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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第二章 異世界転移編 
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第14話 再会

 光に包まれたカイトとティナ。光が収まると、昼にアル達が会った時と似た二人の姿が。


「何時気付くか、と内心ニヤついてたんだが、意外と気付かねえな。まあ、顔も結構変わってるからな。仕方が無いか」


 精悍だった顔には幼さが現れ、精悍さが失われている。背格好はほとんど変わらない。似ているといえば、似ているか。髪と眼は未だ蒼色のままである。


「お主の場合は何方(どちら)かと言うと、纏うオーラの様な物が変質しておる。気付かぬのも無理はあるまい」


 そういうティナに至っては全く似ていない。妖艶さは消え、抜群だったスタイルは胸が残念なことになり、声には若干の幼さが現れている。成人女性の平均より高かった背も今は縮んでいる。ただ、眼は金色のままである。


「お前は誰が見てもわかんねぇよ……」

「仕方ないじゃろ。余があの姿になると魅了されるものが多すぎて地球ではまともに生活できんからな」


 そう言っている二人であるが、アルは一気に青ざめて平伏した。


「申し訳ありませんでした!公爵閣下と統一魔帝様とはつゆ知らず、今までのご無礼をお許し下さい!」


 同じように頭を下げてルキウス、リィルも謝罪している。それを見たカイトは溜め息を吐いた。

「いや、問題ない、ってさっき言っただろ……」


 しかしアルは納得せず尚も平伏したままだ。


「ですが……」

「くどい。と言うか、これから何回も天桜学園で顔を合わすのに、その度に友人のオレに敬語だと、誰もが怪しむだろ」

「余もまだ友らに正体は明かしたくはないしの」


 などと言って敬語をやめるように説得する。友人と言われても未だ承服しかねている三人であったのだが、遂にカイトが切り札を切った。


「もう、最悪公爵としての命令でもいい。頼む。今はまだバレるべき時じゃない」


 カイトに頭を下げられてアルが遂に折れる。


「分かりました。じゃない、分かった。コレでいいかい?」

「それでいい。悪いけど頼む。友人に敬語で話されるのは辛いしな」


 アルが承服し、それに従う形でルキウス、リィルも普段の口調に戻すことになった。


「それにしても、カイトもティナちゃんも少し性格が変わってない?」


 そう問うたアルにカイトは事情を説明する。


「ああ、まぁな。気が生命力に由来するのに対して、魔力は精神力に由来するだろ?」

「うん。まぁ、互換性はあるから気も魔力の一端とすることもあるけど、それが?」

「オレらクラスの魔力を持ってると、まぁ、周囲にいらん影響を及ぼしかねないからな。かなり抑えたんだよ。そうすると今度は精神的に抑制され……というわけ。まあ、いつものオレが冷静な印象があるのはそのせいだ。感情の波が強制的に抑えられているからな。魔力とは意思の力、古くからある言葉だ。魔力を抑えれば、必然意思の力も抑えつけられる」


 そう肩を竦めているカイト。同様にティナも肩を竦めて自身について説明する。


「余も魔力を抑えておる。そのお陰で精神が若干退行しての。余が幼児退行で、カイトが感情の抑制であったのは、恐らく個人差であろうな」

「お前の幼児退行はいつものことだろーが」

「それを言えば、お主は抑えておった方が世の中の女の為じゃろ」


 そう言い合う二人に対して三人は畏怖を覚えた。


「精神に影響するほど抑えないといけない魔力量ってどれほどなんだろ……」


 そう呟いたアルの言葉が、三人の心情を上手く表していた。




 その後、一旦公爵代行と話したい、と言うカイトとティナを周囲で最も秘匿性の高い飛空艇の通信室に案内する事になったのだが、その際、ルキウスの部隊員が大慌てで近寄ってきた。


「隊長代行!それに副隊長代行お二人も!ご無事でしたか!」

「ああ。問題ない」

「そちらの方々は?」


 かなり警戒感を滲ませる隊員だが、当然の事である。部隊の隊長三人が一気にいなくなったのだ。そこにきて見知らぬ二人が一緒にいる。操られている可能性を否定出来ないのであった。


「警戒する必要はない。このお方達は我らにとって最も大切なおニ人。今はそれ以外に話せん」

「ですが……」


 カイトとティナの二人を見遣り、尋常では無い魔力から―更には大人状態で覇王と女帝の雰囲気を纏った状態である―只者ではない事は理解している隊員であるが、正体不明であるため警戒をとくことが出来ない。


「くどいぞ。それより通信室は使えるな。奥様に連絡を取りたい」

「は。可能ですが……」

「間者などではない事は奥様が保証してくださる。そのためにも通信を行いたいのだが」

「……分かりました。ですが、他の隊員たちもご一緒させて頂いても?」

 最悪の場合に備えてそういう隊員にルキウスが却下する前にカイトが頷く。

「構わん。数人であれば許可しよう」

「ですが……。いえ、分かりました」


 そう言うとルキウスと隊員が協議し、部隊の幹部陣の中でも特に口の固い隊員を同行させることにする。


「申し訳ありません、閣下」

「いや、構わん。先頃まで襲撃にあっていた事を考えれば当然の対応だ」


 頭を下げるルキウスに対し、公爵として対応するカイト。そうするうちに通信室に到着し、周囲への遮音術式などの用意が整う。


「この時間ですと、奥様は恐らくご就寝されていると思いますので、メイド長のフィーネ様がお出になるかと」

「クズハは、オレだと知れば大慌てで起きて来るだろ。フィーネか、あのエルフのお姉さんね。あ、あとオレとティナのことはぼかしておいてくれ」

「は?」


 笑いながらそう言うカイトだが、ルキウスは当然意味がわからない、というような顔をする。


 フィーネ、と言われ、思い出すのはクズハを正式にエルフの里から引き取ってから、公爵領で生活する際にやってきたクズハお付のメイドである。


 エルフなのになぜか胸が大きいと思っていたカイトだが、今考えればエルフの胸が小さい、と言うのはただの個人差なのかもしれない。まぁ、あの胸は存分に楽しませてもらいましたが、などと考えているカイトだが、暫くしてかなり胸の大きな耳の尖った金の髪を持った美女が画面に現れて応答する。


