうじゃな。」


 二人共これが単なる独善であることは承知でそう誓い合った。





「やっと、俺達の番だな!」


 ようやく測定の時がやって来て張り切っているソラ。三人の中では一番始めに測定を行った。


「はい。ではそこに手をおいてくださいね。」


 そう言う測定員に従って手を水晶に乗せる。結果は上々だったらしい。職員からは、少しだけ驚いた気配があった。


「かなり高い値ですね。」


 そう言って結果を記述した紙をソラに手渡した。紙を見たソラは歓喜して大声を上げた。


「おお!見ろよカイト!4500だってよ!一条先輩と同レベル。やったぜ!」


 4500と言う測定結果を聞いて周囲も歓声を上げる。ソラはソラでそれに感謝しつつ、冒険者となれることがほぼ確実となり大喜びであった。次はカイトの番である。


「久しいな。」


 カイトが小声で測定員に問うと、測定員も小声で笑う。


「はい、閣下。お久しぶりです。」


 この測定員、実はカイトの公爵時代から公爵家に仕えている古参の1人で、異族のため容姿は若く、ここにいても若手職員と思われて、疑問に思われなかった。



 カイトとティナはクズハに手を回させて、二人の結果に細工を施すように指示していた。そうしなければ、いくら抑えた所で魔力量が学園の設定した値を桁違い―それも一つや2つではなく、測定不能という結果で―で超えてしまう。それはまずい、と考えた結果の対処であった。



「はい、結果が出ました。」


 そう言って測定員は細工した値を記した紙を手渡した。同様にティナも測定し紙を手渡す。そうして、カイトは去り際にふと、一つ思い出したかの様に、職員に扮した部下に問いかける。彼を見て、少し思い出したことがあったのだ。


「皆も、元気か?」

「はい。隊長共々、相変わらず息災代わりなく。とは言え、隊長はもう引退されたのですけどね。」


 そう言って微笑んで目礼し、昔を懐かしむ間も無く、職務へ戻るのであった。


「二人共測定終わったか。で、どうだった?」


 ソラはそういうや勝手に測定結果を覗き込み


「カイトは……と、お前も4500かよ!でティナちゃんは……はぁ!6000!たけぇー……。」


 その結果を聞いて周囲がどよめく。ティナの値は現在の最高値である桜の5500を超えていた。ちなみに、この値は更に塗り替えられる事になる。


「うむ!余なら当然じゃ!」


 そう言って無い胸を張るティナ。測定前に色々と細工した挙句、おまけに意識して平常時の100分の1程度に抑えて、更に測定結果に細工を施してこの値であった。


「お前は相変わらず抑えるのが苦手だな。」


 小声でカイトがそう言うとティナが憮然と不満を漏らす。


「お主がうますぎるんじゃろ。4500とかお主、元の値など跡形も無いではないか。どうやったんじゃ?」


 魔力量ではカイトのほうが圧倒的に高いため、真剣に疑問に思ったティナである。


「お前は遠距離高出力型の砲台タイプだからわからんだろうが、近接戦主体、しかも連撃タイプのオレだとコレぐらい抑えられんと無駄が発生する。」


 カイトは若干はぐらかして答える。感覚的に抑えているため、当人もわかっていなかったのだ。


「そんなもんかのう。」


 釈然としないものの、戦闘スタイルの差、と言われてしまえば、そういうものか、と納得するしか無い。そこでティナの値に呆然としていたソラが復帰する。


「まぁ、この値なら三人共冒険者として受かるだろ。いこーぜ。」


 そう言って桜のもとへ三人で向かい、志願を行うことにした。




「はい。これで冒険者としての志願申請は終わりです。でも、いいんですか?皆さん。」


 申請書を受け取ってそうカイトら三人に問う桜。それに対してカイトが答える。


「当たり前だろう。オレ達も幸いにして才能はあった。いざとなったら桜一人ぐらい守ってやるさ。」


 カイトは意識して、敢えて安心させるように言い放つ。男性から自信満々にそう言われて、顔を赤らめる桜。


「余はどうでも良いのか?」


 ティナはカイトに冷たい目線―当然、演技である―を送りながら言う。お前を負かせることが出来るのはオレぐらいだろう、そう思いつつもカイトも演技で答えた。


「ん?オレがお前を守らないと思っているのか?それにオレがお前を守れんとでも?」


 どこかの覇王然とした横柄な態度で、カイトがティナに問いかける。


「む?いや、そうは思わぬ……いきなりそんな演技をかますでない!」


 カイトがあまりに自信満々で、尚且つ当然と言い切ったのでティナもそっぽを向いて桜と同じく、顔を赤らめてしまった。


「俺さ、たまに思うけど、お前何時か後ろから刺されるぞ?」


 それを見ていたソラは呆れていた。ちなみに、カイトの発言は、公爵時代にルクスからの指導で培った、カイトなりの冗談のつもりであったらしい。この男、本当に何時か刺されるかもしれない。とは言え、刺されても死なないどころか、下手をすれば怪我を負わないので、質が悪い。


 お読み頂き有難う御座いました。

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