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第204話 いたずらっ子 ――ルフィ――

 昨日時点で1000ポイント達成しました。感謝です。なので感謝として明日からまた断章・4を更新していきます。今回は前回からの続きです。

 さすがに前みたいに一時間毎だと紛らわしいし19時~20時は夕食だのと忙しいと思いますので、一応21時投稿にしようと考えています。

 ソラが真剣にコリンの相談に応じてすぐ。後ろから近づいてきていたコリンの友人にスカートを捲られた由利とナナミに強制され、ソラもまた鬼ごっこの鬼となっていた。そうして追い駆けること数分後、少年たちはこのままでは捕まる、と判断して、ある決断を下した。


「おい、全員!散らばれー!」


 コリンの掛け声で、少年たちは各々別々の方向に別れる。しかし、その直前に捕まらない少年達に業を煮やした由利が魔術を発動させた。


「うわぁ!」


 由利がティナから対人捕縛用に教わった魔術で、数人の少年の捕獲に成功する。


「あははー、お姉さんから逃げられると思ってたのかなー?取り敢えず、君たちは他の子が来るまでそこで待っててね?」


 非常に怒った――ただし、表情は笑顔――由利の声に、少年たちが真っ青になって逃げ出そうとするも、やはり動けない。


「由利ちゃん!グッジョブ!じゃあ、私はコリンを追っかけるから、由利ちゃんとソラさんで残りの二人を追っかけて!」

「うん!じゃあ、ウチはあっちの茶色の髪の子を追うね。」


 そう言うやいなや、再び由利は全速力で駆けて行った。


「じゃあ、俺はあっちの緑のか。」


 そうして、再びソラは追跡を再開する。目標は一人になったショートカットの緑色の髪の少年だ。そうして数分もすると、ソラが追っていた緑色の髪の少年が疲れたらしく、立ち止まった。


「捕まえたぞ!」


 そうして足を止めた少年を捕獲し、小脇に抱えるソラ。見れば、全体的に透き通るような肌に、少し長めのショートカットの緑色の髪、端正ではあるがイタズラ好きそうな中性的な顔と、かなりの美少年であった。年齢はコリンと同じぐらいなので、恐らく友人の一人なのだろう。


「うわあ、僕に何するの!」


 いたずらっぽく艶のある声で少年は敢えてそう言う。それに周囲の大人達が怪しげな顔をする。さすがにこのままでは要らぬ疑いを掛けられかねないと、ソラは大慌てで少年を降ろした。


「逃げんなよ?」


 一応、ソラの速度の方が速かった事は事実なのだが、念の為にそう言っておく。ここで逃げられれば、再び追いかけっこである。


「あぁーあ。捕まっちゃったぁ。」


 今にも舌打ちしそうな雰囲気で、少年は残念そうに口を尖らせる。と、そんな少年に対して、ソラが少しアクションを起こした。


「はぁ……誰も見てないよな?」


 ソラはそう言ってキョロキョロと周囲を見渡す。先程は怪訝な顔でソラを見ていた大人たちは既に立ち去っており、誰も注目していなかった。


「取り敢えず……ご褒美だ。」

「うわ、キャンディ!ありがと、お兄さん。」


 ナナミも由利も他の少年達も居ない事を確認したソラが、ポケットから持って来ていたキャンディを少年に手渡す。それを受け取った少年は嬉しそうにしながら包み紙を少し急いで開けて、口に放り込んだ。

 なにげに後でお説教も喰らわなくても良いしでこの追いかけっこの中で一番役得であったのはソラである。この程度のご褒美をあげても良かったのだった。


「お兄さん、意外とムッツリ?」


 少年は飴玉を舐めながらいたずらっぽくそう言う。それに、ソラが少し否定しにくいのでとりあえず男としての道理を解いておいた。


「っつ……お前も男なら分かんだろ?」

「あはは……あ、お兄さん、名前なんていうの?」


 少年の方は苦笑して否定はしなかった。と、更に続いた問い掛けに、ソラがはっとなる。どうやら少年に気に入られた様であるソラは、自己紹介をしていないことを思い出したのだった。


「ん?ああ、ソラ・アマシロって言うんだ。小僧、お前は?」

「僕?僕は……ルフィだよ。」


 そう言って、少年はにこやかに笑う。爽やかそうな笑顔であるのに、どこかいたずらっぽかった。とは言え、まだ年齢もあって可愛らしい笑顔だった。


「そっか、ルフィか……別に腕が伸びたりしない……よな?」


 某漫画の登場人物と同じ名前な少年の名前に、ソラが思わず尋ねる。当たり前だが、ルフィには何のことだかわからなかった。なので彼は首を傾げる。


「なにそれ?」

「ああ、こっちの話だ……取り敢えず、由利とナナミさんに謝りに行くぞ。」

「はぁーい。」


 少しだけテンション低めの声で、ルフィは頷いた。悪いことしたとは気づいていたのだろう。しぶしぶではあったが嫌がりはしなかった。そうしてそんな少年にソラが苦笑する。

 そんなソラだがふと周囲を見渡すと、見たこともない風景であった。所々に家が見えるので、村の中ではあるようだ。だが、ここが何処なのかまではわからなかった。まあ、今日来たばかりなのだしそもそもで地理を覚えようと外に出ているのだから当たり前だった。


「……ここ、何処?」

「ぷっ……あーははっ!お兄さん、追うのに夢中になってるからって道わからなくなったら冒険者やってけないよ?」


 つまりは、迷子だった。それに気付いたソラが、少しだけ焦った表情で呟く。何時の間にか迷子になっていた事に気付いたソラに、ルフィは大笑いする。


「あー、面白かった。いいよ、送ってってあげる。こっちだよー。」


 一頻り大笑いして気が済んだのか、ルフィはソラを先導して歩き始めた。


「ぐうの音も出ん……」


 迷子になってるのは事実であるので、ソラはルフィの好意に甘える事にした。そうして、十分程歩いて行くと、コリンやその友人を説教しているナナミと由利の姿が見えてきた。そうして見えてきた彼女らの姿だが、どうやら彼女らが追っていた面子は全て捕縛されており、正座でお説教中らしかった。


「おーい、最後の一人捕まえたぞー。」


 そう言ってソラが二人に声を掛ける。一方のルフィは、笑いながら訂正した。


「お兄さん、迷子になってたから連れてきたよ。」

「あ、おい!」


 ルフィの言葉に、ソラが顔を真っ赤にして止めに入るが既に遅かった。由利とナナミはルフィの訂正に呆れた表情でソラを見た。追っかけっ子に夢中で迷子になっていれば呆れるのは当たり前だった。


「ソラー……」

「ソラさん……」

「おい。」


 二人に呆れられたソラは、半ば八つ当たり気味に少年の頭を軽く小突いた。


「はーい。お姉さん、ごめんなさい。」

「え?ああ、うん……あれ?君だれ?」


 謝罪して頭を下げたルフィの顔を改めてきちんと確認したナナミは、ルフィを知らなかったらしい。怪訝な顔でコリンに問いかける。


「コリン、この子、何処の子か知ってる?」

「え?……あれ?お前誰?」


 先ほどは逃げていて気付かなかったのだが、ルフィは自分の友人達では無かった事にコリンが気付いた。そうして彼もルフィに問い掛けた。


「え?」


 知っている筈の二人から、知らないと言われたソラも首を傾げた。もしかして、人違いだったのかも、そんな考えが頭をよぎる。そんな様子を見たルフィが、事情を説明する。


「ああ、ごめんね。僕は最近来たばっかりなんだ。それで、つい、皆が楽しそうだったから……」


 少しだけ寂しそうな雰囲気でルフィが謝罪した。そんな寂しそうな雰囲気を見て、今回だけは、とナナミが許す事にした。


「あ、そっか……うん。じゃあ、君は許してあげる。でも、もうこんなことしちゃダメだよ?」

「……うん。」


 寂しかったので、遊び相手が欲しかったのだろう、そう思った由利とナナミ。二人には兄妹や遊び相手が居るので、そんなに強くは叱れなかったのである。


「じゃあ、俺達も……」


 そう言って逃げようとするコリンとその友人達。だが、そうは問屋がおろさなかった。


「あんたたちはダメ!」


 逃げようとしたコリン達を目敏く見つけたナナミは、即座に振り返って叱る。だが、少しでも目を離したのがいけなかった。叱る声が聞こえた時にはコリン達は既に脱兎の如く逃げ出していた。そうして再び、追っかけっ子が始まるのだった。


「あはは!」


 そしてそんな風景に、ルフィは面白そうに笑うのであった。




「じゃあ、また明日ねー!」


 そう言って手を大きく振るルフィ。皆とは少し離れた所に家がある、そう言って別れたのであった。


「おう!じゃあ、またな!」


 再度捕縛されてコリン達が叱られた後、ナナミと由利を交えて夕方まで遊び相手を務めていたソラは、少年たちやナナミと仲を深めていた。そうして、コリン以外の少年たちを暗くなる前に自宅に送り届け、ソラは少し苦笑して呟いた。


「あー、久々に思いっきり遊んだー……」

「あはは、さすがに僕もここまでなんにも無く走ったのは久しぶりだよ。」


 そう言って笑うのはアルだった。村をぶらついていたアルを、鬼ごっこ――結局お説教の後も鬼ごっこになった――の途中で見つけたソラが無理矢理巻き込んだのであった。


「あはは、ソラってばムキになっちゃってたねー。」


 全員一人で捕まえんの面倒臭え!そう言って無理矢理アルを引き込んだソラを思い出し、由利が笑みを浮かべる。


「ソラくん、アルくん、由利ちゃんもありがとう。」


 一緒に遊んでいる内に、ソラとアルがさん付けは堅苦しいからやめてくれ、と頼んだので君付けで呼ぶようにしたナナミ。由利は先程の料理の時なのだが、ソラとアルともいつの間にか仲良くなっていたのだった。


「ああ、いいって。俺も弟の面倒良く見てたからな。ナナミさんこそ、やっぱ慣れてるな。」


 一方、ナナミも呼び捨てで良いと言ったのだが、1歳とは言え年上の女性を呼び捨てにすることに抵抗を覚えたソラは、さん付けを続ける事にしていた。


「まあ、ね。毎日毎日やってるもの。」


 そう言って笑うナナミ。素朴だが、幸福に満ちた綺麗な笑顔であった。


「ソラの兄ちゃんもアルの兄ちゃんも、やっぱ鍛えてんだな。はええよー。後、由利姉ちゃん、いくらなんでも屋根の上は意地悪いって。」


 一方、疲れた表情でコリンが呟いた。鬼ごっこなどの走る系となると、二人によって全員が捕獲されるのが常であった。それ故に、少年たちは二人から誰か一人でも逃げ切れることが、何時の間にか目標となっていた。それ故に、二人は常に走り回る事となり、久々にかなりの疲労感を感じていた。


「あははー、私も別に鍛えてないわけじゃないけど、体力には自信が無いからねー。知恵は使わないとねー。」


 鬼ごっこなどで見つからない時は、近くの民家の屋根に登り、高いところから少年達を探しだしてソラ達に指示を出していた由利。お陰で、体力の消費が抑えられたのであった。


「でもよー……」

「高い所から敵の動きを観察するのは戦略の基本だよ。それに、僕らは村の道を知らないし、君たちは人数がいるでしょ?」


 尚も不満を言うコリンに、アルが笑って言う。


「まあ、そうだけどさ。さすがに上から見張られてたら逃げらんねえって。つーか、上に逃げられたら捕まえらんねえし。」

「でも、逃げる時は屋根には逃げなかったでしょー?」

「そうだけどさー」


 由利の言葉にコリンは少し不満気だ。とは言え、そんなコリンの不満を流しつつ、一同が村長宅に着いた時には、既に日が落ち始めていた。と、そこでナナミが夕食の用意をしていなかった事に気づいた。

 まあナナミが居なくても普段はコラソンの妻――つまりはコリンの母親――にナナミの母親が居るのだが、それでも今はソラ達の分もある。量を用意しないといけないので、今は手伝った方が良いのだ。


「早く夕御飯の支度しないと!」

「あ、手伝うよー。」

「ゴメン、ありがとう!」


 少し悪いと思ったらしくナナミにつづいて由利も帰ってそうそうに台所へと走る。そうして少ししたら更に賑やかな声が台所から響いてきた。


「腹減ったー。」

「ははっ、僕も久しぶりに遊んだから、お腹ペコペコだよ。」


 そう言って二人は村長から貸し与えられた会議室のイスに座る。


「おっす、帰ったのか。」


 そう言って先に帰宅していた生徒の一人が二人に声を掛ける。


「ああ、峰岸か。そっちどうよ。」

「あー?まあ、何も無かったな。テキトーにぶらついて、部屋で本読んでた。そっちはどうよ。」

「こっちゃガキどもと一緒に走り回ってたよ。」


 疲れた表情でソラがそう言う。


「まあ、おかげで村の道が大凡把握できたね。」


 アルが少し真面目な顔で告げる。そう、何も彼等とて無邪気に遊んでいたわけではなかった。一応、村の下見を兼ねていたのである。由利がこまめに屋根の上に登ったのも、そのためであった。


「はぁ……それにしちゃ、酷い運動だ。」


 ソラが苦笑に似た笑みを浮かべる。そんなソラに、アルも同じ笑みを浮かべた。


「全くだね。そういえば、途中でレーコちゃん見たけど、何してたの?」

「え?ああ、私も村の下見。意外と見たこと無い物も多かったからねー。」


 そうして、数十分会話していると、夕食が出来上がる。


「じゃあ、私も今日はこっちで頂こうかな。」


 夕食を作っている最中に、由利と話して料理の相談等をしようと決めたらしいナナミも、村長から許可を取って此方で夕食を食べることになったらしい。そうして、一同が揃った所で、夕食を摂る。


「うが……もうダメだ……」


 夕食を食べ、満腹となると午後に遊んだ疲労が心地よい眠気を連れてきた。なんとか風呂には入れたものの、ソラはその後、布団に潜って即座に眠りに着いたのであった。

 お読み頂き有難う御座いました。

 次回予告:第204話『見回り』

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