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ええじゃないか
作:とりえなし



第九十三話 塾


「先輩!今日も来ました!」
「そんなことでいいのか受験生よ」
「夜中、塾でしっかり勉強してますから問題ないですよ!」
「塾って、立正塾か。神田先生は元気か?」
 神田先生とは、俺が中学時代に、塾で数学を教えていた先生である。そして、数少ない俺が心酔する人物の一人でもある。
「元気ですよ。たまに先輩と杉田先輩の話もしてますよ」
「……どんな話だ」
「授業中によくしゃべってた杉田先輩を、先輩が叩いてたとか」
「事実だな」
 義人は中学時代……いや、初めて会った時から鬱陶しいやつだったからな。俺がブレーキ役に指名されることがほとんどだった。指名されなくても、義人を止める仕事は俺の任務だと自覚していたが。
「テストなのに寝てる杉田先輩を、先輩がシャーペンで刺して起こしたとか」
「事実だな」
 俺が真面目にテストを受けているのに、横で寝ていたのでカッとなってやった。後悔はしていない。むしろやつの石頭でシャーペンが壊れかけたので弁償してほしかったくらいだ。義人はぴんぴんしてたし。
「先輩が歴史の斎藤先生と一致団結して、深夜まで語り明かしたとか」
「事実だな」
 北方謙三の小説の素晴らしさがわかり、陸奥宗光の頭脳明晰さを俺以上に知っていて講義してくれたからな。あれは有意義な時間だった。
「そんなことを受験前にやっていた先輩に今の私のことをどうこう言う資格はないと思います」
「そんなことはない。俺は結局受かったし」
「うざいですよ」
「なら帰れ」
「帰りません」
「古木さん、マネージャーの仕事やってみるか?」
「いいんですか」
「頼むのはこっち。やることは山ほどあるから」
「マサは女子に甘すぎるぞ」
「みっちゃんが必要以上に厳しいだけだろ」
「しかも男女関係なく」
「やかましいわ」
「今から練習ですか」
「そうだ」
「……ってなに急に脱ぎだすんですか!?」
「水泳部だし」
「私がいるのになんで着替えるんですか!?」
「ああ、保護者は女子だったっけか」
「今さらですか!?」
「そう言うなら、部室からとっとと出てけ」
「更衣室で着替えてくださいよ!」
「男女比率は10:1くらいだし……だいたい上半身裸は水泳部では基本スタイルだろ。下も着替えるから出てけ」
「いやです!こうなったら全部見ていきます!」
「……気でも狂ったか」
「はあはあ……先輩……」
「……高城さん、頼む」
「…………」(音も立てずに忍び寄り、タオルで目隠しをする)
「何!?何が起きたんですか!?」
「…………」(そのまま引きずるようにして連れて行く)
「誰!?離してください!先輩!助けて!」
「助けてほしかったのはこっちなんだが……それはともかく高城さん、グッジョブ」
「……貸し、一つ」
 ……清算の時が怖いなあ。人選謝ったか。







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