「ご無事だった、とは報告を受けています、ルキウス隊長代行。それでこんな時間に、一体何事ですか?このレベルの秘匿通信、しかも奥様への直接通信など、余程の事が起こったと見ても?」


 無事を報告するためだけに起こしたのなら、呪殺しますよ、と眼が語る。それに対し冷や汗をかきながらもルキウスは片膝をついたまま、フィーネに報告する。


「は。恐らく、奥様が飛び起きられる程かと」

「ほう。それは一体どういう案件で」

 普段は冗談を言わないルキウスの言葉に、フィーネは興味を惹かれたらしく少し笑っている。


「いえ、とある人物が我が陣を訪ねて来られまして……」

「厄介な貴族にでも嗅ぎつけられましたか……」


 そう懸念するフィーネである。今度は逆に顔を顰めている。現在、天桜学園の事は皇帝以下数人の皇国幹部陣と公爵家しか知らないのだが、耳の早い貴族たちならば、十分に嗅ぎつけられていても可怪しくなかった。


「いえ、そういった我々に悪意ある者ではありません」

そう言い、誰かを明言しないルキウスに若干イラつきつつ

「誰なのです?もし、天桜学園の関係者でしたら明日にしてもらいなさい」


 そろそろいいか、と考えたカイトはティナとともに通信機に映る場所へと移動し、悪戯っぽく笑う。

「あ、それ、オレも関係者なんだけど、明日にしたほうがいいか?」

「うむ、余もだ」


 と言って、画面に顔を出してから、帰ろうとする。フィーネは一瞬幻覚か、と思うも今度は大慌てで涙目になりながら、二人を引き止めた。


「ご主人様!それに魔王様も!って、お待ちください!今すぐクズハさんを起こして来ます!」


 そう言って一旦通信を保留にする事も忘れて走り去る。が、すぐに一人の美少女を伴って帰ってきた。絹のように柔らかな金の髪を腰まで伸ばし、蒼色の眼、愛らしさの中に凛々しさを有した絶世と呼んで良い美少女だった。耳が長く、先が尖っているところを見ると彼女も異種族である。見た目の年の頃は十代中頃から後半、天桜学園生としてのカイトと同じぐらいの年齢か少し年下だ。


「フィーネ、一体誰なのです?こんな時間に来訪者など……。ルキウスも余程の……お兄様!」


 フィーネはどうやらよほど焦っていたのか誰かを伝え忘れたらしい。待ち人の姿を見つけたクズハは一瞬ポカン、となるも大いに驚いて、カイトに尋ねた。


『何時お帰りになられたんです!?』


 そう尋ねたクズハに対してカイトは懐かしげに微笑み、クズハの疑問に答えた。


「今日だ。本当はエネフィアにはもう少し後に帰るつもりだったんだけどな」

 照れた様子でそう言うカイト。それに対して安心した様子でクズハは涙を流して喜んだ。


『では……帰ってきてくれるつもりだったんですね……よかった……。』


 そう言ってポタポタと涙を零すクズハ。それに対してカイトは優しい眼をして微笑む。


「いや、当たり前だろ。帰ってくるって約束したからな」


 そう答えるカイト。それを聞いたクズハは涙を拭ってとびきりの笑顔でこう言った。


『おかえりなさい、お兄様。お姉様もお帰りなさい。』

「うむ。今戻った」


 そう言ってティナも優しい目でクズハを見ている。ティナにとってもクズハは妹のようなものなのだった。


「でだ、まあ、サプライズで登場したのはいいんだが……」

『今日、という事は天桜学園の転移でこちらへ?』


 と、クズハは公爵代行としての顔をする。それを見たカイトは満足気にうなずき、本題に入る事にした。


「ああ。その事で相談がある。が、とりあえず……」


 そう言ってカイトは周囲を見渡し再び覇王のオーラを纏うと周囲に居る隊員達に命ずる。


「帰ってきてそうそうで悪いが、公爵としての命令だ。一旦この部屋を私とティナのみにしてくれ。尚、私が帰還した事については緘口令を敷く。今はその時ではない。他言はするな」


 クズハの様子からカイトが伝説の勇者一行で、自分達の主であると理解した隊員達に否やはなく、その場にいた隊員が一礼すると部屋から出て行った。





 お読み頂き有難う御座いました。


 2018年2月3日 追記

・修正

『光』が『光り』になっていた所を修正

『蒼色のまま』が『蒼色まま』となっていた所を修正

『何方』でご指摘を受けたのでルビを振りました。新機能便利。

『ついに』が二つ重なっていた一文を修正。

『固い』が『硬い』になっていた所を修正

『なのかも』が『なのかかも』となっていた所を修正

『映る』が『移る』になっていた所を修正

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