ええじゃないか(10/103)PDFで表示縦書き表示RDF


ええじゃないか
作:とりえなし



第九話 油断


 部室に行ったら、イタチがいた。学校の敷地内に森があるくらいだから、おそらくそこに住んでいるのが、水のあるプールにひかれて部室に迷い込んできたのだろう。しかし今、そんなことは重要ではない。
「……なんて可愛いんだ……」
 つぶらな瞳にふさふさした毛並みと、物凄く可愛い。天使だ、天使がここにいる……!
「……ほら、怖くないからこっちにおいで……」
 そう言って手を差し出すと、興味がわいたのか寄ってきて、抱くことができた。
「ああ、可愛いなあ、ふわふわしてるなあ、やわらかいなあ、お前は。いくつだ?何食って生きてるんだ?飼われてるわけじゃないよな?ほんといいなあ……って石井何撮ってやがる!」
 いつの間にか石井が来てビデオカメラをまわしていた。
「お前何してんだ!」
「見てわかるだろー、撮影だよー」
「何撮影してんだ!」
「可愛いものを見つけて悶えている三井ー」
「……なんでビデオなんて持ってんだ!」
「部室に置いてあるやつだよー。さすがだよねー、フォームチェック用のが備えられてあるんだからー。これが公立高校でもいい成果が残せる理由の一つだろうねー」
「……なるほど、さすが北高……じゃねえ!なんでそんなもんで撮ってんだ!」
「脅迫よ……ゲフンゲフン、思い出として取っておこうと思ってー」
「今脅迫って言ったぞ!」
「……聞き違いだよー」
「今の間は何だ!?」
「じゃあ幻聴だよー」
「じゃあって何だ!?しかも悪化してるじゃねえか!」
「何騒いでんだ、お前ら」
「なんだその動物?」
 俺たちが話している間にほかの部員が集まってきた。するとイタチは、人が多くなって警戒したのか、暴れて逃げてしまった。ああ………。
「そうだ、石井は!?」
 早くあのビデオをなんとかしなくては。
「石井ならもう帰ったぞ、用事があるらしい」
「俺も帰ります!」
「何言ってんだ、筋トレやるぞ」
「ちょっと待ってください、急用が今できました!」
「今って何だよ。ほら、始めるぞ」
「うわああああああああああ」
 この日は結局、石井を捕まえることはできなかった。


 そして翌日。
「大丈夫ー、とりあえず誰にも見せないからー。ビデオも消去して返したしー」
「……とりあえずという言葉に物凄く不安を感じるのだが……」
「いざというとき以外は使わないからー」
「……いつかそれを使って何をするつもりだよ……」


 







ネット小説ランキング>現代コミカル部門>「ええじゃないか」に投票   ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。(月1回)





ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう